世界のシステムを書き換える最強能力「管理者権限」を手に入れたので、日常をハッキングして無双します!   作:Laggliches

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はい、「Lagglitches」です!今回は七話の前半です、前後半で分けるのはこれで初めてですね。
今回も春輝くんを視点にした回になります。春輝くんはまだ学校も通えず、ずっと暇をしているので庄司くんから「たまには散歩でもしろ!」と言われたんでしょうね。
そんな散歩中でも、起きるはちゃめちゃな展開……!楽しみにしててください!


第七話:前半 灰原春輝と別次元の迷い者

「……一人の散歩って、あんまり楽しくない」

 

ぽつりと呟いた言葉は、新緑の隙間を吹き抜ける五月の風に、あっけなく掻き消されてしまいました。

 

僕の名前は春輝、灰原春輝です。

 

今日は庄司くんも、蓮さんも、結衣さんも、みんなそれぞれ予定があって朝から外出しています。

せっかくの、雲一つない突き抜けるような青空が広がった休日。それなのに、一人で外を歩いている今の僕は……お世辞にも楽しいとは言えません。

 

一言で言うなら、もの凄く、つまんないです。

 

庄司くんの家に住まわせてもらうようになってから、かれこれ一週間が経ちました。

あのお家は、とにかく毎日が信じられないくらい騒がしいんです。

誰かが笑って、誰かが怒って、誰かがドタバタと廊下を走っている。そんな温かい毎日が本当に楽しくて、何より、庄司くんのお母さんが作ってくれる揚げたての唐揚げは、僕の短い人生の中で一番美味しい食べ物だと思っています。

まだ十三年しか生きていない僕の「人生一番」なんて、大した重みはないかもしれないけれど、クスッと笑ってしまうくらい、本当に大好きな味なんです。

 

そんな僕ですが、最近ちょっとした悩みを抱えています。

 

それは、なぜか道を歩いているだけで、見知らぬ通りすがりの人に「カフェに行こう」と声をかけられることです。

この前も公園に来る途中で、派手な服を着たお兄さんに呼び止められました。

 

「ねえねえ、そこの可愛いお嬢ちゃん。僕といっしょにお茶しない〜?」

 

……僕は、男の子なんですよ!?

 

どれだけ丁寧に「男です」と説明しても、お兄さんは「嘘だ〜〜!」

「照れなくても、いいお嬢ちゃんじゃん!」と言って、ちっとも信じてくれません。

押し問答をしているのも疲れてしまったし、何より「カフェ」という場所に行ってみたかったので、まあいいか、と思って大人しくついていくことにしました。

お兄さんはお洒落なガラス張りのカフェに僕を連れていくと

「何が食べたい?」とメニューを見せてくれました。

 

だから僕は、以前に庄司くんが「あそこのは絶品だ」と熱弁していた、背の高いガラスの器に入った大っきいパフェを指さしました。

 

運ばれてきたパフェは、まるでキラキラした宝石の塔のようでした。

一番上に乗っている、赤くてツブツブのついた果物……いちご、って言うのかな。

フォークでそっと口に運ぶと、キュンとした酸っぱさの後に、すっごく甘くて瑞々しい果汁が口いっぱいに広がりました。

冷たいクリームやサクサクしたクッキーの食感も楽しくて、僕はいつの間にか夢中になって、お兄さんのことも忘れてパフェを頬張っていました。

 

食べ終わってお会計の時、庄司くんから預かっていたお財布を出そうとしたら、お兄さんに手で制されてしまいました。

お札を差し出したお兄さんは、僕の頭をポンポンと撫でながら笑いました。

 

「お嬢様には尽くすのが『漢』の義務だろ?」

………だから、僕は男の子だって言っているのに……。

 

その後、お兄さんが「もっと良いところに連れていってあげる!」と僕の手を引こうとした、その時でした。

 

「……テメェ、春輝に何しやがった!」

 

