詐欺占い師と米花町   作:罠ビー

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死告妖精とMs.Hermit


死告妖精と漆黒の葬列

 

 

 

「警部、会場の外に居た不審な女を確保しました」

 

「不審で悪かったわね」

 

 

 杯戸シティホテル。そこで行われていた巨匠、酒巻昭監督を偲ぶ会で事件が起こった。会場のシャンデリアが落下し下に居た呑口議員が殺害された。

 

 ここに来るまでに遭遇した黒づくめの男達、ジンの車から得た情報だと奴らは今日この場所で誰かを暗殺する予定だったらしい。

 暗殺対象は明日にも警察のお縄になりそうな人物。件の呑口議員は収賄疑惑で世間を騒がせており、逮捕は秒読み段階だろうと噂されている。

 

 巧妙に事故に見せかけているが呑口議員は奴らに殺害されたとみて間違いないだろう。予め警察をこの場に呼んでいたが防げなかった。

 しかし予め呼んでいた事で非常に早く封鎖できた。犯人に逃げる隙を与えなかったハズだ。さらに警察も事故より事件の方向を強めに捜査してくれている。

 

 そんな折に警察に連れられてきたのは見覚えのある占い師だった。黒の組織の関与が疑われる事件で丁度現れたことから見ても彼女はますます関係者の疑いが強くなる。しかし彼女は外から警察に連れられてきた。つまり彼女は実行犯ではありえない。

 だとすれば彼女がここに居る理由は何だろうか。おめおめ不審人物として警察にマークされたとは考えづらい。

 

 

「灰原?灰原⁉」

 

 

 そんなことを考えていれば灰原の姿が俺のもとから消えていた。もしかして彼女の役目は陽動の類か?だとすれば相手にしない方がいいが存在故に無視もできない。落ち着け。まずは灰原の安否確認と実行犯の組織の一員の捜索だ。

 

 不味い現状に焦る心を無理やり落ち着けようとする。一度博士の車に戻り灰原への連絡を試みながら事件の整理をするために思考に没頭していく。

 

 

 

 

 

 

 

 巨匠といっても差支えのない映画監督、酒巻昭の偲ぶ会に私が足を運んだのは招待をいただいたからだ。少し前に私の営業中にスッと落とされた招待状。妙に洒落た封蝋までつけたそれのあて名はBanshee.

 私をそう呼ぶだろう相手は一人。つまりこれはヴィンヤード様の差し金だろう。依然として私は渡された写真の赤髪の女の存在のヒントすら掴めていない。その依頼についても私は了承はしていないしどちらにしろしっかりと話を聞きたい。

 

 そう思いながら会場の杯戸シティホテルに行けば残念ながら正規の招待客ではない私は会場に入ることは叶わなかった。それもそうで明らかに有名人が参加している偲ぶ会に一般人の私が中に入れるわけではなかった。⋯⋯いや、入る手段が無くはないが個人的にその手段を用いなければいけないほどではない。

 

 仕方ないかと中に入ることは諦める。そうであるならばここには有名人や成功者が集まってる。その未来を見れば様々な甘い汁が得られるのではないだろうか?

 そう思い至ればホテルの内、ラウンジで露骨になりすぎない程度に仕事着で待機しておく。シャロンの思惑はわからないし私に接触してくるのだろうかすら分からない。

 

 ラウンジでそれなりの時間座っていればすいませんと声をかけられる。さてどんなお客様だろうかと声のかけられた方に顔を向ければ二人組のスーツ姿。喪服ではないがまあそこまで偲ぶ会では浮かないだろう。しかし

私の期待も空しく彼らは懐から見覚えのある黒い手帳を私に見せてくる。

 その顔はどこか見覚えがあり記憶を掘り起こせば以前ヴィジョンの中で見たことがある顔であると心の中で合点がいく。それは私の友人の同期で友人以上にそりの合わない相手のヴィジョンで見た顔であった。

 

 

「捜査一課の高木です。少しお話よろしいですか」

「同じく佐藤です」

 

「高木刑事に佐藤刑事ね。ええ、いいわよ。ところで高木刑事」

「ワタルさん、伊達刑事はお元気?」

 

 

 高木刑事と佐藤刑事に不審者扱いで偲ぶ会の会場に連れていかれる。いささか気に障らなくは無いが別に否定も出来ないか。あまり反抗的になって警察に目をつけられるのは流石に好ましくない。

 

 会場につけば落ちたシャンデリアにべっとりと付着した血痕。 それの質量と量を考えればこの血痕の主は亡くなっただろう事は想像出来る。

 現場を仕切っているのはワタルさんではなくいつかの喫茶店で出会った帽子の警部さんだった。

 

 

「君は、確か明日谷君だったかな?」

 

「ええ警部さん。この前ぶりね」

 

「では明日谷さん。明日谷さんは今日なぜここに?招待状もないのに会場にやってきていたと受付から伺っています。記者でもないあなたがどうして」

 

「あの巨匠、酒巻昭の偲ぶ会がやっているなんて気になるじゃない。ホテルには依頼人との待ち合わせで来ただけよ」

 

 

 ワタルさんだと私の事を知っているが私の印象は悪いだろうから話は早いかわりに余計なことまで詮索される可能性も考えられる。佐藤刑事は訝しんでいるようであるが目暮警部はそこまで気にはされていない様子。そもそも私は中に入っていないしシャンデリアへの細工は不可能。事件への直接的な関りはないのも事実である。

 私の能力をはっきりとではないだろうが解っているだろうワタルさんだとこんなに簡単にはいかなかっただろう。事件を察してなかったか疑われる。

 いやまて、警察の現着も早すぎないか?それこそ事件を察していたと言わんばかりに。内容も事故に近いはずなのに事件で捜査されている。

 

