ブラック・ブレット 贖罪の仮面   作:ジェイソン13

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里見蓮太郎になれなかった少年

 2ヶ月後

 

 義搭壮助が目を覚ました時、全てが片付いていた。

 里見蓮太郎のガストレアテロ――里見事件――は過去のことになっていた。テレビでワイドショーを見れば、芸能人の不倫、大臣の政治資金不正利用、赤目ギャングの強盗、挙句の果てには川に流れ着いたアザラシの生き残りが保護され住民票を与えられたなど、そんな話題ばかりが報じられ、ニュースサイトで里見事件に関するページを読もうと思ったら「過去の記事」から検索しなければならないくらい、あの事件は旬を過ぎた話題になっていた。

 2ヶ月もずっと意識を失っていた壮助にとっては昨日のように感じることでも世間にとっては「そういえば、そんな事件あったな」ぐらいで済まされてしまう。あの壮絶な戦いがもう人々の記憶から薄れていることに寂しさを感じるが、それほど東京エリアの回復は早かったということだろう。事件前と変わらず東京エリア上空を飛行機が飛んでいる。

 目を覚まして最初に見たのは詩乃の顔だった。枕でもなく、病院の壁でも天井でもなく、彼女の顔だった。甲斐甲斐しくお見舞いに来てくれた時に目を覚ましたというあらすじなら良かったが状況はそんなスウィーティなものではなかった。

 彼女は壮助の上に馬乗りになり、両手で襟を掴んで壮助の病衣を脱がそうとしていた。頬は紅潮し、吐息も顔にかかるくらい荒い。興奮しているのか汗が滴り、とろんとして焦点が合っていない目で獲物を見つめていた。どこからどう見ても今まさに事に及ぼうとする性犯罪者の顔だった。

 

「な……に……やっ……」

 

壮助は「何をやってるんだ?」と言うつもりだったが上手く言葉が出て来ない。口を開けても喉が動かず、声が出なかった。

 

「ちょっと目を離した隙に死にそうになる壮助が悪いんだよ」

 

 壮助の胸元に水が滴る。大粒で温かい紅涙が彼女の目から溢れ出て、壮助の病衣を濡らしていく。落ち着いていて、冷静で、取り乱す姿をほとんど見ない彼女が目に涙を浮かべ、今にも怒り、泣き出しそうな顔をしていることに胸を衝かれる。

 

「壮助が死んだらそこで終わりだけど、私にはその先がある。何年も何十年も、壮助のいない世界(地獄)が私を待ってる。代わりなんて居ないし、居たとしても要らない」

 

 詩乃は両手で掴んだ病衣の襟を引っ張り、壮助を無理やり自分の近くに引き寄せる。目を覚ましたばかりの怪我人を扱っているとは思えないくらい乱暴だ。

 

「もし次、同じ目に遭うんだったら、私は敵になってでも壮助を止める。その手足をへし折って世界で一番安全なところに閉じ込めて、守り続ける」

 

 詩乃の言葉に壮助は愕然とした。自分のイニシエーターが、同じ屋根の下に暮らす少女が、自分に好意を抱いていることは知っていた。だが、その重さは想像を遥かに超えていた。

 森高詩乃の中で義搭壮助の存在はあまりにも大きくなり過ぎた。

 

 ――違うんだ。詩乃。俺がお前に求めているのは、そういうことじゃない。

 

 詩乃の言葉に、気迫に飲まれそうになるところ、何とか気を取り直し、いつもの態度、いつもの悪ガキに戻る。

 

「で、お前は何をしようとしていたんだ? 」

 

 

 

 

 

 

 

「壮助が死んだ後、一人寂しく生きるのも嫌だから子供でも作ろうかと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 壮助はナースコールボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

「看護師さん! ! 助けてください! ! イニシエーターにレイプされそうなんです! ! 」

 

 

 

 

 

 

 目を覚ました日の翌日から目まぐるしい日々が続いた。

 まず治療した担当医が室戸菫であることに混乱した。それの整理がつかないまま菫にベッドから引き摺り出され、よく分からない凄い機械で全身をくまなくスキャンされ、何を目的としているのか分からない検査を繰り返される日々が続いた。

 更に翌日になると今度は自分が目を覚ましたと連絡を受けた松崎民間警備会社の面々がお見舞いにやって来た。

 松崎は「良かった……。本当に良かった……」と涙を流しながら喜び、壮助の手を握って彼がちゃんと生きていることを確認する。6年前に教え子たちを一斉に失ったトラウマが重なったのか、その感涙ぶりは尋常ではなかった。

 「松崎さんには悪いことをした」――と壮助は心の中で謝罪した。

 一緒に来た空子は驚いたり、涙を流したりすることは無かった。冷たく感じるが、いつもと同じ様子であることに壮助は安心感を覚える。

 

「大丈夫そうだけど、あの不気味な医者が言うには当分、入院する必要があるって言ってたわね。丁度いい機会だから今まで学校行ってなかった分、勉強しなさい」

 

 そう言って、空子はお見舞いの品と称して筆記用具と小学生向けの計算ドリル・漢字ドリルを置いて行った。16歳なのに小学生用を渡されることは癪に思ったが、入院生活の暇つぶしでやってみると書けると思った漢字が意外と書けなかったり、分数の計算を完全に忘れていたりすることに気付かされた。

