でも主役はオルクセン海軍ではありません。
オルクセン王国史 二次創作
鋼鉄の牙
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オルクセン王国(すでに国名をオルクセン連邦とし、国王の政治的権力をほぼ完全に排除して生まれ変わってはいたが)において、兵器の近代化は周囲の軍拡に合わせたものであったと言われる。
オルクセンが最後に行った戦争である、ベレリアント戦争で見せた数々の軍事的偉業……それは人族各国が大いなる衝撃を受けるとともに、軍の近代化を推し進める切っ掛けとなった。彼らは仮にオルクセンと戦争を行う場合、彼らの現有戦力では抗しきれないと判断せざるを得なかったのだ。
このことは特にキャメロットとグロワールにおいて顕著であった。キャメロットは人族としてはもっとも友好的な国家として付き合っていたから、彼ら自身がオルクセンと戦うことは考慮しなくてもよかったが、それだけにオルクセンの成しえた成果に恐怖していた。
特に海軍の魅せた水雷夜襲戦術、通商破壊戦術、そして英雄的な最期を遂げた第11<屑鉄>戦隊の海軍魂と開戦時の対地支援の効果……陸戦での砲兵の能力も相まって、ここにキャメロット海軍は新世代の戦列艦を登場させるに至る。
艦名<ドーントレス>。それまでの戦列艦と異なり、大口径で統一された主砲を多数装備し、特に側面への射撃において射法を統一して大量の砲弾を短時間に集中させることを可能にした巨艦である。また機関出力も蒸気タービンという新機軸を用いて倍増し、それまでの艦より優速で重防御でもあった。
<ドーントレス>の誕生は、一夜にして世界中の海軍を時代遅れとした。各国は対抗するために競って同様のコンセプトを持つ艦艇の建造に邁進した。それはオルクセンにおいても同様であった。
オルクセン海軍新型戦列艦<オルクセン>。国名そのものを名付けられた、オルクセン海軍の至宝ともいうべき一隻である。陸戦で定評のある大型砲を転用した主砲は連装4基8門とやや少ないが、オーク族の体力と開発した水圧式自動装填装置の働きにより射撃速度が向上しており、海戦においては手数で圧倒することが可能であると考えられていた。
また主機関にようやく実用化に成功した完全な石油専焼ボイラーを搭載し、機関・燃料区画の縮小と出力向上を果たし、巨艦に見合わぬ機動性が与えられていた。この機関についてはキャメロット海軍も興味を示し、共同開発を持ちかけてすらいる。
星暦906年11月27日。
30年前にキーファー岬沖海戦のあったその日、オルクセンは海戦記念式典を挙行し、諸外国の艦艇も招待して観艦式を挙行した。
自国民のほか諸外国民からも抽選、あるいは招待された観客は、これもオルクセンの誇る大型客船に乗り込み、微速前進する船に揺られながら、艨艟たちを待っていた。
大鷲族のほぼ総員が動員された編隊飛行に連れられて姿を現したのは、<オルクセン>とその同型艦<エルフィンド>を先頭とした第1戦隊。その側方には諸外国からの招待艦が並び、こちらは<ドーントレス>が先頭を務めている。全てを圧するかのような巨砲はぴかぴかに磨き上げられていた。
受閲艦艇群が、ゆっくりと観閲艦艇に近づいてくる。すでに象徴的な地位に退いてはいたが、今なお隠然とした影響力を国内外に持つオルクセン国王グスタフ・ファルケンハインと王妃ディネルース・アンダリエルは、観閲艦艇群の旗艦とされた第11戦隊旗艦<メーヴェ>にて、その勇姿を見つめていた。
<メーヴェ>は海上護衛・哨戒をその主任務として設計建造された最新鋭の巡洋艦である。同型艦の<コルモラン><ファザーン>とともに第11戦隊を構成しているが、任務上単艦行動が多く、実のところ戦隊として統一行動を取るのは、編成直後の訓練を除けばこれが初めてであった。実用化に成功したばかりの航空機-水上偵察機を搭載しており、大鷲族の助けを借りずとも洋上で広域哨戒が可能な、オルクセン海軍自慢の艦艇である。
『<オルクセン>より信号、コレヨリ礼砲射撃ヲ行ウ。各艦準備サレタシ』
「旗旒信号にて返信。了解、とな」
マストの最上部、露天艦橋で前方を睨みつつ、<ドーントレス>にて招待艦戦隊の臨時指揮官となったホーンブロワー提督が命令を飛ばす。
「信号手! 後続艦に信号、礼砲射撃準備サレタシ、だ」
「キャプテン・ブッシュ、オルクセン国王に敬意を表し、礼砲21発だ」
「アイアイ・サー! 艦長より主砲射撃指揮所、礼砲射撃指揮を取れ!」
「主砲射撃指揮所より各部署、これより射撃指揮を取る! 弾種空砲、主砲仰角最大、全砲門、砲撃準備!」
「後続艦より応答信号、全艦砲撃準備よし」
「よろしい。<オルクセン>に信号、招待艦戦隊、全艦礼砲射撃準備ヨロシ。旗艦ノ命令ヲ待ツ、とな」
「アイ・アイ・サー!」
この日、観艦式に参加した市民、新聞社の記者などは、皆巨艦群の大砲の轟きに感動したことを記している。各艦見事に統制された射撃を見せ、特に<ドーントレス>と<オルクセン>が同調して行った全砲門斉発の凄まじさは、長く語り継がれたのである。
やっぱりキャメロット海軍には H 提督とミスター B がいないとね。
※ネタ元でいえばデュートネ戦争の時の人になりそうですが……
とはいえさすがに<ドレッドノート>の名を使うのはちょっとはばかりました(w