「前の旅行で見たオーロラは良かったね〜。ヤッチョ、ついシャッター連打しちゃったよ」
ツクヨミにある天守閣。
その中で私は狩人と話している。
「確かにあのオーロラは美しかったな。酒寄彩葉達にも見せたのだろう?」
「うん。かぐやなんて『私もいーきーたーいー!!彩葉!!連れてって!!』とか言ってたよ」
「ほう。それで?」
「それで彩葉ったら研究が忙しいのに『つ、次の休みにね・・・』ってすぐ屈しちゃったの。ちょろ葉〜」
「全く。彼奴等は何時も通りだな」
「えー?会う度にかぐやにお小遣いをあげてる狩人は人の事言えないんじゃないのかな?」
「む・・・」
あれから少し。
私と狩人は『狩人の夢』の中で皆を招いて小さな結婚式を開いた。
それはもう幸せな気分で、その時の私は世界で一番のお姫様だったと断言出来るくらい。
今も世界でのお姫様だけどね?
因みに結婚式の神父役は彩葉にやってもらった。
彩葉がめっちゃ泣いてたのが印象的だったかな。
それで私と狩人はひっそりと籍を入れて――戸籍上の名前は守月狩人と守月八千代になって――東京の郊外にちょっと大きめな一軒家を買った。
ああ、勿論ツクヨミでの活動は続けてる。
『月見ヤチヨ』は私のライフワークだから。
指輪を見てはちょっとハイテンションになっちゃったりもするけど、皆は受け入れてくれてる。
「あ、そろそろ今日の配信の時間だ。じゃあ・・・狩人、行ってきます!!」
「ああ。行ってらっしゃい、ヤチヨ」
狩人に見送られながら私は配信部屋に向かう。
あ、ヤッチョ⑨。
あんまりおいたしてるとDeleteだからね?
「ヤオヨロ〜☆神々の皆、元気かな?今日は恋愛相談をするよ!!」
『待ってました!!』
『今回はどんな重い話が来るのやら』
『重い話になるのやらじゃなくて?』
『かぐや:ヤチヨー!!いろPが最近構ってくれないの!!離婚の危機かも?!』
『出た、野生のかぐや姫』
『離婚の危機www』
『地味にヤバい話じゃんw』
「うーん、
かぐや、暇なのかな・・・専業主婦?だし日中は暇か。
「はい、気を取り直してお便り読んでいこっか。なになに〜?」
メンダコの中から巻物を取り出して広げる。
「ふむふむ。最初のお便りは【クソボケに振り向いてもらいたい】さんからだね。おひさ〜」
『クソボケに振り向いてもらいたいさんじゃん、チーッス』
『あっ』
『レギュラー入りは何時ですか?』
『オチ読めたな』
『流石に前回のを実行してたら何か進展あるんじゃ・・・』
『押し倒す!!ってやつね』
『マジ哀れ・・・』
「どれどれ〜?【前回の相談を実行して押し倒してみたのですが「怪我は無い?大丈夫?」と抱き寄せられてしまいました。顔が良くて辛いです。助けてください】」
『クwwwソwwwボwwwケwww』
『草』
『クソボケvsヘタレ』
『タイが曲がっていてよ』
『ちくわ大明神』
『なんか居たなおい』
「振り向いてもらいたいさん!!そこヘタレちゃ駄目でしょ?!」
『正論』
『正論』
『草』
「そこは『私、大丈夫じゃないかも・・・』って押し倒して
『今回は規制音回かぁ・・・』
『磯婆ぇ・・・』
『耳年増(8000歳)』
『あのですね・・・同意無しは如何なものかと・・・』
「でもクソボケだよ?!釣った魚に餌あげないタイプだよ?!」
『たし、かに?』
『いや駄目でしょ』
『クソボケにヘタレ、どっちもどっちでは?』
『もしヤチヨだったらどうするの?』
「・・・うーん」
ちょっと考えてみる。
狩人がクソボケ・・・狩人がクソボケ・・・。
「うん。監禁、かな?」
『ひえっ』
『ハイライトさん仕事してくれー』
『何時も通りじゃね?』
『流石師匠・・・!!』
『狂信者居るじゃん』
「ヤッチョの気持ちが分からないなら丁寧に分からせてあげる必要があるよね?」
ヤッチョしか知らない場所に閉じ込めて、狩人をお世話してあげるの。
逃げようとしたら・・・前に言ったみたいに足を無くしてみるのもアリだよね。
だって逃げるような悪い足なんだから。
そうすればヤッチョ以外の女の子に会うこともないし、ヤッチョだけを見てくれるよね?