 

 里見事件の詳しい顛末は、別の日にお見舞いに来た勝典とヌイから聞かされた。

 

 壮助が倒れた後、復活した詩乃と遅れて到着した勝典が蓮太郎を戦闘不能にまで追い込み、最終的に自衛隊が拘束したというのがこの事件の結末だ。

 

 主犯の里見蓮太郎は一時同じ救急医療センターで治療を受けていたが、容態が安定すると警察によって拘置所に移送された。拘置所の場所については機密事項となっており、今、彼がどこに収容されているのかは誰にも分からない。無論、テロの目的も背後の組織についても明かされておらず、聖居から正式な発表もない。全てが謎のままだが、一応、勝利と言える結果になったことに壮助は安堵した。

 

 蓮太郎を止めるために戦って負傷した片桐玉樹、片桐弓月も入院していた。彼らは動けるようになると早々に退院したが、後遺症が残ったのか、それとも里見事件に何か想うところがあったのか、あれから一度も民警として活動していない。弓月はこれまで通り高校に通っていることに対し、玉樹が民警の現場に姿を現さなくなったことから、一部の界隈では「片桐玉樹死亡説」が流れている。

 

 蛭子小比奈は自衛隊に保護され、その後は同じ救急医療センターで1ヶ月近く入院した。人間ならともかく、呪われた子供で1ヶ月入院というのはかなりの重症だったことを示す。彼女は容態が安定した後、ベッドの上にいたまま警察の取り調べを受けていた。「テロの“共犯者”ではなく、あくまで“関係者”として扱っているようだった」と勝典は語っていた。その後、動けるようになると彼女は警察に拘束され、拘置所へと移送された。逃げ出したり、抵抗したりする素振りは無かった。テロリスト・猟奇殺人鬼として厳重な処罰が下されるか、それとも生まれ育った特殊な環境を考慮されるか、東京エリアの司法がどちらに判決を下すかは分からない。

 

 壮助は、小比奈と一緒に倒れていた金髪の女性について尋ねてみたら、勝典はふふんと何か知っているそうな笑みを浮かべた。

 

「死者0名って正式に発表があったんだ。そいつも大丈夫だし、お前もいずれ世話になる」

 

「は? 」

 

 壮助は困惑したが、その言葉の理由を聞くことは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 それから、壮助の日常は菫の検査と2ヶ月寝たきり生活で衰えた身体のリハビリの繰り返しだった。

 あの室戸菫が自分の担当医になったことには驚かされた。彼女から「君の内臓はほとんど燃えカスになっていたから、全て賢者の盾に入れ替えた」と聴かされた時は衝撃だったが、慣れてしまうと特に意識することはなくなった。食事も排泄も新陳代謝も以前と全く変わらない。時折、自分の中身がバラニウムの機械に入れ替わっていることを忘れてしまうくらい賢者の盾は壮助の身体に馴染んでいた。

 それよりも防衛技研で厳重に保管されていた賢者の盾を自分の代替臓器として使うことを許可し、レンタル料も取らない聖居の太っ腹ぶりに驚かされたが、その代わりに何を要求されるか分からないことが恐ろしかった。

 賢者の盾は壮助を生かす臓器であると同時に壮助を“東京エリアの”機械化兵士として縛り付ける首輪になっていたのだ。聖居がその気になれば、壮助を生きている限り機械化兵士として使い潰すことができる。そこから逃れるには国家転覆させるか自殺するしか無い。

 悪く言えば自分の臓器を聖居に握られ、彼らの飼い犬になっているが、良く言えば、もし聖居が賢者の盾の使用権を材料に何かしらの要求をしてくるなら、そこを通じてコネクションを手にすることが出来る。やり様によっては聖居から仕事を回して貰えるチャンスが与えられる。東京エリア中の民警が喉から手を出しても欲しい繋がりを臓器一つで手に入るのだ。悪い話じゃない。自分の野心的な皮算用を聖居側がが把握していたとしてもメリットは大きかった。

 

 ――まぁ、向こうが本当に善意でこれを提供していて、何も要求してこないなら余計に頭使わなくて助かるんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 更に1ヶ月後――里見事件終結から3ヶ月。

 

「いくら設備が整っているとはいえ、こんな日当たりの良い健康的な医療センターに居続けるのは流石の私も堪える。浄化されて消えてしまいそうだ。君も入院生活には飽きただろう。今日で退院だ」

 

 それらしい(らしくもない? )理由を並べて、菫は突然、壮助に退院を言い渡した。

 

 壮助の身体はまだ本調子という訳では無かったが、普通に生活する分には問題ないくらいには回復していたし、彼女の言う通り入院生活には飽きていた。生活費や保険のことも考えれば早々に退院して費用を抑えたいと思っていた頃だ。

 

「タクシーを呼んで第三駐車場に待機させている。私からの餞別だ。それに乗って帰ると良い」

 

 壮助は菫のやけに珍しい妙な気遣いを不審に思ったが、ここは素直に彼女の好意を受け取ることにした。

 

