「んでハギ、あの死神の言葉が本当なら俺が今日死ぬってことだよな」
「⋯⋯まあそういうことになるかな」
歯切れの悪い返事。まあそれもそうか。こんな予言は当たってない方がいいし、ただハギは下手をするとアイツのコントロール下に入ってしまいそうな危うさがある。目を見た感じあいつ自身は善良ではないからな。なんならアイツが犯人って線も本来は疑う必要がある。
アイツが喫茶店で俺の事を占い?見始めてからぶっ倒れるまで5分程。直前に携帯を取り出してメモを取り出した以外は微動だにしていなかった。そして失神する直前に両手は頭部を守るようにした後失神した。あれは防御反応だ。だからアイツが言っていた爆発を体験したという言葉も一応は信じている。当然全部演技の線もあるが⋯⋯
そんな事を言い喫煙所で暇をつぶしながら待機していれば本庁の中がにわかに騒がしくなってくる。なにやら強行犯係に爆破予告が届いたとのことだ。俺とハギはタバコを消すと一目散に強行犯係に向かう。
『我は円卓の騎士なり
愚かで狡猾な警官諸君に告ぐ
本日正午と14時に我が戦友の首を弔う面白い花火を打ち上げる
止めたくば我が元へ来い
72番目の席を空けて待っている』
悪ぃちょっと貸してくんねとひったくって見ればそこに書かれているのは見覚えのある予告文。それ以上に具体的な72という数字。別にアイツの予言がなくてもこれが灰戸ショッピングモールの観覧車だろうことは分かる。隣で見ていたハギと目を合わせる。しかしすぐに予告状はなんだお前らと一課の連中に奪われる。こんなことなら伊達あたりに話を通しておけばよかった⋯⋯いや今からでも通せるか?
「なんだこの騒ぎは!!」
「伊達、いいところに来た。ちょっと面かせ」
「萩原、松田。悪いが後に⋯⋯いや、これの事か」
流石は伊達。現れるタイミングも良ければ話も早くて助かる。そのまま伊達を二人で喫煙所まで拉致る。
「ひとつ目の爆弾は灰戸ショッピングモールだ。あそこの観覧車はバカでかくて72番ゴンドラまである。ここらで円状の大きさで72番と言ったらあそこだ」
「⋯⋯一つ目はか。文章のヒントにも合致するし一つ目はその筋が濃厚だろう。予告状には二つの時間指定、二つ目もあるという事は読み取れるな」
そう、そこから二つ目の場所をどう伝える?今この情報があるのは不自然だ。それに俺たち自身も二つ目が米花中央病院という確証がないし、病院のどこだというのもわかっていない。しかし病院を探るなら人手を確保したい。
早ければ早いほどいいとすらいかない。病院に大人数が移動すれば犯人に動きがばれるリスクも高まる。どこまで情報をこのタイミングで伊達に出すのが正解だ?
おそらく犯人は病院か観覧車のどちらかを爆発させたいはずだ。だから時間をずらしている。それは観覧車が爆発したら病院は爆発させない。観覧車が爆発していないのに病院に大勢の捜査官が入ったら⋯⋯
爆発させる。この犯人はそんなズルは認めない。求められるのは少人数での発見と解体。そもそも病院の爆弾はひとつだけか?
「伊達、与太話だと思って聞いてほしい」
「なんだ藪から棒に」
「ハギの懇意にしてる占い師がいて今日の事が予言されてた、なんて言ったらどう思う」
「そいつが犯人か疑う」
伊達の当然の答えになぜか伊達に連行されながら覚えてなさいよーという感じで捨て台詞を吐くリンネのヤローを幻視し吹き出しそうになる。というかハギは噴き出してる。
「はは、そりゃそーだ。その占い師が言うには二つ目は米花中央病院らしい」
「はぁ、一応頭の隅には入れとくぞ」
そう、与太話でいい。与太話以上の人員が割かれると遠隔爆破のリスクが高まる。耳の片隅にだけ入れさせとけば伊達なら最後の場面で引っ張り出してくれる。最悪の場面でのセーフティーだと考える。
「⋯⋯でハギ、アイツに連絡つくか?」
「リンちゃん?出るかわかんないけど」
「じゃあ病院は任せる。ハギ⋯⋯これは俺の勝手な印象だが、アイツの死神じみた能力はマジかもしれないがアイツが嘘つきなのも多分マジだぞ。それはお前も知ってるだろうが、あんまりのめりこむなよ」
電話が鳴り目が覚める。寝ぼけたままうかつに取ってしまえば聞こえてきた声に覚醒し取ったことを後悔する。
「リンちゃん、今空いてる?」
「⋯⋯ちょっと頭痛いわね。寝込むわ」
「どうせ二日酔⋯⋯それは大変だね、病院まで送るよ」
萩原お前何言いかけた、いや事実だけれど。
いや待て、なんで今親切に言い直した。病院に送るよ。二日酔いで痛い頭を回せばハッと気づく、と同時に苛立ちがやってくる。
「萩原君さあ、意外とノンデリってやつなわけ」
「どうしたのリンちゃん」
「萩原君の狙いはわかるわよ。私を米花中央病院に連れて行って爆弾を探させたい」
萩原は悪びれもしないでそうだよと言いやがる。本当に高くつけるぞ。
「私はこの前の予知で今ライター持てないくらい火にPTSDあるのよ。ビジョンで爆発でも見てみなさいよ。8割がた失神するわ。残念だけどそっちの期待には沿えないわよ」
