機動戦士ガンダム~一年戦争なき世界線で~   作:ミノフスキーのしっぽ

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今回の前置き

 大東亜戦争敗北後、戦後ニホンの人たちが体験した本当にあった恐怖体験の話をしよう。

 詳しくは本文中で!


宇宙世紀の争いの根1

 宇宙貴族主義者たちによるユミミ・ナカンダリー議員への謝意を示す拍手が止む。彼女を讃えるセレモニーは終了し、ジュピトリス内の貴賓室に一時、静寂が齎される。

 それは、有用な情報を今後も我々と共有してもらえるなら、こちらも悪戯に地球連邦政府に対し、敵対的な行動は取るまい…そう宇宙貴族主義者たちが伝える、意思表明の場でもあった。

 

 それら一連のセレモニーが終わって後、エル・シドと宇宙貴族主義者たちは、本格的な今後の計画の打ち合わせに入る。

 

 一方、そちらに注目が集まると、ユミミ・ナカンダリー議員は安堵の溜息を吐き、再び壁際の椅子に腰掛け、余裕をもってワイングラスへと口を付けた。

 

 ああ、疲れた。もう帰りたい。

 

 まるで、そう言いたげな、気だるげな態度を取る。

 

 もう自分の役目は終わった。後は主賓たちによる話し合いが終り次第、共に地球連邦政府の首都機能が移された月の都フォン・ブラウンに戻るだけ。

 

 (仕事の合間の僅かな自由。ここはひとつ、この僅かな自由時間を満喫しますわ。稀少な木星圏の品々、堪能させて頂こう)

 

 そう考え終えると、ユミミはグラスを傾け、一気に残りのエウロパ産ワインを飲み干した。次は何を試そうかしら?…そう考え込んだ連邦議員に影が掛かる。

 

 予想の外の人物がユミミのすぐ傍に訪れていだ。

 

 うん? 貴女…マウアちゃん? なして私の目の前にいるさ?

 

 何のことはない、天才博士シルキー・マウア・フェラリオは、宇宙貴族主義者たちとは一線を画すゲスト的立場であったため、彼等の本題が始まるとまったくの蚊帳の外である。

 

 手持ち無沙汰になった彼女は人恋しくなり、同じように蚊帳の外にいる、元々知り合いであったユミミの許にやって来ただけだ。

 

 ???

 

 だが、そんな事情をユミミが知る由もない。脳の中でクエスチョンマークが踊る。

 

 続いて、予想外の素早い接近…素早くない…ユミミがマウアの接近に気付かなかっただけ…に何事かと目を白黒させる。

 

 「ママー、暇です」

 

 「ママって…私はあなたを生んだ覚えはないけど?」

 

 「膝枕してー」

 

 「あらあら…まあ」

 

 マウアはユミミの返事も聞かずに、ユミミの座る椅子の横にあるもう一つの椅子に腰掛け、そのままユミミの膝の上に上半身を倒れ込ませた。

 有無を言わさず膝枕の態勢に持っていったのである。これにはユミミ議員も吃驚である。

 

 とはいえ、予想外の少女の行動は、ユミミにとって中々面白いサプライズだった。驚きはしたが悪い気はしない。その甘え上手な仕草はどことなく妹のサナエに似ており、遠き日々の記憶を刺激させる。

 

 あの頃は私もサナエも純粋だった…と。

 

 (昔を思い出すわ。この子、昔の妹に何となく似ている…あの頃は、忙しい両親の代わりに私がサナエの世話をしていたな)

 

 「ほうほう、中々に尊い光景じゃ。仲良しさんじゃの~」

 

 そこにもう一人、宇宙貴族主義者たちの話し合いから蚊帳の外になった人物が現れ、ユミミとマウアに親し気に話し掛けた。

 

 初老の男性の名は、テゥエンジクゥー・トクベイと言う。

 

 元地球連邦議員で、さる事件に関わった結果、政治家を早々に引退し、現在は月のメガバンクTOYOHIMEの総裁という立場の人物だ。

 

 「あら、総裁殿。あちらの話はよろしいの?」

 

 「構わんよ。今の儂はな、月の連中の代理人であるカガチの決定に従い、金融関係の複数の書類にサインするだけの立場じゃ。仕事は連中の話し合いが終わってからが本番じゃよ」

 

 「お爺ちゃん、孫世代の私に、何か面白いお話してー」

 

 「お爺ちゃんてか! 流石は天才じゃのう。面白いお嬢ちゃんじゃ! 金融業界の化け物呼ばわりされておる儂の懐にグイグイ入ってきよる! よかろう! 何が聞きたい?」

 

 「お爺ちゃんたちが一番困った出来事」

 

 「ほう………」

 

 「あらあら」

 

