灰色の盾の拠点“バンタウ”の一室、リビング(と思われる空間)に置かれたバラニウムの棺桶を目の前に鈴音と美樹は壁際に腰を下ろしていた。ヒビの入ったマグカップに注がれたコーヒーを啜る。
「姉ちゃん……大丈夫? 」
「うん……。段々、良くなってきた」
「姉ちゃん。ちょっと高かったもんね」
同じ屋根の下で同じように生活してきた鈴音と美樹だが、前月までの段階で侵食率には6%の差があった。これは鈴音の眼球を治療する際、ガストレアウィルスを一時的に活性化させることで眼球の再生を促した結果であり、それはバラニウムボックスでも体調不良の度合いとして出ていた。
「私達、これからどうなるんだろう……」
鈴音がボソリと呟くと、美樹は目を丸くして鈴音の方を向いた。
「え? 何? 」
「姉ちゃんが弱音を吐くとこ初めて見た……」
「私って、そんなに負けず嫌いだっけ? 」
「負けず嫌いって言うか……まぁ、タフな方だとは思ってる。自分で目を潰しちゃうし、目が見えないのに路上生活やってのけるし、いきなりストリートミュージシャンになるし、芸能界に飛び込んで人気歌手になっちゃうし」
美樹の寸評に鈴音は「あはは」と愛想笑いを返す。美樹が自分のことをどう思っているのか、今まで当たり前のように一緒に生活していながら一度も聞いたことが無かったという驚きを隠しながら――。
「今は、そんな姉ちゃんでも参っちゃうってことだよね。……正直、訳わかんないよ。父さんと母さんは死んじゃうし、いきなり侵食率が40%オーバーって言われて連行されそうになるし、そしたらギャングに襲われて、死んだと思ってたエール姉ちゃんが生きてて、それで今度は実は低いままでしたって言われてさ……」
護送車襲撃、エールとの再会から一晩。人生で一番濃い数時間を経験した2人はバンタウの客間で眠った。外周区の廃墟とは思えない綺麗なベッドに身を乗せた時、自分はどうなるのか不安で一杯になっていた。眠れないと思った。しかし、いつの間にか睡魔に負け、目を覚ますと昨晩の様々な出来事に対する感情の整理がついていた。睡眠は脳が情報を整理するための時間と言われるように今でも分からないことだらけだが、ただ塞ぎ込んでも、泣き喚いてもどうにもならないと理解できる程度の理性は取り戻していた。
「よう。大丈夫そうだな」
2人が声の方に振り向くと玄関扉を開けて中に入るエールが目に入った。昨晩は月明りだけが頼りだった彼女の姿が今では外から差し込む陽の光と室内の照明ではっきりと見える。同い年とは思えない体格差も、ライダージャケットで隠れていた刺青も、当たり前のように持っている拳銃も、自分達と彼女の“生きる世界”の違いを見せつけられる。
エールに続いて、壮助と医者の倉田が部屋に入って来る。壮助は額に包帯を巻き、頬に絆創膏を貼った痛々しい姿をしていた。涙を流していたのか、目も赤く腫れている。
「義塔さん……。大丈夫なんですか? 」
「俺は大丈夫だけど……詩乃はかなり危険だ。解毒剤を手に入れないと2~3日で死ぬ」
「そんな……」
「何とかならないの! ? 医者のおじさん! ! 」
美樹が倉田に問いかけるが、倉田は苦渋の表情で「すまない」と返す。
「何とかする為にここに集まったんだ」
全員の視線がエールへと向く。これを鶴の一声と言うのだろうか。圧のかかった彼女の声は場の空気を支配した。彼女は部屋の隅にあったパイプ椅子を広げ、背もたれを前にして座る。ここのボスである彼女の行動に全員が息をのんだ。
「面識があるとはいえ、今の私達は初対面みたいなもんだ。私は義塔がスズネ達と一緒に理由をまだ聞いていないし、私達が死龍を追っている理由も話していない。そこを知らねえことには、お互いに正しい判断は出来ないだろ」
「正しい判断だと? 」
「ああ。お前達にとって私達は敵か味方か、私達にとってお前は信用に値する人間か否か」
