ブラック・ブレット 贖罪の仮面   作:ジェイソン13

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今回は刑事のオッサンたちがタバコを吸いながら駄弁るだけのお話です。


死体は語り過ぎた

捜査本部を出た遠藤と水雲は勾田署を出た後、電車に乗って目的地へと向かっていた。背広姿で吊革に捕まる姿はごく普通のサラリーマンにしか見えない。周囲の光景に馴染んでおり、誰も2人が警察関係者だとは思っていなかった。

 

「そろそろどこに行くか教えてくれませんか?」

「次の駅で乗り換えるぞ」

 

遠藤の言う通り、水雲は一緒に次の駅で降りた。少し離れた扉から黒服が出てくるのも見えた。2人と違い、あの男の容貌はかなり目立つ。ターミネーターの類なんじゃないかと思ってしまうぐらい厳つく無機質だ。

 

「この後、15分後に来る第25区行きの電車に乗り換える。ちょっとタバコ買ってくるから、そこで待っていてくれ」

 

そう言うと遠藤はホームの階段を下りて行った。

水雲は暇になった15分を埋めるために缶ジュースを買って、スマホをいじって待った。

それから15分後、遠藤は戻ってこなかった。

 

 

 

階段を下りた遠藤は人混みに紛れて改札を抜けた。ちらちらと背後を見るが、自分が抜け出したことを水雲も黒服もまだ気づいていないようだ。可愛い後輩は見事に囮役をやってくれている。

遠藤は駅前の街道から逸れて、小さな飲み屋が並ぶ古い市街地へと足を進めた。街道から少し足を踏み外しただけで、そこは70年もタイムスリップしたかと錯覚するような、昔ながらの下町情緒あふれる木造建築と居酒屋が立ち並んでいた。ガストレア大戦前のことを思い出し、少し懐かしい気持ちになりながら遠藤は目的地へと向かった。

下町の一画にあるごく普通の木造建築だ。1階は居酒屋だったようだが、今は閉店しており閑散としている。2階は普通の住居になっている様だ。電気が点いており、誰かが生活していることが分かる。

遠藤は首位に誰もいないことを確認すると表からぐるりと回り、裏の勝手口の戸を“4回”叩いた。しばらくすると、家の主が扉を開けて姿を現した。

ヤクザが仏に見えるくらい厳つい顔をした壮年の男だ。その目つきは鋭く威圧感は現役刑事の遠藤に引けを取らなかった。

 

「お久しぶりです。多田島さん」

「おう。遠藤じゃねえか。そろそろ来ると思っていた。入れ」

 

多田島茂徳。元勾田署の刑事であり、警察の中で最も里見蓮太郎と接触のあった人間だ。

踏むたびにギシギシと音を鳴らし、いつ踏み抜いてもおかしくない腐敗した木の階段を上り、建物の2階、多田島元警部補の生活スペースへと足を踏み入れた。

その空間は異様だった。込み袋に詰め込まれたカップ麺やコンビニ弁当の殻、燃えないゴミ袋に詰められたビールの空き缶。そこまでは普通だった。少しだらしない男性一人暮らしの生活感があった。しかし、彼のテーブルと壁にあるものが異様だった。壁のいたる所に新聞やネットの記事の切り抜きが貼り付けられ、テーブルの上はバラニウム工学やガストレア解剖学の専門書、最新のGV治療といった専門書が積み上げられていた。刑事としてではなく、個人の執念で彼は何かを調べ続けている。それが一目でわかった。その執念が並々ではないことも。

 

「悪いな。汚い部屋で。久し振りに掃除したもんでな」

「いや、部屋が汚いのは薄々分かっていましたけど……」

 

部屋が汚いことなどどうでも良かった。そんなことよりも壁中に貼られた記事の切り抜きのほうが気になって仕方が無かった。

 

「相変わらずというか、職業病ですね」

「ああ。だが、退職後の暇つぶしには丁度いい。ほら。座れ。茶ぐらい出してやる」

 

多田島に促され、遠藤は椅子に座って茶を待った。その間に壁に貼られた記事に目を向ける。東京エリアのガストレア事件、現在進められている地下鉄と地下都市拡大計画、博多エリア首相暗殺事件、札幌エリア首相の訃報、仙台エリア首相の退任と新首相の発表、防衛省の大規模な人事異動、何の脈絡も無さそうな記事が所狭しと並んでいた。

