世界のシステムを書き換える最強能力「管理者権限」を手に入れたので、日常をハッキングして無双します! 作:Laggliches
投稿してて嬉しいのが「UA」っていう項目が約100を超えたんですよね。「これって良いことなのかな…?」って思ってAIに聞いてみたら、多分「新規読者」のことだと言われました。つまり、約100の人がこの作品を見てくれたんですね!嬉しい限りです。
さて、今回は「一ノ瀬結衣」に視点を置いた回になります。覚醒による日常の苦労を書いてみましたのでぜひ読んでみてください。
一ノ瀬結衣は学校の屋上で一人、溜息をついた。彼女の瞳に映る世界は、覚醒前とは似ても似つかないものに変貌している。
「……また。頼んでもいないのに、情報が入ってくるわ」
ふと校庭を見下ろせば、サッカー部の少年が放ったシュートの弾道が、放物線の数式として空中に固定されて視える。
野球部の喧騒に目を向ければ、生徒たちの体温分布(サーモグラフィ)から、誰が嘘をつき、誰が緊張しているかが手に取るようにわかってしまう。
『観察眼(オブザーバー)』
それはあらゆる事象を「情報の最小単位」まで分解し、真実を暴き出す神の瞳。
だが、持ち主である結衣にとっては、常に情報の流れに晒される非常に「疲れる」能力だった。
「九条くん……あなた、そこにいるんでしょう?」
結衣が何もない空間を凝視する。すると、何もなかったはずの空気が陽炎のように揺れ、そこからポテトチップスの袋を抱えた九条蓮が姿を現した。
「げっ。やっぱりバレた?光学迷彩の屈折率を周囲の風景に0.009%まで同期させたはずなんだけどな」
「無駄よ。あなたの周囲だけ、空間の密度が不自然に歪んで視えるもの……あと、そのコンソメバンチの匂いまでは隠せていないわ」
結衣は呆れたように腕を組む。
「九条くん。あなたの『機械魔法』は確かに便利だけど、私の前ではプライバシーなんて存在しないと思ってちょうだい。……今だって、あなたの心拍数が少し上がったわ……さては、何か隠し事をしてるわね?」
「……心拍数まで視えるのかよ……エッチなこと考えられないな」
「……殺されたいの?」
氷のような視線を向けると、蓮は「冗談だよ」と肩をすくめた。これが結衣の能力の『厄介なところ』だ。
相手の些細な動揺や肉体的な変化がすべて数値化されてしまうため、彼女の前で隠し事をするのは不可能に近い。
……バリボリとポテトチップスを豪快に食べている蓮。結衣が冷たい視線を送っているのを知らんぷりでただコンソメ味のチップスを美味しそうに食べていた。「………太るわよ。」 愚痴を吐いた結衣に対し、蓮はニヤリと不気味な笑みでパチンと指を鳴らした。
「案内人、一ノ瀬さんの今の感情を推測しろ」「え、ちょっと待っーー」
【了解、一ノ瀬結衣の視線、唾液の分泌量、表情の僅かな変化から推測すると、90%確率で九条蓮が持っているポテトチップスを欲しがっています。】
「ば、バカ蓮!!欲しがってなんかないわよ!?」
彼女の顔がみるみるうちに赤くなっていった。
「プライバシーなんかないんだよな、一ノ瀬さん?」
蓮が勝ち誇ったような顔をして彼女を見る。彼女はなにか苦いものを食ったような顔をして俯いた。
「まあまあ、ポテトチップスやるから落ち着いてよ。」
「…………………」
彼女は黙って彼のポテトチップスを奪った。
放課後
四人はファミレス…ではなく、今日は「春輝くんの歓迎会・第二弾」として、庄司の家で勉強会(という名の遊び)を開いていた。
「あーっ! 春輝、そこは「気合い」じゃなくて「因数分解」だって言ってんだろ!」
「ご、ごめん庄司くん!でも、このxとyを見てると、なんだか戦ってるみたいで……」
庄司の怒鳴り声と、春輝のしどろもどろな返答。そんな騒がしい室内で、結衣の「観察眼」が再び牙を剥いた。
「……庄司くん」「あ?なんだよーノ瀬さん」
「……あなた、右ポケットに隠しているのは何?」
庄司の動きがピタリと止まる。
「は?何もねぇよ。勉強道具だけだ」
