ブラック・ブレット 贖罪の仮面   作:ジェイソン13

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ティナ先生のドキドキお泊りレッスン編です。
本当は1話で終わらせる予定でしたが、色々と書くことが増えてしまい2話に分割しました。

あと、第二章を描き始めたのにまだ第二章の本筋に入れていないというか、このレッスン編までを幕間の物語にすれば良かったんじゃないかと今更ながら後悔し、自分の構成の下手さを痛感しています。


銃と暴力とピザに塗れた90日 前編

 時は遡り、数日前―――、IP序列38位のイニシエーター ティナ・スプラウトは自宅のベッドに寝転がり、ぼーっと天井を見上げていた。

 

 彼女の視界には真っ白で何の変哲もない光景が広がる。高級マンションらしく光沢を放つ天井は南向きの窓から入る日光を反射させ、室内照明をつけていない部屋を明るく照らす。

 耳には昨晩ネットでダウンロードした日常アニメの音声が入る。緩いキャラクター達の緩い会話が戦場の爆裂音ばかり受けていた鼓膜を癒してくれる。第1話から最終話まで連続で再生されているアニメは部屋のBGMと化している。

 息を吸うと鼻に昨晩作ったピザの香りが入ってくる。昨日の内に全部食べたはずだが、換気扇をつけ忘れていたせいでまだ部屋に匂いが残っている。今日の買い物リストに消臭剤を追加しておこう。

 

「一体、彼に何が……」

 

 誰もいない部屋でティナが呟く。右手に持ったスマートフォンの画面に目を向ける。

 シェーンフィールド全機損壊の対応、プロモーターやサーリッシュPGS北米本社への報告、密かに行われた防衛省の叙勲式、警察の事情聴取や聖天子との謁見など、里見事件の事後処理に奔走した日々が終えるとティナはある人物の調査に取り掛かった。

 

 IP序列7000位 義搭壮助 森高詩乃

 

 聖天子が里見事件のキーパーソンとして挙げた人物だ。ティナは彼らが何者で蓮太郎とどんな関りがあるのか知らず、彼らに蓮太郎を止める力があるとも思っていなかった。しかし、聖天子の予言通り、2人は里見事件のキーパーソンとなった。森高詩乃は圧倒的な力で蓮太郎をねじ伏せ、義搭壮助は蓮太郎の司法取引によって、事件後の彼と面会した唯一の人間になった。

 ティナは、あの事件で蓮太郎を止めるのは自分だと思っていた。彼の暴挙を止めるのも、彼の心を動かすのも自分だと思っていた。

 

 ――お兄さん。どうしてこの二人なんですか? どうして私じゃないんですか?

 

 

 

 *

 

 

 

 

「里見蓮太郎を倒したペアだと聞きましたが、とんだ期待外れですね」

 

 昼下がりの松崎民間警備会社でティナは言い放った。壮助を床に叩きつけ、片手で詩乃を壁に押さえつけた彼女は掠り傷一つ負うことも無く、汗一つかくこともなかった。詩乃はもがいてティナの拘束から逃れようとするが上手く力が入らない。

 空子は何が起きたのか全く理解できず、呆然と立ちつくしていた。

 ティナは大きく溜め息を吐く。「貴方の弱さに対して私はこんなにも失望しています」と見せつけるかのようだ。あまりにも呆れて冷ややかな視線を向ける。

 空子はようやく事態を理解してはっと目を覚ます。額から汗を流しながら胸の下に腕を組み、あたかも「自分は平然としています」という雰囲気を醸し出すが残念なことに驚きを隠せていない。

 

「で、どう? ウチの問題児たちは? 」

 

「何と言うか凄く残念です。イニシエーターはともかくプロモーターは子供の喧嘩レベルです」

 

 「おい! ! コラ! ! 俺はズタボロに負けて1回死んだから何も言い返せねえが、詩乃は違うぞ! ! そっちは訂正しろ! ! 」

 

 ――と壮助は立ち上がり様に情けない啖呵を切る。

 詩乃を解放し、冷たく一切の温かみを感じない視線を向けるティナに壮助は唸り声を上げながら睨みつける。だがそれはあまりにも虚しい光景だ。樹木の頂上に留まるフクロウに向けて地上の野良犬が唸っているようなものだ。

 

「それ、自分で言ってて悲しくないですか?」

 