*
義搭ペアと日向一家の関係、これまでのことについて壮助は簡潔に述べた。詩乃の件があり話しの内容は多少急ぎ気味だったが、それでもエールが求めていた情報はしっかりと提示していた。たまり彼女がチラチラと日向姉妹の表情を窺い、壮助の言葉に嘘がないか、姉妹が彼に脅されたりしていないか確認している。
「成程な……。大人しそうに見えて、いきなりぶっ飛んだことするところは変わんねえな」
護衛任務の真相を聞いた壮助が姉妹のことを馬鹿と連呼したようにエールも鈴音の無謀な行動に呆れて冷ややかな視線を送る。美樹も昔から心当たりがあるのか「うんうん」と頷く。
「しっかし、お前を助けた民警が里見蓮太郎とはなぁ……。とんでもねぇ大物じゃねえか。で、そこのお前は東京エリア最強の民警に喧嘩を売った馬鹿な民警Aってところか? 」
「とりあえず、そんなもんだよ。こっちは全部話した。次はそっちの番だ。助けてくれたのは感謝している。けど、
棘のある壮助の問いかけに鈴音と美樹が強張る。倉田もおろおろとする。しかし、3人が思う以上にエールの器は大きいのか、彼女は投げかけられた疑惑にふっと笑った。
「まぁ、私達は犯罪組織だしな。疑われても仕方ねえか。正直に言うと、あの地区で何か起きるんじゃないかとは前々から思ってはいた」
エールの言葉を聞いた瞬間、壮助の表情が固まった。瞳孔が開き、視線はエールに固定されている。日向姉妹を妹分と言い、何か起きると分かっていながら何もしなかった彼女への怒りで胸の中が煮え滾る。感情に身を任せていれば、斥力フィールドで首を刎ね飛ばし、彼女を断罪してしまっていただろう。
「弁解ぐらいはさせてくれ。どんなことが起きるのかは検討がつかなかったし、起きるかどうかすら確証が無かったんだ」
「どういうことか、順を追って説明してくれ」
「事の始まりは3年前かな。外周区や内地のストリートで奇妙なドラッグが出回り始めたんだ。そいつはマリファナ、コカイン、ヘロイン、LSD、MDMAなどなど、様々なドラッグに混ざって流通している。運悪く服用してしまえば、普通の人間は激しく悶え苦しんだ後に死に、赤目が使えば脳をやられて廃人になる」
エールの口からドラッグという言葉が出て、鈴音と美樹は身が強張った。5年前、記憶の中のエールは自分達と同じだった。同じストリートチルドレンで、同じような服を着て、同じものを食べていた。しかし、今は違う。内地で普通の人間に混じって平和に過ごしている間、エールは銃とドラッグとガストレアに塗れた外周区を生きてきた。再会した彼女との関係も昔の思い出と同じようにはいかないと、不安にかられた。
「そいつは赤目を狙ってばら撒かれていて、やられた奴は魂の抜けた肉人形になる。いつの間にかそれは“ドールメーカー”と呼ばれていた。今じゃ、どいつもこいつもドールメーカーが恐くて薬に手を出そうとしねぇ。お陰で売人は商売あがったりだ。ざまあみろ」
エールはニヤリと笑みを浮かべた。ドラッグが売れなくなっている現状を喜んでいるようで、それで利益を得ていた者達を嘲笑っていた。
「まるで他人事だな」
「
灰色の盾の商売は常にシンプルだ。
『お前の代わりに敵をぶっ飛ばしてやるから、金寄越せ』ってな」
――だから、
「さっきも言った通り、ウチとしてはドールメーカーのことは大して気にしていなかった。ドラッグ市場が栄えようが滅びようが知ったことじゃなかったし、メンバーにも薬物の売買禁止を徹底させていたから被害も考える必要は無かった。――けど2年前、メンバーの一人がルールを破ってドラッグに手を出した。しかもそれが運悪くドールメーカーだったんだよ」
エールは今でもそのことに怒っているのだろう。目付きは険しくなり、声も圧がかかる。それがドールメーカーを売った売人に対してなのか、ルールを破ったメンバーに対してなのか、その両方かは分からない。
