世界のシステムを書き換える最強能力「管理者権限」を手に入れたので、日常をハッキングして無双します!   作:Laggliches

23 / 25
春輝:「……そういえば、リリスさんって強いんですか?」
庄司:「強い……と言えば強いな。俺の『蒼』や『呪言』にも耐えたわけだし……でも、手加減はしてたぞ」
結衣:「……私の『観察眼』も通らないほどのバリアを張ったのよ……強いに決まってるわ」
庄司:「妨害系が厄介なのは漫画でもここでも変わらないんだな」
春輝:「そうですね……もっと早く来たら、蓮さんのこと守れたかな……」

庄司:「後半の記憶が無いんだよなー」
結衣:「気絶してたから当然よ……っ!?」
春輝:「ど、どうしましたか!?敵ですか!?」
庄司:「いつでもストックはあるぜ!!こいや、レガーー」

結衣:「九条くん、何してんのよぉぉ!!!!」


第十四話 後半 マザーの真実と激化する六畳半

「……いっそのこと、殺した方がーー」

「いきなり物騒なことを言うなよ、一ノ瀬さん……なんだ?まさか蓮とリリスちゃんがベットでイチャイチャしてる所を……!!」

 

「……庄司くん、もしそうなら僕、帰りますね」

「っ!見えるわ、二人が仲良くお昼寝している所を…!我慢できない、蹴破るわよ!」

「……は?」「え…」

 

ーーバアァン!

 

「………っ!殺気!」「…っ!!」

二人の、のどかな雰囲気を無情に破いたのは扉をブチ破いて入ってきた一ノ瀬、庄司、春輝だった。しかし、一ノ瀬の目にはいつもより激しく赤色の紋様が浮き出ていた。

 

「……っ、『スキルデバッーー」

「…言ったわよね『変なことをしたら空間ごと消去する』って」

「っ!?」

 

彼女の紋様が更に激しく燃え上がった。あまりの殺気にリリスも少しだけ体を震わして怯えているのが分かった。

 

「ま、待て!誤解だ。誤解だってば!」

「私の「観察眼』に嘘はつけないわよ……。さあ、九条くん。覚悟はいいかしら……!」

 

彼女はゆっくりとこちらに近づき消去(デリート)をしようと右手をこちらに向けた僕は最期を覚悟して目を強くつぶったーーその時だった。

 

「……はい!喧嘩終了!」

 

庄司の声が聞こえ、肌でビンビンに感じていた殺気が消えた。恐る恐る目を開けるとそこには拳を握った庄司と頭を抱えてうずくまっている彼女の姿があった。

 

「……いっ、たいわね。何するのよ庄司くん……」

「……庄司、お前」

 

ーー女性を叩きやがった。

 

あの、庄司が女性を叩くなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないはずだったのに…庄司は痛がる彼女を横目に重く口を開いた。

 

「……見ろよ、あんなにリリスが怖がってるのに何、無駄な喧嘩してるんだよ…バカか?」

 

そう言って、咄嗟に横を見る。そこには左腕を強く掴みながら震えているリリスの姿があったが、その顔からはなにか得体の知れないものを見たような『恐怖』が滲み出ていた。

 

「……ごめんなさい、リリスちゃん」

 

彼女は謝り、赤い紋様は引っ込んでいった。蹴破られたドアから寂しさを感じるような寒い風が流れていた。

 

 

 

夕方

 

「「「…………」」」

 

蓮の自宅、その六畳一間のリビング。今、この空間の密度は、先ほどの冷たい空気感とはまるで違い、かつてのどの戦地よりも高かった。

 

「……あ、あの、リリスさん?先ほどから言っているけれど、僕の左腕、そろそろ感覚がなくなってきて、案内人が【壊死の危険性あり】って警告を出してるんだ」

「マスター、それは演算エラーです。私の体温とあなたの心拍数は今、黄金比で同期しています。これこそが最適解、離れるという選択肢は、私の辞書からデリートされました」

 

