機動戦士ガンダム~一年戦争なき世界線で~   作:ミノフスキーのしっぽ

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 これより語られる物語は、ニュータイプ的なオーラ力…或いはオーラ力的なニュータイプ能力に覚醒した者たちの生き様を記したものだ。その始まりである。

 一年戦争なき世界線を知る者は幸いであろう。

 心豊かに…その精神と肉体を健やかなものにできるのだから。


機動戦士ガンダム~一年戦争なき世界線で~

 プロローグ 

 

 

 大暴露の日1

 

 

 その日、地球からもっとも遠く離れた月の裏側に位置するサイド、サイド3ズムシティ国会議事堂内部は、異様な雰囲気に包まれていた。

 

 緊急声明を発表するとして登壇したジオン/ムンゾ共和国国家元首ジオン・ズム・ダイクン初代首相は、まるで何かを待ち続けるかのように、登壇後15分間、その場で立ち尽くしたまま一言も発しはしなかったからだ。

 

 これは、これまでにはあり得ない、とんでもない緊急声明がなされるに違いない!

 

 如何なる理由があってダイクン首相はこのような行動に出ているのか?

 

 一体、これよりどのような声明がなされるというのか?

 

 状況を知り得ないサイド3の民衆は、固唾を飲んでその発言を待ち続けていた。 

 

 

 そして、さらに10分が経過した後、一つの異変が生じた。

 

 

 緊張した面持ちの一人の官僚が議長席裏の閣僚用通路から走り出て、各閣僚に何事か打ち明けた後、ダイクン首相の許へと近付き、震える手を押さえつつ懸命に一枚のメモを渡したのだ。

 その官僚といえば、感動によって滂沱の涙を流すほど感極まった様子であった。

 

 事情を知らぬ議事堂各々の期待は、この有様を見てより一層の高まりを見せ、己が予想を確信に変えた。

 

 これは本当に何かあったぞ!

 

 何か地球連邦政府側との折衝で進展でもあってのか?

 

 まさか我がサイド3ジオン共和国の独立が地球連邦政府との協議の結果、実現したとか?

 

 はは………馬鹿を言うな。

 

 まあ、そりゃ…楽観的が過ぎるか。

 

 そこまではいかなくとも、吉報だろうさ。

 

 そうだな。ここは黙って、我等の首魁、ダイクン首相の発表を待とう。

 

 そうするか。

 

 事情を知らぬ一般議員とマスコミ含むその他諸々の立場にある者たちは、そのように小声で話し合うと、さらに10分程、ダイクン首相の声明を大人しく待ち続けた。

 

 その間、異様な雰囲気に包まれていた議事堂内部の雰囲気は次第に平穏無事なものと変わっていき、その場に控える人々も、同様にリラックスしていった。

 

 まさか、そう遠くない未来、普段とはまったく雰囲気の異なるダイクン首相の演説により、サイド3に居住する九割以上の民衆が精神に多大な衝撃を受け、一言も発せぬままに凍り付くことになる。

 

 そんなことになろうとは、この場の誰もが思ってもみなかった。

 

 状況を理解していた数少ない関係者までも。

 

 ただ一人、ダイクン首相を除いて…だが。

 

 

 そして。

 

 

 地球圏の歴史に残る前代未聞の演説…ジオン・ズム・ダイクン首相による世紀の大暴露は開始された。

 

 

 「サイド3の革命の同志諸君、君たちは、旧世紀の国家ニホンに存在した反政府テロリスト集団パヨックなる愚か者たちの末路を知っているかね?」

 

 んん?………何を言っているんだ首相は???

 

 旧世紀のニホン?

 

 パヨック?

 

 ニホンといえば美味しい食事と確かな文化よね………劇団員のことかしら?

 

 さあ? 何なのかしら?

