世界のシステムを書き換える最強能力「管理者権限」を手に入れたので、日常をハッキングして無双します!   作:Laggliches

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約二ヶ月と、とんでもなく待たせてしまって申し訳ございません!ようやく落ち着いてきたので、やっと執筆を進めれて投稿できました……。

時系列は北海道のサブ拠点を(庄司が)破壊したところからのスタートですね。第一の目標を達成したあと、道草を食べながら、一同は休憩を取るために北海道の旅館へ向かいます!
どんな状況でものんびりした彼らと、次なる拠点の舞台……楽しんでいただけると幸いです!

……二ヶ月も空いてたから読者の人たちは興ざめしてないかな……本当にごめんなさい。


第二十話 旅館の温泉と余韻に浸ろう

「おい蓮!見ろよあのお土産……『木彫りの熊(ミニキーホルダー付き)』だってよ!鮭を咥えているが、代わりに俺のプロテインシェイカーをガッチリとホールドできるな……。」

「……お、おう。」

 

「それに、これさえあれば、広背筋の鍛錬中もスマートに水分補給ができる、科学的にも最強のインテリアじゃねえか!」

 

「あのな……、ただの鮭を奪われた熊の置物に、プロテインを強引に取り付けても意味は無いぞ庄司。……それにこの極寒の雪道で積載リソースを無駄に消費しながら持ち歩くなんて、非効率にもほどがあるね」

 

白濁とした湯煙がのどかに立ち上る、北海道のとある温泉街の坂道。

 

数十分前までは、マザーのサブ拠点である『絶対零度廃坑』で数千機のドローンとレガシー・ギガントを文字通り塵に変え、メインサーバーを物理的にブチ壊したばかりだ。

それなのに、庄司はすでに戦闘の疲労など塵一つ残っていないかのように、観光客全開のテンションで土産物屋の店先を物色していた。

 

「本当……体力バカは底が見えないんだよな。……うっ、寒っ」

 

その後ろを、蓮は首元までしっかりと防寒着のファスナーを上げ、寒さに身を縮めながら歩く。

 

雪道を踏むたびに生じる摩擦係数と、それによって無駄に消費される熱量を最小限に抑えるため、脳内メモリの数パーセントを『最も効率的な歩行』の演算に費やしていた。

 

「……庄司くん、随分と楽しそうね。……九条くん、あの坑道から脱出できたのは結構だけど……。私の『観察眼』は、さっきリリスさんがあなたに言った『混浴要求』のログを、まだ見逃していないわよ」

 

「あの、周囲の雪を見てくれないか……?一ノ瀬さんの視線で雪が、じわじわ蒸発してるから……。混浴に関してはリリスのサーバーの言語バグ、あるいは論理回路のエラーだから落ち着いて」

「……マスター、別にエラーなどしてませんけど」

 

隣を歩く一ノ瀬結衣の瞳は、温泉街の穏やかな熱気などお構いなしに、未だ不穏な深紅の光を帯びて蓮の横顔を完全にロックオンしている。

彼女の『観察眼』は、蓮の生体反応から「言い訳による心拍数の上昇」すらミリ単位で見破ろうとしていた。

 

さらに、蓮の反対側からは、白髪の美少女リリスが、蓮の服の袖を小さな手でぎゅっと掴んだまま、無表情でトコトコと付いてきている。

 

「マスター、一ノ瀬結衣の独占欲による温度の上昇を検知しました。これはマスターの『冷え切った生体機能』を回復するための暖房リソースとして、極めて有効に再利用可能であると推測します」

 

「リリスさん、癪に触るようなハッキングプログラムを展開しないでちょうだい……」

結衣がさらに髪をかき上げながら不機嫌なため息をつくと、その一瞬、彼女の周囲にだけ実質的な『絶対零度』の冷気が爆発的に吹き荒れたような錯覚を覚える。

 

「……あれ、一ノ瀬さんが怒ってない。いつもならもっと……赤いオーラを身体に纏って鬼の形相で怒るもんだと」

「……はあ、こっちは疲れてんのよ。」

 

彼女はさらに深いため息を吐きつつ、親指と人差し指で眉間をギューッとつまむように押し、そのまま目を閉じる。

 

「すごい……っ。僕、旅館に泊まるの、人生で初めてです。組織の施設には、消毒風呂と、不味いお薬と、簡易的な冷たいベッドしかありませんでしたから……」

 

カバンの中に、先ほど空港で庄司が買い占めた『非常食用ポテトチップス(焼きしょうゆ味)』をしまった春輝だけが、この一触即発のラブコメ内戦に全く気づくことなく、純粋に修学旅行(偽)の雰囲気に目を輝かせていた。

 

