世界のシステムを書き換える最強能力「管理者権限」を手に入れたので、日常をハッキングして無双します! 作:Laggliches
まず初めに今回から本格的に呪術廻戦要素が出てきます。待っていた人は本当にすみませんでした。そしてお待たせしました!今回も四人の戦いをご覧ください!
その夜、平和な街の静寂を切り裂いたのは、これまでとは明らかに質の異なる、肌を刺すような「重圧」だった。
月明かりが鈍く反射する臨海地区の倉庫街。
潮風が止まり、まるで空間そのものが凍りついたかのような錯覚を覚える。そこに現れたのは、これまでの無骨な四脚歩兵型とは似ても似つかない、禍々しい漆黒の球体状の自律兵器だった。
光を吸い込むようなその体躯は、存在するだけで周囲の現実を歪めているようにさえ見える。
【……九条蓮さん、警告。対象『レガシー・タイプゼロ』を確認】
蓮の脳内に、システム案内人の冷徹な機械音声が響く。
「なんだあいつ。僕のスキャンが弾かれる。……エラーか?」
【はい。対象の装甲は『対・論理演算装甲』機械魔法によるハッキング、および物理干渉の99%を、空間の揺らぎとして散逸・無効化します。……現在のあなたの装備で、有効打を与える確率は0.002%です】
蓮は小さく舌打ちをした。
自慢の浮遊砲台を展開したところで、あの漆黒の球体に触れた瞬間に構造データを書き換えられ、粒子化して消えてしまうのがオチだ。
空間魔法で無理やり捻り伏せることも理論上は可能だが、その底力は未だ未知数……。下手に使えば、自身の肉体が時空の反動で崩壊する危険性を孕んでいた。
「……へえ…僕の『天敵』ってわけだ。マザーの奴も、少しは学習能力が上がったらしいな」
ジジ……と不穏な駆動音を立て、漆黒の球体から無数の触手のようなレーザー砲が、生き物のように蠢きながら展開される。
だが、蓮の行動はそれよりも速かった。
背中の装甲が跳ね上がり、高出力のジェットパックが青白いプラズマを噴き出す。
「一ノ瀬さん、春輝、庄司!聞いてくれ。あいつには僕の『論理』が効かない。……ここからは、僕が『囮』になる!」
「九条くん、無茶よ! あなたの防御システムだって無効化されるかもしれないのよ!?」
一ノ瀬の悲鳴のような制止の声が響く。しかし、蓮の唇はすでに不敵な笑みの形に歪んでいた。
「大丈夫さ。僕には『最高に非論理的な仲間』がいるからね。……庄司、春輝!準備はいいか?」
「……おう! 待たせすぎだぜ、蓮」
地を鳴らすような足音とともに、庄司が拳を鳴らしながら一歩前に出た。
その分厚い拳からは、『青い炎』が陽炎のように激しく揺らめいているように見えた。
庄司は隣に立つ少年の肩を、バチンと力強く叩いた。
「ブラザー、準備はいいか!」
「はい! 師匠との地獄の特訓……その成果、ここで見せます!」
春輝が力強く頷く。
彼の左腕には、蓮が昨晩、不眠不休で密かに構築した最新鋭のデバイスが装着されていた。
流線型の青い回路が脈動するように明滅する『電磁収束手甲』
庄司の規格外のエネルギーを、春輝の身体能力で限界まで加速させるための「鍵」だ。互いの視線が交差し、言葉はなくとも意思が完全に同調する。
「さあ、調理を始めようか!」
蓮のその言葉を合図に、二人の戦士の闘志が爆発した。
「作戦開始(ミッション・スタート)だ!」
蓮が絶叫すると同時に、彼は自身の超並列演算能力のすべてを「完全回避」と「広域挑発」へと全振りした。
ーードォン!!
鼓膜を破らんばかりの爆音が響き、蓮の身体が夜空へと打ち上げられる。
背中のスラスターを限界出力(オーバーロード)まで吹かし、漆黒の球体の周囲を、光の軌跡を残しながら高速移動する。
「こっちだ、デカブツ! 僕の優秀なデータが欲しいんだろ? ほら、追ってこいよ!」
超高熱のレーザーをあえて紙一重でかわしながら、蓮は中指を立てる。
ターゲットを蓮にロックした漆黒の球体が、その全身の砲門を一斉に駆動させた。
ーーキィィィン!!