「悲しいもクソもあるか。事実なんだからよ」

 

 壮助は睨んでも意味が無いと分かり、視線を逸らす。目を伏せる仕草は愁然としており、影を落としたその表情は何かと自分を卑下する彼のネガティブな部分が垣間見える。

 

「で、アンタ本当にティナ・スプラウトなんだよな? 」

 

「ええ。疑うようでしたらライセンスも見てください」

 

 ティナがカード入れからライセンスを取り出し、手の平に乗せて壮助に提示する。アメリカの民警企業に所属するアメリカ人イニシエーターなのでライセンスの内容も英語で書かれているが、レイアウトは世界共通のようでName: Tina Sprout、IP rank:38の部分はすぐに目に留まった。顔写真も目の前にいる人物と一緒だ。

 10万近いペアが存在する民警業界においてIP序列100位以内は雲の上の存在だ。壮助自身もIP序列7000位と民警全体から言えばピラミッドのかなり上の方だがそれでも100位以内が雲の上の存在であることに変わりは無い。「人の姿をした怪物」「人智を超越した者」「地上に舞い降りた戦神」などと称する者もいる。その素性は国家機密として扱われ、その能力は兵器として扱われ、その名前が出回ることは非常に稀だ。

 あの里見事件から3ヶ月、意識不明だった期間を除けば体感的にたった1ヶ月で里見蓮太郎よりも高ランクの人物に出会った衝撃に壮助はライセンスを凝視したまま固まった。

 

「マジかよ……」

 

「ええ。マジです」

 

 壮助の口調がティナに移った。

 

「そんな超大物がこんな小さな会社に何の御用で? あと松崎さんとはどういう知り合いなんすか? 」

 

 壮助は変な気を遣いながら似合わない敬語で話しかける。今にもティナに殺されそうと不安に思っているのか、顔は引きつっており、額から汗が流れている。全身から恐怖心とそれを悟られないようにする虚栄が滲み出る。

 

「そうですね……。『私は天童民間警備会社所属のイニシエーターでした』と言えば、大方のことは察してくれますか? 」

 

 ティナの口から天童民間警備会社が出て来たことに壮助は呆気にとられた。その会社はかつて里見蓮太郎が所属し、6年前はこのテナントに事務所を構えていた“伝説”とも言われる民警企業だ。里見事件で再び有名になった東京エリア最強の元プロモーター“里見蓮太郎”が所属し、親族を殲滅し東京エリア政治史上最悪の事件を引き起こした“天童殺しの木更”が社長を務めていたことで名を馳せた。しかし、イニシエーターに関してはあまり情報がない。この東京エリアで藍原延珠というイニシエーターがいたことを知る者はせいぜい蓮太郎か延珠本人の関係者、情報屋か民警オタクぐらいだ。ましてや現IP序列38位がかつて天童民間警備会社に所属していたことを知る者などほとんどいないだろう。

 だが、これらは特に不自然な話ではない。プロモーターが有名でイニシエーターがあまり知られていないのはどこの企業でも共通する話だ。民警企業にとってイニシエーターは重要な戦力であり、企業の力そのものと言われることもある。その能力をライバル企業に把握されたり、他の企業にスカウトされたりしないようにする為、各企業はイニシエーターの素性を秘匿する傾向にある。

 また、年端のいかない少女が武器を持ち、兵士として利用される光景を映したくないメディアがプロモーターばかり取り沙汰す報道姿勢を取っていることもイニシエーターの知名度が低い一因となっている。

 

「ああ。察したも何も……全部スッキリしたよ」

 

 壮助はティナに聞こうと思っていた質問を全て取り下げた。松崎との関係も自分達への用事もその強さも全て里見蓮太郎という一人の男によって説明がついてしまうからだ。

 

「改めて自己紹介します。サーリッシュPGS、第666遊撃コマンドよりコンバットインストラクターとして出向しました。IP序列38位『殲滅の嵐(ワンマンネービー)』 ティナ・スプラウトです。よろしくお願いします」

 

 ティナは息継ぎせず長い肩書を述べると直立し、綺麗な姿勢で壮助に軍隊式の敬礼をする。壮助もつられて戸惑いながらも「あ、ええっと、どうも……」と言いながら軽く敬礼する。

 

「え? コンバットインストラクター? 」

 