茶を出した多田島が向かいに座った。

 

「こんな老いぼれに何の用だ?」

「実は、これについて聞きたいことがあります」

 

遠藤はジャケットの裏側のポケットから、1枚の紙を出した。今朝見つかった首なし遺体の脇腹にあった刺青の写真――そのコピーだった。それを見た時の多田島の反応は分かり易かった。目を見開き、どこでこの刺青を見つけたのか今にも聞き出したいという顔だった。

 

「これは今朝、河川敷で見つかった頭部のない遺体の脇腹にありました」

 

そこから遠藤は今、警察で分かっている遺体の情報について話した。身分証明の類は全て芹沢遊馬の名前で偽装されていたこと、本物の芹沢遊馬は存命中であること、遺体の手には何度か銃を扱ったことがある痕跡があること、警察は暴力団関係者という線で捜索していることを伝えた。

一通り報告を聞いた後、多田島は閉口し続けた。しばらく何か悩んだ後、遠藤の顔をチラチラと見て、何か言いたそうで言えない煮え切らない態度を取っていた。

 

「多田島さん。貴方、この刺青のことを知っていますよね?前、これと同じデザインのものがプリントされた紙を持っていました」

 

その言葉がトドメとなったのか、多田島は煮え切らない態度をやめて腹を括った。

 

「遠藤。俺がこれから話す内容がどれだけ胡散臭くて非現実的だとしても“事実”として受け止めろ。それくらい俺たちの理解から離れた世界の話になる」

 

「は、はい」――と遠藤は息を呑んだ。

 

「そうか……。ちょっとこのサイトを見てくれ」

 

多田島がノートパソコンを取り出し、とあるサイトの画面を遠藤に見せた。

【東京エリア恐怖物語】という真黒な画面に不気味なフォントの白い文字、TOP画面には髑髏マークがある安っぽい都市伝説サイトだ。今から30~40年前に見たことがあるようなサイトだ。

 

「ここを読んでくれ」

 

多田島に促され、遠藤はあるページを読んだ。

 

“ガストレア大戦後の世界征服を目論む秘密結社 ♰五翔会♰”

 

なんとも胡散臭いと思いながらも遠藤はそのページを読み進めた。

どうもそのサイトによると、東京エリアには五翔会という秘密結社が暗躍しており、世代の進んだバラニウム技術を独占することで東京エリアの政財界を牛耳ろうとしているというものだった。彼らは身体のどこかに翼の生えたシンボルマークの刺青を持っており、それを会員の証としている。彼らは自衛隊、警察関係者にも深く潜っており、聖天子を亡き者にすることで東京エリア征服計画は完遂される。――らしい。

 

「どう思う?」

「どうも何も胡散臭くて荒唐無稽なよくある都市伝説じゃないですか」

「ああ。だが、全て事実だった」

 

多田島の言葉に遠藤は唖然とした。自分の知る多田島茂徳は自分の目で見たものしか信じない生粋の現実主義者、憶測や妄想で動かない刑事らしい刑事だった。そんな男が都市伝説を事実と言ってしまうことに驚きを隠せなかった。

 

「6年前に起きた水原鬼八殺害事件、里見蓮太郎と警察の追走劇と冤罪、そして事件解決直後に起きた“季節外れの大規模な人事異動”。これらは全て繋がっている」

 

水原鬼八殺害事件。第三次関東会戦直後に起きた殺人事件である。フリーの民警であった水原鬼八が殺害され、彼と会う約束をしていた民警の里見蓮太郎に容疑がかけられた。里見蓮太郎は警察に拘束されたが、その直後に脱走。警視庁の機動隊を相手に過激な逃走劇を繰り広げつつ自分の無実の証拠をかき集めた。結果、里見蓮太郎の無罪が証明され、水原鬼八殺害事件の真相は「警察内部の反民警派閥が“英雄”里見蓮太郎に濡れ衣を着せることで民警システムそのものの地位を貶めるために起こした事件」として公表された。そして、警視総監が変わり、内部粛清と言わんばかりの大規模な人事異動が起きた。

 

「あの事件は警察のいち派閥が引き起こした事件とされているが、実際はそうじゃない。あれは櫃間警視総監とその息子が五翔会の人間として引き起こした事件だ。里見蓮太郎は無意識の内に五翔会の企みを阻んできた。計画最大の障害を排除するために奴らは警察を自分たちの駒にしたんだ。そして、櫃間警視の身体にはこの刺青があった」

