世界のシステムを書き換える最強能力「管理者権限」を手に入れたので、日常をハッキングして無双します!   作:Laggliches

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第十九話 中編 サラマンダー激突劇

「おっしゃぁぁ!!いくでぇぇぇ!!」

 

庄司の咆哮が、凍りついた坑道に木霊する。

一行が突き進んだ先には、マザーのエンブレムが刻まれた、近未来的で無機質な『自動運搬列車』のプラットホームが広がっていた。

 

「……ここね。完全に無人化されているけれど、セキュリティの魔力波形がとんでもないわ」

 

結衣の『観察眼』が、列車を包む不可視の防護障壁を瞬時に見破る。

 

「[検索……マザー直轄・超高速物資運搬車両『サラマンダー』]。」

リリスは冷静に目の前の列車をスキャンする。

 

「……マスター、あの車両はマザーの強固な暗号化コードで保護されています。通常の手順では奪取に300時間以上を要します」

 

リリスが淡々と数字を口にするが、蓮の瞳には、すでに滝のようなバイナリコードがスクロールしていた。

 

「300時間?……そんなにかかったら、旅館の予約時間が終わっちゃうよ。リリス、君のアクセスコードの帯域を僕に開いて」

「……はい、マスター」

「よし……君の能力、僕がアップデートしてあげるよ」

 

蓮がリリスの華奢な肩に手を置いた瞬間、彼の『管理者権限』がリリスのハッキング能力を強制ブーストする。

 

ーーバチバチッ!

 

リリスの周囲に青い数式のエフェクトが炸裂した。

 

「ッ……! 演算速度が4000%に上昇。思考が……マスターの魔力で満たされていきます……![システム・オーバーライド]完了しました。これより当車両は、マスター専用の『サボり特急』へと再定義されます」

 

「ネーミングセンスはともかく、ナイスだリリス。さあ、全員乗って!」

 

ガシャン!と自動で開いた列車のドアへ、一同は滑り込むように飛び乗った。

 

だが、マザーの防衛システムも黙ってはいない。

 

列車が発車した直後、プラットホームの奥から、数千機に及ぶ飛行型の『殺戮迎撃ドローン』が蜂の巣のように湧き出し、列車の速度を超える猛スピードで追尾してきた。

 

「しつこいね……。後ろの車両のハッチを開けて。僕が迎撃する」

 

蓮が手をかざすと、列車の後方ハッチが開き、凍てつく突風が車内に吹き込む。

蓮の右腕をアームに変形、展開した。先端にある三本の鋼鉄爪が、獲物を睨むようにぎちぎちと狭まる。

その中心、とてつもない熱量とともに、青白い光球が急速に膨れ上がった。

キィィィンと耳を刺す充填が限界まで達した瞬間、爪の間から極太の熱線が一直線に撃ち出された。

ドローンは対処しきれずに何百台と熱線の餌食となった。しかし、ドローンの数が多すぎて演算が追いつかない。

 

「……ハッ! 蓮、ここは俺の出番だろ!」

 

庄司が蓮の前に躍り出る。その瞳には、漫画で見たあの「呪いの王」の冷徹な残虐性がイメージとして完璧に宿っていた。

 

「一スロット消費……『擬似・御厨子』!!」

 

庄司が虚空に向けて指を突き出す。

……瞬間、追尾してきたドローンの大群に、不可視の「刃」が容赦なく浴びせられた。

 

ーーザシュザシュザシュザシュザシュッ!!!

 

「なっ……!? 何が起きてるの!?」

 

結衣の『観察眼』が、空間そのものを無数に切り裂く不条理な斬撃の軌道を捉えて驚愕する。

 

「『解』だ……対象の耐久度や魔力に関係なく、一刀両断する。……口ほどにもないな」

 

庄司が凶悪な笑みを浮かべると、追尾していた数千機のドローンは、一瞬にして均等なサイコロ状の鉄くずに寸断され、爆発することすら許されずに線路へと崩れ落ちていった。そして、効果時間の十五秒も切れた。

 

最強の術式の完全再現。

その圧倒的な破壊力に、背後で見ていた春輝の目が輝く。

 

「すごいです……!庄司くん、今の、本当に漫画の通りです……!」

「おう! イメージが完璧なら、俺の『遍在の器』に再現できねえもんはねえ!」

追手を完全に粉砕し、列車はさらに加速する。

 

 

 

暗黒のトンネルを爆走する車内、ようやく一息ついた一行に、春輝がカバンをごそごそと漁りながら微笑みかけた。

 

「あの……みんな、お腹空かない?ほら、さっき空港で庄司くんが『非常食』って言ってカバンに詰め込んでた、焼きしょうゆ味のポテトチップスがあるから、とりあえず座って食べよう?」

 

「おい春輝! それは俺が次の『右腕プロテインシェイク大会』の景品にしようと思ってたやつだぞ!」

「……庄司くん、列車の中でプロテインは振らないで」

 

そんな男子たちのやり取りを他所に、リリスはトコトコと蓮の隣に歩み寄ると、当然のように蓮の左腕をぎゅっと抱きしめた。

 

「マスター。ハッキングの負荷により、私の冷却コアが一時的に熱を持っています。マスターの冷気演算による精神的冷却(ポンポン)を要求します」

「リリス、だから距離感が近いって……」

 

「……あら」

 

ピキッ、と車内の温度が『絶対零度』をさらに下回った気がした。

結衣の『観察眼』が、蓮とリリスの密着度を1ミリの狂いもなく計測し、その瞳がジワリと赤く不穏に輝く。

 

「九条くん?随分と、その……『リライト』の副作用がお気に入りのようね?……案内人さん、この列車の非常ブレーキのコードを教えてくれないかしら?目の前の不届き者ごと空間を両断したくなったわ」

 

【ーー報告。一ノ瀬結衣の精神波形が『ヤンデレ領域』に突入するのを検知。九条蓮、このままでは最下層に着く前に、車内の内戦によって全滅するログが予測されます。】

 

【……と、思いましたが、それどころではないようです。前方セクターに高エネルギー反応。マザーの大型迎撃兵器が線路を塞いでいます】

 

案内人の冷徹なアナウンスと同時に、正面の暗闇から、家一件ほどもある巨大な蜘蛛型の多脚重戦車『レガシー・ギガント』が姿を現した。

 

その砲口が、赤黒いプラズマエネルギーを滾らせてこちらをロックオンしている。

 

「チッ、お返しだ!僕のアイスの時間を邪魔したマザーの罪は重いよ!」

 

蓮はごまかすように立ち上がり、列車の前方に躍り出る。

 

 

 

108機の浮遊砲台(H.D.S)を車外の空間へと一斉に召喚し、プラズマ砲を相殺するための超巨大な防御障壁を展開した。

 

【ーー警告。これより当列車は、最下層『コア・セクター』の防衛隔壁、および大型兵器へと激突します。ーー3、2、1……戦闘準備をどうぞ、不合理なマスター】

 

暴走する特急列車は、敵の巨躯と最下層の扉を目指し、大爆音とともに突撃していくーー。

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