「⋯⋯そっか、ごめん俺がリンちゃんに頼りすぎていた」
おかげで禁煙3日目ねとでもいえば萩原はしおれた声で言ってくる。少しは反省したかしら。だけれど私頼られるというのは非常に自己肯定感が高まるので悪くない。
「まあちょっとした占いくらいはしてあげるわよ」
そう言って萩原君と落ち合う。私の未来視は意識をしていないと対象の最も強烈な近い未来を見せてくる傾向にある。今病院を未来視すれば即爆発からの私発狂コースである。ならばどうするか
病院を直接見ない。これに限る。萩原君に聞けば爆発は14時らしい。なら14時くらいの未来を⋯⋯あれ、米花町は騒がしくない。さてどういう事だろうかと考える。これはまだ観覧車が爆発する未来だからだろうか。
「萩原君、松田君は爆弾解除した」
「いや、たぶんまだ」
「じゃあ解除させて頂戴。未来が変わってないの」
そう言いながら私は米花中央病院の形になるようにざっくりタロットカードを置いていく。いつものカウントできるカードだが今回はカウントしない。ホロスコープスプレッドという立派な失せもの探しの手法だ。
「リンちゃん、これは」
「爆弾探し。これで愚者が出たところにあるって手法。ただこれは落とし物が愚かだから愚者なだけなのよね。そして爆弾と考えれば悪魔死神力そして塔あたりもあり得るけど。ラッキーね怪しいのは塔くらい。位置的には総合内科あたりかしら」
病院の案内図を片手間にそのような事をすれば萩原君はポカンとする。
「リンちゃん普通の占いもできるんだ」
「出張代金と危険手当上乗せね萩原君」
松田君に連絡を取り爆弾を解除してもらえば萩原君と米花中央病院の中に行く。萩原君は遠慮したがここまで来たら最後まで付き合うわよ。電話かけたところから後悔しなさい、そしてたんまりふんだくってやるからね。
米花中央病院の中に入ればじんわりとプレッシャーを感じる。という事は良くない未来が起こる、松田君はまず爆弾を解体したと見ていいでしょう。書き換わった未来ならばと未来視を使う。
混乱と絶叫のエントランス。被害はないが恐怖におびえた来院者が走ってくる。
「萩原君、手つないでいいかしら」
「⋯⋯大丈夫?無理してない」
これはこのまま未来視を使い続けても歩き続けるため。ヴィジョンの中の逃げ惑う人々の中を直進して進んでいく。たまに人が巻き戻っているので爆発の前後1分くらいをループしている。二分おきに爆弾の音が聞こえる。方向はやはり総合内科の方だ。
冷静に考えれば人をたくさん巻き込むなら総合内科か外科またはエントランスだ。ホロスコープスプレッドは気休め兼当て勘兼理由付けだ。あとの細かい割り出しは
爆音が響き膝の力が抜ける。失神はしないが立てない。そんな私を萩原君が支える
「リンちゃん?リンちゃん⁉」
「二日酔いで痛い頭に響くわ萩原君。気は失ってないわ」
真っすぐ見据える。総合内科待合室。ビンゴだ。場所的にトイレとかじゃなく待合室内だ。
「いや、まさか未来見てたんじゃ」
「当たり前じゃない。そのために繋いでたのよ。総合内科待合室の何処かよ。間違いないわ」
「怒るよ」
「怖いわねー。出張料、危険手当、アフター、諸々込みでたんまりふんだくるから覚悟しなさいよ」
それと松田君の土下座ね。そう言えば萩原君は急いで爆弾の解除に取り掛かる。気丈にふるまってみたが膝がガクガクで立てないしあとは萩原君が成功するのを祈ることしかできない。まるで物語のヒロインのような状態におぞ気が走る。かといって這って移動するのもおかしい。こういう妙な時間こそ煙草でも吸いたいのに
「タバコ吸いたいわね」
いや院内禁煙か
「ぼったくりだろてめ」
私の禁煙生活が終わるころ、私のもとに来た二人に対して差し出した紙に松田君はキレ気味に私を睨み付け萩原君は愕然としていた。松田君は出張料5万と相談料10万の15万。萩原君にはそこに危険手当とアフターが乗って22万円だ。総額37万円。私の力の証明はできないし出るところ出たらまず負ける額だろう。
「事件が穏便に片付いて、松田君の命まで助かって、良心的ともいえる額だと思うけど?それに松田君の請求書には書いてあるわよねもう一つ」
土下座の文字が。私は初日の事忘れてないわよ。
「く、それならおめえも」
「仕掛けたのは松田君でしょ。私は普通に名乗ったもの、ねえ萩原君」
「そうだね。でもじんペーちゃんにひどい事言ったのはリンちゃんもだからじんペーちゃんが土下座したらリンちゃんもしないと筋が通らないよ」
萩原のツルの一声により形成は逆転。アフターで働かせたのに味方になってくれないのか。これなら萩原君の危険手当とアフター代抜いておいてここで使うべきだった。クソと思いながらも私も土下座はしたくないので手打ちにする。禁煙による苦痛と精神的ダメージを考えれば赤字もいいとこだわ。
「はいこれで清算。じゃあ二人とも怪しい商売には気を付けるのよ」