詐欺占い師と米花町   作:罠ビー

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ギャンカス(必勝)間女と迷探偵と名探偵
という事で原作開始


詐欺占い師と小さくなった名探偵

 

 

 

 シャロンとの再会後、私は彼女のトップシークレットに踏み込んでしまったわけであるが彼女はそれを咎める様子はなさそうである。まあ私もそれを喧伝する気はないし、私とシャロンのつながりなど実際にないのだから探られるいわれもない。

 

 そんな今日は場外馬券売り場にいる。キャップをかぶり煙草を吹かしながら競馬新聞を手に考え込むふりをする。当然買い目は決まっているし私にとっては日本競馬会は銀行と変わりない。

 

 

「あークソが。金返せよ竹井」

 

 

 ならば何故こんなことをしているのだろうか?答えは簡単でありポーズである。今超大当たりを当てて一攫千金をすればいいじゃないかとそう思っただろう。

 それでは甘い。勝負師の金に対する嗅覚を甘く見てはいけない。こういうのはやり過ぎてはいけないのだ。

 

 馬券を投げ捨てる私を見て周囲のオジサン達は荒れてんなねーちゃんと微笑ましく見てくる。土台やはり鉄火場で女性は目立つ。いくら競馬場がファミリー向けの施策を打ち出しているとはいえ馬券売り場はやはり鉄火場であり女性人口は少ない。容姿が良ければ殊更。つまり自然と目を引きやすいのである。

 

 

「なんだあリンネちゃんまた外したのか」

 

「うるさいわね毛利さん。これから勝つのよ」

 

 

 そしてこういう場所はコミュニティがある。この中で狙ったように高額的中ばかり出したらどうだろうか。間違いなく目立つ。また高額的中は別室に通され職員の目にもついてしまう。だから大げさに外れてるポーズを作っておく。今投げた外れ馬券も300円程度にしており、当てる際も10万円を超えない額を中心にしておく。

 そしてカラクリはもう一つ。私のポケットの中には今のレースの当たり馬券。おおむね3万円くらいの奴でこれの換金は人の少ないときにこっそり行う。私は外れ馬券を捨てたが当たり馬券を持っていないとは言っていないのである。私の手元にはこの換金出来るチケットが複数枚常備されている。

 

 

「リンネちゃんが当たるなら乗っかろうと思ったのによ。占い師やってんだろ」

 

「それとこれとは別なのよ」

 

 

 目立ちたくないという理由もあるがもう一つの理由がこれだ。私が当たると思われると予想を参考にされる。そうするとなんやかんやあって配当金が下がるのだ。うまい話は教えないに限る。

 

 となりで話しているのは毛利さん。この場外売り場によく来るオジサンであり一応探偵をしているらしい。上京直後からキャップを被っているとはいえバチバチに化粧をして小遣い稼ぎに出入りしてる私の事を気にかけていたようである。

 最初こそガキがこんなとこに来んな的な態度であったがもう10年近い付き合いの間で今では立派な競馬仲間である。度々麻雀などにも誘われるがそちらは断っている。競馬と違い麻雀は接待なり加減をする必要が出てくるので煩わしいのだ。

 

 

「またこんなところで油売っていたのねお父さん」

 

「ら、蘭」

 

「しかも誰なのこの人は」

 

 

 雑談に興じる私と毛利さんの後ろから年若い女子の声が聞こえる。毛利さんの娘さんだろう。声や話は聞いているが私自身がその場に居合わせたのは初めてだ。しかも私は毛利さんの連れとでも思われていそうな雰囲気で矛先が私に向くのも時間の問題だ。

 弁解をするのもナンセンスだ。こういう時は自然な振る舞いを心がけた方がいい。喫煙ゾーンに未成年は邪魔だと強気で言えばいいだろう。煙草を吹かしながら顔を上げる。

 

 

「未成年は喫煙禁止よ。お嬢さん」

 

「あ、貴女はあの時の詐欺師」

 

「⋯⋯占い師よ」

 

 

 あ、やべえ修羅場だ。

 

 

 

