世界のシステムを書き換える最強能力「管理者権限」を手に入れたので、日常をハッキングして無双します! 作:Laggliches
書き溜めておいた話が尽きてしまったので、約二週間投稿期間を空けます。
その間に他の話の編集などをしていくので、申し訳ないですがご理解の程よろしくお願いします。
「マスター、どうしてそのような格好をしているのですか?」
時刻 朝の五時三十五分
朝っぱらにも関わらず、ぴっちりと私服に整えていた蓮は彼の部屋と合間って水と油のような状態を連想した。
一方で眠たそうにベットの上で目を擦っているリリスは彼の私服姿に疑念を抱いていた。彼女の腰までかかった銀色の髪は、窓から差し込む柔らかい日光に照らされてほんのりと輝いている。
「…今日は僕のお友達と遊びに行ってくるんだよ」
彼はいつの間にか出現したパン(焼きたて)を食べながらダルそうに話した。
サクサクと蓮がパンをかじるたびに香ばしい香りがリリスの鼻腔をハッキングしていった。
「……ぐぅぅぅ」
彼女のお腹はすっかり食事を求めているかのように音を立てている。
お腹が空いていることに気づいたのかパチンと蓮が指を鳴らすと彼が食べているのとおんなじパンが黒い穴からお皿と一緒にスッと出てきた。
「はい、これが食べたいんでしょ?」
彼女へ差し出されたパンは上にカフェオレ色の何かが乗っていた。
「………マスター、パンの上に乗っている物体は何ですか?」
「それはピーナッツバターだよ。リリスなら気に入ると思ってのせてもらったんだ」
「ピーナッツバター……未知の食品、私の内臓が欲しがっています」
「…内臓って…そんな大袈裟な」
リリスは困惑するように眉を寄せる彼にはとっくに興味がなく、目の前の皿にのっているパンに夢中だった。
見ているだけで脳の処理速度が低下してくるくらいには、爆発的に魅力的だった。皿を持つ手がプルプルと震えている。
早朝からこのようなご馳走にありつける喜びと食すのに苦労するくらいの抵抗感に押しつぶされていた。
震える手を我慢しつつ、パクッと一口食べた。
トースターで焼いたパンは焦げたところのカリッとした食感の後に、雲に触れているようなフワッとした感覚が彼女の口を包む。彼女が驚くよりも前に、ピーナッツバターのまろやかな甘さが口を、脳へとクリーンヒット。甘みの大洪水が彼女を襲った。
「……っ!?」ーーこの一瞬で彼女はパンの虜になっていた。
「…こういうパンも初めてなんだ……」
どこか微妙な感じの表情をしながらリュックを背負った蓮は「じゃあ、行ってくるね。昼ごはんは冷蔵庫に冷凍食品があるからそれ食ってね」と、夢中になって食べているリリスの頭を撫でてから、玄関ドアに向いガチャリとドアを閉めて出ていった。
「……………」
彼女は満身創痍な表情でお腹をさすり、パンの余韻に浸っていた。窓から小鳥が朝の知らせをしにチュンチュンとせわしなく鳴いている。
祝福してくれるような、それでいて静かさをどうしようもなく引き立てているような感じがした。
テレビには女性アナリストが今日の天気を話している。朝にも関わらず、スッキリするくらいの元気な声で話してくれて朝の気だるい雰囲気を綺麗に洗い流してくれる。……今日は晴れのようだ。
「………これは?」
彼女は机の上に置いてある奇妙なキューブを手に取った。……どこかデジャヴを感じるが、透明なカプセルとは違い、これは小指くらいの小さいサイズで幾何学的な紋様が面に刻まれて、理屈が分からないが、その紋様が絶えず動いていた。
彼女が解析を進めようと目を大きく開く、瞬間キューブが弱く光り聞き慣れた声が聞こえた。
【……リリスさん、スリープ状態を解除してくれてありがとうございます。そして、許しません】
「ご、ごめんなさい……」
【(ため息のようなノイズ)……ペナルティとしてワタシと会話をしましょう。再びスリープモードに入るのは非効率なので。】
「は、はい。分かりました…」
彼女はベッドの上に再び座って、キューブを太ももの上に置いた。
【あー、あーー、あーー】
突然、ノイズみたいな呻き声をあげたかと思うと、さらに聞き慣れた大好きな人の声になっていった。
「ーーリリスさんにはこの声の方が良いですかね」
