世界のシステムを書き換える最強能力「管理者権限」を手に入れたので、日常をハッキングして無双します!   作:Laggliches

19 / 20
どうもみなさんこんにちは「Lagglitches」です!
前回は春輝くんの体験入学から始まり、学校探索をしてラスト……リリスとのご対面でよりにもよって、情報を取られて逃げていきました。

……そして数日後、リリスは蓮たちと戦います……!


第十三話 前半 認識されない脅威 

「……九条蓮。見つけたあなたの『脳』、私がいただくわ」

 

編入試験から数日後の放課後。

誰もいない教室で、蓮は一人の少女と対峙していた。彼女が蓮の前に立った瞬間、一ノ瀬の『観察眼』も、庄司の『呪術』も、不自然に遮断された。

 

「はー!? なんで入れねぇんだよ、蓮が危ねぇよ!」

 

力強く殴っても分厚い鋼鉄を叩いているような感触がして、びくともしない。「……くっそ! 」とヤケになって蹴り続ける庄司。

 

すると、右腕の奥深くからあの時と同じ『主』の声が聞こえてきた。

 

《……実に見当違いだ。貴様、我の術式を使わないで何が出来るというのだ?》

「うるせえな……こっちは必死だっつーの!」

 

《だから不愉快だと言ったのだ。何も成長していない……『賢く使え』とあれほど言っていたのに、何も理解していない》

「あ? ならどうすれば良いんだよ」

 

《馬鹿が、我の術式に再現出来ないものは無いんだ……。ただ、貴様のいう「反転術式」を再現するには一回分の呪力量では再現できない。……ここまで言えば理解できるだろう?》

 

「庄司くん? さっきから誰と話してるの?」

 

一ノ瀬の声で目が覚めた時、そこには虚空に向けてただ変に反応している風に思える庄司がいた。

状況に見合わない庄司に、彼女はポカンとしていた。しかし、彼は彼女を疑問に目を向けず考え事をしていた。

 

「……なるほど……!」

(つまり『一回』では再現できない術式は、二回分を同時に使うことで再現ができる場合がある、ということだな。……でも、何が可能か分からない。領域展開は絶対無理だな…かけるか……!)

 

「……おい!」《理解できたようだな……》

「……何よ、急に」

 

「……あれならできるよなぁ?」

 

教室の中、リリスと蓮は互いに対峙していた。リリスが先制で指先を向けると、蓮の視界がデジタルの砂嵐に飲み込まれる。

 

「ーー精神干渉(ディープ・ダイブ)あなたの『管理者権限』その深層にあるソースコードを直接書き換える……。九条蓮……あなたの記憶を、マザーの基幹OSへアップロードする。……個体としてのあなたは、ここで終わりよ」

 

リリスの指先から放たれるノイズが、蓮の神経を一本ずつ焼き切っていく。

 

【警告ーー前頭葉への不正アクセスを検知。思考領域の70%が汚染されています】

 

脳内で、案内人の警告アラートが狂ったように鳴り響く。

 

「くっ、そ……!『管理者権限』、一部凍結……!案内人、防壁を……多重展開……!」

 

【不可能。システムカーネルが直接書き換えられています。……バグメッセージの処理が追いつきません】

 

蓮は奥歯を噛み締め、必死に脳の演算クロックを跳ね上げようとした。しかし、彼の脳細胞が出力する電子信号よりも、リリスが流し込むウイルスの「記述変更」の方が圧倒的に速い。

 

「視界……、が……」

 

自分の腕が、指先が、デジタルの砂嵐のようにサラサラと崩れていくような強烈な錯覚。思考が、文字通り「0と1」のバイナリデータへと還元されていく。

 

【精神汚染率、80%。記憶セクターの初期化を開始します】

 

(……待て、それは……消させ、ない……!)

 

蓮は、必死に手を伸ばした。

だが、その手が掴もうとする「一ノ瀬の笑顔」も、「庄司の怒鳴り声」も、「春輝の震える手」も、システムに『非論理的な不要データ』と判断され、次々とモノクロの砂へと分解されていく。

 

(計算が、合わない……!なんでだ、僕の『機械魔法』なら……、こんな、ゴミみたいなコード、一瞬で……ッ!)

 

どれだけ防壁を記述しても、記述した端からノイズに侵食され、無へと書き換えられていく。

完璧だったはずの蓮の「論理」が、リリスの圧倒的な情報量の前に、何もできずにただただ圧殺されていく。

自らの脳が、自分という「個体」を消去していく底なしの恐怖。どれだけ抵抗しても、ハッキングを押し返すための「数式」すら、頭の中から掠れて消えていく。

 

天才と呼ばれた九条蓮にとって、あまりにも一方的で、あまりにも虚しい、完全な敗北だった。

 

「ぐ、あ、……っ……?」

 

脳内に、数千、数万のバグメッセージが限界を超えて叩き込まれる。案内人の声が完全に遠のき、現実と仮想の境界が溶けていく。

 

(……まずい、こいつ……僕のOSに直接『ウイルス』を流し込んでる……!)

