ブラック・ブレット 贖罪の仮面   作:ジェイソン13

6 / 120
休日更新とか言ってて、遅れてすみません


狂刃は再び

 朝日の眩しい午前9時。太陽の光は東京エリアの一角にある廃墟アパートにも降り注いでいた。立地条件、設備ともに悪いこの廃墟アパートでは日当たりの良さだけが他所に自慢できるところだ。

 カーテンの隙間からこぼれる朝日に当てられ、壮助は目を覚ました。鬱陶しく感じながらも目を擦り、上体を起こした。壁掛け時計は朝9時を指していた。

 隣で寝ていたはずの詩乃の姿は無かった。

 この部屋では寝るとき、部屋の真ん中に鎮座するちゃぶ台の足を畳んで端に寄せ、そこに2人分の蒲団を敷く。最初は互いに意識して壁の両端に布団を敷いていたが、徐々に距離が縮まっていき、今では完全に布団をくっつけるようになった。詩乃は一つの蒲団まで目指しているが、壮助がなんとか食い止めている。

 部屋を見渡すと壁に掛けられていたはずのブレザーが無かった。詩乃が通う中学校の制服が無いことで今日が平日であることに気づいた。

 民警と言う仕事は平日・休日と言った概念がない。依頼があれば勤務日、無ければ休日だ。松崎民間警備会社の民警は出勤の義務は無く、毎日会社に来るのは社長の松崎、事務員の空子だけだ。壮助と勝典は気が向いた時に事務所に足を運ぶだけだ。

 会社によっては朝、出勤して依頼が来るまで暇を潰しながら休憩室でスタンバイするところもある。

 壮助は蒲団から出るとまず自分の身体と服装を確認した。衣服は乱れていないか、口の周りや頬が妙に濡れていないか、下半身のステータス、要は寝ている間に詩乃に襲われなかったか確認する。

 とりあえず今日もセーフだった(と信じている)。寝ている間に13歳の同居人に魔法使いになる資格を奪われたなど笑い話にもならない。魔法使いになりたくもないが。

 布団を畳みながら今日は何をしようかと考える。バイトもこれといった用事も無い。銃の手入れも昨日の内に済ませた。またDVDでも借りて映画でも見ようかと、休日のようなスケジュールを頭の中で組み立てる。

 見る映画のチョイスまで考えていた矢先、ちゃぶ台の上に置かれていた壮助のスマホに着信が入る。着信音で幸せ休日計画から現実に引き戻された。

 スマホの画面には『松崎民間警備会社』と発信元が示されていた。

 

「はい。義塔です」

『おはようございます。義塔くん』

 

 電話の主は松崎だった。壮助は身が締まる思いになり、サラリーマンのように姿勢を正す。

 

『急で悪い話ですが、私と一緒に防衛省に来ていただけないでしょうか?』

「大丈夫です!暇だったんで!暇過ぎてヤバかったんで!

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――え?防衛省?」

 

 

 

 

 

 

 ガストレア大戦前から新宿に位置する防衛省。

 大戦後に改築した正門を何台もの車が通る。色も形も車種のバラバラ、一目で公用車ではないことが分かる。時には派手なスポーツカー、オンボロな軽自動車、ワゴン車などバリエーションに富む。

 勝典が運転する松崎民間警備会社の車も防衛省の正門に着いた。4人乗りのグレーの乗用車、助手席に壮助、後部座席に松崎が乗っていた。

 衛兵の案内に従って駐車し、三人は車から降りた。壮助と勝典はトランクを開けて、それぞれ楽器ケースを取り出した。壮助は一般的な肩掛けサイズ、勝典は背丈ほどの長さを持つ。中身は2人が用いる武器だ。壮助は司馬XM08 AG。勝典はバラニウムの大剣とサブマシンガンのワルサーMPLだ。無用な警戒を避けるための配慮として楽器ケースに隠して武器を持ち歩く民警が多い。

 初めて入る防衛省で壮助は少し挙動不審になっていた。

 