「――おっと危ない危ない。話が逸れちゃったね☆」
『今の数秒、超重力発生してなかった?』
『下手なホラーより怖かったゾ』
『ヤンデレヤッチョ、良いと思います』
『かぐや:ヤチよ怖』
『いろP:ヤチヨ道は深い・・・』
◆◆◆
天守閣からツクヨミを見渡す。
ちょっとセンチメンタルな気分だ。
「・・・ツクヨミも大きくなったよね」
「ああ。最初の頃は2区画しか無かった」
「そうそう。それでちょっとずつ広げてって、人も増えていって。あの時は大変だったなぁ〜」
「俺もバグ取りに駆り出された位だからな」
懐かしい。
狩人は私を手伝う為にプログラミングとかを勉強してくれたっけ。
先生ごっこ、楽しかったなあ。
「それにしても思ったよりも8000年って早かったね」
「そうか?・・・いや、そうだな。楽しい時間は早く過ぎる」
「えへへ、そうだね♪」
ヤチヨと一緒だったから楽しくて時間が早く感じたんだよ、なんて。
嬉しくて、少し照れちゃうかも。
「・・・・・・やっと、此処まで来れたね」
「ああ。ヤチヨが頑張ったからだな」
「ううん。私の力だけじゃないよ。狩人が居てくれたから頑張れたの」
「・・・そうか」
あ、照れてる。
狩人の照れ顔って珍しいから録画しとこ。
それにしても、今日の配信を二人で並んで見てたみたいだし、彩葉とかぐやは幸せそうで良かった。
・・・うん。
ヤッチョかなりセンチメンタルな気分だ。
「・・・これにて、彩葉とかぐやの物語はハッピーエンドを迎えたのでした。めでたしめでたし・・・ってね?」
「ふむ・・・ハッピーエンドか」
「そう。私達が目指した、彩葉とかぐやのハッピーエンド」
燃えつき症候群ってわけじゃないんだけどね。
何ていうか・・・。
「ずいぶん遠くまで来てしまった、か?」
「うん。そうだね。言語化するとそんな感じかも。走ってたから早く過ぎた様に感じただけで、8000年って永かったみたい」
「それはそうだろう。文明が起り、滅ぶ。俺達はそれを何回も見てきた」
色んなものを見た、色んな人に出会った。
「そうだな。なあ、ヤチヨ。少し柄にもない事を言うぞ」
「へ?」
「此処まで誰かのハッピーエンドの為に頑張って来たからさ・・・少しは肩の荷を降ろしても良いと思うんだ」
あ、この状態の狩人にぎゅってされると溶ける。
ヤッチョ溶けちゃう?!
ヤッチョスライムになっちゃうよ?!
「それから一緒に更新していこう。俺と君のハッピーエンドを・・・・・・夫婦だしな」
「・・・う、うん」
狩人と見つめ合う。
あー顔真っ赤だ。
やばい、幸せ過ぎる。
幸せいっぱいお嫁さんヤッチョなのです。
もう、このまま狩人の腕の中で寝ちゃおうかな・・・。
あ、でもこれだけは言っておこう。
だって思ったことはちょっとでも言葉にしなきゃ伝わらないから。
私達は伝えられなかった人達を沢山見てきたから。
――だから、ちゃんと言うの。
「ねぇ、狩人」
「愛してるよ。ずっと、ずーーっと、何があっても。もし何かあって狩人が私を忘れちゃっても、ヤッチョは貴方から離れないから。離れたくないから」
「だから・・・狩人も私を離さないでね?」
「大好きだよ、私の狩人」
・・・・・・もう、無理。
ヤッチョ恥ずか死にます。
お休みなさーい。
「・・・俺も愛してるよ、ヤチヨ。良い夢を」
ヤチヨ:狩人と結婚した。戸籍上では『守月八千代』。指輪はチェーンを通して首に下げている。分身体ヤッチョは自分なのでギリ許すがそれ以外に浮気(ガバガバ判定)したら泣く。そして狩人を監禁する。基本的には無害で嬉しさ有頂天ヤッチョである。たまにしっとりじめじめヤッチョにジョブチェンジする事も。でもそんな部分も可愛いとは狩人の談。
狩人:指輪はヤチヨと同じくチェーンを通して首に下げて肌身離さず持ち歩いている。ヤチヨの愛で呑気に海水浴している男。そこそこパーフェクトコミュニケーションを連打しているがたまに甘えたいヤチヨのガバガバ浮気判定に引っ掛かり数日監禁されることが多々ある。監禁中はひたすらイチャイチャしているらしい。
彩葉:その時彩葉の脳内に溢れ出す存在する記憶――ああ、そっか。私はヤチヨのお母さんだったんだ・・・ヤチヨ・・・幸せになってね・・・。
かぐや:ゔぇ?!彩葉がめっちゃ泣いてる?!因みに身体が出来るまでは『狩人の夢』で居候をしていた。
芦花:なんかおまけで超常現象に巻き込まれた。でも美しいものを見れたので満足。何時かああいうの着てみたいなあ・・・。
真実一家:さりげなく狩人&ヤチヨと家族ぐるみでの関わりが出来た。双子は狩人とヤチヨを親戚だと思ってるとか。
お兄ちゃん:うわ、なんか彩葉めっちゃ号泣してる・・・。
『月の指輪』
永い年月により変質し、鉱物と化したヤチヨの『もと光る竹』から削り出された二つ一組の指輪
材料によるものか、月の性質を帯びている
不思議な引力をもち、互いに強く引く寄せ合う
ああ、私の狩人、大好きだよ
ずっとずっと愛してるよ
だから未来永劫ヤチヨから離れないでね?
それは呪いにも似て、だが確かに絆を感じさせるものだ
『ヤチヨの物語』
これからも続いて行く
めでたしめでたし、で終わることはなく毎秒毎分須臾のハッピーエンドを更新していくだろう
何故ならこれは、愛しい人と歩く物語なのだから