 蘭ちゃんからは毛利さんの浮気相手の疑いを、毛利さんからは蘭ちゃんに対する詐欺の疑いをかけられたが何とか切り抜けることに成功した。

 毛利さんにはアクセサリーをちょっと吹っ掛けた値段で売ろうとしたことを白状すれば仕方ねえ奴だなと矛を収めてくれた。毛利さんにこの件で被害届けでも出されようものならちょっと大事になった可能性もあるし、今までの毛利さんとの関係値を考えれば変にしらばっくれるより誠実に白状した方がこじれないだろう。

 

 問題は蘭ちゃんの方である。毛利さんが私に対しての追及を思ったより早く辞めて穏便に収まったことがさらに蘭ちゃんにとって印象が良くなかったようだ。この前の事も含めて完全に私の事をよく思っていない。目の敵にされている。

 

 まあいくら蘭ちゃんに目の敵にされようと別に構わないと言われれば構わないのではあるが。私は別に毛利さんと深い関係にあるわけでもないし。ただ居心地は悪い。

 

 

 場所は移動してポアロという喫茶店。上の階の窓には毛利探偵事務所の文字がとっても分かりやすい。

 あのまま馬券売り場で揉め続けるのも収拾がつかないし、周りのオジサン達はもう野次馬モードで囃し立ててきていた為に場所を移動する事に相成った。……ゴシップ好きのオヤジどもめ。

 

 毛利さんは一度ちゃんと蘭ちゃんの事を占うという条件を出してきたのでそれを了承。毛利さんは一度見てみたかったんだよなと見物モード。あまりスピリチュアルを信じるタイプの人ではないし当然か。

 一方で蘭ちゃんはやや不満気な様子。以前の事で不信感を持たれているだろうしまあ当然といえば当然だろう。

 

 

「ところで蘭ちゃん。貴女の愛する人はもう貴女のもとを離れちゃったかしら」

 

「⋯⋯誰があんな推理オタク」

 

「思い当たる節があるのかしら?大丈夫よ。いずれ戻ってくるって言ったじゃない。そうね」

 

 

 

 

 

 

「意外と近くにいるのかもしれないわね」

 

 

 ふふっと笑いながら私に対して不審がるような視線の方に目を向ける。低い位置から感じたので何かと思えば小学生に入ったくらいの子供の姿。

 

 やや大きい眼鏡に蝶ネクタイにジャケットという普段着にするにしてはフォーマルな格好。特にこの年頃の子供なら窮屈に感じるだろうに特に着崩す事もなく着用している。

 育ちが良いにしては机の下から盗み見るようにコチラを覗く行為からはあまりそういった印象を感じない。……まあ子供には怖いと思われるだろう容姿をしている事には自覚があるから単に私が怖いだけの可能性も考慮できるが。

 

 

 その子供は私が気づいたとわかるとわざとらしく今私に気づいたとでもいうように私に近づいてくる。随分と無理をして出してる声色から無理をしてる感じが伝わってくる。

 

 

「お姉さん占い師さんなんだ」

 

「ダメよコナン君。こんな怪しい人に関わっちゃ」

 

 

 蘭ちゃんは近づいてくる少年に対して私をそう紹介する。ややあんまりな紹介ではあるが蘭ちゃん視点私は不審者でしか無いのでそれは甘んじて受け入れる。

 

 

「それで何を占おうかしら」

 

「なんでもいいです。早く終わらせてください」

 

 

 取り付く島もない。まあ仕方ないと考えるのはやめて肩を竦めながらため息を吐く。ジッと蘭ちゃんを見てから蘭ちゃんにカードを引かせる。これは応用で私が切った束の一番上を引かせただけだ。それでも自分がめくるのと私がめくるのでは感じ方が違う。私が引くより蘭ちゃん自身が引いた方が自分の運命って感じがするんじゃないかしら。

 

 

「力のカードね。暴力的なイメージが先行しがちだけど勇気や忍耐、自己犠牲みたいな意味もあるわ。耐え忍んだ愛は無敵なの。素敵でしょ」

「そう、忍耐。今は耐える時間。そんなにかからずに貴女の待ち人は帰ってくるわ。そうね、そう遠くない未来で一度、西からくる来訪者とともに」

 