 

意識が真っ白に染まる中、蓮の脳裏にリリスの冷酷な嘲笑が響いた。

 

「九条蓮……あなたは、力を持ちすぎた……。その怠惰な日常ごと、消去してあげる」

 

彼らとの思い出が、次々とデジタルの海へと分解されていく。完全に思考が停止し、蓮が世界の消失を受け入れかけた

 

ーーその時だった。

 

「はははっ、大丈夫でしょ♪だって君……」

 

軽快な声と一緒にいきなり目の前に現れた、現実の、肉体を持った、圧倒的に大きな背中。制服では隠しきれないほど筋肉質な腕――庄司だ。

 

「弱いもん♪」

 

「……っ、しょ…じ……なんで。」

「大丈夫、俺最強だから♪」

 

どこぞの術者のセリフを言いながら現れた彼は、すでに『術式』を使用していた。

 

彼はあの史上最強ーー『五条悟』の術式『無下限呪術』を、二回分を消費して物理的に「再現」してみせたのだった。

 

『無下限呪術』主な使用者は五条悟。術者の周囲に呪力で「無限」を具現化させる事であらゆる干渉を防ぎ、「時空間」を支配する術式。

自身が危険と認識するものが自身に近づく程、低速化し、最終的に接触出来なくなる為、基本的に「あらゆる攻撃を無効化する」ことが可能となる。

 

他にも仮想重量で押し潰したり、空中浮遊、高速移動したりと、攻撃、防衛、速度どれをとっても優秀な強力極まる術式。

ただし、使用には原子レベルの緻密な呪力操作が必要なため、五条家の人間のみが発現する特異体質『六眼』がなければ、まともに扱えない術式だった。

二回分を消費して『不可侵』が可能だが、一度でも攻撃などに転用したら、その瞬間無限の効果時間が消えてしまう。

逆に言えば一回だけ無限を使った攻撃が可能である。リリスは庄司を見ると、その瞳が一瞬、キランと光る。

 

「ソーススキャン……個体名『桐乃庄司』。属性『一般人』よって、脅威無し」

 

再び蓮の方を振り向き、彼の精神を支配していく。

庄司の放つ呪力は、レガシーやリリスにとってはただの『ノイズ』でしかないため、システムが自動的に『処理不要なもの』としてスルーしてしまい、視界に入っていても見えなくなっていたのだ。

 

しかし、これは庄司にとっては好都合でしかなかった。

 

(これはありがてぇ!彼女は今、申し訳ないが蓮に集中している。ーー『擬似・無下限』は防御中心の再現だけど、防衛を犠牲にして、あれが使える……っ!)

「九条蓮……私のためにわざわざ来てくれてありがとう。この『管理者権限』は、マザーへ返却してもらうーー」

 

 

「術式順転、出力最大! 『蒼』!!!」

 

 

不可侵の防御に使われた呪力を、すべて攻撃に転用する最大級の攻撃。中指と人差し指を立てて、対象へ向ける。

その指先の一点に、この世界の物理法則を無視した濃紺の光が収束していく。リリスが気づく頃には、両手では抱えきれないほどに巨大化した光が、そこにあった。

 

それは毒々しくも、何とも美しい『蒼』の塊だった。周囲の机や椅子、あらゆる物体が塊に吸い込まれ、押し潰されて一つになっていく。

 

無限の引力によって発生した、『蒼』が放たれる。

 

彼の手が前に押し出すと、同時に動き出す。

すると、大気が軋み、悲鳴を上げた。リリスの精神干渉さえも容易く、『蒼』に吸い込まれる。そして放たれた蒼い閃光は、軌道上の空気を喰らい、空間そのものを削り取りながら、リリスへとゆっくりと、だが確実に進む。

 

それは攻撃というより、そこにあるはずの『距離』を強引に消滅させる現象だった。

 

着弾の瞬間、起きたのは爆発ではなく『収束』。対象を中心に空間が強引に一点へと凝縮され、鉄骨もコンクリートも、まるで紙屑のようにひしゃげて消えていく。

 

「……っ! 危険、危険!」

 

レーダーがようやく反応したのか、リリスの危険信号が彼女の身体を緊急回避へと強制制御し、機械の翼を展開する。

 

ーーしかし、遅かった。

 

ギギギ、バキィッ!!

