ネコミミあるだけでマチアプ楽勝時代は終わった~獣人がいる日本で彼氏を作りたい~ 作:棗の
「ふみすけさん、ジャズ好きなんだ……いいかも♪」
マチアプが楽しいって、やっと思えた。
『ジャズ好きってなんか高校生で気取ってるって思われるのがイヤで笑 親がジャズピアニストなんですよ 都内のジャズバーで働いてて』
文字が踊ってるように見える。
向こうで、柔らかい声の男の人が喋ってる気がする。
ふみすけさんのプロフィール写真をもう一度見る。
優しそうで、話しやすそうな人。
最初見たときはちょっとナシ寄りかなって思ったけど、今はそんなこと思ってない。
もっと知りたい。
だけどいっぱい質問すると向こうも嫌だと思っちゃうから、会話の流れの中で聞きたい。
トークルームに戻ると、もう既読がついてた。
ふみすけさんもきっと家にいて、わたしみたいに部屋でベッドに寝て、スマホを見てるのかな。
わたしのプロフィール写真、わたしみたいに見てるのかな。
わたしと同じ時間を過ごしてくれてる。
『地区大会入選ってほんとすごいですよ 僕は予選どまりで笑』
自然と笑みがこぼれる。
嬉しい。
本当は入選じゃなくて優勝って言いたい。褒めてほしい。
プロフィールの文字じゃわからないふみすけさんが、ぼんやり見えてくる。
謙虚で、優しくて、飾らなくて。
『大会の時大変でした 喜ぶとすぐ爪が出ちゃうので笑』
ちょっとだけ怖かったけれど、わたしも飾らない自分を出してみた。
すぐに既読がつく。
スマホの画面をじいっと見つめて、落ち着かないからカリカリを爪でいじっていた。
『そうなんですね! 可愛いです! ミミとかしっぽも、嬉しいと動いたりするんですか?』
可愛いって言われた。
嬉しい。
『そうなんですよー 電車の中とか大変なんです』
『ですよね でも、気持ちが伝わりやすいっていいこともあると思います!』
カリカリをいじる爪が止まる。
『嬉しい時、言葉や顔だけじゃなくて、全身で伝わるってことですよね? それ、めっちゃ可愛いと思います!』
ふわっと顔が熱くなった。
照れてる。いまのわたし。
しっぽがばたばた動いて、毛布を何度も叩いてる。
ママだってそう。パパに「愛してる」って言うときはぴょんぴょん跳ねて全身で表現するし、しっぽだってミミだってぱたぱた動かしてる。
それをパパは楽しそうに見てる。
『僕はなに考えてるかよくわからないって言われること多くて笑』
そっか。人間だと、そういう悩みもあるんだ。
ふみすけさん、確かにちょっと表情が固いかも。
だけどそういうところもかっこいいし、芯がしっかりしてそう。
『そんなことないですよ かっこいいと思います』
嬉しい気持ちのままにそう打ってしまって、気が付くと送信されていた。
まずい、と思う間に既読がついた。
しっぽの先まで逆立っている感覚がする。
『ありがとうございます! 嬉しいです』
よかった。喜んでくれた。
わたしみたいに、照れてくれてるのかな。
メッセージがやりとりされるごとに、気持ちがつながっていく。
ネコのわたしでも、人間のわたしでもなく、
もっともっと、知りたい。
もっと、近くにいたい。
ふみすけさんと。
ちょっとだけ怖かったけれど、気持ちは止まらなかった。
指が動いて、文字を紡いでいく。
『今度の土曜日遊びに行きませんか』
『土日に一緒に遊びませんか』
思わず笑ってしまった。
わたしのメッセージと同時に、ふみすけさんからも同じメッセージ。
「あははっ!」
タイミングまでぴったり!
ふみすけさんがわたしと同じこと言ってる!
すごくおかしくて、しばらく笑っちゃって、しっぽがばたばたしすぎて枕と毛布が床に落ちちゃった。
笑ってる間に、またメッセージが来ていた。
『そしたらフラペチーノ、リベンジしましょうよ! 僕も甘いの大好きなんです』
わたしは気持ちのままにメッセージを返した。
『はい! 一緒にいきましょう!』
ぴょんとベッドから跳びあがって、スマホを置いてママの部屋へ。
マタタビの香りがふんわり香って、ますますゴキゲンになる。
「あれー? 麗奈ちゃん、すっごく楽しそうねぇ」
ママはいつも通りマタタビでふわふわ酔っぱらっていた。
「うん。デート、決まったから」
「あらぁよかったわねぇ! さすがあたしの娘っ! 麗奈ちゃんは世界イチ可愛いからねぇ! このミミもしっぽも、ほんっとにカワイイ!」
ママも大喜びして、わたしをぎゅっと抱いて頭を撫でてくる。
わたしはママを見上げて、自信満々に言った。
「ミミとしっぽだけじゃないよ。わたしだから、デート決まったの」
わたしのミミとしっぽが、ひらりと揺れた。
【あとがき】
作者です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
人外と人間のゆるーい交流ものを書きたくて、慣れないながらも書いてみました。
人外ゆえの癖とか仕草とか、現代日本に人外がいるがゆえの世界観とか、そういう物を詰め込んでみました。刺さる人に刺さればいいやと思って書きました。
お楽しみいただけたのなら幸いです。
もしよければ、感想・評価・ブックマーク等頂けると大変励みになります。
宣伝になりますが、長編も執筆しております。
ご興味がありましたら、そちらも読んでいただけると幸いです。
この話と違い、かなり暗いですが……。