世界のシステムを書き換える最強能力「管理者権限」を手に入れたので、日常をハッキングして無双します!   作:Laggliches

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みなさんこんにちは「Lagglitches」です!今回でいよいよ2桁に行きました、自分にもお疲れ様、みなさんにも感謝です。
さて、前回のラストでしたね。バスの中で蓮の眠りを愛おしそうに見ていた子『佐藤朱音』に視点をおいた回になります。バトルシーンも少なく、日常生活中心なのでお気をつけてください!


第十一話 彼女はきっと恋してる

林間学校が終わってから数日がたった頃。

 

この前、林間学校で出来事があってから、蓮を静かに狙っている……『佐藤朱音』の猛攻はそこで終わることはなく、むしろ激化していった。

 

彼女は九条蓮に気に入られようと、彼女なりに精一杯の健気なアプローチを毎日健気に続けていた。

 

まず朝の登校風景からして、朱音の健気な待ち伏せから始まっていた。蓮は眠たげな目をこすりながら通学路の坂道をだるそうに登っている。すると、後ろから朝には見合わないほどの元気な声が聞こえてきた。

 

「く、九条くん、おはよう!」

電柱の陰から教科書を胸に抱えた朱音が飛び出してくる。

 

「あ、ああ……おはよう」

蓮は若干の戸惑いを見せるが、気にしず彼女は蓮の歩幅に合わせてトテトテと嬉しそうに並んで歩き、昨日観たテレビアニメの話や、新しく買ったペンケースの話題を一生懸命に蓮に投げかけていた。

 

蓮が「うん……そうだね」と半分眠りながら適当に相槌を打つだけでも、朱音は「九条くんとお話しできちゃった……!」と言わんばかりに、小さな肩を揺らして満面の笑みを浮かべるのだった。

 

授業中でも、彼女は止まらなかった。

 

退屈な国語の授業中にも、佐藤朱音の健気な猛攻は静かに繰り広げられていた。窓際の特等席でいつものように机に突っ伏して眠気に身を任せている蓮。

 

「あー、今日の放課後は何のプロテイン飲もうかな」

 

と隣の席で、ノートの隅に筋肉の落書きをしている庄司。そんな二人のさらに隣の列から、朱音は先生の目を盗んで、小さく折り畳まれたルーズリーフの切れ端を庄司の机へとそっと滑らせていた。

 

「ね、ねぇ庄司くん、それ、九条くんに回して……っ」

 

顔を真っ赤にして小声で必死に頼み込む朱音に対し、庄司は「お、任せろブラザー!」と無駄に良い笑顔で親指を立て、授業中とは思えないほどの素早い手つきで蓮の机の端へと手紙をパスした。

 

「……ん、メモ?」

蓮がめんどくさそうにそれを開くと、そこには丸っこい可愛い文字で

『九条くん、次の休み時間、図書室の整理手伝ってくれないかな? お礼に美味しいラムネあげる!』

と書かれており、隅っこには下手くそなペンギンのイラストまで添えられていた。蓮が寝ぼけ眼のまま『いいよ』とだけ書いて庄司に突き返すと、庄司は「へへ、往復の送料な!」と心の中で勝手に手数料を計算しながら朱音の元へ手紙をリターンする。

 

手紙を受け取った瞬間に、嬉しさのあまり椅子の上で小さく飛び跳ねて先生に「そこ、静かにしなさい!」と激しく睨まれる朱音の姿を、蓮は枕に顔を埋めながら「……本当に、非効率な手紙の回し方だなぁ」と、めんどくさ変わりながらも、内心ラムネを期待していた。

 

さらに、その健気なミラクルは授業中の高度な数学の課題でも発揮された。蓮はいつものように机に突っ伏し、案内人の『オート・ライティング』を使って、脳内の0.001%の計算ラグも許さない完璧な速度で黒板の数式をノートに写させていた。

 

完璧なはずの、世界のコードを記述するシステム。

 

しかしその時、席から身を乗り出した朱音がふと、蓮のノートをじっと覗き込んで小さく声を上げた。

「九条くん、ここ……数式がちょっと間違ってるかも……。こっちの関数の符号、プラスじゃなくてマイナスじゃないかな?」

「……え?」

 

蓮が驚いて目を覚まし、案内人にログを照会する。

 

【ーー修正。空間座標の記述に0.001%のラグが発生。佐藤朱音の指摘通り、符号が反転していました。即座に自己修復を行います。……驚異的。彼女は論理演算ではなく、純粋な直感でシステムのバグを看破しました】