「“それ”をただの代替臓器で終わらせたくないなら、私の研究室に来なさい。素敵なコーヒーとお茶菓子、ワクワクする昔話も用意してあげよう」

 

「ゾンビドーナツの洗礼が無いなら来てやるよ。先生」

 

 そして今、壮助は荷物をまとめて、3ヶ月間世話になった医療センターを出て、菫がタクシーを呼んである第三駐車場へと向かっていた。

 ようやく家に帰れるという安心感と同時に詩乃1人に任せてしまった家が滅茶苦茶なことになっていないかという不安、おそらく底をついているだろう生活費、今回の手術費用や入院費に保険が適用されるかどうかの心配、様々な不安が頭を過る。

 そんな壮助の不安を余所に詩乃は壮助の退院を喜び、鼻歌を交えながら隣を歩く。目を覚ましてからしばらく学校をサボって病室にいたが、壮助の説得により学生生活へと戻った。

 しかし、菫から退院を言い渡された直後、彼女に「今日、退院する」と電話したら、午後の授業をサボってやって来たのだ。平日の昼間に制服姿はかなり目立つ。

 第三駐車場に着くと2人は目を丸くした。普通乗用車が3~4台ほど停まれるスペースを1台のリムジンタクシーが長い胴体を使って占有していたのだ。

 リムジンタクシーの窓は客のプライバシーを守るためか内部が見えないようになっていた。しかし、窓の1つが下がり、リムジンの“先客”が顔を見せる。

 白磁のような美しい肌、大雪原のように畏怖すら覚える美しい髪、白いスーツも相まって、

 清廉潔白という言葉を体現したような女性がそこいいた。

 壮助と詩乃は愕然とした。まさか、こんな建物の裏側、日陰の駐車場に東京エリアの国家元首“聖天子”がいると一体誰が予想できただろうか。

 

「義搭壮助さんですね。貴方とは一度、1対1で話がしたいと思っておりました」

 

 乗車を促すようにリムジンの扉が開く。しかし、壮助の足は進まない。狼狽えながらもしっかりと周囲の状況を見渡し、聖天子に視線を戻す。

 

「2つ、条件を出しても? 」

 

「…………呑めるものであれば」

 

 壮助の絞り出した言葉は聖天子にとって予想外のものだった。国家元首――独裁政権の女王に取引を持ち出す壮助の胆力に驚かされる。壮助の護衛にはイニシエーターがいて、聖天子の護衛には運転手の男1人だけという状況だから強気に出ているのか、それとも機械化兵士となった自分の政治的価値をここで試しているのか。彼がどんな条件を出すのか、胸の奥で戦々恐々としている。

 

「1つ目は詩乃も一緒に連れて行くこと」

 

「構いません」

 

 1つ目は呑める要求だった。窓越しに詩乃の姿が見えて居た時点で聖天子は壮助がそう言って来るだろうと思っていた。

 

「しかし、1対1で話がしたいというのは私なりの配慮です。これから私がする話の内容は貴方にとって他の誰かに聞かれたくない内容かもしれませんので。それでも構いませんか? 」

 

「お気遣いありがとうございます。それでも、詩乃は連れて行きます」

 

 ここで彼が敬語を使っていることにも驚かされる。聖天子が相手なのだから当たり前なのだが、彼は蓮太郎の様に言葉で上下関係を作らないタイプの人間だと思っていた。

 

「分かりました。――それで、もう一つの条件とは? 」

 

「里見蓮太郎への面会」

 

 聖天子は「こっちが本命の要求」だと悟った。1つ目と2つ目では要求の重さが違い過ぎる。自分の価値を試すかのように不敵な笑みを浮かべていた彼が、懇願するように目を合わせる。つい数ヶ月前までの彼は過酷な運命を知らない、少しやんちゃが過ぎただけの“少年”であることを改めて認識させられる。

 

 ――案外、可愛げがあるのですね。

 

「そんなに物欲しそうな眼をしなくても大丈夫です。こうしてお迎えしたのは、元々、貴方を里見蓮太郎の下に連れて行くことが目的でしたから」

 

「してないっすよ。聖天子様」

 

 処罰覚悟で提示した要求をノーダメージで呑まれてしまった壮助はばつが悪そうに聖天子から視線を逸らした。

 壮助たちを迎え入れるかのようにリムジンのドアが自動で開く。人生で初めて乗る高級車、その上同席しているのは美人の国家元首という状況に心臓をバクバクさせながら壮助はリムジンに足を踏み入れた。落ち着いて、何事にも動じない詩乃とは正反対だ。

 2人を乗せるとリムジンは走り出した。

 クリーム色を基調とした明るく柔らかい雰囲気を醸し出す内装、左右に座席が設けられており、対面する形で2人と聖天子は座る。間にテーブルを挟むスペースは無いため、かなり距離が近い。

 

「まずは昇格おめでとうございます。先日、IISOはお二方のご活躍を認め、IP序列7000位への昇格を決定いたしました。ライセンス証はIISO東京エリア支部を通して正式に発行されますので、しばらくお待ちください」

 