 

 とにかく首相の話を聞こう。

 

 ええ………

 

 突如、自分達サイド3の民衆には、ほとんど無関係であるはずの話題を突然挙げられ、会場の聴衆各々は面食らった。しかし、我等のジオン・ズム・ダイクン首相だ。その話の内容に間違いはあるまいと、大人しくその話を聞き続けることとした。

 

 「彼等パヨックは、大東亜戦争によるニホンの敗戦後、戦後の苦しい時代に生きた方々…その子供たちによって組織された、反政府活動、民衆革命を目的とする思想集団だ」

 

 「敗戦後の苦しい時代、生き残った人々は、メイジ、タイショウに生きた思想家ユキチ・フクザワ氏の著作、学問のススメに従ったかのごとく、懸命に荒れ果てた国土を、経済を立て直すべく働い続けた」

 

 「子孫たちを貧困より救い、その繁栄を意図するならば、働きながら苦学し、良い仕事へと就き、また子供たちにもよき教育を施すべき」

 

 「そんなフクザワ氏の教えに基づき、戦後ニホンの労働者たちは、必死に働き、苦学し、生きた。生まれてきた可愛い我が子たちには、大学までの高等教育も受けさせた。精一杯の親の愛情として」

 

 「しかし、その愛情は裏目に出る。仕事が忙しければ、どうしても我が子等とのコミュニケーションが不足してしまう。言わずとも我が子ならば親の愛に気付いてくれる。そんな身勝手な親の考えは幻想に過ぎない」

 

 「多くの若者は、忙しく生きる親たちの…せめて金銭的には不自由させまい…という態度によって、苦労を知らず、貧困も知らずに育った」

 

 「だが、それは愛情なのだとは、ついに理解できはしなかった。自分達は疎まれている……乏しく不足したコミュニケーションでは、親の真意は伝えきれずのままだった」

 

 「つまり、子供たちは甘やかされたまま育てられ、成人まで大人になり切れずに過ごしてしまった」

 

 「その結果、そういった子どもたちは悪い外国の大人によって食い物にされた。高等教育がどれほどの高額かも知らぬままに道を踏み外すこととなったのだ。それが、どれほどの親からの愛情だったかも気付かぬままに」

 

 「自分たちを愛さぬ親たちが懸命に働いて維持し続けようとする国家など、メチャクチャに破壊尽くして、その後、改革すべき存在だ!革命あるべし!」

 

 「満足な教育を受けながらも、それを親からの愛情だとついに気付かぬ者たちは、愚かにもそう思い込み、国外からの侵略勢力に唆され、ニホン国内を混乱に落そうとする勢力に、自ら取り込まれていった。親の愛情に気付けぬ子供たちの悲劇だ」

 

 「過去の敵対国であるアメリカの支配体制に取り込まれた祖国を認めず、その庇護下にあったからこそ好きに生きてこられたことにも気付けず、彼らは大学内でヘルメットをかぶり、ゲバ棒を振り回す革命サークルを作り出し、非常に迷惑な革命ごっこを開始した。外国勢力の走狗に成り下がったのだ」

 

 「そういった輩の集団…それがパヨックだった。革命運動など果たせぬまま死んでいったね」

 

 そこまで言い切ると、ダイクン首相は冷徹且つ凄絶な笑みを浮かべ、国会全体を見渡した後、テレビメディアを通じ、己が声に耳を傾けていた民衆に言い放った。

 

 「彼等パヨックは似ているだろう。宇宙開拓で忙しい日々を過ごした移民第一世代のスペースノイドたちに、せめて金銭的には何不自由させまいと大金を与えられ、これまで何不自由なく育った君たちに」

 

 「実際、君たちは、今現在も第一世代の方々が建造したサイド3コロニー群を革命の名の下に占拠し、そこに寄生し生き続けている。滑稽だよ」

 

 「今現在も、その占拠時にサイド3に居残ってくれた、コロニー維持を仕事にする技術陣の働きに助けら、支えられ生活しているのだから」

 

 「バカジャネーノ」

 

 ダイクン首相は嘲笑した。目の前の聴衆たちを嘲笑ったのではない。自分自身の今現在の有様を嘲笑したのだ。それはともかく、演説を続行する。

 

 「革命ごっこを私が主導し始めた当時、私が適当に用意したスカスカで中身が一切ないニュータイプ論になどに乗っかり、連邦政府が用意したサイド3の隔離施設に自らの意思でやってきた参加した愚かな君たちはね」

 

 「そう。私がここサイド3で馬鹿げた独立ごっこをはじめた理由は、地球圏各サイドで革命のためにテロルを意図した君たちを一つ所に集め、管理していくためだった。二度と地球圏で馬鹿をやらせないためにね」

 

