ブラック・ブレット 贖罪の仮面   作:ジェイソン13

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聖天子のウワサ

自伝を出版する時はタイトルを「女子高生の無駄づかい ~友達ゼロで卒業した国家元首~」にするつもりらしい。


外周区流の戦い方

 西外周区マーケット、ジェリーフィッシュは空飛ぶモノリスから巨大な蟹に変形し、臣従しているかのように美樹の前で頭部(と思われる部位)を下げる。

 エールは助けに入ろうとするが、彼女の前に3体のドローンが現れる。瓦礫の下に隠れていたのだろうか、威嚇するように頭部のブレードを展開してエールに向ける。彼女なら簡単に対処できる相手だ。鈴音を守りながらでも問題無いだろう。しかし、ドローンに手を出した直後、本体(ジェリーフィッシュ)が美樹を殺しにかかったら、助けが間に合う自信が無い。

 

 ――尻拭いのチャンスを残してやるからさ。早く来てくれ。民警。

 

『貴方ノ護衛を務める身とsiて、無断でお出かけniなルとは感心致しまSEん。お召し物まで汚さREteしマウとは……。さア、戻りmaしょウ。僕がエスコート致siます』

 

 ジェリーフィッシュを支える10本のアーム、その先頭にある1本が先端のマニピュレーターを開き、ゆっくりと美樹に近付ける。美樹は立ち上がって逃げようとするが恐怖で足がすくみ、地に着いた腰が上がらない。彼女の1メートル手前でアームの動きが止まった。

 

『……戻るってドコに……? ドコni戻るんだ? 僕は今、誰と会話しteいるんDA? 』

 

 突如、ジェリーフィッシュが小刻みに振動する。カメラや各部からランプが点滅を繰り返す。内部では何かしらの機械が動いているのか、駆動音が大きくなっていく。スピーカーからは理解できない言語を高速で唱え続けている。

 その全てが終わり、ジェリーフィッシュは落ち着いた様子で再びカメラを美樹に向ける。

 

『■■■様。私の車で申シ訳あリまseんが、▲▲までお送りいたします』

 

 3発連続した銃声、ジェリーフィッシュの背後から9×19バラニウム弾が迫る。背部装甲目がけて直進するが、数十センチ手前で青白い燐光が瞬いた。空中に浮かび上がる無色の膜の上で弾が潰れ、その場に堕ちる。

 背部装甲のハッチが開き、カメラレンズがせり出す。陽光に反射したレンズの表面にシグザウエルP250を構えた常弘が映っていた。

 

『見つkeたゾ……。里見蓮太郎ォォォォォォォォォォォ!!』

 

「ちょっと嬉しいけど、今は勘弁して欲しいかな」

 

 顔立ちとスタイル、スーツ姿、拳銃という共通する記号が多いからだろう。ジェリーフィッシュは常弘を蓮太郎と認識する。蓮太郎への怒りと憎しみにかられ、それに呼応するようにタービンが急速回転。ジェリーフィッシュのボディが浮かび上がり、接地用のアームが折り畳まれた。

 

 美樹への注意が逸れたタイミングでエールは9mm拳銃を抜いてドローン2体を銃撃、足元に近付いた1体を踏みつぶす。

 撃ち抜かれたドローンの1体はまだ動力が生きていた。壊れたラジコンのように辛うじて立ち上がろうとするが、それに気づいた鈴音が「えいっ」と拾った鉄パイプで叩き潰した。

 

「お見事」

 

 エールは鈴音の手を引っ張り、美樹の下に駆け寄る。壮助の挑発が効いているのか、ジェリーフィッシュの興味は美樹から逸れている。

 

「大丈夫か? 」

 

 エールが手を差し出す。美樹は涙目になりながら手を握るが、足に力が入らず、上手く立ち上がれない。

 

「ご、ごめん。腰が抜けちゃった……」

 

「気にすんな。どうせ私が担ぐんだ」

 

「やっぱり頼りになるなぁ。エール姉ちゃんは……」

 

 聞き慣れたバイクのエンジン音が近づいてくる。目を向けると、エールの愛車(2号機)にティナが跨っていた。バイクには乗り慣れているのだろうか、トップスピードで近づくとブレーキターンをかけてエール達の目の前に制止する。

 彼女に続いてジープとミニバンが続く。

 

「良かった。無事でしたか」

 

「ああ。何とかな。今、義塔たちがあれを引き付けてる」

 

 エールはティナの視線が自分の左腕に向いていることに気付いた。死龍との戦いでつけられた傷が開き、そこから血が滴っている。高周波ブレードがバラニウム製だったため、再生が阻害されてここだけ治りが遅かった。

 