「その日の夜、廃人になった筈のそいつが居なくなっていたんだ。慌てて動けるメンバーを出してバイクで探し回って、バンタウから少し離れたところで私が見つけた。けど、死龍に邪魔されて連れ戻すことが出来なかった」
エールの話を聞く中で壮助の頭の中にはサダルスードフィルムで遭遇した小星から聞いた話を思い出していた。ストリートチルドレンや小規模なギャングが失踪し、それにスカーフェイスが関与していると――。
「それからウチとスカーフェイスの因縁の始まりさ。私達はドールメーカーに関する情報を集めて、売人が出没したところに張り込んで、スカーフェイスに何度か襲撃を仕掛けてきた。メンバーを手にかけた連中を放っておけば、灰色の盾の沽券に関わるからな」
「で、お前があの住宅街をうろついていたのもドールメーカーの売人が出没したからなのか? 」
そう尋ねる壮助だったが、あの住宅街にドールメーカーの売人が出たとは考えられなかった。偽の護衛任務で彼は情報屋の優雅小路に住宅周辺の調査を依頼している。やり手の彼が、あの平和でクリーンな住宅街に現れた裏社会の人間を見逃すとは到底考えられなかった。
「いや、売人は出ていない。私があそこに居た理由は2つ。1つは、まぁ、その――――スズネが心配だったから。凄い大ケガとか聞いたし」
エールは日向姉妹から目を逸らし、歯切れを悪くしながら可愛い理由その1を打ち明ける。試写会イベントの刺傷事件はニュースで大々的に報道されていた。ここバンタウも(おそらく盗んでいるのか)電気が通っており、テレビが見られる環境だと考えられる。あの事件の大袈裟な報道はエール達にも伝わっていただろう。
「あの時のエールさんは鬼の形相だったよ。『スズネを斬った奴をブチ殺しに行くぞぉ! ! 』ってフル装備で留置所に吶喊しようと―――」
笑いを堪えながら、倉田は日向姉妹に当時のエールの状態を説明する。
「―――痛ぁっ! ! 」
エールに医療用のトレーを投げつけられ、頭にたんこぶを作る羽目になった。
「茶番劇はいいから話を進めてくれ。もう一つの理由は何だ? 」
「お前だよ」
「「「え? 」」」
エールのまさかの解答に3人がキョトンとする。
「私は最初、お前達のことをスカーフェイスの手下だと思っていたんだ。ここ半月もずっと監視して、変な行動を起こせば殺すつもりだった。結果は真逆だったけどな」
「確かにカタギの人間じゃねえし、疑われても警戒されても仕方ねえけど、何でスカーフェイスと繋がっているって思われたんだ? 」
「お前、半年ぐらい前にデスガルズを潰しただろ」
里見事件の少し前、壮助は「廃工場に住み着いているホームレスを追い出して欲しい」と依頼を受けたことがある。自分が名指しで依頼されたことを不審に思いつつも廃工場に入ったところ、そこにホームレスは1人もいなかった。代わりに居たのは赤目ギャング「デスガルズ」であり、廃工場は彼女達がコカインを栽培・精製するための拠点として使われていた。多少、武装していたとはいえ1人のプロモーターが武装した赤目ギャング十数名に敵うはずもなかった。敗北した彼は危うく精肉機に巻き込まれてハンバーグになりかけたが、間一髪で詩乃が突入し、壮助を救出。赤目ギャングもたった一人で一網打尽にし、遅れて到着した警察がデスガルズ全員を拘束したことで事件は終わりを迎えた。
「デスガルズはヨコハマの中国人グループと繋がりがあったんだ。傘下の組織を潰され、コカインも押収され、デスガルズ経由で売春クラブ経営や他のシノギまでバレて警察に差し押さえられた。連中はヤケクソになって『どうせ刑務所にぶち込まれるなら、松崎民間警備会社を襲撃して皆殺しにしようぜ』って話になったんだよ。――けど、スカーフェイスが全部潰した」
