ブラック・ブレット 贖罪の仮面   作:ジェイソン13

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皆さん明けましておめでとうございます。
今年も「ブラック・ブレット 贖罪の仮面」をよろしくお願いします。


死を喚ぶ龍と死に損ないの騎兵 ①

 2031年 東京エリアでとある法律が制定された。

 

 ガストレアウィルス潜伏感染者問題基本法

 

 この法律は、ガストレアウィルス潜伏感染者(呪われた子供)を全ての国民と等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであることを明確にし、全ての国民が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することを目的とする。

 

 通称「ガストレア新法」である。

 

 世界で初めて呪われた子供の人権を保障したこの法律は制定以前から聖居内部、各省庁、国会で懸念の声が多数上がり、天童菊之丞補佐官も難色を示していた。特に議題となったのは犯罪者や侵食率が50%近くに上昇した彼女達への対処だ。今まではグレーゾーンであるが故に人間相手には出来ない措置を取ることが出来た。警察や民警の現場ではそれで犯罪被害や感染爆発(パンデミック)の拡大を防いできた実績があり、その声は政治の場まで汲み上げられた。法律で彼女達の人権を認めてしまえば、赤目ギャングやガストレア化秒読み前の少女に対して人道的な手段しか取れなくなる。手段の限定は現場で対処する警察官や自衛官、民警の犠牲者を増やすだけでなく、一般市民の犠牲者も出すことに繋がる。

 聖天子および賛成派もその点には理解を示し、現場で対処する警察官や自衛官、引いてはガストレアウィルスを持たない国民の安全を確保するため案を提示し、反対派との交渉で妥協点を作った。

 対赤目ギャングを想定した警察へのバラニウム弾供給、呪われた子供の身体能力を抑制する薬剤開発の推進、呪われた子供の犯罪者収容に適した刑務所の建設、そして翌年に施行されたガストレアウィルス拡散防止法もその一つであった。

 聖居は呪われた子供に定期的に侵食率の検査を受ける義務を設け、その数値を厚生労働省・特異感染症取締部が管理する体制を作った。呪われた子供の中で侵食率が48%を超過、また48%以下でも急激な上昇が認められた場合、特異感染症取締部には潜伏感染者の身柄を拘束する権限が与えられる。

 

 

 それは、呪われた子供を国が管理することで人々に安心を提供するための法律だった。

 

 

 

 

 

 

「我々としても手荒な手段は取りたくない。賢明な判断を」

 

 何もかもが壊れた日向家の玄関で、宇津木 特異感染症取締官は冷たく言い放った。彼女は鈴音達のことを気の毒とは思っていないだろう。ガストレア化寸前の呪われた子供を拘束し、人々を守るのが彼女の仕事なのだから。しかし、その言動には冷たさだけでなく、敵意を感じる。まるで人間の生活圏に紛れた怪物を非難するような口ぶりだ。

 

「ま、待って下さい。先月の検査で私は11%って言われています。そんな、いきなり48%だなんて……」

 

「わ、私だって6%って……」

 

 日向姉妹は月に一度、瑛海市民病院に通っている。表向きは幼い頃患った難病の経過観察という名目だが、実際は定期的な侵食率の検査のために行っており、壮助と一緒に行った際も毎月の侵食率検査のために行っていた。病院で採血し、2人は今月の結果を待つ身だった。

 

「今月、貴方達から採取した血液を検査したところ、日向鈴音は48.9%、日向美樹は48.5%であることが判明した。これから君達の身柄を国立特異感染症研究センターに移送する」

 

 両親がガストレア化し、次は自分達がガストレア化寸前と宣告されて、思考がパンクし、感情が混乱し、もう何を想えばいいのか分からない。

 2人の前に壮助が割って入る。

 

「ちょっと待てよ。こいつら、たった今、両親が死んだばかりなんだぞ。48.9%って言ったって、明日明後日にガストレア化する訳じゃねえ。気持ちの整理をつける時間ぐらい待てねえのか」

 