 マウアは遠慮せずピンポイントに、ユミミとトクベイにどんなトラウマを持っているの?と問いかけてきた。

 

 これには、中々度胸のあるお嬢さんだと、現議員と元議員は感心する。

 

 常人では、連邦議員、議員経験者を前にすると委縮してしまい、誰もが常識的な会話に終止するものだ。だが、マウアの言動はそこから完全に逸脱しはみ出していた。

 

 「…そう来たか。では、儂等、地球連邦議員だけではなく、地球圏全体の人々を恐怖させた、あの話をせねばならんの」

 

 「それは…つい先ほど、ジオン・ズム・ダイクン元議員たちが人身御供になって、やっと解決した事件の始まりを語らなければね。酷い話よ。それでも聞きたい?」

 

 自分の膝の上にいるマウアの髪を撫でながら、ユミミがそう問うた。酷い話だってばよと。トクベイもうむ!と頷く。

 

 「良い暇つぶしになりそうだわ」

 

 しかし、臆せずそう答えるマウアである。暇を持て余すよりは上等ですと。

 

 「ほほう、よかろう。ならば話して進ぜよう。それはな、儂も実際に直面し恐怖した実体験じゃ………儂は元地球連邦議員での。火星圏の視察という長い仕事をやっと終えて、しばらくぶりに実家に帰った。そこで、まだカレッジ通いの息子に再会したのじゃが………人が変わっておった」

 

 「私も似たような経験をしているの。当時の大学で…ね」

 

 笑顔で笑えない内容の体験を話し始めるトクベイ。もう一人の話し手であるユミミも、笑顔は浮かべているのだが、目が笑っていなかった。

 

 こうして、現議員と元議員ふたりによる、まったく笑えない恐怖体験が語られ始めた。

 

 

 

 

 

 「コホン。まず本題に入る前に、ある認識を共有したい」

 

 咳ばらいをしたトクベイが、学業を終え、これより世に出る若者たちに言って聞かせるような、居住まいを正した仰々しい態度で、前置きを語り始める。

 

 「我々、スペースノイドは間違いなく選民だ。宇宙世紀という時代に選ばれた者たちという意味でな。精神的、肉体的に恵まれず、地球上に残さざるをえなかった…あるいは、各サイドから地球へと逆移民させなければならなっか者たちを除いて、90億もの生命が平等にな」

 

 「その通りです。我々スペースノイド全員は、旧世紀の最高権力者でさえ羨む高い立場の存在です。旧世紀の権力者は、誰もが我々のように簡単に、地球、月、各サイド間を行き来できませんでした。また、宇宙にある人工の大地でも暮らせなかったのです」

 

 ユミミもトクベイの語った内容を全肯定し、マウアにそう言い聞かせる。

 

 「………それにも関わらず、宇宙世紀も半世紀が過ぎた頃、自分たちは棄民だ。宇宙の流刑地であるコロニーに詰め込まれた…そう言い出す狂人たちが現れたってこと?」

 

 これから言いたいこと理解し過ぎぃ!

 

 「おいおい…随分と先回りしてくれるな!」

 

 「本当に話が早いわね、その通り。私たちが直面した恐怖はそれよ。昨日まで善良で理知的と思っていた人々が、突然、自分たちは差別されたと騒ぎ出し、地球連邦政府に対して、その保障とコロニー自治を求めてきたのよ」

 

 「一種の被害者ビジネスじゃな。自分たちは被害者だから、地球に残した弱い立場の者たちの世話は免除されるべきだ。障害を持ち、地球上に住む以外に生きようがない特権階級は切り捨てるべきだ。我々の要求を飲まねば、各サイドでの強硬策(テロル)もじさんと言い出してな」

 

 「だからこそ、ダイクン元議員はもっとも地球から遠い辺境の地サイド3へと、彼等を押し込めたの。まともなスペースノイドたちの生活を維持し、これから地球圏の外へと進出していく、地球起源種の未来を守るために」

 

 マウアの返答を聞き、苦笑するふたり。大幅に説明が省けたのだからそうもなろう。

 

 「だってそれ、ジオン・ズム・ダイクンが解決したってさっき言ってたでしょう? 予想できるわ。でも、私に予想できるのはそこまで。彼等が反連邦、革命主義という病気になった理由は何? どうしてそうなってしまったの?」

 

 「聡いのう。お嬢ちゃんはそこに気付くのか。話が逸れるが、儂の養女にならんか? 政治家として大成できるように仕込んでやるぞ」

 

 「趣味じゃない。一人で色々と研究してる方が性に合ってるわ。地球連邦政府直轄の研究機関で、研究を保護して貰っただけで十分」

 

 「そうかい。そりゃ残念じゃのう………では、お嬢ちゃんの疑問に答えるとしようかの………とはいえ…どこからどう話すべきか…悩むわい」

 