 「騙されたんだよ君たちは。元地球連邦議会の議員であった私と、連邦政府の策略によってね」

 

 「私含め、元連邦政府の高官や経済界の大立者たちの演技は見事だったろう? どうだったかね? 地球連邦政府側から正式にサイド3独立承認受諾の発表があった後で、感想を聞かせてくれたまえ」 

 

 そんな、不意打ちに等しいダイクン首相の吐露によって、国会内部だけではなく、サイド3各コロニーの居住する人々の多くが衝撃を受け、身体を硬直させた。

 

 我等、スペースノイド革命の旗手であるはずのジオン・ズム・ダイクン首相自らが、その革命精神事態を旧世紀のクソ共の愚かな行為と大差ないと断言し、お前等バカジャネーノと言い放ったのだから。

 

 そりゃ、強い衝撃も受け、混乱もする。

 

 

 そして。

 

 

 何だ?

 

 何が起こっている?

 

 

 ええっ…と………ダイクン首相、先程、連邦からの正式な独立承認受諾後とか言っていなかった?

 

 私の五感の中、聴覚がおかしくなっていなければ…そうね、言っていたわ。

 

 え? え?

 

 どゆこと?

 

 サイド3って独立できたの?

 

 本当よね? 私、明日のお料理スクールで、本当だって言っちゃうわよ?

 

 何が何だか………思考が追い付かん。

 

 誰か―――っ! 説明班―――っ!

 

 何が何だが解らんが…取り敢えず…ジーク・ジオン!

 

 ジーク・ジオン!

 

 ジーク・ジオン!

 

 ジーク・ジオン!

 

 独立バンザイ!

 

 サイド3! ジオン共和国の未来に栄光あれ―――!

 

 

 議会も、ズムシティ国会前付近も大混乱状態だった。冗談抜きに、知らぬ間に世界がひっくり返っていたのだから。

 

 そんな聴衆たちの姿を眺め、デギン・ソド・ザビ副首相や他の閣僚も苦笑いを浮かべていた。

 

 こりゃあ………これから忙しくなるぞ。

 

 これまで、革命思想に脳をやられたお馬鹿ちゃんたちを適当にあしらってきたが、これから鍛え直して一人前にしなきゃならん。

 

 じつにメンドクセーナ…と。

 

 

 その一方。

 

 

 「ヒュー! 流石はダイクン元連邦議員!」

 

 「俺たちを守るための社会的処置を果断に実行してくれるぜ!」

 

 「そこに痺れる! 憧れるぅぅぅー!」

 

 サイド3からの放送を、サイド間レーザー通信網で視聴していた別サイドの面々は歓声を上げていた。

 

 やったぜ!

 

 「やっぱりな! 俺は最初から解っていたぜ! ダイクン議員が革命を開始した当時、各サイドは革命主義者共のテロルの脅威に戦々恐々としていた! そうだろう?」

 

 「ああ! そんなキチガイテロリストになりかけていた馬鹿な学生共をさ! あのスカスカなニュータイプ論で焚きつけて、まとめてサイド3にまで連れていき、他のサイドの安全を保障してくれたのが、ダイクン元議員と彼率いる改革派の連邦議員の一同さ!」

 

 「まるでハーメルンの笛吹。ネズミたちは地球からもっとも遠い、月の裏側に位置するサイド3へと連れていかれましたとさ おしまい」

 

 「今はその多くがサイド3で議員をしてくれています。自ら人身御供となってキチガイ共の管理をしてくれていた訳」 

 

 「知ってた。革命ごっこ後のサイド3は、そういった輩の隔離施設」

 

 「頭が下がるぜ………当時は本当に酷い時代だった! 地球連邦政府が、一部の人々を地上に残した理由は簡単だ!」

 

 「過酷な宇宙生活に耐えられない虚弱体質の者たちや、先天的な知的、身体障碍者、後天的な障碍を受けた者たち」

 

 「DNEのバグで極度に宇宙線に態勢がなかった特異体質の者。精神病や重度の難病を持った者たち。そういった人々を地球連邦政府が宇宙から引き取って、地球上に住まわせたってことさ。介護職の方々と一緒にな」

 