 

それは不審死した櫃間篤郎警視を治療した病院で撮影されたものだった。ケータイかスマホか、それ以外の小さいカメラで隠し撮りした櫃間篤郎の遺体、彼の腹部には3枚羽根のシンボルマークの刺青が彫り込まれていた。

それは今朝見つかった首なし遺体と同じ羽のついたシンボルマークの刺青。羽の枚数が増えていること以外は全てが同じだった。

ここで遠藤は気付いた。この死体が出て来たタイミング。それは里見蓮太郎のガストレアテロの直後だった。死亡推定時刻はガストレアテロより少し前。何も関係がないとは思えなかった。

 

「この男は五翔会のメンバーで芹沢遊馬に扮して何かをしようとしていた。しかし、里見蓮太郎かその仲間に殺されてしまった。――ということですか?」

「状況証拠だけで語るならそうだろうな。こういう殺し方をする元イニシエーターが里見蓮太郎と一緒に行動しているっていう情報もある」

 

多田島はファイルから一枚のプリントを取り出し、遠藤の前に置いた。どこかの監視カメラの映像、それを切り取った静止画をプリントしたものだ。欧米のエリアのハロウィンか何かだろうか。仮装する人々の中に仮面をつけた蓮太郎と二振りの太刀を背負った小比奈が映っていた。

 

「問題はこいつが“芹沢遊馬になって何をしようとしていたか”だ。ただ身を隠すための変装ならこんな大物になる必要は無い。むしろ目立つ。芹沢のフリをして何かをしようとしたと考えるのが妥当だが、常に秘書や護衛をつけている奴が一人でブラブラしていると怪しまれる」

「怪しまれない状況を本物の芹沢が作っていたとしたらどうですか?芹沢には、博多黒膂石重工のトップとしてではなく、芹沢遊馬個人としてやろうとしていたことがあった。しかし、偽物は本物とすり替わろうとして、殺された。もしくはすり替わって何かを成した後に殺された」

「五翔会と芹沢遊馬、引いては博多黒膂石重工か。それに里見蓮太郎が加わるとなれば、共通点は一つしかない」

「次世代バラニウム兵器。多田島さんの言っていた五翔会の進んだバラニウム技術」

「そして、里見蓮太郎の義肢と義眼。あれも室戸菫が生み出した次世代バラニウム兵器の一つだ」

 

多田島はノートパソコンをインターネットに繋ぎ、博多黒膂石重工のページを検索した。

 

「博多黒膂石重工が出来たのは今から16年前。博多エリアが出資する公社として設立されたが、5年前の自衛隊のクーデターで前首相・海鉾雅守と共に代表が失脚。その後、不審死した代表に変わって芹沢遊馬が代表に就任。4年前に次世代バラニウム兵器を発表し、それを博多エリア自衛隊に配備させる」

 

多田島が画面の記事を読んでいく中で、あることに気付いた。それは遠藤も一緒だったようで、同時にはっと気づいた。それは自分たちが警察であり、様々なことを堂々と調べられる立場であるが故の過ち。犯行当時、犯人が持っていた情報の少なさと過ちを想定できなかったことだった。

遠藤たち警察は首なし死体が芹沢の偽物だとすぐに分かった。故に事件を「芹沢遊馬に変装した誰かさん殺人事件」として捜査の方針を固めて、それを進めてしまった。しかし、博多黒膂石重工と五翔会に繋がりがあると分かった今、もう一つの可能性が浮かび上がった。

 

“あの偽物は本物の芹沢遊馬と間違われて殺されてしまったのではないか”

 

五翔会と里見蓮太郎は宿敵だった。その五翔会と繋がりのある芹沢遊馬の命を蓮太郎が狙う可能性だってある。今こうしている間にも芹沢遊馬は里見蓮太郎に殺されそうになっているのではないか。

 

「今すぐ警備課に連絡します」

 

 

 

 

 

 

東京エリア沿岸部の都市区画。大企業の本社が集まり、バベルの塔のようにビルが立ち並んでいる。ミラービルの間を乱反射する日光とそれに照らされる地面、数万人の人間が同時に働き、数千億の利益を生み出している巨大経済都市区画だ。

そんなコンクリートジャングルの中で、今日、新たな塔が完成した。

 