「それは一般的な侵食指数の話だ。先月が12%、今月が48.9%なら彼女達の侵食指数が尋常ではないことぐらい君も理解できるはずだ。今、この瞬間にも周辺住民はガストレアに襲撃される危機に晒されている。それを放置して我々に帰れと? 彼女達がガストレア化して犠牲者が出た時、君は責任が取れるのか? それとも犠牲者が出る前に彼女達をその銃で撃ち殺すか? 」

 

「てめぇ……言い方ってもんがあるだろうが」

 

「退いて頂こう。これ以上は公務執行妨害とみなす」

 

 その侵食率が本当なら、それは正論なのだろう。この対峙に正邪があるとすれば、2人の気持ちを守ろうとする壮助と不特定多数の命を守ろうとする宇津木では、明らかに向こうに軍配が上がる。法と正義が彼女の味方なのだ。

 

「行きます」

 

 鈴音が口を開いた。耳を済ませないと聞こえない、大衆を魅了した天使の歌声とは思えないくらい微かな声だった。これが今の彼女が出せる精一杯なのだろう。

 

「ね、姉ちゃん」

 

「行こう。美樹。もしかしたら、何かの間違いかもしれないし」

 

 鈴音は美樹の手を握ると彼女を立ち上がらせた。恐怖で震え上手く立ち上がれない。今にも泣き出しそうな顔をしている。宇津木の部下が肩を貸そうとすると「大丈夫」と言って、何とか自分の力で立ち上がる。

 

「義塔さん。短い間でしたけど、楽しかったです。ありがとうございました」

 

 宇津木の部下が2人を囲む。これが最後に見る姉妹の姿になるかもしれない。それは姉妹にとっても同じで、2人は目に涙を浮かべ、「助けて」と言っているかのようにずっと壮助の方を振り向いている。

 壮助から見て壁になるように男たちの幅広い身体が2人の姿を遮った。

 

 一瞬、普通のクラスメイトだった頃の藍原延珠の顔が浮かんだ。

 

 

 

 

 ――同じだ。6年前のあの教室と……。俺は悪になるのが恐くて、みんなの敵になるのが嫌で、何もしないで逃げ出した。

 

 何が民警だ。何が機械化兵士だ。俺は……何も変わってないじゃないか。

 

 

 

「おい」

 

 振り絞った一言で宇津木たちを止める。

 

「俺も同行させてくれ。あんたらの邪魔はしない。それくらい良いだろ」

 

 具体的な解決策などない。同行したところで状況は変わらない。ただ、何もしないよりはマシで、彼に出来ることはこれしかなかった。

 宇津木は壮助を一瞥する。彼の背後にいる我堂の民警達にも目を向ける。彼女なりにここの事後処理のことも考えているのだろう。一考した後、彼女は「構わない」と承諾した。

 

「規定で親族や友人の同行は認められている。但し、君の持ち物は預からせてもらう。銃は弾を抜いて渡せ」

 

 壮助は右手に握っていたレイジングブルのシリンダーをスライドさせ、弾を抜き取って宇津木に渡した。弾、財布、スマートフォンも催促されたので素直に渡す。更に彼女の部下が何か隠し持っていないかボディチェックを行う。

 

「問題ありません」

 

「分かった。3人とも連れて行け」

 

 男たちが肉の壁を開き、そこに壮助も入れる。彼が来たところで何も変わらなかったが、2人は安心して、少しだけ笑みを浮かべた。

 宇津木の部下たちに四方を囲まれながら玄関を出た。外に出ると騒ぎを聞いた近所の人が集まっており、野次馬と化している。日向家の名前を叫ぶ声やそこが鈴之音の自宅だと知り驚愕する人、スマホで撮影してフラッシュを焚く人、様々な声に囲まれながら3人は外で待機していた護送車に乗せられた。

 主任の宇津木、彼女の部下3名が同席し、他の部下たちは別の乗用車に乗り込む。

 

「出せ」

 

「了解」

 

 エンジンがかかり、車が移動し始めた。改造で窓を潰した後部座席の中で自分達が日向家から遠ざかっていくのが分かった。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 護送車を走らせて1時間、アスファルトの凹凸を越えて揺れる車体の中で重い空気が漂った。時たま他の車のエンジン音や信号機のメロディが聞こえるが、次第にそれも聞こえなくなってくる。