 壮助がふと疑問を口にすると、空子は何かを思い出したようでスーツのポケットから4つに折りたたんだメモ紙を出し、手に取って広げる。

 

「義塔。社長からの伝言。

 

『義塔くんは喧嘩っ早くてすぐ荒事に首を突っ込む習性を持っているのにスペランカーみたいに即死します。私は不安で不安で、心配のあまり毎朝4時に起床してしまいます。スプラウトさんは戦闘のエキスパートなので彼女と仲良くなるついでに鍛えてもらってください』

 

 だって。ねえ、スペランカーって何? 民警用語? 」

 

 訪ねられた壮助も詩乃も首を横に振るが、ティナはどうもネタを知っている様でそっぽを向いて笑いを堪えている。

 スペランカーが何かは分からないが、即死とは酷い言われ様だ。自分の知る松崎社長はそんなこと言わないだろうと壮助は思ったが、評価そのもの対しては否定できなかった。自分でも言ったように彼は里見事件で里見蓮太郎に惨敗し、内臓を破壊された。奇跡的に賢者の盾を埋め込まれたことで命を繋いでいるが、その奇跡が無ければ既に死んでいてもおかしくない人間だ。IP序列9644位の普通の人間がIP序列元50位の機械化兵士に立ち向かうという無謀をやらかした愚かさも含め、壮助はどうしうようも無い自分に呆れてため息が出る。そんな自分の為にIP序列38位を宛がう松崎社長の気遣いにはつくづく感謝したい。無碍にしたくないという気持ちは壮助の中で大きかった。

 

「そういうことですので、よろしくお願いします」

 

「まぁ、たまには松崎さんの顔を立てねえとな」

 

 壮助はため息を吐きながら面倒くさそうに頭をかく。

 

「病み上がりなんでお手柔らかに頼むぜ。ティナ先生」

 

 2人が互いの手を握った瞬間、壮助に激痛が走った。ティナが異様なまでの握力で壮助の手を握り潰す。壮助の手は握る形すら保持できずその苦痛から逃れようと指がもがき苦しみ、壮助自身は苦悶の表情を必死に抑える。

 

 

 

 

「嫌です。病み上がりだろうと死にかけだろうと関係ありません。殺すつもりで徹底的に追い詰めるので覚悟してください」

 

 

 

 

 ティナは悪魔の様に満面の笑みを浮かべながら答えた。

 

 

 

 

 それから3ヶ月後、義搭壮助はティナ先生のドキドキお泊りレッスンをこう振り返る。

 

 

「銃と暴力とピザに塗れた史上最悪の90日だった」と――

 

 

 翌日、壮助はティナに電話で呼び出された。場所は司馬重工・民警部門が保有する訓練施設だ。ここは前述の通り司馬重工が抱える民警を訓練する為の施設だが、武器の保管庫や新兵器の試験場も併設している。その外観は巨大なアルミニウムの箱と形容されるように窓が無く、防音素材でも壁に詰めているのか音も漏れない。外部から一切の情報が読み取れず、内部情報は秘匿されている。たまに一般公開されることがあるがそれもごく限られたフロアのみだ。

 司馬重工の試作ライフルのテスターをしていた壮助は何度か足を運んだことがあるが、彼も一般公開されたフロアにしか出入りが出来ない。内部には顔や骨格を認証する機能がついたカメラが設置されており、与えられた権限から外れた場所に行こうとすると警報が鳴って司馬重工お抱えのイニシエーターに取り押さえられてしまう。

 2~3日分の衣類と生活用品(所謂、お泊りセット)をボストンバッグに詰めた壮助はティナの背中についていき、厳重なゲートを幾つも潜って奥のフロアへと案内された。

 

「顔パスで司馬重工の施設を自由に出入り出来るとかアンタ何者だよ」

 

「昔のコネですよ。私個人ではなく、天童民間警備会社のコネですけど。天童社長や蓮太郎さんは司馬重工から武器・弾薬の支援を受けていたんです。私も天童に入ってからは司馬重工から武器を貰っていましたし、何度か武器のテスターもやっていました」

 

 金属の壁に囲まれた廊下を歩いた先には、これまた無機質な部屋が広がっていた。面積は25m×25mといったところか、金属製の壁、同じ素材で作られた床、高い天井からは白色蛍光灯の光が照らされる。部屋には何も置かれていなかったが、床には何かを引きずったような真新しい傷が残っており、倉庫として使っていた部屋を急遽、空き部屋にしたことが窺える。

