世界のシステムを書き換える最強能力「管理者権限」を手に入れたので、日常をハッキングして無双します! 作:Laggliches
追加コンテンツを挟んでようやく三話ですね…待ち望んでいた人はすみませんでした。前回はヒロインであり、チームのサポート役となった一ノ瀬結衣の登場回でしたね!ちょっと彼女の今後が心配ですが…。
さて、今回のタイトル「のびしろのある『超速の一閃』」って誰のことか気になりますよねー。蓮くんのことなのか、結衣ちゃんか庄司かそれともまた別の……ぜひぜひ読んでみてくださいね!
「九条くん、右肩の出力が0.03%予定値より上振れしているわ。あと、左足の重心をあと2ミリ右に…そうしないと、次の空間固定の際に膝の軟骨が演算負荷で悲鳴を上げることになるわ」
放課後、人里離れた廃工場の跡地。
一ノ瀬結衣の冷静な声が、埃っぽい空間に響く。彼女の瞳には、常に幾何学的な紋様が浮かんでいた。
覚醒した能力「観察眼(オブザーバー)」それは世界の流れを、熱量、質量、ベクトル、そして魔力の粒子レベルで視覚化する『神の視点』そのものだ。
「一ノ瀬さん、厳しいって。僕、これでも昨日からずっとOSのアップデートと自己修復で脳が熱暴走気味なんだよ?」
蓮は文句を言いながらも、指示通りに姿勢を微調整する。彼の背中には、瓦際から再構築された六本の機械アームが、まるで蜘蛛の脚のようだった。
「ダメよ。あなたの「機械魔法」は強力すぎるけれど、その実、出力の制御が大雑把なの。あなたは計算で答えを出しているけれど、私はその計算式の「書き残し」を指摘しているの。効率的な意情を求めるなら一撃で最適解を導き出すべきでしょう?」
「正論すぎて、OSがフリーズしそうだ」
連が苦笑いしながら振り上げる。
すると、六本の機械アームが一斉に周囲の瓦礫ーー鉄骨やコンクリートの塊を掴み、空中に放り投げた。すかさず彼女が指示を出す。
「一時、二時の方位。そして天頂…残りはすべて背後45度今よ!」
「了解!システム『多重並列処理』ブート!」
蓮の視界が反転し、空中に放られた瓦礫の全軌道が確定する。
機械アームの先端が高速変形し、高圧ガスを噴射、最小限の動きで、すべての瓦際を空中で粉砕、そして一箇所に集積して完璧な防壁を作り上げた。
「ふう、一ノ瀬さんのガイドがあると、脳の負担が三割は減るな…すごいよ」
「当然よ。私は、無駄が嫌いなだけ」
少しだけ頬を染めながら視線を逸らす彼女。
その横で、プロテインが入ったボトルを振りながら庄司が呆れたように声を上げた。
「おーい、お二人さん。練習はいいけどよ、俺の出番はあるのか?この前のコーラ回収係みたいなのは勘弁だぞ」
「庄司くんは…そうね、九条くんが演算オーバーで倒れた時に、彼を担いで逃げるための筋肉を維持しておいて」
「結局、荷物持ちじゃねーか!」
そんな軽口を叩き合っていた、その時だった。
【ーー警告 高エネルギー反応を感知…射線軸、確定。回避を推奨します】
案内人の無機質な警告が、運の脳内を突き抜けた。
「庄司、一ノ瀬さん!伏せろ!!」
蓮が叫ぶのと同時、工場の壁が「蒸発」した。オレンジ色の閃光が、空気を焼き切りながら一直線に伸びてくる。
それは物理的な弾丸ではない。超高電圧によってとてつもない速度に加速されたプラズマの塊ーーレールガンの
ーードオオオオン!!