 行先は国立特異感染症研究センター。厚生労働省直轄の研究機関であり、東京エリアのガストレアウィルス研究の最先端技術がそこに集約されている。拡散防止法で拘束された呪われた子供は主にここに移送される。

 しかし、センターに送られたところで彼女たちが救われることはない。侵食率が上昇しにくい生活の指導やカウンセリングがせいぜいのところであり、現代医学でも侵食を止める術は見つかっていない。彼女達をここに移送するのは治療と言うよりは治療法を見つけるための実験台の提供が主な目的となっている。

 50%近くになると本人に安楽死を薦め、人として死なせる方針を取る為、内地に住む呪われた子供や人権団体からは「赤目専用の処刑場」「極東のアウシュヴィッツ」と呼ばれ忌み嫌われている。

 宇津木がこれからのことについて姉妹に説明するが、頭に入っていないだろう。2人は終始無言で、壮助もどう声をかければいいか分からないまま時間が過ぎていく。

 

 突然、重力の向きが180度変わった。車が横に転がり、ドラム式洗濯機のように車内が掻き回される。全員シートベルトを着けていた為、回転の中で落とされることは無かったが、自分の背中が地面に落ちた時の衝撃で頭が振り回される。

 車は天地がひっくり返った状態で静止し、全員がシートベルトで上になった席に固定されていた。幸い、全員が頭を強打することなく意識を保っている。

 宇津木は上下逆さのまま内線のコードを引っ張り、受話器を手繰り寄せる。

 

「何があった! ? 状況を報告しろ! ! 」

 

 送り先は運転席だろうか。向こうから連絡はない。もしかすると今の衝撃で運転手、助手席にいた彼女の部下は気絶しているかもしれない。

 

「鈴音。美樹。大丈夫か? 」

 

「だ、大丈夫です」

 

「頭ぶつけた」

 

「大丈夫そうだな」

 

 姉妹が無事なことに壮助は安堵の笑みを浮かべる。

 

「義塔さん。一体何が……? 」

 

「んなもん。俺が説明して欲しいよ」

 

 何かが起きたのは確かだ。それが事故なのか襲撃なのかはまだ判断できない。どちらにせよ、今身動き取れないのが危ないことは確実だった。2人にシートベルトを外すように指示を出す。

 同時に壮助も自分のシートベルトを外す。頭から落下しそうになるが座席を掴み、鉄棒の逆上がりの要領で足から着地する。美樹も動きを真似して一人で安全に着地する。呪われた子供でも姉妹でも運動神経に差はあるのか、うっかり頭から落ちそうになる鈴音を受け止める。

 

 

 ガンッ! !

 

 

 車体後部の扉を叩く音が響いた。全員が驚き硬直し、ぶわっと冷や汗を流す。外が見えないように改造された仕様のせいで何が起きているのか見えない。ドアを叩いているのは人か、ガストレアか、それとも呪われた子供か、あらゆる可能性を想定して全員が身構える。

 宇津木と彼女の部下は前に出てニューナンブM60の銃口をドアに向ける。

 

「おい。俺の銃返せよ」

 

「駄目だ。ここは我々が対処する」

 

 観音開きの後部ドア、その中央の境目をバールが貫き、ドアをこじ開けた。金属の軋む音と共に左半分の扉が引き千切れて後方に飛び、小さな人間の手が右半分もこじ開けた。

 12~13歳ぐらいの少女だった。スカーフとキャップで顔を隠しているが、その瞳は赤く、瞼の上に傷跡を模した刺青が見えた。皺の目立つロングTシャツに薄汚れたスニーカー、右手にはバールを左手には拳銃を握った姿は、向こうが名乗るまでもなく外周区の赤目ギャングだと分かった。