【――報告、目的の温泉宿『旅館・碧蝶館』を補足。……ですが、一ノ瀬結衣の状態を見るに、あなたの精神リソースが、先に枯渇する可能性が非常に高いです。これ以上の会話を直ちに停止することを強く推奨します】

 

「……よし、案内人の言う通りだ。みんな、無駄話はそこまでにしてさっさと宿に入るよ。寒さで僕の論理思考回路が完全にフリーズする前にね」

 

蓮は結衣の瞳が完全に『据わる』前に、逃げるように旅館の和風な木製ドアを横に開けるのだった。

 

*

 

仲居さんに案内された客室は、青畳の香りがふわりと漂う、和風の広々とした十畳間だった。

床の間にはなんとも風情のある掛け軸が飾られ、窓の外にはしんしんと降り積もる美しい雪景色が広がっている。

 

「うおおおおおッ!見ろよ春輝、これが日本の伝統の『タタミ』だぜ!この適度な弾力性、グリップ力……!マシンのない環境で筋トレをやるには、超最高のステージじゃねえか!」

 

「わぁ、本当ですね庄司くん!足の裏から暖かさが伝わってきます……冷たいコンクリート床とは全然違います。僕、なんだかこれだけで、左腕の出力がいつもより安定している気がします!」

 

部屋に入るや否や、庄司はカバンを床に放り出し、特大のプロテインシェイカーに材料をぶち込んで激しく振り始めた。

その横では、春輝がまるで高級な絨毯にでも触れるかのように、両手でそっと畳を撫で回しながら瞳をらんらんと輝かせている。

 

脳筋呪術師と元被検体という兄弟の感動のベクトルは、相変わらずどこかズレていた。

 

「……二人とも、脳の演算領域がバグを起こしているよ。畳は乾燥させた植物の集合体だし、そこでプロテインを限界までシェイクするのは畳の寿命を削る非効率な行為だ」

 

蓮はため息をつきながら、部屋の隅にある座卓へと歩み寄り、自分の座布団を確保しようとした。ーーだが、その瞬間。

 

「……マスター、この部屋の構造、および座布団の配置から導き出した『最適化パーソナルスペース』を完了しました。マスターの右側の座布団を、私の絶対防衛圏(プライベートセクター)として強制確保します」

 

トコトコと音もなく近づいてきたリリスが、淡々と呟きながら、蓮が座るのとほぼ同時に、彼の真隣の座布団へとぴたりと正座した。

無表情な瞳の奥に宿るへの愛は、まるで揺らぎがなく、彼女の華奢な肩は、すでに蓮の服と完璧に密着している。

 

「ちょっと待ちなさい、リリスさん!?」

結衣が慌てて彼女を静止する。

 

「そこはクラスメイト……いや、幼馴染としての優先順位から考えても、私が座るべきポジションじゃないかしら!?」

「拒否します。一ノ瀬結衣のアクセス権限は、一時的な『ゲストレベル』に制限されています。『マスターレベル』という特等席は、専属サポーターである私の固有パケットです」

 

「誰がゲストよ!? 私の『観察眼』にかかれば、あなたのその生意気なプログラムの弱点なんて、すぐに書き換えてログインしてあげるんだから!」

 

結衣が怒髪天を突きそうな勢いで、テーブルをガタッと揺らしながら蓮の正面の席へ陣取る。疲れていたはずの彼女の瞳がジワリと妖しく輝く。

すると、部屋の空気が物理的にパキパキと凍りついていくような錯覚を覚えた。

 

【ーー報告。部屋の一角において、再び『ヤンデレ波形』の急上昇を検知。九条蓮、このままでは夕食を前に部屋が物理的に崩壊します。庄司と春輝を連れて、温泉へ逃走することを最優先タスクとしてお勧めします】

 

「……よし、案内人の言う通りだ。庄司、春輝、さっさと温泉に行くよ。冷え切った身体を温めるのが、今の僕たちの最優先タスクだ。

 

蓮は結衣の据わった瞳から視線をそらすように立ち上がると、プロテインを振り続ける庄司と畳を愛でる春輝の襟首を掴み、大急ぎで部屋を飛び出した。

 

*

 

大きな木造りの引き戸を開けた先には、岩造りの露天風呂が広がっていた。白く濁った源泉からは、なんとも心地よい熱気が立ち上り、周囲の銀世界をじんわりと溶かしている。

 

「ふぅ……。やっぱり、温泉に浸かるっていうのは、身体のメンテナンスにおいてとても効率的だね。さっきの廃坑の冷気で凍った演算機能が溶けていくのがわかるよ」

 

蓮が首までどっぷりと温泉に浸かり、今日一番の深いため息をついて目を閉じた。

 

ーーだが、その平穏はわずか数秒しか持たなかった。

 