 「宇宙生活を営むスペースノイドの多くも、地球連邦政府が一手にそういった人々を地球に引き取ってくれたから、過酷な宇宙生活に耐えられたんだ。障碍者を抱えてこんだままの生活では、危険な宇宙空間での労働などできはせん。待つのは共倒れさ」

 

 「俺たちスペースノイドは、多額な宇宙移民費用の借金を宇宙引っ越し公社へと支払わなけりゃならん。三世代100年かけてな。宇宙空間での重労働で稼ぐためには、障碍持ちの世話はやっていられん」

 

 「そうそう。介護に時間を取られていては、高給取りのスペースノイドといえど、いずれ大した金額でもない空気税すら支払えなくなる。必要なことなんだよ」

 

 「やっぱ稼がにゃ。金がないと自分も誰も助けられん」

 

 「そそ。借金完済までは、一時停止された選挙権も戻らん。宇宙引っ越し公社に立て替えて貰った借金を返済しきる義務を果たしてこそ、権利も回復する」

 

 「近代国家では、生まれながらの権利など幻想も同然。義務を果たす者こそ権利を主張できる」

 

 「それを革命主義者共は、障碍者たち役立たずに使う税金などはない! すべて我々スペースノイドに還元されるべきだ! 地球に住む特権階級からの解放だ! 不当に特権階級に搾取されるスペースノイドの開放! などと嘯いて、反政府活動の錦の御旗にしていやがった」

 

 「大学を卒業しても、働きもせず、デモやらストやらテロやらに明け暮れ、各サイドに迷惑ばかりかけ続け、社会負担を増大させただけのくせにな!」

 

 「まあ、確かに障碍者たち社会的弱者は、ある意味、特権階級のエリートといえるかもしれん。障碍持ちのエリートだが。しかし、その保護は近代国家の義務だろう」

 

 「連邦の社会的弱者保護政策は過度なものではなく、旧世紀に存在した悪質な弱者ビジネスとは一線を画していた」

 

 「その通り。その国家の義務で地球へと保護した人々を理由に、地球連邦政府はすべての人々を宇宙に上げる約束を反故にした。そういって自らの革命の理由、錦の御旗にしたのが、あいつら革命主義者たちだ。反吐が出る!」

 

 「だが、そんな無理矢理な理屈はいつまでも通用する訳もなかった。一時的に反政府活動に情熱を傾けた多くの若者、学生たちも、すぐに正気に戻って職に就いたさ」

 

 「デモや暴動に賃金は支払われん。ボランティア活動だからな。そんなくだらないお遊戯をやり続けるよりも、地道に働いて社会的信用を得て、高い地位を得て影響力を高めた方が、世の中を変える力を得られるってな」

 

 「結局、地道が一番さ」

 

 「だが一部の者たちは、その革命の熱冷めやらず、社会改革のための闘争と称し、テロルを繰り返そうとしていた。ダイクン元議員たちが立ち上がり、そういった人々の昏い情熱を、サイド3独立の情熱にベクトルを変化させ、コントロールしてくれるまで」

 

 「そうして、ジオン共和国(自称独立国家)は誕生した」

 

 「ああ。そうしてくれたから、地球圏はキチガイ連中の大規模テロルの恐怖から解放された。地球上のテロと宇宙コロニー内部のテロでは、小規模であっても、受ける被害が違い過ぎる」

 

 「地球上なら大した被害はなくとも、まかり間違ってコロニーの外壁や、大気の循環機構が破壊されたなら被害はどれ程となることか………」

 

 サイド3を除いた、サイド1,2,4,5,6という各サイドの、ダイクン首相の言い分を聞いた者たちといえば、そのように大喝采を上げていた。

 

 連邦側のみんなは普通に知ってました。

 

 知らぬは、サイド3に赴いたダイクン元議員に金魚の糞のようにくっ付いていった、マヌケな革命主義者たちだけだと。

 

 ジオン・ズム・ダイクン元地球連邦議員。

 

 あなたこそ、地球連邦政府とジオン共和国の垣根を越え、これまで我々スペースノイドを守護し続けてきた真の指導者…地球圏の救世主だと。

 

 

 プロローグ2 ジオン共和国独立と、宇宙貴族主義者たちによるその感想 に続く

 