 

「あら~。ティナちゃん。久し振り~」

 

 無機質な部屋で和服の美女が出迎える。彼女は嫣然と笑みを浮かべ、その口元は扇子で上品に隠している。髪はまとめておらず、艶やかな黒髪がウェーブしながら臙脂色の振袖にかかる。

 

 ――美人だけどお近づきになりたくない。

 

 壮助は本能的に彼女から胡散臭さを感じていた。彼女も何かしらの武術の有段者なのだろうか。非力なはんなり京美人としての佇まいの陰に隙の無さが伺える。扇子もカモフラージュされているがよく見ると武術に用いられる鉄扇だ。袖にも何か入っており、重力に引っ張られた布の張り方からそこそこ重量のある金属、拳銃あたりが入っているのではないかと推察する。

 今、この瞬間ティナと自分が殺しにかかったとしても抵抗する準備がしっかりと出来ている。ただのお嬢様ではない。舐めてかかると痛い目を見る相手だと壮助は認識した。

 

「お久し振りです。未織さん」

 

「ほんま大きになって。モデルさんみたいやわ。今なら里見ちゃん落とせるんちゃうか? 」

 

「まさか。ものの見事に惨敗しましたよ」

 

「あ~。やっぱし木更みたいにおっぱい大きないとあかんかったか~」

 

 話ついでにティナの顔を見ていた未織の視線が下がる。男の胸と言われても信じてしまうくらいの断崖絶壁。膨らみも母性も欠片すら感じない平坦な不毛地帯がそこにあった。

 今、彼女は「しまった! ! 」と思っているだろう。出会ってまだ数十秒だが彼女が本音の表情が垣間見えた。

 

「うん……。その……まだ16歳やし、希望はあんで。木更が異常やっただけよ。あははーははー」

 

 未織は乾いた目で笑って誤魔化し何とか気遣うが、全てはティナに逆効果だった。本人もそこは気にしていた。蓮太郎が木更LOVEのおっぱい星人(故・藍原延珠氏による証言)だったこともあり、彼女は非常にその点を気にしていた。現実は非常にも彼女の身体を希望通りにはしてくれなかった。

 気まずくなった空気を何とかしようと未織は話題を変えて、話を壮助に振る。

 

「自己紹介が遅れてもうたな。ウチは司馬未織。司馬重工第三技術開発局の局長や。ようこそ。司馬重工へ。義塔壮助ちゃん」

 

「どうもです。来るのは初めてじゃないですけど」

 

「え?」

 

「司馬XM08AGのテスターやってました」

 

「え? そうなんや。知らんかったわ。かんにんな」

 

「別にいいっすよ。何十人もいるテスターの一人ですし、ここ数ヶ月は入院してサボってましたから」

 

 壮助は自社製品のテスターを知らなかった未織を攻める気は無かった。司馬重工ほどの大企業となると偉い人に関係者の顔と名前を全部覚えろというのは酷だと思っていたからだ。しかし、偉い人や権力者を嫌うアウトロー精神が滲み出ているのか、彼の謙遜する態度にはどこか棘があった。

 

「ティナちゃんから聞いとるかもしれへんけど、ここは司馬重工が保有する多目的施設や。民警の訓練とか新兵器の実験とか、まあ、表沙汰に出来ひんあんなんやこんなんをするために使うてる。正式名称は凄く長いから、社員のみんなは『イクステトラ』って呼んどる。義塔ちゃんの顔もセキリュティシステムに登録しといたけど、この訓練場と仮眠室、あとトイレしか行き来出来ひんようになってる。他に行きたい場所があったらティナちゃんに許可を貰うてね」

 

「まるで監獄じゃねえか! ! 」

 

「ええ。監獄であり、訓練の成果次第によっては貴方の墓場にもなる場所です」

 

 壮助はこの施設に連れて来られた理由、数日分の衣類と生活用品の理由を理解した。あの言葉の通り、「殺すつもりで徹底的に追い詰める」というセリフは脅しではない。

 強くなって出るか、ここで殺されるか、義搭壮助にはその二択しか残されていなかった。

 

「結果次第ではウチの紹介で民警部門に推薦したるわ。それじゃあ、後は若い二人でごゆっくり~♪ 目指せ♪ 優良ホワイト大企業の高給取り~♪」

 