「気にするな。赤目ギャングやってりゃ日常茶飯事だ」

 

「貴方がそう言うなら……」

 

 ティナはため息を吐くと、ポケットからスマホを取り出し、エールに向けた。それを見たエールは眉間に皺を寄せる。鈴音と美樹も画面を覗くが、同じ表情を見せる。

 

「いや、英語わかんねーんだけど」

 

「森高さんからです。『エール達をスタジアムから連れ出して。あと西側に近付かないように』とのことです」

 

「あいつら……何をやるつもりなんだ? 」

 

「ろくでもないことなのは確かです」

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

『貴様あああAAAアあアあ! ! ■■■様に当たっTAらドウsuる! ? 』

 

 ――狂ってるのに至極真っ当なこと言うなぁ……。

 

 常弘は全速力でスラムの小屋と小屋の間を駆け抜ける。彼の背後には十数メートルの高度を維持してジェリーフィッシュが追随していた。風圧で地上のバラック小屋を崩し、飛んできた瓦礫で道を潰される。しかし、我堂のプロモーターとして幾多の修羅場を潜った彼は難なく瓦礫を飛び越える。

 ただ闇雲に走っている訳ではない。彼の左耳には常備しているインカムが入っており、()から状況を見ている詩乃から走る方向の指示やレーザー砲の照準と回避する方向が伝えられる。

 

『朱理。もう大丈夫。回収お願い。その後は場外まで走って』

 

『了解』

 

 ポイントで待っていた朱理が道に飛び出した。タックルするように常弘に抱き付くと赤目の脚力で一気に飛び上がった。バラック小屋の屋根を足場にして更に跳躍、観客席に着地。コンコースに繋がる出入り口に飛び込んだ。

 

『逃geruナ!!里見ィィィィィ!!』

 

 ジェリーフィッシュが常弘と朱理を追いかけ、観客席に向かってホバリングする。光を収束させたレーザー砲を向け、コンコースを焼き払おうと照準を向ける。

 発射の寸前、轟音と共にジェリーフィッシュに影がかかった。陽光を遮ったのは雲ではない。カメラを上に向けると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 「スタジアムの屋根」という総重量200トンの質量兵器

 

 

 これが常弘たちの狙いだった。質量兵器が使える場所にジェリーフィッシュを誘導するため、蓮太郎だと誤認される可能性が高い常弘が囮となった。その後、朱理が常弘を回収した直後に壮助は斥力フィールドで屋根の支柱を切断、同時に詩乃も支柱をへし折り、屋根を崩したのだ。

 鉄骨とガラスが降り注ぐ中、ジェリーフィッシュは機体を上に傾け、レーザーを放つ。熱線で鋼鉄の雪崩を焼き払うが、()で落ちて来る屋根に対して()のレーザー掃射は焼け石に水でしかなかった。

 ジェリーフィッシュはスラスターを吹かせて脱出を試みたが、あまりにも判断が遅かった。

 空飛ぶモノリスは崩落する屋根と共に地上のスラムへと沈んでいった。

 観客席とフィールドの四分の一が瓦礫の雨で潰れる。斥力フィールドがあったとしてもこの質量を前にしては無事ではいられないだろう。落下コースに人が残っていないのは常弘がジェリーフィッシュを引き付けている間、壮助と朱理で確認している。しかし、想定以上の威力とこれを発案した自分のイニシエーターに壮助は身震いした。

 

「こんな戦い方、内地じゃ出来ねえな」

 

「いや、出来るでしょ。保険料が上がって、空子に怒られるけど」

 

「……。内地でこんなことやったら飯抜きだからな」

 

「それは困る」

 

「じゃあ、やめろ」

 

 壮助のスマホがポケットの中で振動する。取り出すと画面には「発信者:小星」と表示されていた。

 

 

『義塔。敵はどうなった? 』

 

「大丈夫だ。鉄の布団の中でおねんねして――――」

 

 

 壮助がフィールドを見下ろした瞬間、ジェリーフィッシュが浮上してきた。自身に覆い被さる瓦礫を斥力フィールドで弾き飛ばし、スタジアム全体に鉄の雨を降らせる。急速回転したローターから生み出される空気の流れはジェット噴射のように地上を吹き払う。

 ジェリーフィッシュのカメラが壮助と詩乃の姿を捉えた。

 

 

 

「ごめん。嘘ついた」

 

 

 

 ジェリーフィッシュのレーザー砲の照準が壮助と詩乃に向かい、光が収束していく。

 詩乃が壮助の服の襟を掴み、スタジアムの外に飛び降りた。直後、数千から一万度に達する高熱がスタジアム上部を焼き払い、沸騰したコンクリートが四散する。貫通したレーザーは場外の廃ビルを飴細工のように溶断していく。