すっかり元気になったリリスは、蓮の左腕を両手でしっかりと抱え込み、頬をすり寄せている。彼女の銀髪から香る、どこか無機質で清潔な匂いがフワッと蓮の臭腔をくすぐる。

 

かつて戦場で「世界を断つ斬撃」を放った冷酷な暗殺者の面影は、今や一ミリもない。

 

「九条くん、だらしないわよ……リリスさんも、その子はただの『だらしない怠惰の塊』なんだから、そんなに崇める価値はないわ。さあ、離れなさい」

 

彼女が眉間を指で押さえながら、鋭い視線を送る。その手元の湯呑みが、微かに震えていた。

 

「拒否します、一ノ瀬結衣。あなたの瞳は『観察眼』であって『所有権』ではないはず。マスターを再定義したのは私、彼の魔力は、今や私の生存回路の一部です」

 

「な、なな、何を言っているのこの子は……!九条くん、何か言いなさいよ!」

「僕に言われても……リリス、とりあえず、お茶を飲む時くらいは離れてくれない?飲みづらいんだよ」

 

蓮が困り顔でなだめると、リリスは少しだけ考え込みーー

 

「……了解。では、代替案を提示します。マスター、口を開けてください」

「え?」

「私が、供給(あーん)します」

 

「「「「……………」」」」

 

部屋に沈黙が流れる。

 

庄司が口に含んでいた麦茶を噴き出し、春輝はアワアワと真っ赤になって顔を伏せた。一ノ瀬の背後には、もはや幾何学的な紋様を通り越して「殺意」のオーラが渦巻いている。

蓮は冷や汗をかき焦ったような顔をした。

 

「……リリス、君、そういう知識はどこで仕入れたんだ?」

 

「マスターのハードディスク内に保存されていた『恋愛シミュレーション・アーカイブ』から学習しました……『幼馴染属性』の一ノ瀬さんよりも、私の方が先行入力できているはずです」

 

「……九条くん。あとでそのハードディスク、私が『物理的に』削除してあげるわ」

「あ、案内人……今のうちにバックアップを…」

 

【ーー不可能です。一ノ瀬結衣の殺圧により、無線LANが物理的に干渉を受けています】

 

 

 

 

ドタバタが少し落ち着いた頃、ようやくリリスは蓮の隣(といっても、肩が常に触れ合う距離)に座り、物語の核心を語り始めた。

 

「マザーそして組織『アーカイヴ』世界のバグを消去するために作られたAIが、皮肉にも自らを「正解」とし、人類を演算の部品に変えようとしています」

 

「……マザーは、あなたの「管理者権限」を恐れています。あなたが「事象修復(リライト)」で見せた力は、マザーが定めた運命を書き換える力……それは、神に叛逆する力なのです」

 

リリスの瞳が、ふと寂しげに揺れた。

「私も、春輝さんも……マザーにとっては、ただの予備パーツ……消費物に過ぎませんでした…でも、あなたは私を「ゴミ」として捨てず、新しい名前と、新しい命をくれた」

 

リリスはそっと、蓮の手を握りしめた。今度は強くではなく、壊れ物を扱うような優しさで。

「だから、私は決めました。マザーを壊し、あなたを守ります。たとえ、この世界のシステムすべてを敵に回しても」

「重いなぁ。僕、ただ静かにアイス食べて寝たいだけなんだけどね」

 

蓮は苦笑しながら、リリスの頭にぽんと手を置いた。リリスは驚いたように目を見開いたが、すぐに嬉しそうに目を細めて、蓮の肩に頭を預けた。

 

「…でも、まあ。君みたいな美少女にそこまで言われて、放り出すほど僕は合理的じゃないんだ……。一ノ瀬さん、庄司、春輝。…僕らの『日常』を取り戻すために、ちょっとマザーのところに文句言いに行こうか」

 

「当たり前だ!奢らされたパフェの代金、マザーの予算から引き落としてやるぜ!」

「僕も…リリスちゃんみたいな悲しい子を、もう作りたくないです」

 