「防衛省から依頼ってヤバいですね」

「そうか。お前は来るの初めてか」

「大角さん、来たことあるんですか?」

「6年前に一度だけな」

「“だけ”って、一度でも十分凄いっすよ」

「別に俺に名指しで仕事の話が来たわけじゃない。今回みたいに複数の民警に同時に依頼する形だ。俺は呼ばれた民警のうちの一つに過ぎんさ」

 

 そうこう話している内に指定された会議室に到着した。

 開放感ある広大な部屋にシンプルでありながら高級感を放つ長方形のテーブル。部屋の奥には巨大なスクリーンが設置されている。

 中央の長方形のテーブルを囲むように座るスーツ姿の中年男性たち、彼らの背後には2人の人間が付き従うように立っている。彼らも防衛省に呼ばれた民警の社長、背後にいるのは民警ペアだ。ほとんどがプロモーターとイニシエーターのペアだが、壮助たちみたいにプロモーター2人を連れた会社もある。

 6年前にガストレア新法が成立して以降、呪われた子供たち、通称、赤目の人権が保障された。外周区の再開発やホームレス生活を送る赤目たちの保護が東京エリア政府によって推し進められている。新法はイニシエーターも対象であり、今では彼女たちを学校に通わせる民警も増えている。

 2人だけの会社もある。片桐民間警備会社だ。プロモーター兼社長玉樹が前方に座り、背後に弓月が立っている。

 座席の前にプレートが立てられており、『松崎民間警備会社』のプレートが置かれた席に松崎が座り、背後に壮助と勝典が立った。

 

「よぅ。まだ死んでなかったのか。大角」

 

 勝典の隣、『葉原ガーディアン』の民警が絡んできた。顔中に傷を持ち、眼帯を付けた男だ。黒いコートを着用し、内ポケットに収納している拳銃やナイフをチラつかせる。

 その表情と口調は嫌悪感を催すものだった。嫌味どころの話ではない。男は純粋な憎悪を勝典に向けていた。

 

「ああ。まだ死に損なってるよ。天崎」

「最近、儲かってんじゃねえか。序列1000番台たぁ、昔のお前から考えられないぜ。ビビって戦場から逃げたお前なんかになぁ……。あ、そうか。6年前にお前より強い民警がたくさん死んだから繰り上がっただけか?」

 

 嘲笑する天崎を勝典は黙したまま見続け、壮助は今にも噛みつきそうな顔で睨んでいた。

 

「天崎。これ以上面倒事を起こすなら退席してもらおうか」

 

 葉原ガーディアンの社長が天崎を制止する。振り向かず背中で語る形だが一企業の社長らしく威厳があり、天崎は舌打ちすると勝典から視線を逸らした。

 部屋の奥、スクリーン脇に立つ中年男性が前に出た。

 

「全員、お集まり頂いたようですね。それでは、今回の依頼についてお話しさせていただきます。依頼内容はエリアの機密事項にあたるため、依頼の話を聞いた後に断ることは出来ません。また、他言無用でお願いいたします。もし抜けると言うのであれば、今ここでお願いします」

 

 全員が固唾を呑んだ。だが、誰も抜け出すつもりは無いようだ。

 

「では、続けさせていただきます」

 

 中年の男はリモコンを取り出し、スクリーンに向けてスイッチを入れた。

 スクリーンに映ったのは一人の女性の顔、白磁のような肌と画面越しでも分かる高潔さ、そして誰もが見惚れる美しさを兼ね備えた完成された美女。

 東京エリア首長、通称“聖天子”が映し出されていた。

 

「聖天子様」

 

 社長たちが椅子から立とうとするが、『そのままで結構です』と聖天子に制止された。

 

『昨晩、防衛省技術研究本部に何者かが侵入し、本部で保管されていた“あるもの”を盗み出しました。依頼の内容は2つ。一つは盗まれたそれを取り戻すこと、もう一つは侵入者の確保です』

 

 画面の一部に盗まれた“あるもの”が映し出される。複数の真っ黒な機械がコードで繋がれたものだ。機械同士はブロックのように組み合って、一つの直方体のように纏まっている。コンピュータのハードウェアを一部切り取ったような見た目だ。何のための機械で何をするものなのか皆目見当がつかない。

 壮助はあれこれ考えていると、社長の一人が挙手した。

 

「聖天子様。その“あるもの”とは一体なんでしょうか?」

『盗まれたのは通称“賢者の盾”。5つのバラニウム製の機器で構成された強力な斥力フィールド発生装置です』

 

 聖天子の口から壮助の疑問の答えが出たが、むしろそれは混乱させるものだった。斥力フィールドが何なのか理解できず、バラニウムと斥力の関係など尚更の話だった。

 

(物理学実験で使う専門機器とかか?)