 飛び降りた先は駐車場だった。詩乃は壮助をお姫様抱っこした状態で着地、地面にクレーターを作りながらも脚を曲げて衝撃を緩和する。

 

「義塔! ! 大丈夫か! ? 」

 

 律儀に場外で待っていた小星ペアが駆け寄る。

 

「隠れろ! ! あの野郎、お前を追いかけるぞ! ! 」

 

 ジェリーフィッシュがスタジアムの外に飛び出した。彼は即座に小星ペアを見つけると底部のハッチを開放し、多数の棺のようなものを落としていく。人間一人が収まるサイズだ。それは空中でフレームが分割し、変形。機銃と弾倉をぶら提げた小さな戦闘機になる。

 

『アハハハハハハ!!ShineEE!!死ねエえEEえ!!里見蓮太郎オオオオオオ!!』

 

 朱理は常弘を抱え、目を赤く輝かせて跳躍。隠れる場所がない駐車場から200m先にある廃ビル群へ駆け抜ける。壮助も斥力スケートで滑走、詩乃も自分の足で駆け、小星ペアに追随した。

 戦闘機型ドローンがスラスターを吹かせて追跡。ジェリーフィッシュ本体も前傾姿勢になり、ビル群の中へと巡航していく。

 

「いつから民警はターミネーターやトランスフォーマー相手にドンパチする仕事になったんだよおおおおお! ! ! ! 」

 

 西外周区の廃墟群で壮助の嘆きが木霊した。

 

 *

 

 スタジアム場外、壮助達とは離れた駐車場でエールは浮遊するジェリーフィッシュを目撃した。ジープの上に立ち、双眼鏡で空飛ぶモノリスが廃ビル群への消えるのを見届ける。

 

「あんなのどうすりゃ良いんだよ……」

 

 スタジアムの屋根を崩す攻撃にはさすがの彼女も度肝を抜かれた。しかし、それだけの攻撃を以てしても傷一つつけられない敵に対し、珍しく諦めの言葉が出る。せめてもの救いがあるとすれば、サヤカが運転するミニバンで鈴音と美樹を避難させられたことぐらいだろう。

 

 エールの下にはティナとトオルが残った。フクロウの因子を持つティナ、保有因子は不明だが目が良いトオルは肉眼で同じものを捉える。

 

「イマジナリーギミックに超バラニウム合金装甲ですか……。厄介な敵ですね」

 

「何か策でもあるか? 次はビルでも崩すか? 」

 

「いえ、そういった面制圧の攻撃は通用しないでしょう。可能性があるとすれば点の攻撃――貫通力のある武器ですね」

 

「そのライフルで抜けそうか? 」

 

「さすがに厳しいと思います。戦車が欲しいですね……」

 

 それは冗談のつもりだった。いくら灰色の盾が自衛隊や旧在日米軍の武器を使っていると言ってもさすがに戦車や装甲車の類は持っていないだろうと思っていた。しかし、“戦車”というワードにピンと来たのか、エールは腹を抱えて大笑いする。

 

「あっははははははは! ! 戦車! ! 戦車か~! ! 」

 

「何ですか! ! こっちは大真面目に――」

 

 

 

 

 

「ウチに戦車あるぜ」

 

「マジですか」

 




オマケ 前回のアンケート結果

ジェリーフィッシュ「機械化兵士格付けチェック!!ティナ・スpuラうトはどれだあああああ!?」

回答
(2) 鈴音+金髪ウィッグ+ガンプラ(不正解)
(0) エール+金髪ウィッグ+ライフル(不正解)
(3) ティナ・スプラウト(正解)
(3) 髪を下ろしてカラコンつけた弓月(不正解)
(17) 壮助+金髪ウィッグ+ピザ(絶対アカン)


ジェリーフィッシュ『そkoに居タか!?ティNA・すプラ宇Toオオオオ!!』

壮助「違う違う!!性別すら違う!!こっち来るなああああああああ!!!!」

ジュッ(レーザー砲で壮助が焼かれる音)

ティナ「Oh my god! ! He killed Mr.Yoshito! ! 」
(訳:なんてことですか! ! 義塔さんが殺されちゃいました! ! )

詩乃「You bastard! ! 」
(訳:この人でなしー! ! )



次回「秒速1800mの徹甲槍」

詩乃「ごめん。ガストレアとの戦いで一等地のビルを崩しちゃった」壮助「 」

  • 今晩から飯抜きな。
  • もう無理。ペア解消する。
  • 気にするな。ビルなんてまた建てればいい。
  • そんなことより天誅ガールズの話しようぜ。
  • 朝霞がやったように偽装しよう。
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