 宇津木と彼女の部下がギャングに照準を合わせ、引き金に指をかける。しかし彼女達の指よりも少女が速かった。左手に握った拳銃で部下の足を撃ち抜き、バールの峰で鳩尾を殴打。赤目の力で筋力を増強させたのだろう。身長180越え、体重100キロ越え、武道の経験も豊富そうな巨漢が一発でダウンする。狭い車内で少女のハイキックが炸裂。宇津木の顎に直撃し、下顎と共に眼鏡が飛ぶ。その衝撃で脳震盪を起こし、宇津木は壁にもたれて倒れた。

 2人を伸したバールの少女は壮助たちに銃口を向ける。車体の外から銃声が聞こえる。何度も続く単発の炸裂音、護送車に随伴していたクラウンが襲撃され、宇津木の部下と赤目ギャングが拳銃同士で撃ち合っているのだろう。

 銃撃戦は数秒で終わった。同等の火力、圧倒的に差がある身体能力という条件でどちらが勝者か考えるまでもなかった。

 

「来い。手を挙げたまま外に出ろ」

 

 バールの少女は銃口を向けたまま下がり、壮助たちに外に出るように促す。

 武器は奪われたまま、機械化兵士と言えど姉妹を守りながら複数の武装した呪われた子供を捌ける自信は無い。敵の人数も武装も不明のまま。バールの少女に従うしかなかった。

 3人は外に出て護送車がようやく外周区近くの高速道路を走行していたことを知る。

 国立特異感染症研究センターは感染爆発の可能性を考慮して人口密集地ではなく、居住者の少ない外周区付近に設立されている。東京エリアは外周区やモノリスに近くなるほど治安が悪くなるため、モノリスを警護する自衛隊や外周区に置かざるを得ない公的機関への安全な輸送を目的とした高速道路が建設されている。

 

 時間帯の関係か、護送車と随伴していたクラウン以外の車両は見当たらない。相手に気付かれないように目を動かし情報を集める。見た限りでは襲撃者、スカーフェイスのメンバーは7人。彼女達が乗って来たと思われるバイクやワゴン車が散見される。拳銃とナイフのみの少女がいれば、マチェットを持った少女、自動小銃を抱える少女――と装備は共通しておらず、全員がバラバラだった。

 スカーフェイスの少女たちが鈴音と美樹を背後から取り押させる。鈴音は大人しく腕を後ろに組まれ、美樹は目を赤くして抵抗する。しかし、同じ呪われた子供でも平和な世界で生きた美樹と硝煙の匂いが絶えない世界で生きたギャングでは力に天と地の差がある。

 諦めずに抵抗する美樹を鬱陶しいと思ったのか、拳銃のグリップで美樹を殴打し気絶させる。続いて、妹を殴られて激昂すると予想したのか、まだ何もしていない鈴音も殴打する。

 

「てめぇら……何が目的だ? 」

 

 壮助は問うが、ギャングたちは答えない。その答えの代わりと言わんばかりに銃口を向ける。

 相手は10人の武装した赤目ギャング、こっちは丸腰の人間。更に人質まで取られている。傍から見れば、逆転の余地がない絶体絶命の状況だった。しかし、壮助はスカーフェイスの行動を思い出す。彼女らの目的は今でも分からないが、少なくとも鈴音と美樹は“連れ去るという手間をかけなければならない対象”であることは明確だった。そうなると彼女達を人質とにすることは出来ず、日向姉妹を守るという壮助のハンデは無くなる。壮助が守らなくてもスカーフェイスが姉妹の身を守るのだから。

 

 壮助は「ふっ」と不敵な笑みを浮かべた。

 

 足裏と地面の間に斥力点を展開、地面と足裏で相反するベクトルで自分を跳ね上げ、目の前のギャングの少女との距離を詰める。減速せず勢いを乗せた掌底を打つ。スピードがそのままパワーへと代わり、相手の肋骨を軋ませ、へし折る感覚が生で手に伝わる。

 

「吹っ飛べ! ! 」

 

 畳みかけるように手の平に斥力点を作り、自分を跳ばした時と同じ容量でギャングを数メートル離れたフェンスに叩きつける。

 

「こいつ! ! 」

 

 壮助の背後で姉妹を取り押さえていたギャング2名が銃口を向ける。

 

 ――線形流動装甲・多重展開 詐蛇群狩(イツワリヘビ・ムラガリ)