轟音と共に、蓮たちが先ほどまでいた場所がクレーターと化した。
立ち込める土煙の向こう側。工場の崩れた外壁の上に、一人の少年が立っていた。年齢は蓮たちと同じくらいだろう。
だが、その表情には生気がなく、何かに怯えているような、あるいは何かに取り憑かれたような異様な雰囲気を纏っている。
そして何より異様なのは、彼の左腕だった。
肩から先が、無骨なコイルと電導回路が剥き出しになった、巨大な電磁加速砲(レールガン)へと変貌している。
「…見つけた。『マザー』が言ってた.…イレギュラー。排除……しなきゃ…」
少年の声は震えていた。その左腕のレールガンからは、制御しきれていない電気がバチバチと濡れ出し、周囲のコンクリートを焦がしている。
「……おいおい、同い年くらいかよ。重機が生えた僕が言うのもなんだけど、趣味が悪いな」
蓮は立ち上がり、右手のビットを浮遊させる。左手には、空間を凝縮するための漆黒の魔力が渦巻き始めた。
「九条くん、待って!」
一ノ瀬が鋭く声を上げる。彼女の「観察眼」は、既に少年の深層を視ていた。
「彼の左腕……構造が不完全だわ。出力に対して冷却系が追いついていない。それに、あの魔力の流れ………自分の意思で撃っているんじゃない。何かに「撃たされている」!」
「……不完全?撃たされている?」
蓮は目を細めた。案内人を介して、少年の腕をスキャンする。
【ーー対象のレールガンは素材、エネルギー変換効率より本来の効果を大幅に減しています】
確かに、効率が悪い。エネルギーの半分以上が熱として逃げ、少年の肉体を内側から焼いている。
放っておけば、あと数発で彼の腕は自壊するだろう。
(……この効率の悪さでも、根幹の術式は悪くないもし、この出力を適切にベクトル制御できれば………)
「一ノ瀬さん。あの子、殺すには惜しいな」
「え……?」
「僕の左手の空間魔法を使えば一瞬だけど、それじゃ「ゴミ」が出るだけだ。非効率だよ…ちょっと彼の「伸び代」に賭けてみる」
蓮は左手の力を解いた。
代わりに、右手の機械アームを掲げ全身の演算リソースを「防御と吸収」へと振り分ける。
「排除………排除するんだ!!」
少年が叫び、再びレールガンが火を噴いた。先ほどよりもさらに高出力で熱波が工場の空気を一気に奪う。
「九条くん!まともに受けたら……!」
「ーー『管理者権限』一部委譲。案内人、アームの分子結合密度を最大まで上げろ。衝撃は空間に逃がすな。すべて僕の「糧」にする!」
蓮は逃げなかった。巨大化した機械アームを正面に突き出し、迫りくる光の流れを真正面から「掴み」にかかったのだ。
ーージジジジッ!!
蓮の足元の地面が、その余波だけで溶解していく。だが、蓮の瞳は冷徹だった。
「……掴んだ」
アームの指先が、プラズマの塊を物理的に握り潰す。同時に、蓮の右腕から幾何学的な紋様が激しく点滅した。
【ーー対象のエネルギー、並びに構造情報を把握。適応を開始します】
「え、えぇ…!?僕の攻撃を……アームで!?」
絶望に目を見開く少年。蓮はニヤリと笑った。
「君のレールガン、設計が古いよーー僕が、正しい使い方を教えてあげる」
蓮のアームが、吸収したエネルギーを糧に変形を始める。少年のそれよりもさらに洗練された、流線型の電磁加速砲。
「『リ・レールガン』演算終了、放つよ」
蓮の指先から放たれたのは、青白い、細く鋭い一閃だった。
それは少年の放った荒々しい光とは対照的に、音もなく空間を貫いた。
蓮の放った青白い一閃は、少年のレールガンが撒き散らしていた無駄な電磁ノイズをすべて吸い込むようにして、真っ直ぐに少年の「核」を射抜いた。
少年の左腕、そのコイルが巻かれた中心部にピンポイントで着弾し、複雑に絡み合っていた制御不能の術式を「強制終了(シャットダウン)」させる。
「が、はっ…!?」
少年は衝撃で吹き飛び、崩れた壁に背中を打ちつけた。
だが、不思譲と痛みは少なかった。
蓮が放ったのは破壊のための弾丸ではなく、相反するエネルギーを中和し、強制的にシステムを正常化させる「修復弾」に近いものだったからだ。
「……九条くん、今のは?」
「彼のレールガンを素材にして、僕のアームがリアルタイムで適応したんだ。……一ノ瀬さん、呪術廻戦の式神「摩虎羅」みたいなもんだよ。彼の光線に適応してそれを更に上回ったんだ。」
「……?マコラって何?知らないわ、それ…」
「あ…ごめん。そんなことより彼を見てよ」
蓮が指差した先。
少年の左腕を覆っていた無骨な機械は粒子となって崩れ去り、そこには火傷を負いながらも、元の「人間の腕」が戻っていた。
「……僕は、何を……」
少年は呆然と自分の手を見つめていた。その瞳から不気味な光が消え、同年代らしい幼さが戻る。
「おい、大丈夫かよ!」
庄司が駆け寄り、少年の肩を支える。蓮もアームを戻し、ポケットに手を突っ込んで歩み寄った。
「君、名前は?」
「え…………ハルキ…灰原春輝(はいばらはるき)…ごめん、なさい。頭の中に、変な声が響いて……『イレギュラーを、九条蓮を消せ』って…逆らえなかったんだ」
春輝は震える声で告白した。