地を這うような低い声とともに、もの凄い剣幕で現れたのは、蓮さんと庄司くんでした。

特に蓮さんの顔は、悪い組織の人間よりもずっと怖くて、お兄さんは悲鳴を上げて一目散に逃げ出していきました。

パフェの代金を払ってもらって逃げられてしまったことが申し訳なくて、その日の帰り道、僕は庄司くんの隣でずっと俯いていました。

別れ際、蓮さんはしゃがみこんで僕の目を真っ直ぐ見つめ、こう言ったんです。

 

「春輝、あれは『ナンパ』って言う、悪い大人が子供を騙す手口だ。二度と知らない奴についていくなよ」

 

ナンパが本当はどんな意味なのか、僕にはまだよく分かりません。

けれど、二人があんなに怒って、あんなに僕を心配してくれたから、今後は変な人について行かないようにしようと強く心に思いました。

 

ーーと、回想が長くなってしまいましたね

 

話がだいぶ逸れちゃいました。

そんな一件があったので、今はこうして、大人しく蓮さんの家の近くにある自然公園の遊歩道を歩いています。

 

だけど、やっぱりどうしようもなく退屈です。

 

周囲を見渡せば、家族連れがレジャーシートを広げてお弁当を食べていたり、犬の散歩をしている人が笑顔で挨拶を交わしていたりします。

 

一人になった途端、自分がここで何をすればいいのか、何を考えればいいのか、さっぱり分からなくなってしまう。

胸の奥が、すうすうと冷たい風が通り抜けるように寂しくなるんです。こんな弱音を吐くのは嫌だけど、僕はまだ『組織』の後遺症が抜けていないんだと思います。

 

命令されるがままに動き、自分の意志を持つことを許されなかったあの場所。

そこから救い出されたはずなのに、自由を与えられると、どう動いていいか戸惑ってしまう。

早く、あの過去から完全に解放されたいです。

庄司くんたちみたいに、何もない普通の日を、心の底から笑って過ごせるようになりたい。

 

「はぁ……。本当に、退屈だなぁ」

 

誰に届くでもない、二回目の溜息。

ただ歩くだけの散歩に飽きてしまった僕は、少しでも暇つぶしになるような、不思議なことでも起きればいいのに、と贅沢な願いを頭に浮かべました。

 

その時です。

 

「ーーバッククラッシャァ!!」

ーードォォォン!!

 

「っ! え、え、何!? だれ……っ!?」

 

豊かな緑に囲まれ、小鳥と虫の鳴き声が心地よいハーモニーを奏でていた、心が安らぐ自然公園。

そんな穏やかな休日の余暇を無惨に引き裂いたのは、どこにでもいるような制服姿の高校生でした。

本当におかしな所は無くて、肩にリュックを背負い、手には見るからに重そうなカバンをぶら下げている一般的な高校生でした……。

 

なんだよ、こいつ! ずいぶんとデケェロボットやな!」

 

高校生は怯えるどころか、獰猛な笑みを浮かべて叫びました。

彼は手にしたカバンを、まるで巨大なハンマーかのように凄まじい勢いで振り回しながら、目の前に立ち塞がるくっそデケェロボットーー『レガシー』へと果敢に向かっていったのです。

 

ガガガガガッ!

 

レガシーの無機質な銃口が火を噴き、高校生を狙って容赦のないレーザー狙撃が放たれます。

 

ーーなんで、一発も当たってないの!?

 

それどころか、彼は迫り来るレーザーの光条を、手に持ったスクールバッグでことごとく叩き落とし、火花へと変えて弾いてしまったのです。

 

見た感じは、どこにでもあるただの革製品に近い長方形のカバン。けれどそれは、まるで特異な鋼鉄で鍛え上げられた盾のようでした。

 

一方で、巻き込まれた形の僕は、戦いに参戦するのを一瞬忘れていました。

 

彼の体から溢れ出る圧倒的な闘気のオーラに気圧され、ただ呆然と、その戦いに見惚れてしまっていたのです。

 

「……くらえ! バッククラッシャーー!」

 

地を割るような咆哮とともに、高校生のカバンがレガシーの強固な装甲へと直撃しました。

 

ーードォォォン!!