 

 壮助の頭の上には疑問符が浮かんでいたが、彼以外の人間は意味を理解したのか、動揺し、どうにか感情を発散しようと隣の人物と話し合う。

 

『ここにお集まりの皆様には覚えがあると思います。今回盗まれたのは、四賢人最高の頭脳と称されたアルブレヒト・グリューネワルトの産物、かつて東京エリアを滅亡寸前にまで追い詰めた機械化兵士、蛭子影胤の臓器です』

「蛭子……影胤!?」

 

 周囲の社長や民警は愕然とする。恐怖でガタガタと震え始める人もいれば、「まぁ、そんな話だろうとは思ってた」とすまし顔を維持する人もいる。片桐ペアがそんな感じだ。

 周囲の反応に壮助は困惑する。ステージⅣやⅤのガストレア以外で東京エリアの民警、その上位陣を震撼させる存在がいることに驚いていた。そして、自分たちがとんでもない仕事を引き受けてしまったことも。

 

『もう一つの依頼はその侵入者の確保です。侵入者は――「説明するまでもないよね」

 

 聖天子の言葉を遮るように聞こえた少女の声、全員が声の発信源である部屋の入り口あたりを振り向いた。

 ウェーブ上の短髪に呪われた子供特有の赤い目が不気味に光る少女。年齢は壮助と同じかプラスマイナス1歳といったところか。手足が長くスラッとしたモデル体型で背丈も165センチ近い。袖とスカートが素手で千切られた跡のあるワイルドな黒いドレスを身に纏い、胸元と手首には十字架をあしらったシルバーアクセサリーをつけている。背中には鞘に入れられていない抜身の太刀が黒く輝いていた。

 全員に悪寒が走り、民警たちは武器を取り出して、刃の切っ先と銃口を一斉に少女に向ける。

 

『貴方は……蛭子小比奈』

「ご名答~。お久しぶり。聖天子様」

 

 多数の民警に銃口と切先を向けられているにも関わらず少女――小比奈は平然としていた。口元が緩んで不気味な笑顔を見せる。余裕の笑みどころか、逆に今の状況を楽しんでいるかのようだ。

『これを盗んだのは貴方ですね』

「うん。そうだよ。パパを返して欲しかったからね」

 

 小比奈は少女らしく振る舞うが、その所作一つ一つに狂気が見え隠れする。

 

 

 ――突然、小比奈の手足が縛られるような挙動を見せ、彼女が空中で縛り付けられる。小比奈の身体には極細の繊維、蜘蛛の糸が絡まり、それが天井へとつながっていた。

 小比奈を縛ったのは弓月だった。クモの因子を持つイニシエーター。小比奈を縛ったのも彼女の指先から出ている蜘蛛の糸だった。

 

「関東会戦以来ね。蛭子小比奈。このままお縄について頂戴」

「それは出来ない相談だよ。私は純粋にパパを返して欲しかっただけだから。それに――」

 

 突如、部屋中の窓ガラスが割れ、民警たちが部屋のテーブルや椅子と共に中央から吹き飛ばされた。示し合わせたかのように全員が強い衝撃で壁に叩きつけられ、椅子に座っていた社長のほとんどが衝撃に耐えられず気を失った。民警の中には壁に激突した際に骨を折った者もいる。