 7000位、民警の上位7%に位置する高ランク帯だが、元が9644位でそこから7000位というのは、国を揺るがすテロを阻止し、IP序列元50位を仕留めた功績としては世知辛いもだ。しかし蓮太郎を仕留めたのは壮助たちが戦う前に蓮太郎の戦力を削った片桐兄妹と自衛隊の功績が大きいとIISOは判断したのだろう。確かに玉樹が蓮太郎の左目を潰していなかったら壮助たちは相手にすらならなかった。文句は言えない。

 

「……ありがとうございます」

 

 壮助は聖天子から視線を逸らし、照れた顔を隠すように頭をかいた。松崎民間警備会社の面々以外から祝辞を送られるなんて何年振りだろうか、受け取り方を忘れて久しかった。

 

「少し時間がありませんので、本題に入りましょうか」

 

 聖天子の言葉で壮助と詩乃の姿勢が正される。威圧されたと言うべきか、オーラに呑まれたと言うべきか、彼女を前にすると諸々のものを正さなければならないと考えてしまう。

 

「ご存知かもしれませんが、現在、里見蓮太郎の身柄は警察が拘束し、取り調べを行っています。しかし3ヶ月経った今になっても背後の協力者や組織について情報を得ることが出来ていません。お恥ずかしい話ですが、私達は手をこまねいている状態です」

 

「それ、俺は無関係ですよね? 俺もあいつの背後関係は知らないですし」

 

「関係はあります。先日、里見蓮太郎から司法取引の提案がありました。接見禁止の身ではありますが、特別に貴方と面会の場を設ければ、その代わりに自分の協力者に関する情報を開示すると――」

 

 背後の協力者と組織に関する情報は今の蓮太郎に残された最大の武器だ。司法取引に使うことは聖居も警察も壮助ですら予想出来ていたが、まさか1人の民警と面会する為に使うとは思ってもいなかった。

 “あの”里見蓮太郎が自分に会いたがっている。壮助は自分にそれだけの価値があると少し嬉しく感じながらも、最大の武器を投げ売ってまで自分に会おうとするのか、その理由の底知れなさに身震いする。

 

「正直、信じられませんね。あいつから見れば、俺はギャーギャー叫んで鉄火場に突っ込んだ挙句、瞬殺された頭の残念な民警ですよ。序列だって、今回の成果だって、隣の相棒が強いから成し遂げられたことです」

 

「ですが、里見蓮太郎は情報を提供するに値する価値を貴方に見出しました。どんな思惑があるのか分かりませんが、今はそれが事実です」

 

 壮助は固唾を呑んだ。蓮太郎は自分に会って何を話すつもりなのだろうか。あの時、ブレスレットを壊した時の怒りをまたぶつけて来るのだろうか。灼熱の剛腕に腹を貫かれ、血液と内臓が蒸発する感覚がフラッシュバックする。壮助は冷や汗をかき、無意識に抉られた腹を抑える。

 

「ところで、お身体の調子はどうですか? 気分が優れないようですが」

 

 緊張する壮助の様子を察し、聖天子は雰囲気を崩す。国家元首、法治国家の長としての固い表情を取り払い、一人の淑女として柔らかく壮助の緊張を解す。

 

「大丈夫ですよ。見ての通り、ピンピンしてます。いや~賢者の盾ってのは凄いっすね。バリア発生装置かと思えば、ガストレア洗脳装置になったり、今は俺の臓器になったり……。室戸先生に言われなかったら、多分死んでも自分の臓器がバラニウムの機械になっているなんて気付きませんでしたよ」

 

 彼女の意志とは裏腹に壮助は心に仮面を被り、演技がかったジェスチャーで「自分は大丈夫です」アピールをする。例え、相手が国家元首でも自分が弱ったところは見せられなかった。

 

「そうですか。馴染んで良かったです」

 

 

 

 

 聖天子は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「いえ、馴染んで当然でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――だって、それは、“貴方の父親の臓器”なんですから」

 

 

 

 

 聖天子の言葉に車内の空気が凍り付いた。

 

 

 

 壮助は聖天子の言っていることが理解できなかった。理解していても信じることは出来なかっただろう。瞳孔が開き、驚愕を隠せないでいる。

 もし、彼女の言っていることが本当なのだとしたら、全てが嘘になる。自分の出生も、両親だと思っていた人達も、自分の名前ですらも――――。そんな訳がない。自分がそんな特別な人間な筈がない。もしかしたら解釈違いなのかもしれない。自分は聖天子の言葉を誤解しているだけで、“自分が思っているようなこと”ではないかもしれない。

 

「な、なぁ? 聖天子様。俺を誰かと勘違いしていないか? 俺は義搭壮助。親父は普通のサラリーマンだったし、ついでに言うとお袋は専業主婦だった」

 

「義搭幸篤と義搭真矢は貴方の経過観察のために派遣した聖居情報調査室の調査員です。貴方との血縁関係はありません」

 

「え? いや、ちょ、ちょっと待ってくれ――ください。全然頭が追い付かねえ」

 

「認めないのであれば、回りくどい言い方は止めましょう。

 

 

 

 

 

 

 

――貴方は、蛭子影胤の息子、人為的に呪われた子供を作ろうとした実験の“失敗作”です」

 

 

 

 

 

 