大気が悲鳴を上げ、極太の熱線が夜の闇を白濁色に染める。
蓮が直前までいた空間が文字通り削り取られ、激しい爆炎と衝撃波が周囲の倉庫をなぎ倒した。
「そんなもんかよ! 天才を舐めるな!」
爆煙を突き抜けた蓮が、さらに挑発を重ねる。それに応じるように、球体兵器の駆動音が一段と高まり、全ての演算が頭上の蓮へと集中していく。
だが、それこそが蓮の、そして彼らの狙いだった。
球体の真後ろ――完全なる死角、光すら届かない影の中から、二人の質量が爆発的な速度で飛び出した。
「おらぁぁぁーーッ!!」
庄司が地面を蹴る。その踏み込みだけでコンクリートがひび割れる。
「一ノ瀬さん、座標をーー」
「座標なんて関係ねぇよぉぉ!!」
彼には理屈もクソもない。
庄司はそのまま時速百キロを超える速度で球体の正面から突っ込んだ。
ガシッ、と鈍い金属音が響く。球体の表面から蠢いていた触手のような砲台を、その太い両腕で強引に十本ほど束ねて掴み取ったのだ。
装甲が擦れ合い、火花が散る。
ミシ、ミシミシ……と超合金の接続部分が悲鳴を上げーー。
「らぁぁぁッ!!」
ブチブチと不快な金属音を立てて、庄司は砲台の群れを根こそぎ引きちぎった。黒い火花と未知の液体が飛び散る。
その一瞬に生まれた「致命的な隙」を、戦士としての本能が見逃すはずがなかった。
庄司は腰を深く落とし、拳を限界まで引き絞る。これまでの地獄のような鍛錬のすべてを、己の全霊を乗せた、渾身の打撃ーー!
「黒閃っ!!」
思いを拳にのせて球体に殴るが、当然黒い火花など出ず数メートル後ろにのけぞらせただけだった。
「……っ、くそ!」
庄司は地団駄を踏み、悔しさをあらわにする。
物理がそんなに効かない、その壁の厚さに歯噛みしながらも、さらに強い打撃を叩き込もうと再び地を蹴った。
だが、その視界が不自然に浮き上がる。
上空から超高速で滑空してきた蓮が、庄司の脇を抱え上げて強引に離脱したのだ。
「庄司!落ち着け、今の状態じゃあいつを倒せない!」
「チッ……!分かった」
「……だから春輝と協力をすーー」
ーーキィィィン!!
体制を立て直した球体が、まだ残っていた砲台で二人を狙って撃ち抜いた。
「あっ……」
間一髪で避けた蓮だったが、手が滑って庄司を落としてしまった。しかし、「大丈夫だ!任せとけ!」
と庄司はグッドサインをしながら落ちて……そのまま着地した。
「嘘でしょ!?50メートルはあったわよ!?」
「だから、関係ねぇって!」
服についた砂埃を払いながら捻挫や骨折などしていない、至って健全の庄司がそこにいた。
「……春輝、協力だ!作戦を思いついた!」
庄司が不敵な笑みを浮かべて春輝を見つめた。
「……え、あ、はい」
作戦も何も分からない春輝はただ返事をするだけだった。
「……いい加減囮になるのも疲れたぞ」
空を縦横無尽に飛び回る蓮は、燃料は自身の魔力なので枯渇することは滅多にないが、やる気は底を尽きそうになっていた。
球体も理由はわからないが、おそらく燃料は無限にあるので、かれこれ飛びはじめてから十分はたっていた。
「……よし、遊んでやる」
蓮がそういうと墜落するように落ちていき、地面すれすれまでいった。
蓮が狙っていたのは、さっき庄司が引きちぎった砲台たち……その一つを回収し再び飛び立った。
「案内人!この砲台を接続しろ!」
【ーー了解、接続準備……完了。右腕に砲台を置いてください】
説明通りに置くと、右腕が眩しいほどに青い輝きが夜を一瞬、包む。そしてその輝きがおさまった頃には、砲台が接続されていた。
「発射!」
右腕の砲台が、赤く揺らめき一つの丸い閃光弾が発射される。
それが球体から発射されたレーダーと衝突して爆発、相殺した。蓮は構わず続けて打とうとするが、うまく発射されない。
「……っ!チャージ式かよ!」
チャージ式の砲台だったようで、再発射には時間がかかるのであった。それに、かなりの重さがあって空中戦ではとても使いづらかった。
「ん〜やっぱりレガシーの武器は扱いづらいな」
砲台の接続を解除しながら蓮は呟いた。
球体は迎撃を図ろうと蓮に集中するーーその隙を逃していなかった。
「ーー射線軸、確定!0.3秒後に球体の装甲が、蓮くんを追うために背後へ偏るわ……そこが、唯一の『隙』よ!」
一ノ瀬の『観察眼』が、機械魔法すら通じない敵の「構造の歪み」を完璧に捉えた。
「春輝、合わせろよ!......いくぜ、ブラザー!!」
「はいっ!!」
庄司の戦術は極めて単純、かつ合理的だった。
彼は春輝の前に割り込むと、自らの体を「盾」にするのではなく「発射台」とした。
「庄司流・戦術其の一!「人間投射(カタパルト)」!」
庄司が春輝の腰を両手で掴み、自身の旋回能力と腕力を乗せて、春輝を敵の懐へと投げ飛ばした。
空中で弾丸となった春輝が、敵のコアへと迫る。球体が春輝を認識し、防御用のバリアを展開しようとする。
だが、その瞬間、一ノ瀬の鋭い声が響く。
「今よ、庄司くん!」
「へっ……バリアの展開が遅れたな!それがお前の敗因だっ!」
庄司が投げ飛ばした直後の勢いを殺さず、自らも跳躍。
ぶっ飛んだ春輝にすぐに追いつき春輝の足裏を、空中で自分の拳で思い切り殴りつけた。
「ーー其のニ・二段加速!!」ーーただの殴りである。
理屈ではない、気合いと筋肉による加速。
春輝の速度は音速に近い速度で加速、敵のバリアが展開されるよりも早く、至近距離に肉薄した。
「外側がダメなら...内側からだ!やれっ、ブラザー」
「これで、終わりだ!!」
春輝の左腕。青い回路が臨界点を超え、白銀の光を放つ。
「僕の全力っっ!!」
春輝が叫ぶ。
その脳裏には、この前庄司に教わった「黒い火花のイメージ」と、一ノ瀬が示した「必勝の座標」が重なっていた。
「新技解禁ーー『白銀閃雷(プラチナ・フラッシュ)』!!」
ーードォォォォォォォォン!!