 警察の動きに気にはなるがここに居るのは明らかに非合法な組織に属しているシャロンからの呼び出しだ。少なくとも私の身の安全のためにもシャロンとの関係は明かせない。そう思っていれば遠目に目立つシャロンの姿を見つける。相手も私の存在に気づいたようでウィンクしてやがる。腹が立つが若干私の方が立場が悪い。

 

 それにしても私が連れてこられたタイミング、記者たちが中の情報を得ようと殺到する中で私の眼は捉えていた。シャロンが私に依頼した人探し。その赤茶の髪に大変似た髪色を持った女児が老紳士に抱えられていく姿を。

 

 

 

「ところで刑事さん、これは事故なんじゃないかしら。会場の外にいた私が不審者で連れてこられたのはなぜかしら」

 

 

 わざとらしく不服です、納得できませんといった感じで軽いプレッシャーをかけながら近くの、一番御しやすそうな高木刑事に話を振る。

 

 

「ちょっと捜査機密なので」

 

「大丈夫よ答えなくて。独り言だから」

「事故にも見れるシャンデリアの落下、事故直後から張っていたと思われる早い捜査への動き、会場外に居た私への聴取」

「何かタレコミがあったのかしら」

 

 

 適当に言葉を紡ぎながら高木刑事の反応を見る。決して捜査情報を漏らしてはくれないが身体の反応は雄弁だ。喉元の唾を飲み込んだタイミング、視線等から何となく察せられる。

 だけれどもタレコミだとして悪戯ではない信頼のある相手からのタレコミなのではないか?でなければ警部クラスがこんなに早くいるだろうか?否ここまで大物が揃っているなら警察の動きも迅速か?

 

 

「たとえば有名な探偵から情報提供があったとか」

 

「な、なんのことですか明日谷さん」

 

 

 うーんわかりやすい。そしてやっぱりこれは事故ではないのだろうなと確信する。私が呼ばれた理由は陽動なのだろうか?あとは私がこの場所を視せることに意義がある?まあ思惑通りに動く必要もないだろう。

 

 

 

 

 結局事件の収拾はついたのかつかなかったのかはよくわからなかった。結果的に解散になったが会場には各界の大物が揃っていた。警察からは詳しい事情の説明はなかったが関係ないと思われる客は順次帰されていった。

 私も開放されたあと、例の赤茶の髪の少女を探そうとするがそれは出来なかった。底冷えするような圧力を放つ銀色の髪の男をホテル内で見かけたからだ。

 あの男は工藤新一が江戸川コナンになる場面と宮野明美が殺される場面で視た男だ。ただその場を盗み視ている私が感じ取れるぐらいの存在感と威圧感を放つ男だ。

 

 その男がいる。流石にその状態で余計な事をする気にはなれなかった。私は無駄に生命を投げる趣味は無い。深追いは避けおとなしく私はラウンジに戻った。

 

 

 

 

 

「ハァイバンシー、ちゃんと来てくれたのね」

 

「一応ね。不本意だけど受けてしまった以上は来るわよ」

 

 

 ラウンジにて、隣に座ったのは服装とウィッグ、本当にちょっとした印象を変えたシャロンだった。互いに顔は向けずにしかし意思を表示するために貰った金を封筒に入れて机に置く。

 

 

「それで人探しの方は捗っているの?多忙な大女優様は」

 

「いいえ。貴女は何か掴めてないのかしら?バンシー」

 

 

 まずは軽くジャブを撃つ。ただコレはシャロンも同様。互いに何処まで掴めているかを探っている。ここで私はすかさず金をシャロンの方に押し返す。

 

 

「なんの真似かしら」

 

「いや何、私じゃ力不足よ。仕事に合わない報酬は受け取らない主義なの」

 

「……そう、期待し過ぎだったかしら」

 

 

 シャロンからは落胆のような反応で返される。しかしこれは多分ブラフ。私を挑発しているだろう事は察せられる。

 相手からしてみれば私より使える情報筋などいくらでもある筈だ。つまり煽っているのだ。正直業腹であるがここで素直には乗らない。

 

 

「なら私なんて用済みなんじゃないのかしら?」

 

「早とちりは良くないわバンシー。今度は期待に応えてほしいものね」

 

 

 あえて若干ふてくされたようにそういう。そんな私に彼女は調査継続を求めるようにそういう。まあ彼女が再び私に頼むというよりしっかりしなさい的なニュアンスで再び封筒を突き返してくる。そして彼女は時間だからと立ち上がって去っていく。

 

 

 

 

 

「ええ、早とちりは良くないわよ、ヴィンヤード様」

 

 

 残された私は一人カモフラージュに弄っていたカードを捲る。出てきたのは隠者。思わず口角が上がる。随分と下に見てくれたものだ。正直気に食わないことこの上ないがまあいいだろう。

 老紳士が連れてったあの少女。私はコナン君の事例を知っているからその可能性に至れている。あの少女がこの写真の女性かもしれない可能性に。

 

 前言しておくがシャロンの事は同じ境遇の同志と思っている。だから嫌いではない。

 しかしあの高飛車な顔の裏をかけるなんて、心が躍らないと言えば嘘になる。

 

 欲を言えば老紳士が彼女の仲間かどうかまで探りを入れたかったところだがこちらからボロを出すリスクを負う必要はない。

 

 彼女の居場所は改めて調べる必要があるが、それはそんなに難しくないだろう。コナン君と同じであるならばその状態の先駆者であるコナン君を頼るはずだから。

 

 

 

 会うのが楽しみね。Ms.Hermit

 

 

 

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