「おい春輝!湯船のこの浮力を利用すれば、手のひらに圧倒的なな『圧力』を発生させることができるぞ!これぞ温泉地限定の修行ーー名付けて『露天風呂タンパク大会』の開催だぁあ!」

「すごいです、庄司くん!お湯の抵抗が敵の重力障壁みたいで、腕の駆動部を動かすだけでイメージトレーニングになります!」

 

バシャバシャバシャッ!!と豪快に湯を跳ね上げながら、庄司が筋肉を躍動させて湯をかき回し、それに触発された春輝が左腕を小刻みに動かしてプラズマ(を模した湯の華)を散らし始める。

 

「……二人とも、お風呂の中でその……プロテインのイメージを爆発させるのはやめてくれ。温泉の成分とプロテインが化学反応でも起こしたら、ただの迷惑行為だよ」

 

蓮が湯気の向こうから気怠げに釘を刺すと、庄司は「あっはは、お前は相変わらずカタいこと言うねえ!」と笑い飛ばした。

 

だが、春輝が激しく腕を動かした拍子に、湯船から上がった彼の細い上半身が露わになった。

蓮の瞳の奥の幾何学模様が、無意識のうちにその肉体をスキャンしてしまう。

 

彼の身体はいくつもの縫い目が刻まれており、血管のような導線が肌の下を這っていた。

中学生の肉体にしてはあまりにも残酷な、組織の非道な実験によって刻まれた、生々しい手術痕が、いくつも白くケロイド状に残っていた。

 

春輝は蓮の視線に気づくと、ハッと表情を強張らせ、申し訳なさそうに自分の左腕を白濁とした湯の中に隠した。

 

「……ごめんなさい、蓮さん、庄司くん。こんな……気持ち悪い傷跡、見せられたら不快ですよね……」

 

消え入りそうな声で俯く春輝。かつて組織の道具として扱われた少年の、悲しいトラウマが垣間見えた瞬間だった。

 

だが、次の瞬間、ドバァアアッ!と津波のような湯が春輝の頭から降り注いだ。

 

「バカ言えお前ぇぇぇぇっ!!」

 

庄司が春輝の華奢な肩を、その太い腕でガシッと引き寄せ、痛快極まる大声で笑った。

 

「傷跡なんてなぁ!男にとっちゃあ『証』なんだよ!気味が悪いわけあるか!なぁ蓮、俺のこの右腕の傷だって、刃物を扱った時の誇り高き勲章だろ?」

「……庄司、それはただの不注意による自業自得なんだよ」

 

蓮が冷徹に突っ込みを入れると、春輝は一瞬きょとんとした表情を浮かべた。それでも、庄司の呆れるほどのポジティブさと、その腕の温もりに、すぐに「ふふっ……あはは!」と、いつもの純粋で可愛らしい笑い声を響かせた。

 

「……まあ、庄司の言う通り、その傷があるからこそ、君のレールガンの圧倒的な演算精度があるわけだしね。……無駄な経験なんて、この世界には一つもないよ。さっさとその腕を温めて、戦闘ログの最適化を済ませろよ」

 

蓮が湯気の中に顔を半分埋めながら、ぶつぶつと彼なりの冷徹な(不器用な)優しさで言葉を付け足す。

 

春輝は湯気で顔を赤くしながらも、その瞳をかつての恐怖ではなく、本当の『家族』、それから『仲間』を見つけた温かい輝きでいっぱいに満たしていた。

 

*

 

温泉での癒しを終えた蓮たちが客室に戻ると、部屋の中央にある大きな座卓には、目を見張るような豪華な夕食バイキング形式の料理が並べられていた。

 

カニ、マグロ、イクラ、そして鉄板の上でジュージューと心地よい音を立てる特大のジンギスカン。温泉宿が誇る、北海道の味覚のフルコンボである。

 

「見ろよ春輝、この輝くイクラの山!一粒一粒が凝縮されたアミノ酸の結晶体……!これだけ食べても脂肪燃焼効果で相殺されるから、実質カロリーゼロ(2回目)に違いねえ!」

 

「本当にすごいです。このカニの身の弾力……!僕、なんだか美味しそうすぎて、涙が出てきました……っ!」

 

庄司と春輝は温泉上がりで、完全に飢餓状態に陥った野生動物のような勢いで、大皿から次々と料理を胃袋へパージしていく。

義兄弟たちの純粋な食欲のバーストを前に、旅館の静かな空気は一瞬でかき消されていた。

 

「……二人とも、温泉の熱気で論理回路が完全にショートしているよ。いくらアミノ酸でも許容量を超えればただの過負荷……デブだし、その『実質カロリーゼロ』という非科学的なのは脳内からデリートしてくれ」