 愕然とし、突き付けられた現実に壮助は狼狽える。しかし、聖天子は意に介さない。壮助の前に立ちはだかる非情な現実の象徴のように彼女は話を続けていく。

 

「ガストレア大戦当初、蛭子影胤は人為的に呪われた子供たちを生み出すため、数多の女性を誘拐して妊娠させ、受精卵にガストレアウィルスを投与するという非人道的な実験を繰り返していました。蛭子影胤を追跡していた防衛省は彼の実験を初期段階から察知し、彼の実験場とされる施設の一つを制圧しました。残念ながらそこは既に蛻の殻となっており、蛭子影胤と“娘たち”、実験に関する機材は残されていませんでした。しかし、そこで突入した隊員達は“貴方”を見つけたのです。

 

 廃棄物処理場で“母親たち”の死体と共に生きていた貴方を――」

 

 想像するだけで身震いする。情景を思い浮かべるだけで吐き気がする。あまりにも“まともじゃない”出生を聞かされ、壮助は口を噤む。どんな感情を浮かべれば良いのか分からない。ただ、そんな壮助の心情を察し、隣で握ってくれる詩乃の手が彼を平常に抑える。

 

「隊員達は貴方を保護し、然るべき機関で貴方の治療や研究を行いました。結果、貴方はガストレアウィルスの投与が失敗したことにより、呪われた子供にならなかった“普通の人間”で、それ故に失敗作として廃棄処分されていたのだと結論付けました。

 その後、本来でしたら戦災孤児として施設に預けようと思っていたのですが、当時、聖居情報調査室に勤務していた義搭幸篤・真矢夫妻が貴方の引き取りを申し出たため、貴方を“義搭壮助”として育て、社会に出すことにしました。経過観察のし易さで言えば、むしろそちらの方が好都合だったと言うのもあります」

 

「御理解いただけましたか? 」と最後に言葉を添えて、聖天子の話は終わった。沈黙が車内を支配する。静かになるよう配慮された車の駆動音だけが響く。聖天子も詩乃も口を噤んだままだ。その渦中にいる壮助に何と声を掛ければ良いのか分からなかった。

 

「フッ……クックックッ………アッハハハハハッハハハハハハ! ! ! ! ! ! ! 俺が蛭子影胤の息子! ? そんな俺が民警になってテロリストになった里見蓮太郎を倒す! ? 何だよ! ! それ! ! 最高だな! ! どこの誰だよ! ! そんな皮肉の効いたシナリオ書いた奴は! ! クソラノベオブザイヤー殿堂入りだぜ! ! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ! ! 」

 

 壮助はひとしきり笑い終えると腹を抱えながら俯き、「ヒヒヒ」とどこかの誰かに似た笑い声を零す。そして彼の口から声が途切れるとバッと顔を上げて聖天子を睨んだ。

 

「アンタ最低だ。今、このタイミングで話すことかよ。何? 宿敵の息子として会いに行けって言うんですか? 」

 

「彼は貴方が蛭子影胤の息子であることを知りません。その情報を開示するかどうかは貴方に任せます。ただ、知っていて欲しかったのです。貴方がどれほど絶望的な状況で生を受け、どれだけの人間に幸福を願われた人間なのか。

 

 

――そろそろ時間のようですね」

 

 彼女の言葉に示し合わせたかのようにリムジンが止まる。窓の外を見ると雑木林が見える。大戦前の山間道路を走ってきたようだ。モノリスも間近に見える。運転席側を見るとトンネルがあり、そこには陸上自衛隊の車両と数名の自衛官、その中に混じって警察の機動隊員もいる管轄や指揮系統のよくわからない光景が広がっていた。それだけ里見事件、主犯の里見蓮太郎に対する扱いは特例だらけなのだろう。

 自衛隊員たちに敬礼されながらリムジンはトンネルの奥へと入って行く。遺跡のような外観とは裏腹に舗装された内部、核シェルターのように重厚な金属の扉、内部で様々なやり取りを行う迷彩服の男たちとスーツ姿の男たちを通り抜けた。

 リムジンの壮年のスーツ姿の男が近づき、壮助だけリムジンから降りるように言われる。自己紹介されなかったが、背格好や身の振り方から考えると警察側の人間だろう。

 

「最後に一つだけ言わせて下さい。あの2人の貴方に対する愛情は本物でした」

 

「……言われなくても分かってますよ」

 

 警察(?)の男に案内されながらまた幾つかのゲートを通った。人間一人を閉じ込めるには大袈裟な設備に思えたが、その人間にIP序列元50位というステータスが付けば話は変わる。むしろ、これだけで大丈夫なのだろうかと思えてくる。

 何度か金属探知機に引っ掛かった。身体の中がバラニウムの塊なので当然なのだが、壮助の身体の事情を隊員は知っていたのか、上着を脱がし、ポケットを調べる程度に留めた。

 そうこうしている内に壮助は蓮太郎が待っている部屋の前に辿り着いた。

 

「時間は30分。見張りは置かない。君たちの会話も一切記録しない。ただ、映像で監視は行う。何か質問は? 」

 

「いや、ないです」

 