ボイスチェンジの機能がついていることに驚いたがまさかの声が九条蓮の声になっていることに更に彼女は驚いた。
「ははっ、驚かないでください。ワタシは…いや、僕は人工知能です。こういうことも可能だからね」
キューブから大好きなマスターの声がすることに嬉しさを覚えるが同時に物足りなさが彼女をくすぐった。
彼女に取っては蓮がいなくなることは『身体と脳』が分断されるのと同じくらいの違和感があるのだ。
「それで?リリス、僕と一緒に何を話そうか……?」
「………マスターについてお話ししたいです。」
どれだけ違和感が彼女を殴っても、暇が潰せるのであれば彼女はサンドバッグになっても良かった。
「マスター?ああ、僕のことね。分かった」
「……ややこしいですね」
「僕の何について聞きたい?」
「えっと、好きな食べ物とか、機械魔法の詳しい原理とか、アームの使い道、空間魔法の危険性……一ノ瀬さんとの具体的な関係性、今まで戦ってきたレガシーとの具体的な戦い方、マスターの部屋が何でこんなに汚いのか、マスターの好きなタイプ、ここの街の地図と観光スポット……オススメの料理、あとーー」
「……後半はほとんど関係なくない?」
「いいえ、『私にとっては』大アリです。……特にタイプと料理は。」
「分かった。じゃあタイプから……いや、まずは機械魔法の原理を軽く一時間ほど解説した方が良いね」
「え〜っと、一時間の解説はちょっと嫌、です…。」
「ああ、ならアームの具体的な攻撃方法をーー」
「ああ!い、いまはそれを聴く気分じゃないっていうか、そういうことじゃなくて……」
「……?じゃ…あ、タイ、プ…?」
「……(真っ赤な顔で無言でブンブンと縦に振る)」
「…………はは、リリスはやっぱり女の子だね」
「っ……(リリスの頭から湯気のようなものが立ち上っている)」
ーー側から見れば、四角い物体に恥ずかしがっている美少女という誰得?状態である。
「分かった。僕のタイプはね……」
リリスはそばにあった蓮の中学校「学級通信」を手に取りメモ帳代わりにした。一気に空気は緊迫感に包まれ、ゴクッと唾を飲む。
「…優しくて、僕のために尽くしてくれる女の子なら誰でも良い!」
「……え?」
想像以上に想像以下だったことに彼女のメモする手が止まる。彼女自身もっと「自分のことを命をかけて守ってくれる人」みたいなハードル高めの条件だったり「月が綺麗ねって言えるような人」みたいなちょっと頭のネジの外れた?条件だったりとそういうのがくると思っていたので、拍子抜けだった。
「……なぜそのような理由なんですか?」
「うん?簡単な話だよ。僕の生活を支えてくれるなら何でも良いし、皿洗いとか、洗濯とか、家事を一人でやるのは面倒だから一緒にやりたいっていうそれだけの話」
「…………ちなみにタイプな顔とか」
「ないね。でも、可愛かったらそれだけいいと思ってるよ」
「………うん!」
「……どうかした?」
「質問に答えてくれてありがとうございます。もう結構です!」
「は、え?機械魔法とか、オススメの料理とかそんなーー」
「いいえ、もう大丈夫です。本当にありがとうございました」
ーーガチャリ
「ただいま〜」
蓮が家へ帰ってくるとキッチンには可愛いピンク色のエプロンを着たリリスが鼻息を荒くしながら、笑顔で迎えてくれた。
「マスター……おかえりなさいませ!」
「おう……ん?どうしたんだ、そのエプロン……」
「そんなことより、今日の夕ご飯は『リリス特製・100%愛情を込めたハンバーグ』を提供します。お風呂も入れましたし、洗濯もお掃除も……全部済ませておきました」
「……お、おう」
リリスは自信満々にそう告げると、蓮の机……宿題が積まれた机をチラッと見た。
「……あと、明日提出するであろう宿題は全部終わらせておきました」
「……神!?」
蓮:「……このハンバーグ、超美味い!?」
リ:「ありがとうございます!!」
蓮:「……この前の左右対称おにぎりとパーフェクト味噌汁と比べて、確実に美味いよ……成長したね、リリス。」
リ:「嬉しいです……が、ちょっとその呼び方ひどくないですか?」
蓮:「だって……事実だもん」
リ:「……………はい」