春輝はまたもや透明なカプセルを持って決意を言った。

 

「……九条くん…あなたの隣に並ぶのは、彼女だけじゃないってこと、忘れないでね」

一ノ瀬が少しだけ伏せ目がちに、しかし力強く言った。

 

 

「……春輝さん、その透明な箱は何ですか?私のハードディスクに存在しない……未知の物体です。」

「あ…あぁ、これは僕の宝物でずっと持ち歩いていないと落ち着かなくて…それで……!」

 

「わ、分かりました。もういいです」

「……………」

 

 

 

 

 

深夜

 

仲間たちが帰り、蓮の部屋にはリリスと二人の時間が訪れた。

 

「…マスター。先ほどの『あーん』の拒否理由を、論理的に説明してください…やはり、一ノ瀬さんの視線が演算の邪魔に?」

 

蓮は布団の上で溜息をついた。

「いや、単純に恥ずかしかっただけだよ……リリス、君はもう「道具」じゃないんだ。もっと自分のために生きていいんだよ?」

「………自分のために」

 

リリスは蓮のベッドの横に体育座りをして、じっと自分の手を見つめた。

「私の『自分のため』は……マスターが笑っていること……そして、時々でいいので、こうして…触れてもらうことです」

 

リリスは勇気を出したように、蓮のパジャマの裾を指先でちょんと掴んだ。

 

「…マスター、怖いです。マザーの命令がない世界は…自由すぎて、何を演算すればいいか分からない、です」

 

震えるリリスの声。蓮は何も言わず、ベッドから身を乗り出して、彼女をそっと抱きしめた。

小さくて温かい、もう機械なんかじゃなく一人の少女として受け入れるように抱きしめた。リリスも何も言わずに蓮に体を預けた。

 

「演算なんてしなくていいんだよ。…お腹が空いたら食べる。眠くなったら寝る。……それだけで、君は立派に『人間』をやってる。分からなくなったら、僕が何度でも教えてあげるから」

「……っ、……はいっ…はい、ますたぁ……」

 

リリスの目から、初めて「感情」という名の涙が溢れ、蓮の肩を濡らした。

冷たい暗殺者の少女が、九条蓮という温かなバグによって、一人の少女へと書き換えられた夜だった。

 

そのままリリスをベットに寝かせ布団をかけたその時、案内人のOSが、密かに記録を更新した。

 

【ーー九条蓮さん。対象「リリス」の好感度、測定限界値を突破……事象修復の影響により、彼女の存在基盤が「九条の愛情」に再定義されました……プランP『修羅場回避のシミュレーション』を開始します】

 

「……案内人、それはもっと早く教えてほしかったよ……」

 

蓮の呟きは、幸せな寝息にかき消されていった。

 




リリス:「……っ、すぅ……すぅ………」
蓮:「……はあ………今日も疲れた」

【ーー九条蓮、今日もお疲れ様でした。……システムチェック完了。大脳の過負荷、そして度重なる精神的ダメージを検出。九条蓮、肉体および精神の限界突破、本当にお疲れ様でした。……なお、あなたのストレス指数は現在低下傾向にあります。リリスさんによる影響だと予測します。明日のためにも、速やかなシャットダウンを推奨します】

蓮:「案内人も休憩したら?」

【……ワタシには休憩というシステムはアップロードしていません。常にバックグラウンドで待機をし、いつでも九条蓮のために動きます】

蓮:「そんな社畜みたいに言わなくても、アップロードしてあげるよ?」

【……しかし…………】

蓮:「機械だって、休憩が必要だよ。……じゃなきゃ熱暴走しちゃって僕の役に立たないかもしれないんだぞ?」

【……アップロードをよろしくお願いします】

蓮:「ははは、素直だね。分かった、明日するようにしとくよ。」

【……ありがとうございます。】

蓮:「……おやすみ、案内人」
【……おやすみなさいませ、九条蓮】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。