“博多黒膂石重工東京エリア支社”

 

卸し立ての匂いがする社長室から、芹沢遊馬は東京エリアを一望していた。立ち並ぶ超高層ビル群と忙しなく歩き回るビジネスマン。ガストレア大戦前の都市景観は既に取り戻されており、モノリスが見えなければ今がガストレア大戦直前の2020年代だと言われても信じてしまうそうだ。しかし、そこを一望する遊馬にとってはただ大きな都市以外のものが見えていた。ここにいるのは東京エリアの経済を握る者たち、ガストレア大戦の瓦礫の山から這い上がり、エリアの頂点にのし上がった猛者たちの魔窟のように見えた。

遊馬のスマートフォンに着信が入る。画面には“お嬢様”と表示されていた。「珍しい」と思いながら、遊馬は電話に出た。

 

「あなたから連絡とは珍しいですね。“グリューネワルト嬢”」

『――――――』

「まぁ、一応は計画通りと言ったところですかね」

『――――?』

「――そうですね。里見蓮太郎と蛭子小比奈の我儘に振り回されっぱなしですよ。勝手に防衛技研に忍び込んで賢者の盾を盗み出したと聞いた時には肝を冷やしました。まぁ、それに関しては貴方がGVサーヴァンターを送ってくれたおかげで、怪我の功名となりましたが……」

「――――――」

「ええ。まったくです。ガストレアテロで東京エリアの不安感と危機意識を高めて次世代バラニウム兵器の配備を急がせる。里見蓮太郎に釣られて動き出した五翔会残党の炙り出し。我々の目的はたったこれだけだと言うのにここまで苦労するとは思いませんでしたよ」

『――――?』

「残党の炙り出しはもうすぐ始まると思います。貴方の指示通り、死体は目立つ場所に置いてきました。今ニュースでもやっていますが、警察も捜査に乗り出しています」

『――――?』

「公安部に潜り込ませたメッセンジャーからは“動きあり”と――。残党もあの死体が宣戦布告であることを理解しているのでしょう。だから慌てている。『里見蓮太郎に復讐される』と。ああ、それと貴方の予想通り、警察が私の警備を申し出て来ました。『あの偽物が本物と間違われて殺害された』という我々が用意した答えに辿り着いたのでしょう。これで警察と五翔会残党の目は私に集中します。連中にとっちゃ私も里見蓮太郎に並ぶくらい憎い裏切り者ですからね。殺気立ってくるでしょう」

『―――――――――――――』

「いえ。この程度のこと、対馬戦争に比べればどうってことありませんよ」

『――――――』

「ええ。全ては“聖戦の日”のために」

 

その言葉を締めに2人の通話は終わった。遊馬は再び、窓から東京エリアを一望する。ビルとビルの間には東京エリアの政治中枢“聖居”が見えていた。

 

「強引なやり方だが悪く思わないでくれ。為政者の嬢ちゃん。この東京エリアには強くなってもらわないと困る。“絶望の象徴(エンジュ)”は、もうそこまで来ているんだぞ」

 

 

 

 

 

 

司馬重工第三技術開発局では、テロで使われたガストレアの脳内から摘出されたバラニウム製の機械の解析が進められていた。バラニウム機器はガラスに囲まれて隔離され、白衣の研究員たちがロボットアームによる遠隔操作でバラニウム機器に付着したガストレアの肉片を取り除き、洗浄していく。

その様子を司馬未織と室戸菫が見守っていた。

 

「あれの役割はガストレアの脳の電気信号に干渉することでガストレアの動きを制御する、謂わば洗脳装置みたいなものだ。蓮太郎の義肢や義足に使われた技術の応用、いや、それを更に発展させたものだろう」

「これ、ウチでも作れへんやろか?」

「ここにサンプルがあるからな。同じものを作るなら可能だろう。しかし、脳というのは生物最大のブラックボックスだ。作れたとしても脳のどの部分に埋め込めば適切に作動するのか分からない。こいつを作った奴はブラックボックスの中身を完全に把握しているということだ」

 

未織はため息を吐き、その口を優雅に扇子で隠した。

 

「はぁ~。ガストレアを操る装置。せっかく目の前にあるのに使えへんとは、勿体ないわぁ」

 

2人が会話している内にバラニウム機器から肉片が剥がされ、洗浄が終わった。露わになった洗脳装置の姿を見て、菫は動揺した。彼女の目が洗脳装置を凝視し続けていた。隣にいた未織と洗浄した職員たちは彼女がどうしてそんな反応をするのか理解できなかった。

菫はただ黙ってある研究員に近づくと、彼を押し退けて代わりにロボットアームの操作をし始めた。

アームは壁の端子からコードを引っ張り、それを洗脳装置の端子に繋いでいく。30本ほど繋げると、菫は研究員に指示を出した。

 

「こいつに電気を流してくれ。100mA、150mVだ」

「は、はいっ」

 

研究員がパソコンで操作し、菫が繋げたコードを通して洗脳装置に電気を流した。

 

ガンッ!!

