詐欺占い師と米花町   作:罠ビー

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 未来視持ち酒ヤニカス女と萩原君


詐欺占い師と7年前の爆弾

 

 

「リンネよぉ。お前ならこんなチンケな事しなくてもいいんじゃねえのか」

 

 

 私、荻原、松田の三人は私を任意同行という形で連行した後、近くの喫煙所でプカプカふかしながら職務質問をしてた。それでいいのかマッポ。

 

 

「チンケな事で留めてあげてんのわかんないかなぁ松田君は」

 

「どういう事だよ」

 

 

 ローブは脱いで、フェイスベールも外した状態の私は怪しい占い師から派手な髪色でバチバチの化粧をした女になっている。そんな女とグラサンとチャラい奴で喫煙所で、たむろしてるうち二人が刑事なのは世も末だな。

 

 

「チンケじゃないことやったげよっか?例えば宗教団体とか」

 

「なんかシャレにならなそうなんだけど」

 

 

 出来るか出来ないかで言えば多分出来る。世間的に影響の大きい事象、災害とかを大々的に予言して末法思想を唱えればいける。なんなら予言に関してはマジなものを言えるし。

 

 

「冗談よ。そんなことしたら目立ち過ぎていつか刺されるわ」

 

「冗談に聞こえねーんだよ」

 

 

 そう。未来が見えるなんて喧伝して良いことは無いのだ。それは2人と一緒だった小学生時代に思い知らされた。

 

 私は無垢な子供であり、見えたモノを素直に教えていた。それがこの力の使い方だと思っていたからだ。我ながら愚鈍でお人好しだなと思う。

 

 出る杭は撃たれるのだ。コレをもっと上手く効果的な使えていたらもしかしたら人気者になれたのかもしれない……いや、確実な成功を人は妬むモノだ。どこかで崩壊するだろう。

 

 そもそも私はそういう小狡さはあまり無かった。だから一度傷ついた心は傷つくのを嫌い、他人とは深く関わらず、真っ当な道を行く人々を指差し嘲笑しバカにする事で守っていた。

 

 

「普通に働く気は無いのかよ」

 

「適当にお金を稼ぐなら簡単なのよ。だから汗水垂らす必要性がないわ」

 

「なら詐欺みたいな事する必要はないじゃん」

 

 

 この力があれば競馬は当たるし上がる株も分かり、一方で自分の仕事の成否もわかってしまうのだ。そりゃ普通に働くのがバカバカしくなるのも当然だ。じゃあチンケな詐欺をする必要もないじゃんと萩原は言う。

 

 ごもっとも。

 

 

 

「つまんないのよね。なにもかも」

 

 

 

 煙とともに吐き出したその言葉はふわりと大気に消えていく。聞こえてくれるなと願いながら、聞かせたかったのかは解らなかった。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「つまんないのよね。なにもかも」

 

 

 職質という名ばかりのタバコ休憩。対象者の不審人物こと俺たちの同級生のリンちゃんの言葉が聞こえた。それは彼女が零した本音なのかもしれない。

 

 

「⋯⋯んあ。アンだよ兄さんそんなに見つめて。アタシの身体に見惚れちゃったか⋯⋯ヒク」

 

 

 彼女と再会したのは7年前。ちょうどあの事件が起こる前日だったことを覚えている。へべれけに酔っぱらった⋯⋯いや泥酔に近い状態だった派手な格好の女に因縁をつけられた。おそらく夜職でお酒を大量に飲んだ挙句酔っ払い道で行き倒れたのだろう。

 

 

「あーもうお姉さん大丈夫、水買ってくるから」

 

「悪いれーお兄さん」

 

 

 上機嫌で悪びれる気のない謝罪をする彼女に仕方ないと思うもどこかほっとけない感じがする。というかこの状態の女の子をほっとくのは流石に危ない。

 

 

「ほら、落ち着いた?送ってくよ」

 

「えーお兄さんそんな事言ってアタシに……」

 

 

 そんな事を言いながら茶々を入れてくる彼女は唐突に黙ったかと思うと青い顔をして吐いた。蹲る彼女の背をさすっていると荒い息の中になんでや、最悪といった言葉が混じっている。酔いもさめるような、何か衝撃的な事を見たのだろうか?尋常じゃないといった様子であり先程までとは違う心配をしあたりを見渡す。

 

 

「あーもういわんこっちゃな、ちょ、しっかりして」

 

「はぁ、はぁ。オエ。なあお兄さん。お前もしかして萩原って名前?」

 

 

 そうしたら彼女はいきなり俺の名前を当てる。そう思えばケタケタ笑い出して顔を抑える。もうめちゃくちゃだ。まだ酔いがさめてなかったかと思うが彼女の碧の瞳が俺を射抜いていた。

 

 

「はは、なんか見たことある未来が見えたと思ったらまさかお前だなんて。しかも明日?私が言うのも変だが運命ってやつはあるんだな」

 

 

 

 

 

 

 

「萩原。アンタ明日死ぬわよ」

 

 

 彼女の言葉にポカンとする。いやなんでここまで必死に介抱した女にそんなこと言われなきゃなんねえんだよとか、この酔っ払い面倒くさいとかいろいろ頭の中を駆け抜けたが、その感覚にデジャヴを覚えた。そういえばこんな事昔あったような⋯⋯