 

 

 壮助の服の中から、背中から無数の黒い金属繊維が湧き上がる。

 室戸菫からのプレゼント“軟質バラニウム合金繊維”だ。新人類創造計画において、生体内の微弱な活動電位を感知し義肢に伝えることで本物の手足のように動かす疑似神経線維として開発され、里見蓮太郎を始めとした機械化兵士たちに利用された。軽量性、柔軟性に優れるが、義肢の最重要部品として位置づけられたそれはフレームに使用されている超バラニウムに引けを取らない耐性をを誇る。

 壮助がプレゼントされたのは機械化兵士に使用されず、余剰在庫としてダンボールの中に眠っていたものたちだった。新人類創造計画が凍結された今、朽ち果てる運命だった憎しみ色の繊維は斥力フィールドに包まれ、本来想定されていなかった方法で日の目を見ることとなった。

 軟質バラニウム合金繊維は斥力フィールドにコーティングされ、フィールドの変形により生きた海蛇のようにうねる。その動きはコンピュータ制御のように動きが一律化され、絡み合い、4本の黒い触手となって駆動する。

 触手は直進し槍状の先端でギャングの腕を刺突。貫通した螺旋槍は解れ、再び黒い繊維となり腕に纏わりつく。自立駆動するバラニウム繊維という異様な光景、そんな訳の分からない存在に2人はパニックになり、バラニウム繊維を引き抜こうとするが、展開した先端が返しとなって傷口を広げる。

 

「お返しだ」

 

 ギャング達は壮助の言葉の意味が分からなかった。彼女達はそれを理解する前に後頭部を鉄の塊で殴られ、日向姉妹と同じように地面に突っ伏せる。

 腕に纏わりつく触手に気を取られ、残り2本が自分達を通り過ぎていたことに気付かなかった。それが落ちていたニューナンブを掴み、銃把(グリップ)で後頭部を殴ったとは夢にも思わなかっただろう。

 

 背中から伸びる4本の触手、それぞれが先端を手のように展開させ、宇津木と部下が持っていたニューナンブ2挺、倒したギャング達から奪ったトカレフ2挺を握り、残った4人全員に照準を向ける。

 

 その姿は阿修羅像の如く――。

 

 普通の人間でも呪われた子供でもない、ガストレアとも違う未知の能力を前にして全員が狼狽える。これが身代金目当ての誘拐や現金護送車と間違えた馬鹿集団ならすぐに退散する。しかし、彼女達にも退けない理由があるのだろう。足摺りして下がるが、壮助が隙を見せる瞬間を窺っている。

 

 

 

 「下がれ。こいつの相手は私がやる」

 

 

 

 8人目の声と共に4人の表情が変わる。緊張から安堵へ、敗北の可能性が勝利の確信に変わる。

 彼女が動いた――。

 壮助の前で構える4人の背後から小柄な少女が現れた。

 真夏だというのに彼女は脹脛まで届く黒茶色のマントで自分を被い、立てた襟と目深なフードで顔を隠している。風になびく姿は砂漠の放浪者のようであり、襟とフードの隙間から赤く輝く目、瞼の上に傷を模した刺青を覗かせた。

 

死龍(スーロン)。あいつタダ者じゃねえ」

 

「問題ない。機械化兵士の相手は()()()()()




皆さん。2020年になりました。
原作だとそろそろガストレアが出る時代ですね。

ガストレア化した神崎先生が広辞苑並みに書き溜めたブラック・ブレット8巻を出すことを待ち望みながら、今年も自給自足の二次創作をひっそりと書いていけたらいいなと思っています。

今回の補足説明

Q1:宇津木の部下はボディチェックしたのにバラニウム合金繊維に気付かなかったの?

A1:松崎民間警備会社でティナから受け取った時に斥力フィールドコーティングで動かし、ベルトやリストバンドに擬態させていました。また服の中でも身体に巻き付けて隠しており、ボディチェックされた際は手から逃れるように絶えず斥力フィールドで動かしていました。

次回「死を喚ぶ龍と死に損ないの騎兵②」

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