 スーツ姿の男がカギを出し、ガチャガチャと何重にもかけられたロックを外していく。IP序列元50位を閉じ込めるには随分とアナログだなと思われるが、東京エリアの電波放送をジャックし、天の梯子をハッキングした協力者の存在を考えるとデジタル化しない方が正解だった。

 

 鋼鉄張りの壁と天井、ステンレス製のテーブルと椅子、無彩色で彩られた味気ない部屋だ。蛍光灯が照らすが温かみは感じられない。清潔感だけはあった。

 

 視線の先、テーブルを挟んだ向こう側の椅子に里見蓮太郎は座っていた。仮面を外し、義眼を破壊された左目を眼帯で被い、彼は残った右目は虚空を眺めている。圧倒的な破壊力を見せた右手の義肢もセラミック製のものに代わっている。日常生活なら問題ない強度だが戦いでは到底役に立たなさそうな代物だ。ズボンと靴で見えないが、おそらく足も同じようなものに代わっているだろう。両手も手錠で縛られていた。

 

「よう。会いに来てやったぜ。里見蓮太郎」

 

 壮助は何の断りも無く蓮太郎の対面に設置された椅子に座る。

 壮助が部屋に入ってから蓮太郎は微動だにしない。ちゃんと彼の存在を認識しているかどうかすら怪しい。実は蝋人形と言われても、もう死体になっていると言われても信じてしまうくらい今の里見蓮太郎は“生きていなかった”。

 

「何か話があるんだろ? 30分しか無いんだ。さっさと話すこと話そうぜ」

 

 壮助が語り掛けても蓮太郎は何も応えない。背後関係を吐くどころか、そもそもこの司法取引は本当に彼が提案したことなのかどうかすら怪しく思える。

 

「そっちから話さないなら、こっちから話すぞ。

 

 

 

 ――――その、悪かったな。アンタの大切な物、ぶっ壊して」

 

 壮助は目を泳がし、最終的に視線を左に逸らした。恥ずかしがりそうに女々しく腹の前で指を絡ませる。

 

「室戸先生から聞いた。俺がぶっ壊したブレスレット、藍原の形見なんだろ? あの日本刀も幼馴染の形見だって聞いた。…………ごめん」

 

 蓮太郎の瞳孔が動く。顔が上がり、焦点が壮助の顔に合わせられる。死人のようだったポーカーフェイスは崩れ、掻き消えてしまいそうな儚い笑顔を見せる。

 

「いや、良いんだ……。これ、6年前にも一度壊れたんだ。それをテープ貼り付けてくっつけていた。……忘れていた。………………ずっと忘れていたかった」

 

 ステンレステーブルの上に雫が滴り落ちる。乾いていた蓮太郎の目から涙が、感情が零れて行く。

 

「俺は……この世界が憎い。

 

 

 俺から大切なものを奪い続けた世界が、俺から居場所を奪った世界が、憎くて憎くて堪らない。みんなガストレアに食われて滅んでしまえと何度も思った。ガストレアがやらないなら、俺がこの手で一人でも多く地獄に送ってやろうと思った。けど、延珠と木更さんが最後まで守ろうとしたこの世界を憎み切ることが出来なかった。

 

 耐えられなかった。

 壊れてしまいたかった。

 狂ってしまいたかった。

 何もかも全部終わりにしたかった。

 でも無駄にも出来なかった。

 延珠と木更さんと、“あの時の自分を”裏切ることが出来なかった。

 俺は自分で自分を決めることが出来なかった。

 

 だから、東京エリアに委ねたんだ。俺は『何者』になるべきなのか」

 

「……アンタの憎悪は本物だ。その正義の心も本物だ。両方とも本物だったからこそ、アンタは持ち併せることも、どちらかを手放すことも出来なかった。

だから、里見事件を引き起こした。聖居を破壊すればアンタは蛭子影胤(正義への復讐者)になり、どこかの民警が正義の名の下にアンタを倒せばそいつに里見蓮太郎(正義の味方)の役を押し付けてアンタは終わる。テロが成功しても失敗してもアンタの“勝ち”だった。あのテロは最初から最後まで茶番劇だった」

 

 壮助は小馬鹿にするように「へっ」と蓮太郎に向けて笑い飛ばす。

 

「けどお前は負けた。テロは成功せず、里見蓮太郎を止めた英雄の名前を東京エリアのみんなは知らない。シャバに出たら聞いてみれば良いさ。『里見蓮太郎を止めたのは誰だ?』って。そうしたらみんなこう答える。『自衛隊と空港に残った民警達が止めたんだろ』ってな」

 

 里見蓮太郎は自衛隊の火力と民警達による数の暴力で止められた。――というのが聖居の公式発表だ。壮助が死に掛けたことや片桐兄妹の死闘、詩乃が一人で追い詰めたことも世間に知れ渡ることは無く、里見事件の終結は自衛隊と名も無き民警達という不特定多数の人物による功績となった。個人の成果であれば英雄が生まれるが、組織の成果となれば個人が表彰されることはない。里見事件の中で“英雄”は生まれなかった。

 

 蓮太郎は静かに聞くと、「ふっ」と壮助を小馬鹿にしたように笑う。

 

「そうか……。俺の負けか。――本当に聖天子(あいつ)もやるようになったな」

 