 何事もなかったかのように小比奈を縛る糸が解け、彼女の手足が解放される。バラバラに斬られた糸が宙を舞って地面に落ちた。

 弓月は驚愕した。小比奈を縛る蜘蛛の糸は元々持っていた粘性や弾力性を維持したまま、ガストレアウィルスによる強化で鋼鉄のワイヤー以上の強度を誇っている。斬るなどそう容易いことではないし、引っ張って千切るのも不可能だ。もしそうしているのであれば、小比奈の身体がバラバラになっているはずだ。それどころか、小比奈には糸に抵抗しようとする素振りすら見られなかった。

 いや、それ以前に今の衝撃波は何だったのか。一瞬にして最高級の会議室を紛争地帯のような惨状へと変える威力、一瞬にして形勢を逆転させる圧倒的な力、そんなものが小比奈に備わっていたのかと――。

 

「ここで終わるのはパパも“あいつ”も許さないから」

「あいつって誰のことよ」

「いるよ?そこに」

 

 小比奈が部屋の中央、テーブルの上を指さした。

 誰もが“あいつ”の存在に気付かなかった。“あいつ”は全員が取り囲んでいるテーブルの上、その中央に堂々と存在していた。小比奈に視線が集まっているから気付かなかったなどと言い訳できるものではない。

 黒い仮面の男が跪いていた。小比奈に背を向け、聖天子が映る画面に向けて頭を垂れる姿は、まるで聖天子に忠誠を誓う騎士のようにも見えた。

 男の右手にはバラニウムの日本刀が握られていた。あれが弓月の糸を斬ったものだろう。本来銀色に輝くはずの日本刀が黒いというだけで禍々しさを感じるが、黒い仮面の男が持つそれから発せられるのは“刀身が黒い”というだけでは説明できなかった。生物の本能的な嫌悪感、危機感をその刀から感じざるを得ない。

 突然現れた二人のイレギュラーに意識が残っていた民警たちは困惑する。どちらに銃口を向けるべきなのか戸惑い、部下や上司、隣の人間と示し合わせて向ける銃口を分担する。

 社長の椅子と共に飛ばされ、背中を強打した松崎は徐々に回復する意識と視界の中で黒い仮面の男の姿を捉えた。

 もう一度会いたいと思っていた。何と礼を言っていいか分からない。どれだけ詫びればいいのか分からない。彼には生涯背負う不幸を与えてしまった。彼が世界に絶望する切っ掛けを与えてしまった。背負わなくてもいい十何人もの命を背負わせてしまった。

 その男に渦巻く複雑な感情と共に彼との記憶が走馬灯のように蘇る。

 

 黒い仮面の男の姿が、

 

 かつて教壇の上に立っていた彼の姿が、

 

 全てを黙して何も告げぬ彼の姿が、

 

 少女たちの亡骸の前で名前を告げる彼の姿が、

 

 残酷な世界で打ちのめされた彼の姿が、

 

 そんな残酷な世界でも正義を信じて全てを救った彼の姿が

 

「里見蓮太郎さん……ですね?」

 

 松崎は黒い仮面の男の名を呟いた。仮面の男――改め里見蓮太郎は松崎を一瞥するが、すぐに視線を反らす。

 

「松崎さん!下がってくれ!」

 

 勝典が松崎の身を引かせ、彼の盾になるように壮助が前に出て銃を構える。

 壮助は司馬XM08AGの銃口を蓮太郎に向ける。しかし、指が震えて引き金にかからない。

 里見蓮太郎――東京エリアでその名を知らない民警はいない。その名前は最強のプロモーターを意味し、幾度となく東京エリアを救った英雄を意味する。

 そんな雲の上の存在が“敵”として目の前にいる。それを目の前にするだけで足が震えあがる。それに銃口を向け、引き金に指をかけるには勇気だけでは足りなかった。己を省みない蛮勇が必要だった。

 

「てめぇ……!ようやく姿を現しやがったな!」

 

 怒号と共に部屋にモーター音が響く。片桐民警会社のプロモーター、片桐玉樹が啖呵を切る。

 染めた金髪に亜麻色のサングラス、ライダージャケットを着た偉丈夫の男だ。兄妹でセンスを合わせているのか、妹の弓月のパンクファッションと並ぶと二人が兄妹であることがよく分かる。