 「では私が」

 

 考え込むトクベイに代わり、ユミミがマウアへの説明を引き継いだ。第一線から退いたトクベイよりも、短時間で考えを纏め言語化する能力は、現職のユミミの方が優れていた。

 

 「そうか、頼むぞ」

 

 「ええ。宇宙世紀初頭から半世紀の間、移民第一世代のスペースノイドたちの間では、ある悪い遊びが蔓延していました。電波の向こう側にいる、連邦議員や官僚たちへの、際限のない罵詈雑言です」

 

 「おお! そこから語るか! やはりそこが肝じゃの!」

 

 「事の発端は宇宙生まれの第二世代スペースノイドではなく、第一世代なの? 第二世代の裏に第一世代がいたの?」

 

 予想外の内容を聞き、驚きを隠せずにマウアが問い返す。

 

 「よい質問ですが違います。子供たちは親の言動を聞いていないようで、よく聞いているものです」

 

 「その通り!」

 

 「宇宙開拓黎明期を生きた第一世代の人々は、その忙しさ、過酷さで、これといった娯楽を持てずにいました。唯一の楽しみといえば、高額なお給料によって借金の桁がどんどん減っていく様を眺めるくらい…それに………」

 

 「それに?」

 

 「…電波の向こう側にいる人々は何を言っても殴り返してはきません。それを良いことに、地球連邦政府に連なる人々に対し、際限なく罵詈雑言を浴びせ掛けていました」

 

 マウアの髪を手櫛で梳く手を止めたユミミが、沈痛な面持ちでそう告げた。移民第一世代のスペースノイドたちは、宇宙開拓政策によって高給を得る立場にあったにも関わらず、言論の自由を盾に地球連邦政府に対し常に批判的であり、容赦がなかったと。

 

 「それが悪い遊び?」

 

 「そうじゃ。儂ら地球連邦政府の高官は、旧世紀の独裁者たちのように政権に対し批判的な者たちを弾圧し黙らせる真似はせんかった。それで民衆がストレスを解消し、宇宙開拓に邁進していてくれたなら、それでよいと」

 

 旧世紀の民主主義国家群による大人の対応。その延長だ。

 

 「地球連邦政府はそういった点では良心的だったのね………でもそれが仇になった?」

 

 「当りじゃ。政府に対し罵詈雑言を浴びせ掛けはするが、第一世代の大人たちは地球連邦に対し反逆する意思はまったくなかった。旧世紀の酷い政治状況を知っていたからの。だが、子供たちは親の言動を誤解して受け取っていた」

 

 「そうです。子供たちは大人たちが言っていた罵詈雑言を真に受け、日々、地球連邦政府に対して憎悪を募らせていたのです。どうして戦争がない幸せな時代に生きる自分たちが、地球連邦政府に対して憎悪を募らすのか…そのパラドックスを理解しないままで」

 

 「その事に気付き、己が野心を満足させるために動き出した者たちがいたんじゃ。旧世紀の支配者層の生き残りと、その末裔たちじゃ」

 

 「彼等は、旧世界の争いを知らない第二世代のスペースノイドたちに近付き、地球連邦政府と戦う手法として、次々と汚い闘争方法をレクチャーしていきました。旧世界の侵略的国家の手法です」

 

 「旧世紀では、東側と言われた共産主義勢力の闘争手法。東側の国家群と国境を接する民主主義国家は、常にその脅威に直面していました」

 

 「共産革命のためならどんな手段も正当化される。彼奴等はその手段として悪質な嘘を多用した」

 

 「彼等にとって嘘は立派な武器。百人の中一人でも釣れたら結構。敵国を混乱させる工作員に仕立て上げる。使い捨ての駒としては上等です」

 

 「敵国の手間を一つでも増やせれば十分な戦果。それで手数を消耗させれられたなら朶御の字だ」

 

 「そのようなレクチャーを受けた宇宙世紀の人々も、酷い嘘を吐くようになりました。地球連邦の栄光を少しでも傷付けられたならそれでよいと」

 

 

 「それらの手法は、地球連邦政府に対する罵詈雑言を親から聞き、影響を受けていた新世代の間へと、爆発的に流布されるようなったのじゃ。まるで流行病のように」

 

 「嘘も百回言えば真実になる。そうやって人々の間に誤解を生じさせて分断。互いに相争わせる。人は妄想を真実と思い込み行動する生き物なのだから」

 

 「私の妹も、それに染まって一時的にコロニー自治や、地球連邦からの独立運動に参加したのよ。あの時は本当に悲しかった…まるで妹は別人のようになっていたもの」

 

 そこまで言ってユミミは当時の悔しさ滲ませ唇を噛む。苦い過去の記憶は、今でもユミミの精神を苛んでいた。 

 