 ――と謎の歌を歌いながら未織は退室した。

 

 邪魔にならないように持って来た荷物は部屋の隅に置き、部屋の中心で壮助とティナが向かい合う。武道の組手の始まりのように2人の視線は交差する。

 

「貴方のこれまでのガストレア討伐実績、司馬XM08AGのテスター選考テストの成績、里見事件の貿易ターミナルに残された監視カメラの映像、室戸先生のカルテ、全て拝見させて頂きました。――素人にしてはよく出来ている方だと思います」

 

 “素人にしては”は余計だが初めてティナに褒められたような気がして、壮助は少し照れる。

 

「ですので最初から実戦形式でいきます。私も暇人ではありませんので」

 

 ティナはポケットから黒いナイフを取り出し壮助に投げ渡す。黒い刀身からバラニウムを連想するが、金属光沢は無く、重みも感じない。刀身に触れてみると硬質ゴム製なのが分かった。刃は潰されており、先端も削られている。刺しても斬っても殺傷力はゼロだろう。

 

「ルールは簡単です。一撃で構いません。そのナイフを私に当ててください。それが第一ステージクリアの条件です」

 

 ティナもホルスターからナイフを抜き取り、逆手に持って構える。彼女のナイフも刀身が黒く光沢が無い。壮助と同じゴム製のものだ。

 壮助も右手にナイフを持ち、ティナとの間合いを計る。事務所の戦いでは全く彼女の動きが見えなかった。こうして真正面から立ち向かうシチュエーションになっても彼女に勝てるヴィジョンが見えない。自分はイニシエーターのお零れで7000位になった普通の人間、向こうは38位の呪われた子供だ。身体能力では明らかに劣る。経験も向こうが豊富だろう。どう攻めようか思いあぐねる。間合を計るフリをして何とか考える時間を稼ぐ。

 

 それを見透かしたかのようにティナがふっと鼻で笑う。

 

「どう攻めようか悩んでいるんですよね? ――――その気なら、こちらから行きます」

 

 ティナが一気に距離を詰めた。ナイフを持っていない左手を握り絞めて拳がを作り、脇腹にねじり込まれた。回転する拳で皮膚と筋肉の壁をこじ開けられ、衝撃が直接体内に響き渡る。臓器がバラニウムになっていてもその振動や痛みは変わらない。

 無我夢中でナイフを振ってティナを遠ざけようとするが紙一重のところでナイフを回避され、再び距離を詰められて顎にアッパーカットを入れられる。首から上が胴から離れて吹き飛んだかと思った。

 その勢いで背中から倒れようとするが足を下げてバランスを取り戻すが、背後に回ったティナから掌底を叩き込まれる。脊椎を壊されたような錯覚に陥る。

 ティナがどこにいるか分からない。壮助の周囲を自由に動き回る彼女を捕捉できない。近くに居る筈なのにどこに居るのか分からない。身体に伝わる衝撃でようやく彼女の存在を知覚できる。そんな状態で壮助のナイフが当たる訳がない。

 ただ、サンドバッグになるしかなかった。

 

 

 

 「勘違いしないでください。私が教えるのは武術でもなければ子供の喧嘩でもありません。――――相手を徹底的に破壊する“暴力”です」

 

 

 

 それから数時間、壮助はティナにありとあらゆる暴力を叩き込まれた。教導の暗喩としてではない。物理的にただひたすら壮助は彼女の殺人術を叩き込まれた。内臓がバラニウムになっていなかったら、内臓破裂で確実に死んでいただろう。

 瞼が腫れて目がまともに明かない。聞こえている音も耳がちゃんと聞いたものなのか脳が作った幻聴なのか判断がつかない。手はついているか、足はちゃんとついているか、自分は立っているのか、倒れているのかそんな判断すらつかない。

 壮助は自分が吐いた血溜まりの中に倒れた。もう床を這う力も残されていない。

 

 

 その光景を見て訓練だと思う者はいないだろう。

 

 そして誰もが思うだろう。これは“処刑”だと――。

 




※変態注意 女の子のおっぱいとかお尻について語ります。

好きな作品の続編を妄想するとき、誰もが考える筈です。
あの後、彼・彼女は幸せになったのだろうか。
あの少年は立派な大人になれただろうか。
あの少女が大人になった時、おっぱいは大きいのだろうか、小さいのだろうか。←ここ重要