 蓮太郎は椅子の背もたれに身を預け、身体を沿って天井を見上げる。勝てる筈の戦いで負けたという事実を前に気持ちを整理させていた。負けたというのに彼は喜んでいる。顔は見えないが微笑しているような気がする。待ち侘びた自分の終わりが目の前にあるかのようだった。

 壮助は時間が惜しいと思いながらも蓮太郎を静観する。

 

「俺はただ終わりたかった。何もかも吐き出して滅茶苦茶にして、東京エリアに俺を徹底的に滅ぼして欲しかった。最初は、世界一迷惑な自殺だった」

 

「だったら、どうして? 」

 

「防衛省の一件の時、お前が居たからだ」

 

 意外な答えに壮助は硬直する。自分は事件の渦中に飛び込んだ余所者だと思っていた。居ても居なくても事件はどうにかなっていただろうと思えるくらい全体的には無価値だと思っていた。里見事件の根底に自分がいるとは信じられなかった。

 

「昔、風の噂で聞いたことがある。延珠が退学になった後、そのことに怒って暴力事件を起こした少年がいると。ただの噂だと思っていた。そんな奴がいる訳がない。序列が上がって有名になった俺のご機嫌を取るために誰かがでっち上げた贖罪の作り話だと、そう思っていた。

 けど、あの時、松崎さんの前に出たお前が延珠のことを聞いて来た時に分かったんだ。あの噂は作り話じゃない。実際にあったことで、そいつは民警として今目の前にいるってことが。そうしたら、お前が昔の俺みたいに見えて来た。殺してしまいたいほど羨ましくなった。俺の“正義”を引き受けてくれるんじゃないかと思えて来た」

 

 壮助は心を突かれた。藍原延珠が追い出された数日後、正義を貫く悪になると決めた日、義搭壮助は教師に掴みかかった。生徒を生贄にしたと罵り、殴った。けど、それは迫害された少女には何ら意味の無いことだったし、何の為にもならなかった。短気な少年が自己満足のために起こした暴力でしかなかった。だが、あの昇降口で憧れた英雄の耳に届いていた。彼の記憶の片隅に留められる程度には意味があった。その事実だけが壮助の中であの日の出来事に価値を色付けていく。

 

 ――――何でだよ……。何で俺がそんな風に見えたんだよ! !

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう……。延珠の為に戦ってくれて」

 

 

 

 

 

 

 

 部屋の時間が止まった。

 

 なりたいと思った。目指していた存在に告げられる感謝の言葉。

 

 それは、この6年間で義搭壮助が追いかけ、諦めたものだった。

 

 壮助は噛みしめる。

 

 嬉しさで笑顔を浮かべる訳にはいかない。

 

 涙を流す訳にはいかない。

 

 その言葉を受け取る訳にはいかない。

 

 受け取ってしまえば、自分は迫害された少女を救うために戦った正義の味方になってしまう。

 

 里見蓮太郎と同じ正義を抱いた人間になってしまう。

 

 義搭壮助を正義の味方の役に据えて、里見蓮太郎は役目を終えてしまう。

 

 

 

 ――それじゃあ駄目だ。俺はアンタにはなれない。里見蓮太郎にはなれない。

 

 

 里見蓮太郎は正義の味方でなければならない。

 ()()()()()()()()()()()()()()の代わりに、彼は正義の味方で在り続けなければならない。

 

 

 

 

 

 

「ふざけんじゃねえぞ! ! ロリコン拗らせたメンヘラ野郎が! ! 」

 

 

 

 

 

 壮助はテーブルを蹴り飛ばし、その勢いで蓮太郎を椅子から突き飛ばす。手錠をかけられていたせいで受け身が取れず、蓮太郎は肩から地面に落ちる。あの事件以降、身体を動かしていなかったのも災いした。

 壮助は両腕で蓮太郎の襟首を掴み、持ち上げた壁に叩きつけた。

 

「俺は、あのクソ教師がムカついたからぶん殴っただけだ! ! “俺が”ムカついたから病院送りにしただけだ! ! 藍原の為でもねえし、アンタの為でもねえ! ! 感謝なんていらねえし、そんなワゴンセール投げ売りの正義なんて誰が貰うか! ! 俺は俺の為に戦う! ! 俺の正義(エゴ)の為に戦う! ! アンタが守って来た連中だって俺の敵なら問答無用でぶっ殺してやる! ! 」

 

 映像で監視していた刑事たちが部屋に突入し、背後から壮助を羽交い絞めにする。数人がかりで壮助と蓮太郎を引き離し、両腕を掴んで壮助を部屋から引き摺り出していく。

 

「まだ守りたいものがこの世界に残っているんだろ! ? だったらそのダセエ手足どうにかしろ! ! 自分で守れ! ! 全部手遅れになったって、俺は知らねえからな! ! 」

 

 刑事たちに引き摺り出された壮助の姿が見えなくなる。重い鉄扉が閉まり、向こう側から何重ものロックがかけられる。扉の向こうであの少年はまだ何かを叫んでいるのだろう。蓮太郎の耳に声が響いて来るが、何と言っているのかは分からない。