 「でもね、あの子は愚か者ではなかった。過去の真実はどうなのか? 本当の事は何なのか? 自分で調べられる行動力は持っていた。だから、取り返しがつかない悪行を犯す前に、あの子は引き返せた」

 

 当時の安堵を思い出し、落ち着きを取り戻す現職議員。一方、元議員は、過去の悲劇を思い出し、沈痛な面持ちとなる。

 

 「羨ましい話じゃ。儂の息子も途中で真実に気付たのはよかったんじゃが…悪友たちの暴挙を押し留めようとし、逆に拉致されたんじゃ。そこで元仲間たちに薬物注射をされての…中毒死しおったよ………」

 

 そのように陰惨な過去があったことを、現職議員と元議員は語り続けるのだった。

 

 次回:宇宙世紀の争いの根2に続く

 

 

 




 聡明な読者のみなさまはもう察していると思います。

 宇宙世紀に革命主義者共が登場するまでのプロセスは、戦後日本でのパヨク出現プロセスそのままです。


 大東亜戦争敗北後、日本は幸か不幸か平和憲法という魔除けを手に入れます。

 軍隊を持てない平和憲法を我が国に押し付けた米国は、我が国を代わりに防衛し続ける責務がある。

 だが、軍を持たない我々は、米国と同盟を締結しても、米国のために戦う責務は存在しない。

 なぜならその力を奪ったのは、かつての大戦で勝利した当の米国自体であったからだ。

 我々(日本人)はこの状況を利用し、警察予備隊(後の自衛隊)のみの最低限の武装はしつつも、その余力を経済発展へと割り当てるべき。
 
 押し付けられた平和憲法に文句を言うみでは芸がない。

 時の宰相吉田茂は、そのようにして平和憲法を有効活用し、ある意味、敗戦後の日本民衆を選民にした。

 平和憲法の下、徴兵によって戦地へと送り込まれることはなく、戦前のように権力者に対して不都合な話をしても刑務所に収監されない。

 真面目に働けばそれなりに高給を保障し、それだけでなく、車や家電も自由に選び、購入できる物理的豊かさも保証された。

 また、異性との結婚資金も十分に貯蓄でき子供が生まれたなら十分に養える経済的な余裕。

 そんな過度に保証された、満ち足りた生活の実現。

 もちろん、先の大戦で多くの人々を失ったという喪失感は隠しきれない。しかし、戦後日本人はそれで立ち止まりはしなかった。

 彼岸へと去っていった人々の分まで生きてみよう。

 そう決意し、本当に時代に選ばれた民のように希望に満ちた人生を、当時の日本人たちは謳歌した。

 この結果は、ルーシ(ロシア世界の事、当時はソビエト連邦)の南下政策防衛のために、我が国を散々利用してきたブリカスも予想外(日露以後、日本に貸した金を回収するためには、経済活性化が必要だったため、下手な介入は控えた)だったらしく、アメリカと日本にしてやられたと、臍を嚙んだ。

 そんな状況下、大衆の大人たちは悪い遊びを覚える。

 ラジオやテレビジョンという電波の向こう側の連中は、もう何を言っても殴り返してはこれない。平和憲法が我々を守ってくれる。

 そんな立場をいいことに、彼らはストレス解消のため、際限なく時の政権に対して罵詈雑言を吐き続けた。

 その愚かな行為が、後に大切に育てた子供たちの一部の人生を大きく狂わせることになるとも知らず。

 折しも、かつて日本と一体であったが分離独立した朝鮮半島で、北と南に別れての内戦が勃発。

 朝鮮半島の者達は、この悪夢を経て、なぜか日本人に憎しみを募らせる。

 なぜ元々一体だった彼等は満ち足りた生活が出来、独立の道を歩んだ我々はこんな地獄のような内戦(その後、停戦するも、現在も北と南は戦争状態継続中)の日々を生きねばならないのか?

 不公平だ! 

 貴様等も俺たち同様不幸にしてやる! と。

 不法に国境を越え、日本本土の土を踏んだ彼らは、日本政府と敵対する共産主義勢力を手を組んだ。大陸の毛主義者たちとも共闘し、日本国内を動乱に追い込むべく工作活動を開始。

 親世代の者たちによる、自国政府に対する際限なき罵詈雑言により、自国政府に対し抑えきれぬほどの憎しみ抱いていた日本の子供たちは、これら共産圏からの工作に次々に取り込まれていく。

 日本は邪悪な資本主義のブタたちとその代理人たちによって不当に支配されている。

 共産主義体制こそが正義。その統制下、日本国内で革命を起こすのだ…と。


 酷い話。

 でもこれ、現実に本当にあったことだよ。
 
  
 

 
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