 この日、地球連邦政府はジオン共和国の独立を正式に承認した。

 無論、条件付きだ。

 一つ。これまで独立ごっこの混乱下で支払いを拒否してきた、宇宙引っ越し公社への宇宙移民費用支払いを再開すること。

 一つ。地球と月を挟んで、サイド3とは反対側に位置するサイド7建造へのジオン共和国の参加を拒否せず、受け入れること。

 一つ。アステロイドベルトへの独自の船団の派遣。そこに資源衛星基地を建設。サイド7の人口が20億を越えるまで、建設に必要となる物資を確保。地球圏へと輸送し続けること。

 一つ。宇宙で生まれ、戸籍のないまま生活するスペースノイドたちを受け入れること。さらに、ジオン共和国の戸籍を与え、建造したサイド7各コロニーに住まわせること。

 一つ。これまでサイド3を支えてきた地球連邦所属の職員一同及び、その家族の、速やかなサイド3からの引き上げ承認。

 一つ。今後、サイド3各コロニーの維持は地球連邦側の人員に頼らず、自分たちジオン共和国育ちの人員たちで実施すること。

 一つ。独立ごっこで占拠した各コロニーを、ジオン共和国は地球連邦政府から買い取り、不足分はどれ程の期間が必要となっても必ず返済すること。

 一つ。独立ごっこ開始からこれまでの、サイド3各コロニーを占拠し続けた期間を、地球連邦によるジオン共和国へのコロニー貸し出し期間とし、その費用を算出。かならず全額を返済すること。

 一つ。これらの取り決めをすべて受け入れ、長期間の労働の末に完了せしめたならば、地球連邦政府は、月の裏側に建設した都市グラナダと、完成したサイド7すべてのコロニー、及び、地球上の土地の一部をジオン共和国へと譲渡する。

 一つ。地球連邦政府とジオン共和国政府は、直ちに不戦条約を締結し、正式に調印せしめよ。以後、必ず条約を守り続けること。


 その報告を受け、ジオン・ズム・ダイクン首相は、その胸の奥に秘めていた真意を壇上で語ったのだ。


 私はこれまで、君たち革命/独立主義者のためにではなく、地球圏に生きる正常な思想を持ったスペースノイドたちのためにこそ、独立ごっこを意図し、実行してきた。そうすることが、後の地球圏に生きる皆の福音になると信じて…と。

 地球連邦政府がジオン共和国の独立を許可した理由は、今後、君たちを甘やかすためではなく、むしろ、現実と向き合わせるためだ。

 これよりの国家の維持は、地球連邦が築いたインフラに寄生する形ではなく、すべて自分たちでやり遂げなければならなくなる。

 ジオン共和国が独立を成就させた今日、君たちはもう、フワフワした夢心地の独立ごっこ気分では日々を過ごせはしない。

 もう若くないんだ。浮ついた童心を捨て、立派な大人となり、より良い社会構築を目指せ。

 独立が成就した今、私、ジオン・ズム・ダイクンも共和国の首相を辞し、一国民として新たな道を進む。

 君たちも他者を救世主と祭り上げ、その力を頼りにする馬鹿げた生き方から決別しろ。

 自分の望みは自分の努力によって勝ち取るものだ。他者に頼って勝ち取るものではない。それで勝ち取れたと思っても、それはお前の者ではなく、別の誰かのものだ。

 自分の生殺与奪の権利を、私にしたように他人に捧げるな。

 君がそのことを理解できねば、いずれは他人の力を利用し、己が独裁者になろうと欲する者たちによって、その道具と成り下がり、雑に使い捨てられるぞ。


 そこまで語り、ジオン・ズム・ダイクン元首相は、堂々、議会より退陣す。


 なお、首相を辞す最後の瞬間までダイクン元首相は、当時の真実を民衆に語りはしなかった。

 革命ごっこ以前、地球連邦政府は革命主義者たちへの血の粛清を準備しており、それを阻止したのが、自分たち地球連邦議会の改革派の面々であったことを。

 自分たち改革派が人身御供となって、サイド3で革命主義者たちを管理運営してコントロールしていくから、大虐殺だけは実行しないでくださいと。










 まあ…あれだ。


 暗殺だか突然死だか知らんが、ジオン・ズム・ダイクンが死亡する以前に、ジオン共和国が独立を果たしていれば、宇宙世紀0079の一年戦争なんて勃発する理由もなくなっているってこと。

 

 
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