 

 

『ねえ、旅行やめた方がいいよ。死んじゃうよ』

 

 

 小学生に頃あるクラスメイトがそのように言っていたことを思い出す。結局言われた子は旅行に行って、帰ってこなかった。そのような事は一回だけではなく彼女が転校するまでの4年間で大小合わせて両手の指くらいは起こった。

 ついたあだ名は死神。または不幸女。そして彼女の忠言が聞き入れられるようになれば逆に嘘つき。常に彼女にはマイナスのイメージが付きまとっていた。入学したころは笑顔が似合う少女だったが段々と笑顔が消え、ニヒルに笑い。あだ名が似合うように不良っぽくなっていった。

 

 

「リンちゃん、⋯⋯芦」

 

「その名前は捨てたの。今はただのリンネ」

 

 

 いつの間にか立ち上がっていた彼女は水をあおり俺を見下ろしていた。碧の瞳が夜闇の中から見下ろしている。

 

 

 

「当時に倣うなら死神の予言よ、萩原。もっとも嘘つきリンちゃんの戯言だけどね」

 

 

 

 完全に酔いがさめ、そうおどける彼女は転校する直前のようにひどくつまらなそうで、視線は俺に向いてるはずなのに、きっと俺の方は見ていなかった。

 

 

「信じるよ。だからもうちょっと教えてくれない」

 

「⋯⋯もの好きねアンタは。あのころと変わんない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の予言は爆弾が爆発するという事だった。いや爆発物処理班の俺にとって当たり前な死因とも思うが相手がリンちゃんであり、明日と日付まで指定されれば警戒しないわけもない。爆弾の詳しいことはリンちゃんも知る由はないだろうからとにかく気を付ける。いつも以上に慎重に解体をしていくが拍子抜けするようなレベルでタイマー停止まで持ってこられた。

 そこで考える。リンちゃんの予言通りならこれで俺は死ぬのだろう。いつもなら余裕をこいて一服をしてしまう場面だが防護服を着たまま考える。ここまでの解体ミスでの爆死ではない。では別の爆弾だろうかとも思うがほかにないことは確認している。だとしたら目の前のこれだろうか。

 

 そう思うといつもより慎重に解体をする。ここまでも慎重に進めていたから結構時間が経っているな。そう思いながら一つ一つ丁寧に解体を進めているとその時が来た。

 

 カチッという音を確認すればタイマーが再び動き始めた。コレかと気づけば、しくじったかだとかリンちゃんの姿だとか色々浮かんだがそんなモノはとりあえず吹き飛ばして生きる為の行動をとる。

 

 

「退避!!退避!!」

 

 

 俺は大声を出しながらとにかく爆弾から離れる。爆弾もそうだが変な打ちどころなんかで死ぬかもしれない。解除に失敗した以上は生き残る事に舵を切る。彼女の世の中を諦めているような顔をしてるのは気に食わなかったしそんな顔をあかしてやりたかった。

 

 

 

 

 

 

「お姉さん、そういう商売は良くないよ⋯⋯って」

 

「なによ、人の商売にケチつけて⋯⋯」

 

 

 生き残った俺が彼女と再びであったのは彼女が露店で商売をしている時だった。その時も今と変わらず占いにかこつけて意味のないものを買わせようとしているところを注意した時だった。そして俺を見るや否や彼女は撤収準備を始めた。あ、悪質だって認識はあるんだ。

 

 

「じゃなくて待って、リンちゃん」

 

「私はお巡りさんに用ないんで⋯⋯それじゃ」

 

「待って、リンちゃん。礼をさせて」

 

 

 

 俺の言葉にリンちゃんは止まる。そして思い出したかのようににんまり笑うと、店じまいはするようだが逆に俺を逃がさないような、そんな気がする。そしてワザとらしいねこなで声で俺に迫ってくる。

 

 

「はぎわらくぅーん。今生きてるのは誰のおかげかしら」

 

「リンちゃんの忠告で助かった。ありがとう」

 

「そうそう。じゃあ萩原君、わかるわよね」

 

 

 そう言って彼女が俺に手を差し出してくる。ん、と差し出す手に俺が困惑していればしょうがないわねと言ってくる。ま、まさか

 

 

「10万で手を打ってあげる」

 

「え、金取るの?」

 

「命が助かったんだし良心的だと思うわよ」

 

 

 警官にせびるのかと言おうとすれば、別に構わないけどアタシを微罪で引っ張ってこの事片づけていいのと言ってくる。こちらがリターンを受けている状況を全力で盾にしてくる。結局すぐにATMに行き約束のお金をおろしてくる。

 

 

「ああ、そうだ」

 

「まさかまだ何かあるの」

 

「これで後腐れなし。それじゃ萩原君、あたしの事なんかすぐに忘れなさいよー」

 

 

 10万円を受け取ればタバコを吸いながらまだ何かあるそぶりで言われれば流石に複数回もせびられたらたまったもんじゃないと身構えるも、彼女はあっさりと手を振り夜の街に消えていく。彼女の言葉にどこか浮世から離れたいような様子を感じるも俺はその時はその背中を追うことができなかった。

 

 残ったのはタバコと派手な香水の匂いと10万円の引き出しがついた通帳の記録だけだった。

 

 

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