 

脳内の案内人すら驚愕するほどの朱音のファインプレー。

「あ、ご、ごめんね! 私なんかが生意気なこと言って……!」とあわあわと手を振って恐縮する朱音。

 

「いや、助かったよ。佐藤さんって、実は僕より頭がいいんじゃない?」

蓮は彼女に向かって冗談交じりに微笑んだ。朱音は「えへへ……九条くんに褒められちゃった……」と、ノートで顔を隠しながら嬉しそうに身悶えしていた。

 

さらに昼休みになれば、

 

「あ、あの! 九条くん、購買の新作チョコミント、私の第六感でまだ冷凍庫の奥に残ってるのを見たよ!」

 

彼女は息を荒くして教室に飛び込んできては、蓮の分のアイスを嬉しそうに差し出した。

「……僕のために、良いの?」

「…っ!もちろん!九条くんのために買ってきたから、遠慮なく食べて!」

 

 

 

お昼休みの教室では、そんな二人の様子をじっと見つめる、鋭い一瞥があった。クラスの委員長であり、その圧倒的な美貌からスクールカーストの頂点に君臨する一ノ瀬結衣は、二人が楽しそうにお喋りをしながらお弁当を食べている姿に、これ以上ないほどの焦燥感を覚えていた。

一ノ瀬の『観察眼』は、朱音が蓮のために卵焼きを一つ分けてあげようとしている瞬間を完璧に捉え、彼女の脳内の嫉妬メーターを限界まで跳ね上げる。

耐えかねた彼女は、自分の手作り弁当箱をひっ掴んで二人の席へとツカツカと歩み寄ると、

 

「九条くん。あなた、さっきから佐藤さんの好意に甘えてばかりで本当に非効率的ね。ほら、これでも食べなさい!」

 

と、自身の特製卵焼きを蓮の口へ強引に箸で放り込んだ。

蓮が「むぐっ!? げほっ……一ノ瀬さん、急に何するんだよ」と目を白黒させて咽せる。

一ノ瀬は「委員長として、栄養バランスの偏りを見過ごせなかっただけよ!」と顔を真っ赤にして澄ました顔で言い放ち、そのまま足早に自分の席へと戻っていくのだった。

 

さらに放課後の委員会活動で、サボり魔の蓮が運悪く先生に捕まって重い書類の箱を運ばされているのを見つけると、

 

「九条くん! 私、半分持つよ! こう見えて、こないだの庄司くんのプロテインシェイク大会を後ろから見てから毎日、腕立て伏せを『1回だけ』やってるから!」

 

とあわあわしながら箱の端を力一杯に掴み、裏で蓮が空間ハッキングを使って箱の質量を9割カットしているとも知らずに、細い腕で満面の笑みを浮かべながら一生懸命に手伝ってくれるのだった。

そんな朱音の健気なアプローチの連続に対し、一ノ瀬結衣は放課後の教室でもなお、腕を組みながら冷たい瞳を微かに揺らして二人の席へ再び歩み寄ってきた。

 

「委員長として言わせてもらうけど、九条くん、あなた佐藤さんに宿題を丸写しさせる気じゃないでしょうね?そんな非効率なサボりは許可できないわ」

 

今度こそ正論を言っているが、その内心は相変わらず嫉妬のノイズで激しくブレていた。

 

「そんなことしないよ。ただ一緒に図書室でやるだけ……」

 

蓮はそう答えると、一ノ瀬は「そう……。ならいいけれど」と少しだけ不機嫌そうに顔を逸らし、足早に教室を出ていくのだった。

 

 

 

その後、無事に学校を出て夕暮れ時の静かな裏道を並んで歩いていた蓮と朱音だったが、古いレンガ倉庫の脇を通りかかった瞬間ーー

 

【ーー警告、レガシーの出現を感知しました】

 

蓮の脳内に案内人の冷徹な機械音声が響き渡った。

前方から空間をデジタルなノイズで引き裂いて無数の鋭い刃を持つ小型の暗殺レガシーが不気味な駆動音を立てて姿を現した。

 

「ひゃっ……!? な、なに、あれ……!?」

 

朱音は短い悲鳴を上げて蓮の後ろに隠れてしまう。

一般人にバレたら一発アウトの極限状態の中、蓮は背中の朱音から見えないように右腕のアームを小さく展開し、案内人に命じて彼女の視覚情報を3秒間だけ静止画にハッキングした。

