世界のシステムを書き換える最強能力「管理者権限」を手に入れたので、日常をハッキングして無双します!   作:Laggliches

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みなさんこんにちは「Lagglitches」です!
レガシー・タイプゼロの件もあり林間学校、佐藤朱音ちゃんのこともありました。しかし、その裏で蓮たちと案内人で灰原春輝くんを学校に入学させようと努力をしていました。
そして、ようやく試験をさせてくれるようになって編入試験への勉強が始まるのでした。


第十二話 編入試験と世界一贅沢な家庭教師

「……無理です。死にます。脳がオーバーヒートして、僕のレールガンが暴走しそうです」

 

庄司家の食卓

 

春輝は、山積みにされた参考書と問題集を前に、今にも泣き出しそうな顔で机に突っ伏していた。

 

「弱音を吐くな、春輝!あの『白銀閃雷』を撃った時の気合いはどこへ行ったんだ!因数分解なんて、敵の装甲を剥がすのと一緒だぜ!」

「無茶言わないでよ庄司くん……。因数分解で敵の装甲は剥げないよ」

 

春輝の編入試験は三日後。

 

これまで施設と組織で「戦闘」の訓練しか受けてこなかった春輝にとって、一般教養という名の「日常の壁」は、レガシー・タイプゼロよりも高く、硬いものだった。

 

「やれやれ……案内人、春輝の脳内疲労度をスキャンしろ」

 

パチンッと蓮がポテトチップスを齧りながら、指を鳴らす。

 

【対象……灰原春輝。海馬および前頭前野に過負荷を感知。糖分不足により演算効率が40%低下しています】

 

「だそうだ……よし、一ノ瀬さん。そろそろ『真打』の出番じゃない?」

 

蓮が視線を向けると、そこには三角定規と分度器を「武器」のように構えた一ノ瀬結衣が、凄まじい威圧感で立っていた。

 

「……ええ。私の『観察眼』によれば、春輝くんが解けない原因は基礎学力不足じゃないわ。……問題文を読み解く際の『視線の迷い』よ。彼、情報の優先順位が戦闘モードのままなの」

 

一ノ瀬は春輝の背後に回るとその瞳に幾何学的な紋様を浮かべた。

 

「春輝くん、ペンを持って……今から、私があなたの視線をガイドするわ……九条くん、サポートを」

「了解。システム『共有(シェア・リンク)』春輝の視界に直接、補助線を投影するよ」

 

ここから、前代未聞の『能力によるカンニング……もとい、教育』が始まった。

 

 

 

蓮が機械魔法で春輝の視神経に直接アクセスし、問題文の中の重要なキーワードをハイライトする。

一ノ瀬が『観察眼』で春輝の筋肉の収縮を読み取り「今、迷ったわね。その公式じゃないわ、三ページ前のやつよ」と、迷う瞬間に的確なアドバイスを飛ばす。

 

「……わ、わかります!補助線が視える……!数式が、攻撃の予兆みたいに流れてくる……!」

「その調子だ、春輝!英語の長文は、敵の通信記録を傍受してると思え!」

 

庄司が横で、全く役に立たないが、勢いだけはある応援を送る。

 

「……あ、でも……この古文だけは、どうしてもイメージが湧きません……。何で平安時代の人たちは、こんなに回りくどい言い方をするんですか……?」

 

春輝が直面したのは、古文特有の「雅」の壁だった。

 

「ああ、それね……案内人、古文の文法を『現代のネットスラング』に翻訳して春輝に送信して」

 

【了解……「いみじうをかし」を「エモすぎて草」に変換……「あはれなり」を「エモい」に統合します。】

 

「……意味が、意味がスッと入ってきます!清少納言、めちゃくちゃテンション高い人だったんですね!」

 

「そうね……解釈に多少の問題はあるけれど、中学試験を通るだけならそれでいいわ、九条くん……でも、私の前で『エモすぎて草』なんて言ったら、その瞬間に空間ごと消去するから覚悟してね?」

 

一ノ瀬の笑顔(怒)に、蓮は「善処するよ」と冷や汗を流した。

 

 

「『いと、あてやかに、たをやかなる……』九条くん、これをもっと直感的なデータに変換できない?」

 

一ノ瀬がペン先でノートを叩く。蓮はポテトチップスを口に放り込み、案内人に命じた。

 

「案内人、画像生成を頼む。そして春輝の脳内モニタに、現代の美少女モデルの骨格データと、それを『あてやか』に加工したテクスチャを投影して」

 

【了解ーー黄金比率に基づいた「女性ホログラム」を生成。春輝さんの網膜に直接描画します】

 

「……!視えます!この文章、ただの修飾語じゃなくて、キャラデザの指示案だったんですね!」

「そうよ春輝くん。当時の作者も今のクリエイターも、伝えたい熱量は同じ……ただ、それを記述するコードが違うだけ。それを翻訳するのが今の私たちの役目よ」

 

一ノ瀬の真剣な表情に、春輝は少しだけ背筋を伸ばした。

 

「…一ノ瀬さんは、何でそんなに僕に一生懸命教えてくれるんですか?」

 

ふとした春輝の問いに、部屋の空気がわずかに緩む。

一ノ瀬は窓の外、夕焼けに染まる街を見つめながら、静かに答える。春輝は透明なカプセルをいじいじしながら返答を待った。

 

「私の『観察眼』は、人の嘘を暴くためにあると思っていた。でも、九条くんに出会って、あなたの力を調整して……世界を正しく直すために使う方法を知ったの……あなたの合格は、私たちの『正しさ』の証明でもあるわ」

「一ノ瀬さん……はい!僕、絶対にこの正解を書き込みます!」

 