壮助は静かに話を聞きながら、内心驚いていた。デスガルズの事件が松崎民間警備会社を危険に晒していたこと、死龍の由来となった事件の裏側に自分達が関わっているとは思わなかった。
「でも俺達が助けられたのは偶然って考えられるぜ。ドラッグ絡みの利権争いが本来の目的とかじゃねえのか? 」
「あの中国人グループは袋の鼠だったんだ。スカーフェイスが潰しにいかなくても数日足らずで警察が潰していた。それくらいまでにあいつらは終わっていた」
「だけど、スカーフェイスはその数日を待つことが出来なかったってことか? 」
「そうだ。だから私は『松崎民間警備会社はスカーフェイスにとって潰されては困る会社』と思っていたし、お前達を監視していればスカーフェイスの正体に辿り着けるんじゃないかとも思っていた」
「ちなみに今は信用してくれているのか? 」
「お前も森高もスズネとミキの為に命懸けで戦ってくれた。それで十分だ」
エールと壮助は互いを見つめ合う。互いが互いのことを信用できるのか、張り詰めた時間が流れ、姉妹と倉田は固唾を呑んで見守る。緊張の糸が解れ、壮助とエールは「ふっ」と笑った。
「昔話は終わりにしよう。これからどうするつもりだ? 」
「死龍を倒して解毒剤を手に入れる。今現在、連中は仕事を
「ここで襲撃を待つってことか」
「いや、誘き出す」
その瞬間、エールの表情が変わった。威厳と余裕のある雰囲気は消え、情念にかられて壮助に鋭い眼光を突き刺す。
「お前、スズネとミキを囮にするつもりか? 」
「半分、正解ってところだな。メインの囮は俺だ。一度、姉妹をバンタウから内地に移動させて、安全な場所に2人を隠す。その後、俺だけが目立って行動すれば、スカーフェイスは姉妹の居場所を握る俺を狙いに来る筈だ」
「でも何で内地なんだ? 外周区ならこちらに地の利があるし、バンタウに近いところなら灰色の盾をフルで動員出来る」
「内地なら狭い路地があるし、屋内戦に持ち込めば死龍の尻尾はただの荷物になる。いざとなれば……諸刃の剣だけど警察や民警も利用できる。もう一つは……内地に行って協力者を集めたい。アンタ達のことを悪く言いたくないが、灰色の盾と俺だけじゃ心許ない」
「成程な……。そう思われるのも仕方ない。3年も戦って一度も仕留められなかったんだ。ちなみに聞きたいが、協力者の当てはあるのか? そこらのチンピラならお断りだからな」
「聞いて驚くなよ」――と壮助はニヤリと笑みを浮かべた。
「まず、IP序列1095位 大角勝典・飛燕園ヌイ。俺の先輩っつーか、上司みたいな人だ」
「ああ。名前は聞いたことあるな。蟲雨事件で大暴れした民警だとか」
エールのあっさりとした反応に壮助は不満げに想う。IP序列1095位、10万組近い民警ペアの上位1%となれば大抵の民警は震えあがる。エールは数字の意味に気付いていないのか、それとも大角ペアを恐れる必要のない実力者なのか――。
「それともう一人、IP序列38位 ティナ・スプラウト」
エールが椅子から転げ落ちた。
「おい。テメェ。言って良い冗談と悪い冗談があるぞ」
眉間にしわを寄せたエールが壮助に詰め寄る。180cm以上ある彼女の体格、ギャングのリーダーという肩書きに周囲は圧倒されるが、壮助は平然とする。
「冗談じゃねえよ。休業中だし、装備ほとんど失っているから序列相応の力は出せねえけど、それでも片桐兄妹と同等の実力はある筈だ。あ、そういえばティナ先生、『弓月さんとはマブダチです』って言っていたな。もしかすれば、2人も味方につけられるかも……」
エールの口から乾いた笑みが零れる。蟲雨事件の功労者・IP序列38位のイニシエーター・東京エリア民警のトップランカーという強すぎる援軍は希望を通り越して笑いが出てしまう。この3年間、倒すことが出来なかった死龍を60時間以内に倒さなければならないという危機的状況を忘れてしまいそうになる。
