世界のシステムを書き換える最強能力「管理者権限」を手に入れたので、日常をハッキングして無双します!   作:Laggliches

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大変期間が空いてしまい本当に申し訳ありませんでした!!
二週間ずっと勉強や部活でいっぱいいっぱいで手がつけられない状態でしたが、ようやく時間が空いたので(台風のせいで部活が無くなった)完成することができました。
さて、絶対零度廃坑……ついにマザー本拠地に侵入するためのサブ拠点ですね。空港から降りた蓮たちは一体どのようにして向かうのか……。


第十八話 絶対零度廃坑 入口

「……無理。寒い。僕は一歩も歩かない」

 

新千歳空港の到着ロビー

面倒くさい手続きを終わらせた一同は、早速極寒の地へと足を踏み入れていった。

ウィーンと自動ドアが左右に開いた瞬間、九条蓮はコンマ一秒の躊躇もなくその場に直立不動となり、ロボットのような正確さで回れ右をした。

 

ドアの向こうから吹き込んできたのは、秋の涼しさが混じった生温い空気に慣れきっている中学二年生の精神を、物理的かつ絶望的にへし折るのに十分すぎるほどの冷気だった。

 

「……ちょっと九条くん、北海道についた感想がそれなの!?」

 

呆れたような、しかしどこか予測していたと言わんばかりのため息をついたのは一ノ瀬結衣だった。

彼女は手元のスマートフォンで、事前に手配していた移動手段の情報を確認しながら、風に揺れた艶やかな黒髪を人差し指で軽く払う。

 

「……ここから目的地の『絶対零度廃坑』は、完全な山奥の未開拓エリアよ。車を手配してあるけれど、ここからノンストップで走っても二時間はかかるわ。」

「二時間……? 移動という行為に、俺の人生の貴重な演算リソースを120分も割くなんて無駄の極みだ。それにお腹が空いた。ここでご飯を食べる。移動はそのあと、いや、むしろ明日でもいい」

 

「……はあ!?あんたねぇ、これは世界を救うための旅路なのよ!?」

「まあまあ、一ノ瀬さん。こいつの燃費の悪さは今に始まったことじゃないし」

 

そう言って苦笑しながら二人の間に割って入った庄司。その手にはなぜか、機内で用意したと思われる特大サイズのプロテインシェイカーが握られている。

 

「……それに、俺もちょっと小腹が空いててさ。ほら、あっちに美味そうな店があるぜ」

 

庄司が指差した先には、木目調の看板に大きく『ジンギスカン』と書かれた、いかにも北海道らしい香ばしい煙を漂わせる名店があった。

その看板を見た瞬間、それまで蓮の背後に隠れるようにして怯えていた春輝とリリスの目が、まるで最新の有機ELディスプレイのように輝き出した。

 

「庄司くん、あの看板の文字……『いくら食べても太らない魔法の羊肉』って書いてあります……!」

「おう、よく見つけたな春輝!羊の肉は脂肪燃焼効果が高いから実質カロリーゼロだ。科学的にも間違ってねえ!」

 

「実質カロリーゼロ……。すごいです、北海道。やはりここは、マザーの魔の手から解放されるべき聖地ですね」

 

機内で庄司が布教していた『呪術廻戦』の単行本を大事そうに脇に抱えた春輝が、大真面目な顔で頷く。

さらにその横では、白髪の美少女が蓮の服の袖をきゅっと掴み、無表情のまま上目遣いで蓮を見つめていた。

 

「マスター、私、『ジンギスカン』を食べたいです。それを摂取すれば、私のコアもマスターへの愛で1000%に達します」

「……それはシステム上のバグだから、これ以上出力を上げないでくれ」

 

蓮が頭を押さえる。

結局、最強の怠惰男の我儘と、元非検体たちの純粋な食欲に押し切られる形で、一行はジンギスカン料理の店へと滑り込むことになった。

 

「ふふっ、私の出番が来たわね!」

 

お会計の際に一ノ瀬家のブラックカードが火を吹くことは、もはやこのパーティのデフォルト設定だった(先払いなことには違和感を抱いていないが)

煙が立ち込める店内の丸テーブルを囲み、ジューッという心地よい音と共に、厚切りのラム肉が中央の凸型鍋で焼き上げられていく。

 