 拳にはバラニウムのチェーンソーナックルを装着し、ボクシングの構えを取る。

 玉樹が前進した。前傾姿勢で一気に接近し懐に入った。速いどころの話ではない。誰も――おそらく蓮太郎も――玉樹の接近に気付かなかった。

 戦いは完全にボクシングの間合いだった。接近した玉樹はダッキングの要領で蓮太郎の脇腹に拳を打ち込む。バラニウムチェーンソーは回転している。ここにいる誰もが、蓮太郎の血潮と臓物がここで飛び散ると確信していた。スクリーンの聖天子も思わず目を覆う。

 

 

 

 ――ガッ!ドォン!!

 

 玉樹がテーブルに叩きつけられていた。テーブルにクレーターが出来上がり、放射線状にひびが入る。蓮太郎は何事も無かったかのようにすまし顔で辺りを見渡す。

 

「撃て!撃ち――

 

 恐怖に敗北し、端を発した民警が倒れた。背後には蓮太郎が手刀を作っていた。

 瞬間移動としか思えない業に周囲の民警が怯えて震えた手で銃口を向ける。しかし民警の手にあった銃はいつの間にか蓮太郎の手の中にあった。

(舐めやがって……こっちは命懸けだってのに向こうは手品じゃねえか)

 壮助が言い表すまでも無く、その温度差は歴然だった。プロモーターもイニシエーターも戦意を失っていた。壮助も勝典もどう動けばいいか分からない。東京エリア最強のプロモーターに勝つヴィジョンが全く見えない。

 蓮太郎はスクリーンに背を向け、テーブルの上から民警たちを見下ろした。

 

「ここにいる全員に伝える。命が惜しければ俺たちを追うな」

 

 蓮太郎と小比奈はガラス張りだった外に向かった。誰も2人を止めたり、その背後を襲ったりしようとは考えていなかった。蓮太郎たちが撤退すると知って、安堵の表情を見せる者もいる。

 しかし、壮助だけは銃を下ろさなかった。震えて照準の定まらないXM08AGを蓮太郎の背中に向ける。指も相変わらず引き金にかからない。鼓動が早く、大きくなり、交感神経が増幅されてどっと汗が湧き出る。瞳孔が開き、息も荒くなる。彼が極度の興奮状態に陥っているのは傍目ですぐに分かる。

 今の震えは恐怖だけではない。それとは別の、歓喜にも似た感情が沸き上がり、壮助を昂らせる。

 

「待ちやがれ!コスプレ仮面野郎!」

「「「!?」」」

 

 仮面の男の背に壮助が司馬XM08 AGの銃口を向ける。全員が血の気の引いた顔をして壮助を凝視する。全員の視線が、立ち去ろうとする台風をわざわざ呼び止める馬鹿の姿に集められる。蓮太郎と小比奈の視線も――

 

「聞こえなかったか?『命が惜しければ、俺たちを追うな』」

「ああ。しっかり聞こえてた。けど、それとこれは別問題だ。あんたに一つ、聞きたいことがある」

 

 仮面の男はピクリとも動かなかった。無視する素振りもないので壮助は質問に答える意志があると見た。

 

「6年前の、アンタのイニシエーターはなんて名前だった?」

「……」

「『6年前のアンタのイニシエーターは藍原延珠じゃなかったか?』って聞いてんだよ!」

 

 

 

 

 ガッ!!

 蓮太郎が瞬時に壮助の水月に拳を打ち込んだ。一瞬という言葉すら生ぬるい速度、窓際にいた蓮太郎が瞬く間に対面の壁に立ち、壮助を拳で壁に叩きつけていた。

 

 天童式戦闘術一の型八番 焔火扇

 

 

 

 

 

 

 

 壮助の意識はそこで途切れた。

 




小比奈は一目で「あ、こいつヤンデレだ」って分かる感じの雰囲気で、私服のチョイスもそんな感じです。
今回着ているドレスは影胤が小比奈に与えたもので、小比奈はサイズが合わなくなっても色々とアレンジして影胤から貰ったドレスを着続けています。袖やスカートが破られているのもそのためです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。