すでに『蒼』の威力は最大級の威力となっており、彼女の左半身の翼がバキバキと千切れ、無限の引力の中で圧縮される。このまま彼女もろとも飲み込まれようとしたとき、フッと重力が一気にのしかかった。

 

『蒼』が終わったのだ。

 

正確には、二回分の『蒼』を出せる呪力が切れてしまったのだった。

 

「あと、一歩なんだが……っ」

 

「……重力過負荷(グラビティバースト)」

「チッ……効かねえよぉぉぉ!!!」

 

呪力が二回分、切れたことでようやく生まれた、リリスの致命的なまでの油断。その隙を見逃さず、庄司の拳は彼女の『機械の翼』をブチィと根元から力任せにむしり取っていた。

「……っ…、うぅ……痛い」

 

人間らしい柔らかな肌はところどころ剥がれ落ち、そこから機械のはずの彼女の『血』が、ポタポタと冷たいコンクリートへと流れ落ちていく。

 

「……ッ!?お前は春輝と同じ、人間かよ!?」

 

『人間』

 

ーーそのあまりに不適合な単語に、リリスの瞳が分かりやすく動揺に震えた。リリスもまた、春輝と同じ組織によって実験を施され、改造された悲しき被害者だったのだ。

庄司の脳裏に、あと一回分だけ残された呪術のストックが浮かぶ。『赤血操術』か、あるいは『呪言』を使えば、眼前の少女を確実に仕留めることができる。

 

ーーだが、それは彼にとって『人殺し』と同義だった。

 

しかし、その庄司の戦慄は、戦場においてはただの致命傷でしかない。

 

「――が、はッ……!」

突如として、少女は無理矢理に庄司の拘束を突破した。春輝も拷問めいた苛烈な改造にトラウマを抱えている。それはつまり、余計にトドメを刺しにいくと庄司は歯を食いしばる。

 

(なら、殺さない程度に邪魔をするーー! 『擬似・呪言』!)

 

リリスの重力過負荷(グラビティバースト)が庄司を押し潰そうと威力を高める。

「ぐっ…!?」と庄司の口から短い悲鳴が漏れた。激しい衝撃と共に、庄司の身体がコンクリートの壁に打ちつけられていた。その強さは乗用車が衝突するのと同等であり、常人には到底耐え切れず肉塊となる強烈なプレッシャー。

 

ーーだが、彼はそんな猛悪な重力の中でも、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

彼が狙っているのは、今なお蓮を拘束しているその『左腕』。

 

「爆ぜろぉぉぉ!」

 

その言葉が彼女の鼓膜を叩いた瞬間、視界が真っ赤な爆炎に塗りつぶされた。逃げる暇さえ与えない、轟音よりも速く圧縮された呪力が彼女の左腕に集中し、その腕ごと跡形もなく吹き飛ばした。

 

ただでさえ狭い教室の中に、狂気的な大爆発が巻き起こる。激しい爆風が彼女の後ろのコンクリートを派手に削り取った。

そして、彼もまた、爆風によってそのコンクリートの先へと文字通り吹き飛ばされた。

 

「庄司くん、大丈夫!? 」

 

彼に目立った怪我は無いが、白目をむいて完全に失神していた。

 

 

 

【九条蓮さん。現在の精神汚染率88%、通常の機械魔法での防衛は不可能です。許可を……空間魔法を開放してください】

 

意識の底で、案内人の声がかつてないほど鋭く、そして冷酷に響いた。

 

「ダメだ、あれは……一ノ瀬さんたちに見せられるもんじゃない……っ」

 

【猶予はありません……対象「リリス」の演算能力は、あなたの予測を超えています。……しかし、彼女は瀕死。彼女を「消去」しなければ、あなたの世界が消去されます……選んでください。「人」として死ぬか、「管理者」として世界を斬るか】

 

蓮の視界が真っ赤に染まる。リリスの瞳が、至近距離で蓮を見つめていた。庄司の戦闘で千切れた鉄翼と失った左腕と痛々しい火傷。

 

「……うっ、……ゴホッ………」

 

バチバチと彼女のサーバーが火花を立てて悲鳴を上げている。それなのに、口から溢れ出たのはオイルなどではなく、赤黒い、濁った「生」を感じる血だ。

 

「……あ、……っ」

 

助けを求めているのか、それとも死を願っているのか。彼女は一歩ずつ、蓮に近づいていく。

その瞳の奥に、かつての自分と同じ『空虚』を見つけた瞬間。蓮の中で、強固に閉じ込めていた「人を助けるという感情」が、漆黒の奔流となって弾けた。

蓮の瞳から完全に光が消え去る。代わりに、世界を拒絶するような漆黒のノイズが、彼の感情の演算回路をハッキングしていく。

 

 

「僕の日常を……ゴミみたいに扱うなよ………」




最後まで読んでくださりありがとうございます!
庄司くんの術式、やっぱり強すぎますね!戦略を何十通りと考えれて、ほんとうにはちゃめちゃすぎます。……蒼もかっこいいし。
しかしリリスもこれまでにないほどボロボロになってしまいました。ポタポタと滴る鮮血がなんとも心が抉られます……。
それでも、蓮は案内人の鋭い指摘により残酷な決断を下してしまいます。続きを待っててくださいね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。