「おお、これがジンギスカン……くそうめえ……!」

「庄司くん、羊の肉ってこんなに弾力があって美味しいんですね……!組織の施設で配られていた、味のしない栄養剤とは次元が違います!」

 

「だろ? 飯を美味いと思える食欲こそが、強さの原動源だ!そこでだ春輝、肉を噛み締めるその瞬間の『圧力』を脳内でイメージしろ。。そうすれば、お前も『黒閃』が撃てる!」

「……はい! 庄司くんに追いつけるよう、打撃の瞬間の一ノ瀬さんの視線並みの鋭さをイメージします!」

「……ちょっと、春輝。それどういう意味かしら?」

 

戦闘前だというのに、当たり前のようにジンギスカンを突きながら、ガチで『黒閃』のイメージトレーニングを始める庄司と春輝。

もはや庄司の言う『黒閃』が、ただの筋肉による右ストレートなのか、それとも本当に『遍在の器』による『再現』なのか、蓮すらも判別がつかなくなっていた。

結衣すらも「もう好きにすればいいわ……」と額を押さえ、お茶を濁している。

 

その対面では、リリスがトングを器用に操り、蓮の小皿に「マスター、栄養を摂取してください。この肉には私の深層心理の愛がプログラミングされています」と、山盛りの肉を次々に積み上げていく。

 

「……一ノ瀬さん、助けて。肉の質量が俺の胃袋の許容量を超えそう」

 

「知らないわよ。リリスさんの愛なんだから、残さず食べなさい。……ほら、九条くん、お野菜も食べなきゃダメでしょ。タマネギ入れとくわね」

「……一ノ瀬さん、それはただの看病プロトコル……」

 

なんだかんだと言いながらも、満腹になった彼の瞳の奥で、淡い幾何学模様の論理回路が高速で回転を始めた。

 

彼は、結衣がテーブルの上に置いていたスマホの画面を、視線だけでハッキングする。結衣が先ほど切ったブラックカードの、決済ログの通信経路を逆探知するためだ。

 

目的地である『絶対零度廃坑』の周囲にある防衛インフラの、正確な座標データが一瞬で蓮の脳内メモリに展開される。

 

「……よし、座標のロックオン完了」

「え? 九条くん、今何かした……?」

 

彼女が怪訝そうな顔をしたその瞬間、蓮のズボンのポケットの中でスマホが短く震えた。画面を表示すると、佐藤朱音からのLINEの通知だった。

 

『無事に着いた?北海道は寒いから風邪ひかないでね!』

 

「………お」

 

日常の象徴のようなそのメッセージに、蓮の口元がわずかに緩む。

 

ーーだが、その瞬間。テーブルの空気が凍りついた。

 

両サイドから、ジンギスカンの熱気を一瞬で打ち消すほどの凄まじい殺気を含んだ視線が突き刺さる。

 

「……九条くん?誰からの通信ログかしら。ちょっと私の『観察眼』で見せてもらうわね。今、画面のピクセルデータから文字情報を復元中だから」

「マスターに有害な電波を送信する不審者は、私のハッキングで今すぐ端末ごと、ついでにその通信基地局ごと物理的に消去します」

 

「……ただのクラスメイトだよ!二人ともシステムを私物化するな!」

 

結衣のルームミラー並みに鋭いロックオンと、リリスのあまりにも物騒な排他プログラミング。

 

「『ありがとう』の後のビックリマークは好意の過剰演算のため禁止」

「スタンプ返しは人間関係の未確定要素を生むので不許可」

 

と、二人の手によって厳密な返信検閲が蓮を侵食されようとしたその時ーー蓮の限界がきた。

 

「め、めんどくさい……!満腹だし、これ以上一歩も動きたくないし、この不毛な検閲も、全部まとめてサボる!」

 

蓮が深く息を吸い込むと、彼の脳内に、システムに宿る冷徹な「案内人」の声が響き渡った。

 

【了解ーー九条蓮、管理者権限を部分的承認。[対象座標:絶対零度廃坑前]周辺空間の位相接続を実行します。カウント、ゼロ】

 