「嘘ね。あなたの右大腿筋の緊張度、および血管の拡張率が、特定の『やましいもの』を隠している時のパターンと完全に一致しているわ。……出しなさい」
「ちょ、待て!プライバシー。さっき言ってたろ、プライバシーって!」
だが、結衣の瞳からは逃げられない。彼女はスッと指を指した。
「そこ。深さ10センチの地点にある、厚さ3ミリの長方形の物体。それ、昨日発売された限定版の………筋肉アイドルのプロマイドでしょう?」「………ッ!!」
「……ぶっ、ははははは!庄司お前そんなの隠し持ってたのかよ!」
蓮が腹を抱えて笑い出し、春輝も「へぇ……庄司くん、こういうのが趣味なんだ……」と尊敬の眼差し(?)を向ける。
「一ノ瀬さん!お前、その能力の使い方、絶対間違ってるって!」
「私は無駄な嘘を排除しているだけよ。あ、九条くん。あなたも笑ってられないわよ」
結衣の矛先が蓮に向く。
「……え、僕?」
「あなたの左耳の裏……そこ、さっきから案内人を介して、授業中にこっそり録画したアニメを再生しているわね?網膜に直接映像を投影しているから、一見勉強しているように視えるけど、脳の演算領域の6%が『異世界転生モノ』に割かれているわ」
「……」蓮の笑顔が消えた。
「一ノ瀬さん……君、友達いなくなるタイプだよ」
「……っ!私は、あなたたちが効率的に勉強できるように指摘しているだけで……!」
結衣はグサッと心が傷ついてしまったように唇を噛んだ。
『視えすぎてしまう』
相手が隠しておきたい弱みも、触れてほしくない傷口も、彼女の瞳は残酷なまでに正確に暴き出してしまう。それは時として、優しささえも「合理性」で塗りつぶしてしまうのだ。
重苦しい空気になりかけたその時、春輝がそっと結衣の袖を引いた。
「……あ、あの。一ノ瀬さん」
「……何?春輝くん。あなたの今の緊張度は……」
「指摘しなくて、大丈夫だよ……それより、ありがとう。蓮君から聞いたんだ。一ノ瀬さんが僕の左腕の『不完全』なところを見つけてくれたから、僕は救われたんだ……視えすぎるのは大変かもしれないけど、その瞳に助けられた人もいるってこと、忘れないで」
春輝の真っ直ぐな言葉に、結衣は目を見開いた。
観察眼が捉える「春輝の瞳」には、計算された嘘も、打算もなかった。そこにあるのは、ただ純粋な感謝の魔力粒子だけだ。
「………春輝。お前、たまに良いこと言うな。蓮とは大違いだ」
庄司が春輝の頭を撫でる。春輝は「えへへ」と照れ笑いをし、蓮も「まあ、僕の怠情もたまには見逃してよ、委員長」と苦笑いしながらポテトを差し出した。
「……次は、見逃さないわよ。今回だけ、ポテトで買収されてあげるわ」
結衣は差し出されたポテトを受け取り、小さく口に運んだ。
『観察眼』が映し出す世界のコードは、相変わらず冷たく無機質だ。でも、この騒がしい三人を見ている時だけは、そのノイズが少しだけ温かい色に見えるような気がした。
【ーー注意。一ノ瀬結衣の頬の赤らみを確認。体温上昇0.5度上昇……これは照れによる反応と推測します】
案内人の無機質な声が、蓮の脳内に響く。
「……案内人、それは言わなくていい。一ノ瀬さんに消されるぞ」
夕暮れの庄司家。すべてを暴き出す瞳を持つ少女は、自分の頬が赤くなるのを隠すように、最後の一本のポテトを、少しだけ乱暴に噛み砕いた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
……みなさんは『全てを見通す力』があったら何に使いますか?もちろん自分はテストのカンニングとかに使いたいですね。でも、あまりの情報量に襲われて脳がパンクしたら意味ないですね。結衣ちゃんにはお疲れ様とでも言っておきましょう…。
次は六話です!蓮たちは能力を使って日常をめちゃくちゃにしてやります。ぜひお楽しみに!
突然ですが、読者の皆さんにより見やすくするために、今までの話を改善しました。物語自体に影響は出ていないので、安心して楽しんでくださいね。