零距離から放たれたのは、もはやただの光条ではなかった。
それは純粋な物理エネルギーと、春輝の「守りたい」という意思が結晶化した、空間そのものを震わせる一撃。
機械魔法による干渉を無効化する漆黒の装甲が、内側からの圧倒的な質量攻撃に耐えきれず、まるでガラス細工のように粉々に砕け散った。
《グ、アァァァァ!!》
漆黒の球体が断末魔のようなノイズを発し、内部から爆発する。
「庄司くん!頼みます!」
「………………」
「………庄司さん?」
庄司は春輝の声なんか聞こえていなかった。
春輝の後ろで呆然と立ち尽くしていた。しかし、彼の目は今までとは違う
『極限の集中』をしていた。
そして真っ直ぐと敵へ向かって、拳を構えた。
瞬間、庄司の拳の青い炎が想像ではなく「実体」として激しく燃え上がった。
それと同時にどこかから不気味な笑い声が響いた。
ーーしかし、あまりの集中力で庄司は気にしていなかった。
黒閃の前提として「呪力を扱える」ことが条件になっているが、呪力を纏った打撃のほとんどが『コンマ数秒』は存在する呪力との衝突との誤差。それをわずか【0,000001】秒以内に収めると空間が歪み、黒く光る。まさに『神業』に等しい。
しかし、庄司は極限の集中力で黒閃の条件を「無理やり」可能にさせることが出来た。
「黒閃っっ……!!」
庄司の拳が、敵の露出したコアにめり込む。
その瞬間、夜の静寂を切り裂くように、空間が歪み、赤黒く不気味なほど鮮やかな「黒い閃光」が走った。
流石の蓮も本物の黒閃に「………は?」と戸惑い、演算能力が低下していた。「っ、目が痛い!」
と一ノ瀬は事象に処理が追いつかないのか、目を抑えて痛みを堪えていた。
「ーーっ、マジで出たぁぁ!?」
「庄司くん凄い!本当に出たよ!」
文字通り、論理を超越した一撃「レガシー・タイプゼロ」は、内側からの破壊と『呪力』という原因不明のエネルギー干渉により、分子レベルで霧散した。
静寂が戻った倉庫街。
煙が晴れた中心で、庄司と春輝がガッチリとハイタッチを交わしていた。
「……完璧だったな、春輝!お前のあの技、超かっこよかったぜ!」
「庄司くんの加速のおかげです!あと、最後のは本当に本物の黒閃でしたね!」
「だろ!?これからは俺を「師匠」って呼んでもいいんだぜ?」
二人のやり取りを見ながら、蓮は案内人を介して戦闘記録を保存した。
「……やれやれ。僕が手を貸す必要、全くなかったね。案内人、今の二人の戦闘効率を計算しろ」
【ーー算出不能。特に庄司の最後の打撃は、現実世界の物理定数を一時的に書き換えた可能性があります……九条蓮さん、仲間の選定において、あなたは極めて「非論理的(ラッキー)」な結果を引き当てたようです】
「ラッキー、か……まあ、悪くない響きだ……ちなみに庄司の黒閃の威力は計算できるか?」
【具体的な威力は計算不能です……しかし、例で説明すると庄司さんの通常の打撃の強さを100と仮定します。そして黒閃の威力は約2.5乗と言われていますーー従って彼の威力は100000通常の打撃の1000倍もの差があります」
「千倍……はは、笑えてくるよ」
蓮はポテトチップスの袋を(どこからか取り出して)開けると、駆け寄ってくる仲間たちに笑いかけた。
「お疲れ様……さて、黒幕の男をぶん殴って倒した時のパフェよりも、もっと豪華なやつを食べに行こうか。…もちろん、庄司の奢りで」
「だから何で俺なんだよおぉ!!」
月明かりの下、四人の絆はより強固なものとなり、マザーの計画をまた一つ、おちゃらけた日常へと叩き落としたのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
夢中になって思わず4000文字を超えて5000文字になってしまいました。読みづらかったらすみません……。しかしまさかまさか庄司は初手で「黒閃」はエグいっすよ……。何か裏があるに違いないでしょう!?