二人のやりとりを見て蓮と庄司は静かに拍手をした。

 

 

 

そして迎えた、試験当日。校門の前で、三人が春輝を送り出す。

 

「いいか春輝。落ち着いて、いつも通り「演算』と「気合い』を混ぜれば大丈夫だ」

「お守りに、僕の特製ビット(消しゴム型)を貸してあげようか?」

「九条くん、不正行為は厳禁よ……春輝くん。あなたは一人じゃない。……試験用紙の向こう側に、私たちのガイドが視えるはずよ」

 

春輝は深く頷き、力強い足取りで教室へと向かった。

 

 

 

試験開始のチャイムが鳴る。静まり返った教室。

春輝は深く息を吸い込んだ。以前の彼ならこの静寂は「殺戮の合図」でしかなかった。だが今は違う。

 

(左腕の回路が、温かい……)

 

蓮が調整した「電磁収束手甲」は今、武装解除されているが、その深層OSには蓮の遊び心で「勉強モード」が隠されていた。

ペンを握った瞬間、春輝の視界に微細な粒子が舞う。

 

【ーー現在、室温24度、湿度40%集中に最適な環境です。九条蓮よりメッセージーー「落ち着け。全問解けなくても、お前の『根性』で部分点を毟り取れ」】

 

案内人の声が、蓮の声色で再生される。春輝は思わず吹き出しそうになった。

 

「……了解、蓮さん」

 

数学の難問が、一ノ瀬の教えた通り「力のベクトル」として解体されていく。英語の長文が、庄司の言う通り「突破すべき敵陣」として構築される。彼が解いているのは単なる問題ではない。

 

これから始まる「新しい人生」のパスワードだった。

 

 

 

 

 

数時間後……

 

校舎から出てきた春輝の顔は、晴れやかだった。

 

「蓮さん、一ノ瀬さん、庄司くん!できました!全部、視えました……!」

「よっしゃあああ!宴だ!今日は母ちゃんに頼んで、唐揚げをいつもの三倍揚げてもらうぞ!」

 

庄司が春輝を担ぎ上げる。

一ノ瀬も安堵の溜息をつき、少しだけ誇らしげに微笑んだ。

 

庄司が我が事のように大はしゃぎしながら、春輝の身体を軽々と担ぎ上げる。

一ノ瀬も張り詰めていた肩の力を抜いて安度の溜息をつき、少しだけ誇らしげに、そして優しく微笑んだ。

 

「……ふぅ。これでようやく、四人で学校に通えるわね」

「そうだね。……ま、これで僕の『全自動宿題代行システム』のデバッグ要員が正式に確保できたわけだ」

 

ボソリと呟かれた蓮の本音を、一ノ瀬の鋭い聴覚が逃すはずもなかった。

 

「九条くん……。今、なんて言ったのかしら?」

 

一ノ瀬の背後に立ち上る目に見えないプレッシャーを感じ取り、蓮は視線を逸らしながら口を尖らせる。

 

「エモすぎて草、って言おうとしただけだよ」

「それを言ったら空間ごと消去するって言ったわよね?」

 

冷徹極まりない一ノ瀬のツッコミに、蓮は両手を軽く上げて「……すんません」と、あっさりと降伏の意を示した。

 

夕暮れの通学路。新しい制服の採寸の話で盛り上がる三人の後ろで、春輝は自分の胸に手を当てた。

 

かつて組織で「レガシー」と呼ばれていた自分でも今は、自分を「春輝」と呼び、必死に勉強を教えてくれる仲間がいる。

 

(......マザー。僕はもう、あなたのイレギュラーじゃない)

 

春輝の確に、ほんの一瞬だけ、蓮と同じような「決意の演算光」が走った。それは機械に与えられたものではない、彼自身の意志が灯した光だった。

 

 

 

 

 

 

 

その夜、学校の電算室。無人のはずの部屋で、一台のパソコンが勝手に起動した。

 

《ーー灰原春輝。編入試験合格……九条連との接触密度、限界値を突破……プランCを開始。……レガシーを投入します》

 

カタカタと、物理的なタイピング音ではない「電子の衝突音」が部屋に満ちる。モニターに映し出された少女。

彼女のデータは、春輝のような「改造人間」のそれとは一線を画していた。

 

《ーー被験番号『M-101』。個体名『リリス』種別、自律型情報生命体。目的、九条蓮の演算能力の奪取、および一ノ瀬結衣の観測データの汚染》

 

画面の中で、リリスの瞳がカチリと開く。

 

それは一ノ瀬の幾何学模様とも、蓮のデジタル光とも違う、全てを吸い込むような「漆黒の虚無」だった。

 

「……感情、友情……非論理的なデータの集積」

リリスの合成音声が、次第に滑らかな「少女の声」へと調整されていく。

 

「……理解不能。……ゆえに、解体が必要」

 

彼女の背後に展開された「機械の翼」は、蓮のビットのように物理的な素材を必要としない。

空間そのものをハッキングして実体化する、機械魔法の「完成形」に近い存在。

 

 

「待ってて、九条蓮。あなたの日常を、最高に不適合な数式で塗り替えてあげる」

 

 

電算室の電力が一瞬だけ臨界点を超え、校舎中の照明が明滅した。

それは、蓮の脅威となる不吉な産声だった。

 

 

 




最後まで読んでくださりありがとうございます!
無事に春輝くんは試験に受かることができましたね。いやー良かった良かった……っていうわけにはいかないですよね。
ラストに新たなレガシー『リリス』が登場してしまいました。春輝と同じように人型レガシーですが、実力差は桁違いです……組織も段々と手強くなってきましたねぇ。
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