 

蓮は呆れ果てたように頭を押さえつつ、自分の箸を進めようとした。

ーーだが、その瞬間

 

「……マスター。夕食の摂取に伴い、マスターの健康数値を1200%に引き上げるための最適化メニューを構築しました。これらのメニューは私の深層心理の愛がプログラミングされています」

 

「ちょっとリリスさん!?九条くんは理系男子なのよ、そんな脂っこい肉ばかりじゃビタミンが不足して演算能力が低下するわ!ほら九条くん、このオーガニック野菜をたくさん食べなさい。」

 

両サイドから、リリスのトング捌きによる肉の高速マウンティングと、結衣の『観察眼』によってミリ単位で選別された野菜の波が、蓮の胃袋の許容量を無視して押し寄せてくる。

結衣の瞳は、昼間の嫉妬を引きずったままジワリと赤く不穏に明滅していた。

 

「……あの、二人とも、僕の小皿のリソースが完全にパンクしかけているから……」

 

【ーーテーブル上において、再び『ヤンデレ波形』と『リリスさんのオーバーライド』が衝突。目の前のヒロイン二人のマウンティングを論理的に中和するのは実質的に不可能です。九条蓮、諦めて全て完食してください】

 

脳内で響く案内人の投げやりなアナウンスを右耳から左耳へと受け流しながら、蓮はなんとか肉と野菜を同時に口へと押し込んだ。

 

「……っ、美味しい。タマネギの甘みがラムの油を中和している……」

「ふふん、当然よ!私の計算に狂いはないわ!」

 

「……一ノ瀬結衣の看病プロトコルに、マスターの味覚が好反応を示したログを確認。……とても悔しいのでマスターの服の袖をさらに強く握ります」

「だから距離感がおかしなことになってるって言ってるだろ、リリス!」

 

 

 

カオス極まるやり取りが一段落したところで、蓮はごまかすようにスマートフォンの画面を座卓の上に投影した。

青白いホログラムが浮かび上がり、温泉宿ののどかな空気が一瞬だけピリリと引き締まる。

 

「……さて。マザーのサブ拠点を(庄司が)物理破壊したことで、次のアンカーの逆探知に成功したよ。案内人、データを表示してくれ」

 

【ーー了解。第2のサブ拠点。[マザー、アーカイヴ]が日本の象徴である富士山に配置した、次元リソース最適化セクター……『富士・エネルギー製造プラント』です。】

 

「……また工場系の拠点なんだね」

 

【はい、地熱エネルギーを不正利用し、様々な兵器を製造しており、『エネルギーブレード』『高出力ショルダーキャノン』、そして北海道で戦った『レガシー・ギガント』を遥かに凌駕する大型兵器を生産しています。】

 

案内人の冷徹なアナウンスとともに、画面には赤黒いマグマのグラフィックと、数式で埋め尽くされた巨大なプラントの内部構造図がスクロールされる。

 

「へえ、今度は絶対零度の次は活火山か。マザーも、僕の『アイスを食べて寝る平穏な日常』を邪魔するためなら、随分と極端な嫌がらせをしてくるみたいだね」

 

蓮が戦闘モードの冷徹な瞳で画面を睨みつける。だが、そのシリアスな空気は、再び隣からの大声によって木端微塵に粉砕された。

 

「富士山だぁ!?最高じゃねえか!一回も行ったことねえけど、マグマの熱を直に受けてみたいぜ!」

「僕のレールガンも、マグマの熱エネルギーをラーニングすれば、次は最大出力で火口ごと敵を倒せる気がします!」

 

「……マグマの中に突っ込んだら、ただの熱力学第二法則によって分子レベルで消滅するよ。本当に、脳筋のイメージトレーニングは非効率極まりないね」

 

蓮は深くため息をつき、お替りのジンギスカンを口に運びながら、次の『最も効率的にサブ拠点を攻略する計画』の最適化演算を、脳内で静かに開始するのだった。




蓮:「マジでサブ拠点多すぎなんだよ……」
リリス:「あと五つありますが、……何日かかるのでしょうか?」
結衣:「最低でも二ヶ月は欲しいわよ……」

庄司:「俺たちのチームを分断するのはどうだ?」

春輝:「五人だから……2チームってところですね」
結衣:「悪いけど却下だわ……これ以上別れると危険なのよ」
春輝:「……そうですね」
庄司:「仕方ねえよな」

蓮:「まあ、明日でも考えれば良いさ……もう眠いから解散ね」
結衣:「ちょ、ちょっと!?」

庄司:「俺も筋肉のシンデレラタイムが……」
春輝:「……正直、眠いです」

リリス:「それならまた明日考えましょう」

結衣:「…………分かったわ」
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