案内人の分析によれば、彼の脳内には微細なナノマシンが埋め込まれており、それが外部からの信号ーー「マザー」と呼ばれる存在によって強制的に戦闘プログラムを実行させていたらしい。
彼のレールガンもプログラムによって無理やり植え付けられたみたいだ。
「春輝くん、その「マザー」って誰のこと?どこにいるの?」
一ノ瀬が優しく、しかし真剣な表情で問いかける。
「わからない……でも、ずっと見張られてる気がするんだ。あっちの…ビルの屋上から、誰かが……」
春輝が指差した先。夕闇に沈む廃ビルの屋上に、黒いコートを纏った人影が立っていた。
その人物の手には、不気味なアンテナのようなデバイスが握られている。
「『M-100』は失敗作か……。まあいい、サンプルデータは取れた。次はもっと出力をーー」
男が薄笑いを浮かべ、撤退しようとしたその時だった。
「よお、おっさん。うちの連中がいじめられたみたいでさ。ちょっと話、聞かせてくれよ」
ダンっと着地した音と共に男の背後に、影が落ちた。
いつの間に移動したのか、そこにはジャージ姿で仁王立ちする庄司の姿があった。
「なっ…!?なぜここに!監視カメラの情報によれば、君はあそこで少年の介抱をーー」
「難しいことは知らねえよ。蓮が『あいつが今回の黒幕っぽいな』って顎で指したから、全力で走ってきただけだ」
庄司の移動速度は、最新の軍用ドローンですら捕捉できない「理屈抜きの瞬発力」だった。
男は慌ててデバイスを操作し、庄司に向けて迎撃用のドローンを放とうとする。
「俺さ……『虎杖悠仁』に憧れてるんだよね」
「何を言っている、それが何だというのだ」
庄司の挙に炎のような青い何かが出現してるように視えた。
「だから毎日、筋トレして鍛えてるんだ…仲間を守るためにね。」
「させるか!迎撃プログラムーー」
「プログラムだか何だか知らねえけどさ……ダチを操って、おもちゃみたいに扱うのは、見てて気分悪いんだよっ!!」
庄司の拳が、空気を切り裂いた。
魔力も、機械も、計算もない。
ただひたすらに鍛え上げられた筋肉と、怒りが生み出す純粋な物理攻撃。
ーーそれはまるで黒い火花が立っているように視えた。
「黒閃!!」
ーーバリィィィン!「ぐはあっ!?」
男の防御シールドごと、庄司の「ただの右ストレート」が顔面にめり込む。
科学の粋を集めたはずのデバイスは粉々に砕け散り、黒幕の男はビルの反対側へと吹き飛んでいった。
「……って言えば強くなるかな…なんて」
庄司は手を払いながら言った。それを蓮と結衣は口を大きく開けたまま軽く引いていた。
「ふう……、おーい!こっち片付いたぞ!なんか変なリモコン、とりあえずぶっ壊しといたから!」
その一部始終を見ていた春輝は目を輝かせた。
「……わぁ!黒閃だって…!かっこいい!」
そして地上でそれを見ていた蓮は、呆れたように額を押さえた。
「…案内人、今の庄司の移動速度と黒閃……パンチの威力を計算できるか?」
【ーー測定不能です。生物学的限界を超越した『気合い』という名の非舗理的エネルギーが干渉しています】
「だろうな……一ノ瀬さん、そいつが持ってたリモコン…分析したかったのにこれじゃあダメだね。…僕らのチーム、最大の問題児はあいつかもしれない」
「ええ。私の「観察眼」でも、彼の動きだけは時々フレームアウトするわ…でも、助かったわね」
一ノ瀬は安堵のため息をつき、まだ座り込んでいる春輝に手を差し出した。
「春輝くん。あいつはもう来ないわ……あなたの力、まだ不完全だけど、九条くんが言った通り「伸び代」はある。一人より、私たちと一緒に来ない?」
春輝は、一ノ瀬の優しさと、遠くで手を振る脳筋な庄司、そして面倒くさそうに「あ、ポテト冷めるから早く行こうぜ」と言っている蓮を見比べた。
「……僕も、仲間に入れて……くれるの?」
「おう、ただし、僕の全自動着替えシステムのデバッグ、手伝ってくれるならね」
「それは公私混同よ、九条くん!」
こうして、レールガンの少年、春輝を仲間に加えた一行は、再びファミレスへと向かう。
世界を影から操ろうとするレガシーの脅威はまだ去っていない。それでも、蓮の機械魔法、一ノ瀬の観察眼、春輝のレールガン、そして庄司の「気合い」
このデコボコな四人が揃えば、どんな絶望的な計算式も、おちゃらけた日常へとき換えられる気がした。
「よし、春輝、歓迎会だ。庄司の奢りで一番高いパフェ食おうぜ」
「なんで俺なんだよ!蓮、お前さっき自販機からコーラ百本出しただろ!」
夕闇の街に、彼らの笑い声が溶けていく。
九条蓮の「機械魔法」に彩られた日常は、ますます騒がしく、そして加速していくのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございました!三話になって「灰原春輝」くんが登場しましたね!レールガンを片手に装填している、蓮たちと同年代の子……、またまた特殊な子がチームの仲間に入りました。これからの生活が楽しみですね!
さて、三話になってようやくタグにあった呪術要素ありが出てきましたが、出てきたのは「摩虎羅」と「虎杖悠二」と「黒閃」という本当に一部だけ…。まだまだ呪術に触れていくつもりなので長い目で見ててください。