世界は腐っているので私がぶっ潰す 作:NTR絶対ぶっ殺すマン
「ねえ、エミリ!昔は他の種族のみんなと仲良くしてたって本当なの?」
「そうよ。もっとも、魔族を協力して倒すって同盟の下だけどね」
「へぇ……みんな、その時は一緒に仲良くしてたんだ」
もう何年も前の、古い記憶。
そうやって目を輝かせて話を聞いていたエルの横顔が今でも眼に焼き付いている。
「ねえエミリ!わたしはさ、将来外交官になってみたいんだ!暴力じゃなくて、私は会話で世界を動かしてみたい。そんでもってわたしの優秀な手腕で戦争をあっけなく終わらせてやる!」
ああ、そうだ。この時だった。
エルが初めて私に夢を語ってくれた時だったんだ。
「きっといつかみんな分かり合える。だって一度は手を取り合ったんだから。魔族も、まだ手を取り合ったことは無いかもしれないけど、絶対分かり合えるって私は信じてるよ」
「ふふっ、そう……応援してるよ」
「……まあ、もう出来なくなっちゃったんだけどね」
「え?」
楽しく語っていたエルの声が急に暗くなる。
「エミリのせいでさ、私の身体こんなにされたんだから」
そう言ってエルが私の方に振り向くと、エルは半身が火傷のように爛れていた。
「……っ!」
「ねえ、責任取ってよエミリ。あなたのせいで、私はこんなことになったんだから」
ねばついた右手が私の首に絡みつく。
「ねえ、目を逸らさないでちゃんと私の方を見てよ、エミリ」
「違う、違う……私のせいなんかじゃ……」
「ねえエミリ、またそうやって言い訳するの?ねえ、ねえ、ね────
「っ――あ、ああああっ!」
────夢?
「はぁ……はぁ……」
やけにリアルな夢だった。
もう起きていると言うのに、心臓はまだ焦って激しく打ち続けている。
「今、何時──」
窓のカーテンを開ける。
外は真っ暗だ。
「そうだった……帰ってきて疲れたから少し寝たんだ……」
ちょっと……顔を洗ってすっきりしよう。
きっとあんな夢見たあとだから相当やつれてる。
「ん──しょ」
ベッドから降りて、まずはストレッチがてら背筋を伸ばす。
「なんか忘れてる気がするけど……まあいいか」
もう遅いし、顔洗った後サッと晩ご飯作って寝てしまおう。
明日も結構早いし。
そんなことを考えながら、特に意識することもなく洗面所の扉を開ける。
「……ふぇっ?」
間抜けな声を出してしまったのも無理はない。
何故なら──────目の前に華奢な体つきをした少女が全裸で目の前にいたのだから。
「ちょっ、あっ……ごめんなさい!!!!!」
考えるよりも早く、私は目にも止まらぬ速さでドアを閉める。
「そうだ……そうだった……!あの子連れ帰って来たんだった……!!」
忘れてた。
もう、なんでこんな重要なこと忘れてたんだよ私……!
「おい」
と、扉一枚向こうから声が聞こえる。
「替えの服が欲しい。何でも良いから持って来てくれないか?」
「アッ、ハイスグモッテキマス」
ドクドクと心臓の鼓動が収まらぬまま洗面所を後にする。
やばい、今めちゃくちゃ動揺してるわ。
「ちょっと、一回しんこきゅう────」
気分を落ち着ける為にその場ですーはーすーはーと深呼吸する。
「ふーーふぅ……」
あの子女の子だったんだ。
まあ確かにちょっと声が女々しかったけどさ……
衝撃事件が立て続けに起こって身体がびっくりしてるのか、もう興奮し過ぎて心臓が痛い。
落ち着け、落ち着けよ私。
まずは服、服だ。裸のままにしとくのはダメだから、まずは服から探そう。
「えっと、確か使わなくなった服とかはここら辺に」
クローゼットの中からあの子に合いそうな手頃な服を適当に幾つか見繕い、それを洗面所へと持っていく。
「私のお古を色々持って来たけど……これで大丈夫かな」
「着れれば何でもいい。さんきゅ」
「じゃ、じゃあ私は出た先で待ってるから」
服を渡して、逃げる様に洗面所を後にする。
「はーーーっ」
一旦休憩。
頭からソファーにもたれかかる。
「これで良かったんだよね」
私は、あのままでいるとどうも後悔してしまうような気がして、店主さんにも伝えずあの子を箱から強引に出してここまで連れて来た。
今店では逃げられたという事で大騒ぎになっている頃だろう。
……私があのまま帰ってたら、エルに嫌われちゃう気がした。
ただそれだけ。
「ふふっ、ほんとにらしくない」
もうエルはいないのになにまだたらたらと考えてるんだと、自嘲してみたりもしてみる。
私はエルにこんなにも支えられていたって、今更理解した。
それも考えや、気持ち、行動まで全部。
私には何のメリットもないのにあの子を助けて、家まで連れて帰るなんてエルがいなかったら絶対しなかった。
エルが教えてくれた考えが、私を動かしてくれたんだ。
「私ってやっぱ、エルのこと好きだったんだなぁ」
でも、その思いは伝えられない。
彼女はもう、行ってしまったから。
「うーい上がったぞー」
と、あの子が洗面所から出てくる。
「────かっ」
かわいい……!!
男ものの服を着ていたからある程度緩和されてたけど、こうして私のお古の女物の服を着てると、やっぱりこの子は女の子なんだなと再認識させられる。
「オイ、なにジロジロ見てんだよ」
「な、なんでもない。ただ似合ってるなーって」
いや……それにしてもかわいいなこの子。
口調は男らしくも服はお洒落している女の子と言うギャップは中々に来るものがある。
「まあ、取り敢えず夕飯にしよ。何か苦手なものとかある?」
「ない、食べれれば何でもいい」
「おっけー。えっと……」
「名前か?俺の名前はリル・ルシュト、呼び方はリルでいい」
「じゃあ、リル。短い間だけどよろしくね。私はエミリって呼んで」
そう言うと、彼女は少し驚いた顔をする。
「……魔族なんかに名前を教えるのか?」
「別にいいでしょ?どんな種族に対しても対等に接するのが私のモットーなの」
魔族などに名乗る必要はない。彼等は人語を解すだけの化物、対等に会話するだけの価値はないのだ、と。
子供の頃から口酸っぱく言われてきた、世間一般の常識。
そんなものくそくらえだ。
「リルはそこで待ってて。なんか作るから」
が。
「ちょっと……待っててって言ったのに」
「俺はそんな人を使わせて飯を食うような奴じゃねぇよ、なんか手伝えることが有れば手伝うぜ?」
予想外のその言葉に、思わず少し驚く。
「……じゃあ、ちょっとお願いしようかな」
言い忘れてましたけど、この小説百合百合します。
作者は百合に脳を焼かれているのです。