「良いだろう。義塔壮助。お前のプランに乗ってやる。武器も、人も、灰色の盾が出す」
エールが立ち上がり、ズカズカと足音を立てて壮助を壁に追い立て、彼の耳横に目がけて手を壁に叩きつけた。
「私の大切なものをお前に賭けてやる。半端な真似をしたら許さねえからな」
エールの気迫に圧され、壮助は唾を飲んだ。悪態を吐く余裕などない。「分かっている」とだけ返事した。
「おいっすー! ! エール! ! スズネとミキが目を覚ましたってマジ? 」
玄関ドアをバンと大きく開け、ビビットピンク髪の少女、ナオが入って来た。寝起きなのか髪のセットは崩れており、上下は猫のキャラクター模様の寝間着を着たままだった。今の彼女を見て、灰色の盾のサブリーダーだと思う者は居ないだろう。
ナオの視線に最初に入ったのは、壮助に壁ドンするエールだった。脅し立てているつもりだったが、ナオの目には男女のそれに映った。
「わーお! ! エールってそういう男子が好みー? てっきり女の子にしか興味が無いおレズさんだと思ってたー」
ナオはエールを茶化し、彼女から投げつけられる拳銃をヒョイと避ける。その動作の流れでナオは姿を消した。
「ぎゃあああああああああああああああああ! ! ! ! ! ! ! ! 」
突然、部屋に美樹の悲鳴が響く。全員が驚いて振り向くと彼女の背後からナオが手を伸ばし、その豊かな胸を服の上から鷲掴みにしていた。
「ええなぁ~ええおっぱいやなぁ~。内地で良い物食って育てたんだろうなぁ~ 」
ナオはこれでもかと見せつける様に揉みしだく……揉みしだく……。
「死ね! ! 痴漢! ! 」
「ぐえっ! ! 」
美樹はナオの鳩尾を肘で突き、怯んだ瞬間に胸元をガードしながら彼女を振り解く。
「え? え? 誰! ? 」
「はぁ~! ? おまっ――誰が自転車の盗み方とピッキングの仕方を教えてやったと思っているんだ! ! 一緒に賞味期限切れのサバ缶食ってトイレの住人になった仲だろぉ~」
恐る恐る美樹は、遠い過去から引っ張り出した名前を口に出す。
「ナ、ナオ姉ちゃん? 」
「正解! ! 」
ナオは上機嫌に両手で指鉄砲を作り、美樹に向ける。次の瞬間、彼女の興味が移ったのか、性犯罪者めいた視線が鈴音に向けられる。
「お、スズネもそこそこ育っているではないかぁ~」
「ナ、ナオさん……」
両手を前に出して某怪獣王のようにナオが迫る。鈴音は胸をガードしながら涙目で部屋の隅へと下がっていく。
「よいではないか~よいではないか~ ――――――へぶちっ! ! 」
エールの鉄拳制裁がナオの顔面に炸裂する。更にアイアンクローで頭蓋骨を掴み、その長身を生かして彼女を持ち上げる。
「ナオ。次やったらバイクで引きずり回すからな」
「ふぁい。ごめんなさい。もうしません」
「あと、内地に行くから大至急、車を準備しろ」
「イエスマム」
「死龍とも内地で事を構える。バンタウをがら空きにしない程度の人数でスカーフェイスの相手が務まる部隊を編成しろ」
「メチャクチャなこと言いやがるぜ。ワンマン経営のブラック企業かよ。お詫びとしておっぱい揉ませろ」
エールの腕に血管が浮き上がり、彼女の爪と指がナオの頭に食い込んだ。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ! ! ! ! 」
彼女に手配を任せて大丈夫なんだろうかと、壮助と日向姉妹は不安を感じたが、エールの判断を信じるしかなかった。
今回のサブタイトルは伊藤計劃さんのSF小説「虐殺器官」に登場する「計数されざる者」が元ネタになっています(元ネタと本編の内容は全く関係ありませんが……)。
ブラック・ブレットと同等かそれ以上に衝撃を受けた作品ですので、興味がありましたら是非。(劇場アニメ版もあるよ!)
次回「敵の名は東京エリア」