 

 

 

「おお、なんかそれっぽいじゃないかリンネちゃん」

 

 

 蘭ちゃんはあまり私の言うことは認めたくないのだろうがそれでもこう言われると安堵していることになんとも言えないといったところ。毛利さんは私の姿に感心しているようだ。

 

 

「毛利さんは来週のメインレースでいいかしら。4番が勝つわよ」

 

「急に信じられなくなったな」

 

 

 そんな私達の様子を見ていた少年は蘭ちゃんが上の空気味の今がチャンスとばかりに私に声をかけてくる。その姿は私にとっては以前ビジョンで視たもので、丁度以前街中で蘭ちゃんを占った時に茶々を入れてきた少年の未来で視た姿であった。

 

 

「占い師のお姉さんは何ていうの」

 

「私はリンネよ。君は」

 

「僕は江戸川コナン」

 

 

 江戸川コナンと名乗った彼に視線を合わせるように私はしゃがみ込む。彼の表情がよく見えるように。覗き込むように。

 

 

「そう、コナン君。ねえ君」

 

 

 地面を舐める準備は出来ているかしら。

 おあつらえ向きに以前より地面は近いわよ

 

 

 コナン君にひっそりと耳打ちをする。私の言葉に顔を驚愕に歪ませるコナン君。そしてキッと私をその体躯からは考えられないくらい強く睨んでくる。

 

 それは憎悪や敵意を感じさせる。それでいて悔しさに滲んだ顔だ。

 

 

 私の背筋にゾクゾクしたものが走る。頬が上がってニヤついてくる。ポーカーファイスはうまくなったと思うのだけれど喜悦を隠すのは苦手だ。

 

 

「何言ってるかわかんないなあ」

 

「そっか。もしなんか気づいたらお友達価格で協力するわよ、坊や」

 

 

 

 

 

 

 

 蘭とおっちゃんがポアロに連れてきたのは黒い服の女だった。そしてその姿は忘れもしない。あの日俺が江戸川コナンになることを予言した女だった。そういえば占っていた時も黒いローブだった。

 黒といえば奴らだ。彼女ももしかすると黒の組織と関係あるのであろうか?だとするとまずいどころの騒ぎではない。俺の正体は奴らに筒抜けという事になってしまう。

 

 奴は蘭を占っている。話を聞く限りおっちゃんの競馬仲間で蘭はその姿を見ておっちゃんが浮気でもしていると思ったのだろう。占いも不審な点は見当たらない。

 覗き見していたら奴にバレてしまったので仕方なく出ていく。しかし奴からの言及はない。助かった。気づいていないのか。奴は俺を一瞥すると奴を警戒している蘭から近づいちゃダメと引き離される。

 

 再び奴は蘭を占いだす。内容にはドキドキするが革新的な部分には触れておらず蘭はその内容をどうすればいいか処理に困っているようであった。今がチャンスと俺は奴に接近する。

 

 

「占い師のお姉さんは何ていうの」

 

「私はリンネよ。君は」

 

「僕は江戸川コナン」

 

 

 リンネ。そう名乗った彼女はしゃがみ込んで俺の顔を見てくる。気づかれたかと思う俺に彼女は周りに聞かれないように耳打ちしてくる。

 

 

 

 地面を舐める準備は出来ているかしら。

 

『もし当たったら地面に額をついて詫びてもらうわよ』

 

 

 それはあの日彼女に言われたことを意味していた。驚きとともに目の前の女は限りなく黒に近い灰色じゃないかと感じた。どういうトリックがありどういう意図があるのかは全く分からない。しかし必ず暴いてやる。

 

 そう決意すると彼女はニタリと嗤った。

 

 

「何言ってるかわかんないなあ」

 

「そっか。もしなんか気づいたらお友達価格で協力するわよ、坊や」

 

 

 

 必ずそのトリックも裏も暴いてやる。

 




扉絵で広田雅美ばりの悪い顔させられてそう
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