 蓮太郎は壁に背を付けたまま床に腰を下ろし、意味も無く天井を見上げる。

 

「延珠……木更さん。あいつは何なんだ? お前らの差し金か? 裏切るなって言いたいのか? こんな俺に……まだ戦い続けろって言うのか……」

 

 誰にも聞こえない独り言が部屋で響く。

 

 

 

 そう語りながら、蓮太郎がどこか嬉しそうに笑っていたことを知る者はいない。

 

 




・第一章 あとがき

ようやく書き終わりました!!ここまで読んでくださってありがとうございます!!
妄想が止められずに書き始めたは良いものの「プロット?なにそれ?」な人間だったので話が二転三転し、キャラクターがブレブレブレブレブレまくって、整合性を持たせようと四苦八苦している間に書き始めていた頃の妄想すら忘れ、自分ですらオリキャラの口調も忘れてしまう始末。
「あー!!こここういう設定にしときゃ良かったー!!俺の馬鹿―!!馬鹿―!!」「精神と時の部屋があったら書き換えたい!全部書き換えたい!」と頭を抱え、ノリと勢いで色んな要素をぶっこんでは扱いきれず、迷走暴走を繰り返して終いには脱線して、それでも這いずり回ってようやく書き終えた次第であります。
伏線は後の章で回収します(多分)。

今回の長編から得た教訓としては、「小説を書く時は計画的に!」ってことですね。
皆さんも気を付けましょう。


・義搭壮助という主人公について
本当に何も考えずに書き始めた作品なので、壮助のことについても特に考えず、「とりあえず蓮太郎と逆の要素を持たせよう」という安易な逆張り精神で銃がメインの金髪ヤンキーというキャラクターになりましたが、やっぱり格闘戦やらせないと盛り上がらないなーということでナイフを持たせたり、後の章の為に内臓ふっ飛ばしてバラニウムを詰め込んだりした次第であります。
しかし、書いている間に原作を読み直したことで蛭子影胤というキャラクターに対する見方が変わり、それに伴って本作の蓮太郎、小比奈のコンセプト、彼・彼女と壮助の関係性について考え直す必要が出て来ました。
それ釣られて義搭壮助というキャラクターについて考え直した結果、蓮太郎に正義の味方であって欲しい藍原延珠の願いと蓮太郎が羨ましくて仕方がない蛭子影胤の嫉妬を混ぜたツンデレ・ヤンデレ・ヤンキーデレを拗らせた面倒くさい主人公になってしまいました。第二章以降“は”ちゃんと主人公やりますので今後もよろしくお願いします。

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改めてお礼申し上げます。 ありがとうございました。

ここから先は第二章の予告です。









西暦2020年代、寄生生物“ガストレア”の出現により人類は絶滅に危機に瀕するだろう。




――という都市伝説があったが、2037年になってもガストレアは出て来なかった。

東京の大学を卒業し、地元にある勾田高校に教師として赴任した里見蓮太郎は帰郷初日に幼馴染の天童木更に告白するが「ごめんなさい。里見くんのことは弟みたいに思ってたから」と言われて玉砕する。その意気消沈ぶりから噂は瞬く間に学校中に広まるが、それは少女たちによる“先生争奪戦”の始まりだった。

「スプリングフィールド(カブトムシ)は可愛いな……。ほら、今日の餌だ…………」
――玉砕して意気消沈中の高校教師 里見蓮太郎(22)


「大丈夫だ。妾と蓮太郎だけはずっとずっと一緒だから。夫婦として☆」
――バスケット部のエース&補修のエース(?) 藍原延珠(16)


「お兄さんに『毎日、お前のピザが食いたい』って言わせてみせます」
――アメリカからの留学生にしてピザ狂い ティナ・スプラウト(16)


「ごめん! ! 里見くん! ! お金貸して! ! 」
――株と投資とFXと先物取引で有り金全部溶かした女 天童木更(22)


「里見ちゃん。うちなら合法や♪合法♪いつでもウェルカムどす」
――どこか胡散臭い先輩教師 司馬未織(23)


「何であいつばっかりモテるんだろうなぁ! 世の中不公平だよなあ!」
――蓮太郎の悪友(その1)喫茶店経営 水原鬼八(22)


「それ……私に対する嫌味? 」
――鬼八の喫茶店の常連 紅露火垂(16)


「可哀想に。彼女たちの頭は里見菌に侵されてクルクルパーになってしまったんですね」
――蓮太郎の悪友(その2)病弱少年の暗黒進化 巳継悠河(22)


傷心の彼を癒して、奪え!!
恋に恋する乙女たちの先生争奪戦ハイテンションラブコメディ!!

ぶらっく・ぶれっと!! 第二章「恋愛少女の狩猟録」

西暦20XX年 ハーメルンで連載開始!!






※嘘です




はい。ごめんなさい。第二章の予告は嘘です。
実はこの第一章最終話に入れようと思ったけど、入れられなかったシーンがあるのですが、その中に第二章にも繋がるエピソードがあるため、それらをまとめた「幕間の物語」を次回更新して、そこの後書きに本当の第二章予告を入れようと思っています。

騙して申し訳ありませんが、今後ともよろしくお願いします。

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