 

凄まじい衝撃波が周囲の木々を揺らします。

でも、いくら彼の腕力が超人的であっても、カバンはどこまでいってもカバンでした。レガシーの重装甲に少しのキズをつけただけで、決定的なダメージを与えるには至りません。

 

「っ!危なーー」

 

そして、レガシーが放った容赦のないカウンターの衝撃に耐えきれず、高校生の体は派手に後ろへと吹き飛ばされてしまいました。

 

「……っ! 大丈夫ですか!?」

 

激しい金属音で僕はようやく我に返り、地面に叩きつけられた高校生のもとへと全力で駆け寄りました。

その間にも、レガシーは排除対象を僕たちに切り替え、無数の弾丸を乱射してきます。

僕は『組織』でプログラムされた並外れた身体能力をフルに発揮し、地面を滑るように弾幕を掻い潜りました。急いで彼を抱き起こし、その場から離脱しようと腕に力を込めます。

 

ーーが、持ち上がりません。

 

「くっ……、うそ、重すぎる……!」

 

彼のカバンが、異常なほどに重いのです。

春輝としての僕のパワーでは、その重量の前には雀の涙ほどの影響しか与えられませんでした。僕が手こずっているうちに、衝撃でカバンのチャックがバッと開き、中身が地面に散らばりました。

中には、学生ならではの分厚い教科書や筆箱、それから場違いなタイトルの恋愛小説が入っています。

しかし、その中に一つだけ、明らかにその場の誰の常識ともかけ離れた「異質」なモノが混ざっていました。

 

「………なんだろう、このブロック?」

 

思わず手を伸ばし、それを拾い上げます。

それは手のひらに収まるほどの大きさの、綺麗なキューブでした。

太陽の光を浴びて、キューブの銀色の外殻が、この世の金属とは思えない異質な光沢を放ちました。

そしてその別の面には、鮮やかな緑色の導線が、まるで生きているツタのようにびっしりと張り巡らされていました。

ドクン……、ドクン……。

 

その導線の中を、何かが絶えず脈打つように流れています。

それは電気というよりも、生物の血管、あるいは剥き出しの心臓そのもの。一つの未知の生命がそこに息づいているかのような、いちごよりキレイな……いや、冷たい不気味さが肌に伝わってきました。

 

「……っ! クソ、使いたくなかったけど、仕方ねぇ!」

 

痛みに顔を歪めていた高校生が、僕の手からひったくるようにしてキューブを奪い取りました。

そして彼は、躊躇うことなく、そのキューブを自身の胸ーー心臓の真上へと強く押し込んだのです。

一瞬の静寂ーー次の瞬間、彼の衣服を透過して、全身の血管の細部にまで、あの禍々しい緑色の光が爆発的に駆け巡りました。

 

ーードクンッ!!

 

世界が震えるような心音。彼の身体が淡い銀色の光に包まれます。

やがて輝きが収まった頃、彼の纏う空気は先ほどまでの熱い闘志から一変し、完全に引き締まったものへと変わっていました。

それは、蓮さんが使う機械魔法の温かみのあるオーラとは根本的に違う、触れれば凍りつくような、冷徹で無機質な『殺意の波動』でした。

 

ガシャリ! ガシャン!

 

金属が噛み合う不穏な音が響きます。彼の背負っていたリュックから、突如として禍々しい鉄の翼が展開されました。

それは瞬く間に形を変え、ゴウゴウと空間を燃やすジェット機のような、超科学の推進兵器へと変態を遂げていきます。

光のない瞳でレガシーを見据え、高校生は低く、冷たい声で呟きました。

 

「………今はただ、殺す」

 

その圧倒的なプレッシャーに、僕は息をすることさえ忘れて、ただ彼の背中を見つめることしかできませんでした。




最後まで読んでくださりありがとうございます!そして展開がエグいことになりましたね……。
謎の高校生と変なキューブ……テンションの寒暖差に風邪をひきそうです……笑。そして今回は挑戦で「春輝くんの一人称視点」で書いてみました。最初の自分語りシーンは個人的にお気に入りです。
そして、後半もお楽しみにしててくださいね!
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