(捕まえて殺す的な意味で)ロリコンホイホイな作品であるブラック・ブレット。その6年後を書こう決めて最初に考えたのは「原作キャラ達の6年後の姿」です。
まず蓮太郎や聖天子、未織などの10代後半キャラは20代前半になる訳ですが、元々のキャラクターデザインが頭身高めになっていて大人っぽいので6年後の脳内イメージは大して変わっていません。(服装や雰囲気はともかく)
玉樹や菫先生、多田島警部補も同じく。
そして、原作のイニシエーター達は大抵が10歳前後、6年後の本作だと10→16歳という身体的にも精神的にも大きく変化する時期ですので、彼女達の脳内イメージも原作とは大きく異なります。
現実だと遺伝とか色々な要素があると思いますが、今回は「どれだけ心身ともに健康的な生活をしているか」というのを基準にして彼女たちのプロポーションを決めました。


①片桐弓月
4人の中では一番のグラマラスボディの持ち主。
蓮太郎絡みで色々と悲しいことはあったけど「それはそれ。これはこれ」と割り切って普段の日常に戻れる強さを持っており、女子高生としても民警としても青春を謳歌しています。あと、玉樹も色々と大きくてガタイが良いので、弓月も色々と大きくなるのではないかという予測もあって彼女はこうなりました。

②壬生朝霞
服の上からだと分かり辛いが、実は安産型。
早寝早起き、適度な運動、和食を中心とした食生活など日本人の理想とする規則正しい生活を送っており、健康的な生活という点では弓月以上なのですが、現プロモーターのせいで苦労人属性を持ったり、前プロモーターである長正の死から立ち直れていなかったりと精神的な面で問題があるので2番目になりました。

③蛭子小比奈
出るところは出ているが身長もスタイルも控えめ。
10歳から16歳までの間を復讐に費やしたと言えばけっこう悲惨なのですが、「延珠と木更がいない世界で苦しむ蓮太郎を見る」という娯楽に目覚めた為、精神的には充実した6年間を過ごしています。また蓮太郎も小比奈のことは敵と思っておらず「狂った時代の被害者」として見ており、何だかんだ言って彼女の面倒を見ていたりして、実はけっこうマシな生活をしています。(ティナが聞いたら嫉妬で狂って小比奈をガチ殺ししそう)

④ティナ・スプラウト
モデル系スレンダー美人という言葉で誤魔化されたペッタンコ。
本作でも散々とネタにされていますが、この6年間で肉体的にも精神的にも一番悲惨な生活を送っています。
蓮太郎とペアを解消したティナはIISOに身柄を保護されました。元高位序列者ということもあってIISOは彼女の能力を遺憾なく発揮できるようにまともで良識のあるプロモーターと組ませたのですが、「もぅマヂ無理。お兄さんとゎかれた。ちょぉ大好きだったのに。リスカしょ」ムーブだったティナは誰かに殺して貰おうとプロモーターの反対を押し切って世界各地の戦場を渡り歩く生活をするようになりました。
戦場という極限環境を転々とする高ストレス生活、夜間活動の増加による昼夜逆転生活、軍用レーションか自作のピザぐらいしか食べた記憶がない悲惨な食生活、休日はずっと部屋でアニメ見てるかゲームしてるかの廃人オタク生活、そんな破綻した生活で彼女のホルモンバランスはガストレアウィルスの修正が効かないくらい崩壊し、その結果、彼女の胸は断崖絶壁になってしまいました。

体内のガストレアウィルス「俺達……頑張ったよ。ティナちゃんがピザデブになったり、ゴリマッチョになったりしないように頑張って身体を調整して、モデル系スレンダー美人にしたよ。けど……おっぱいは無理だったよ。ごめん」

もしこれが延珠や木更が生存する世界線ならまた結果は変わっていたかもしれません。
そもそもティナがこんな生活になったのは蓮太郎が悪い。

ぜんぶ蓮太郎が悪い。

彼は責任を取るべきだと思う。


次回は「銃と暴力とピザに塗れた90日」の後編になります。

・強くなるか死ぬまで続くよ処刑タイム!
・語られる松崎民間警備会社創設秘話
・大解剖!機械化兵士“義搭壮助”

お楽しみに!
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