 

突然、大きな物音が鳴った。全員が驚いて一瞬目を瞑る。そして、次に目を開けた瞬間には、そこに鎮座する洗脳装置と、隔壁ガラスに叩きつけられたロボットアームの姿があった。分厚い隔壁ガラスはロボットアームの衝突によって数メートルにわたってヒビが入っており、衝突の強さを物語っている。

 

「こ、これは……どういうこと?」

「賢者の盾だ。防衛技研で保管していたものと比べれば遥かに小さいが、構造と機能はほとんど同じだ」

 

菫は洗脳装置の姿を見た途端、それが賢者の盾と酷似していることに気付いた。生体電気信号の代わりに端子にコードをつけて、そこに電気信号と同じ電力・電圧で電流を流すことで、洗脳装置を賢者の盾として復活させ、その機能を試した。その結果、斥力フィールドが発生し、ロボットアームは弾き飛ばされた。

 

「おそらく脳内で極小の斥力フィールドを発生させることで電気信号とホルモン分泌に物理的に干渉し、ガストレアの動きを制御している。生物のブラックボックスを扱うにしてはとんだ力技だ」

「つまり、それが賢者の盾と同じってことは……」

「蓮太郎が盗み出した賢者の盾も少し調整すれば、ガストレア洗脳装置として機能するってことだ。しかもあれは人間の胴体サイズ。あいつが次にガストレアテロを引き起こすとしたら、小さく見積もってもステージIV、最悪ステージVガストレアを使ってくることになる」

「でもステージIVやステージVなんて未踏査領域でもそうそう見かけへん。そんなガストレア、どこから調達するん?」

「調達はしないさ。ガストレアの方からやって来るからな」

 

菫が研究員からノートパソコンを拝借し、それをプロジェクターに繋いだ。部屋の電気を落とし、プロジェクターがパソコン画面を壁に映し出す。全員の目には世界地図とそれの上に書かれた線が映っていた。そして、地図上のシベリア地区で点滅している三角形は、ゆっくりと日本へと向かっていた。

 

「これは世界各地の軍隊のレーダーに映ったとあるガストレアの行動を記録し、その飛行ルートを予測したものだ。この予測だと、明日の夜に奴は東京エリア付近を飛行することになっている」

 

画面に映されたガストレアの名前を見て、未織と研究員たちは驚愕した。こんなものが東京エリアに近づいているのもそうだが、それが明確な敵となった日には、東京エリアの滅亡は免れない。

 

 

ステージIVガストレア“スピカ”

 

それはステージVガストレア“サジタリウス”に並び、人類から空を奪ったガストレアとして名高い世界最大の飛行ガストレアの名だった。




こういうのは本編で語るべきところなのですが、色んな陣営・組織がごちゃごちゃとなってしまっていますので、ここで軽く各陣営の目的と活動をまとめておきます。

聖居:蓮太郎の拘束と賢者の盾奪還

民警:聖天子からの依頼により、蓮太郎の拘束と賢者の盾奪還

勾田署:首なし死体事件の犯人を追う

警視庁公安部:蓮太郎の捜査権を独占。監視役を入れて勾田署の遠藤を抑え込む。

博多黒膂石重工:“聖戦の日”のために東京エリアの次世代バラニウム兵器の配備を急がせる&東京エリア内部の五翔会残党を駆逐

蓮太郎:東京エリア壊滅(?)

五翔会残党:蓮太郎に復讐するため偽の芹沢遊馬を使って接触するも失敗。首なし死体事件で蓮太郎の復讐劇の対象が自分たちだと思い込む。



次回は番外編「小星常弘という男」をお送りします。
蓮太郎に救われて、憧れて、彼の中に“光”を見たもう一人の男の物語です。

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