朱音の視界が一瞬だけスローモーションのように固定されるコンマ数秒の間に、蓮の青い魔力のアームが閃光のように走り、指先をパチンと鳴らすと、空間の歪みが小型レガシーを包み込み、抵抗する隙すら大えずにその存在ごとペキッと軽々と捻り潰して完全に消滅させた。

 

ハッキングが解除されて視界が元に戻り、「え……? 今の、なんだったの……?」と呆然とする朱音に、蓮はフリフリと右手を振りながら

 

「あー、あれ? なんか最近流行りの、最新型のプロジェクションマッピングのドローン広告じゃないかな。ほら、最近の技術って凄いからさ」

 

と、あからさまに無理のある脱力感満載の言い訳を並べた。朱音はそんな蓮の顔をじっと見つめ、それから、ぷっ、と小さく吹き出す。

 

「ふふふ……っ。九条くん、言い訳が下手くそすぎだよ。……でも、そういう不思議なところも、私、ちょっと可笑しくて好きだな」

とクススクと笑いながら、蓮との距離をさらに一歩、ぐっと縮めようと体を寄せた。

 

ーーしかし、その瞬間

 

「おらぁぁぁ! 蓮、一ノ瀬さんから『蓮が浮気してる!』って連絡が来たから、俺の筋肉がスクーター並みの爆走で駆けつけたぞォオオ!!」

 

凄まじい足音と共にジャージ姿の桐乃庄司が物隠れから地面を割るような勢いで大爆走して飛び出してきた。その拳には、なぜか青い呪力の炎がやる気満々でメラメラと燃え上がっている。

 

「ど、どこだ敵は!? 蓮の貞操を脅かす不届き者はどこだぁぁあ!」

大騒ぎするガチの超人の威圧感に、朱音の顔から一瞬で血の気が引いてしまう。

 

「ひ、ひえぇっ……! ご、ごめんなさいぃぃぃ!」

 

朱音は恐怖のあまり完全にパニックになり、涙目になりながらそのまま細い足で猛ダッシュして、路地の奥へと逃げ去ってしまった。

庄司は去っていく朱音の後ろ姿を見届けると、ふぅ、と満足そうに息を吐く。

 

「よし……不届き者は俺の筋肉の威圧感で完全に退散したな。一ノ瀬さんへの報告任務、これにて完了!じゃあな蓮、俺、母ちゃんの唐揚げが冷める前に帰るわ!」

 

彼は、朱音を追い払うことだけに満足して超スピードで嵐のように去っていった。

 

「……帰るんかい! お前は何をしに来たんだよ!」

 

蓮ですら、その自分勝手な行動に呆れ果てて全力でツッコミを入れた。

「はぁ……全く、あいつらは本当に非効率な動きしかしないんだから……」

 

やれやれとため息を吐き、蓮が再び一人で家路につこうと歩き出した、その時だった。

レンガ倉庫の陰から、ひょこっと、小さな人影が顔を出した。そこには、先ほど庄司の恐怖で逃げ去ったはずの朱音が、壁に隠れてこっそり息を潜めていた。

 

実は、怖くて逃げたフリをして、物陰に隠れて庄司が去るのをじっと待っていたのだ。

 

朱音はトテトテと小走りで蓮の元へ駆け寄ると、手に持っていた小さなメモ用紙を、まだ驚いたままでいる蓮の手にぎゅっと力強く握らせた。

 

「……これ、私のLINEのID。九条くん、今日の夜、ちゃんと私にお返事してね!」

 

夕陽よりも真っ赤な顔をして、朱音はそれだけを一気にまくしたてると、今度こそ本当に、嬉そうに胸を弾ませながらタタタッと街の向こうへと走り去っていった。

蓮が手を開くと、そこには丁寧な文字で、彼女のLINE IDが書かれていた。

 

【九条蓮ーー対象、佐藤朱音の心拍数は先ほどから限界値を突破しています。これは恐怖ではなく、純粋な好意による熱暴走と推測します。今夜のメッセージ送信のタスクを推奨します】

 

案内人がどこかお節介なアナウンスを響かせる。

 

「……しょうがないな」

 

蓮は今日一番の、本当に嬉しそうな優しい苦笑いを浮かべて、それをそっとジャージのポケットに大切に仕舞うのだった。




最後まで読んでくださりありがとうございます!
蓮くんは陰ながらモテモテですね……いいなぁ。こんな生活ができればいいのに、今の自分なんて二次関数の平方完成に苦戦しているところなんです。
変化させるのがくっそ難しい……。

そういえば、そろそろ春輝も学校に入学する頃でしょうか?
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