蓮が、右手の親指と中指をパチンと鳴らした。

すると、空港の賑やかな喧騒も、ジンギスカンの煙の匂いも、目の前の網の上でジュウジュウと音を立てていた肉も、すべてが消失した。

 

視界が一瞬だけ、ノイズのような真っ白な光に染まる。次に全員が肌に突き刺すような寒さの感覚を覚えたとき

ーーそこは、完全なる静寂に包まれた極寒の雪山だった。

 

「ひゃうっ!?」

 

あまりの急激な気温の変化に、結衣が短い悲鳴を上げてその場にしゃがみ込む。

周囲にあるのは、見渡す限りの銀世界。人間の文明の気配など一切ない、不気味に伫む廃坑の入り口だけが、ぽっかりと黒い口を開けていた。

 

「……ちょっと九条くん!心の準備ってものがーー!」

 

結衣が立ち上がり、猛抗議の声を上げようとしたが、突然ぴたりと動きを止めた。彼女の『観察眼』が、目の前の景色に恐るべき「違和感」を捉えたからだ。

 

風が吹き荒れている。それなのに、地面に敷き詰められた雪の結晶が、顕微鏡で覗いたかのような「完璧に同一の正六角形」のまま、一ミリの狂いもなく並んでいる。

 

風に揺れる木の枝のしなり方も、雪の積もり方も、まるで超高性能なゲームエンジンでレンダリングされたかのように、すべてが数式に支配されていた。

 

【ーー警告】

 

案内人の、一切の感情を排除したシステム音声が、今度はパーティ全員の脳内に直接響き渡った。

 

【これより先、『マザー』の演算領域。世界を部品として最適化し、不確定要素を排除するための、最適化結界ーー『絶対零度廃坑』です】

 

「……へえ、本当にこの先にマザーのサブ拠点があるみたいだな」

 

蓮はいつになく真剣な、戦闘モードの目つきに切り替わった。廃坑の先を覗く瞳には、青白いコードの羅列が激しくスクロールしている。

 

空港でジンギスカンをたらふく食べ、体温を限界まで引き上げておいて正解だった。そうでなければ、この空間に転送された瞬間、彼らの生体機能は文字通り「凍結」していただろう。

 

「……庄司くん、僕、なんだか体が軽いです」

 

春輝が左腕を動かしながら、前を見据える。その目は、恐怖ではなく、かつてない集中力に満ちていた。

 

「おう、マザーの結界が論理的なら、俺たちのやることは一つだ。非論理の力でぶっ叩く……行くぞ!!」

庄司が拳を合わせると、一気に炎が湧き上がるような音が響いた。

 

《……我の術式を忘れるな、桐乃……》

 

「……忘れてるわけねぇだろ。さっさと行くぞ」

 

ツンデレな呪いの主を率いる一同は、完全に凍りついた『絶対零度廃坑』の入り口へと、ゆっくりと歩みを進める。一歩、その暗黒の坑道の中に足を踏み入れた瞬間。

 

現代の科学や魔術の定石では説明のつかない、絶対的な拒絶の寒さが彼らの肌を刺した。

蓮の『機械魔法』の論理演算さえも、伝播速度を物理的に遅延させようとするかのような、マザーの防衛システム。

蓮は幾何学的なオーラから、暗黒の奥底を見据えてぽつりと言った。

 

「寒いのは本当に嫌いなんだ……さっさと終わらせて、旅館の布団に潜らせろ」

 

ーーゴゴゴゴゴ……

 

廃坑の闇の奥から、機械的な防衛兵器の不気味な駆動音が地鳴りのように響き渡る。

それと同時に、暗闇の中から監視カメラや無数の赤いセンサーライトが点灯し、侵入者である彼らを一斉にロックオンした。

 

戦いの火蓋は、切って落とされた。




結衣:「……い、いくらなんでも寒っ、寒すぎないかしら!?」
庄司:「そんな時こそ筋トレだろ!!!」
春輝:「え、ええ………」

蓮:「……非効率、だな。案内人、あれをお願い」

【ーー了解、全員の体温を自動修正もとい改竄を開始します】

結衣:「……うわ、急に体があったかくなったわ」
蓮:「なんで引いてんの……」
リリス:「それでも…さ、寒いです……マスター」
蓮:「僕のコート貸そうか?」
リリス:「是非!!!」
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