――狩人の朝は早い。
「
『うん、おはよう狩人』
起き抜けに
大変贅沢なモーニングコールと言えるだろう。
『今日も日課のトレーニングかな〜?』
「ああ。サボると腕は直ぐに鈍るからな」
『狩人は勤勉だねえ』
寝間着から
だだっ広い部屋の真ん中にサンドバッグ(中身はカインハーストの女王▓▓▓▓▓▓)がぶら下げられている。
右手には『ノコギリ鉈』、左手には『獣狩りの短銃』を持つ。
その動作を繰り返す。
『うーん何万回見ても野蛮』
「失敬な。唯の素振りの何処が野蛮だと言うのかね」
『殺意マシマシなものを殺意マシマシでブンブンしてるから?あとサンドバッグ(仮)が悍ましすぎる』
「死なないから便利なのだが」
『狩人の持ってる武器だと『聖剣』とか『杖』とかならもうちょっと印象は変わるんだけど・・・やっぱそのサンドバッグ(仮)が悪いかなぁ。幾ら8000歳のヤッチョでもお近付きになりたくないよ〜』
うーん残当。
これヤチヨのファンに知られたら半殺しにされるだろうな。
いや、その前に発狂するか。
え?サンドバッグ(仮)はどうしたのか?
肉盾にも囮にもサンドバッグにもできて死なないんだぞ?
お得では?
『その澄み切った夜空みたいな瞳で弁解しても無理なものは無理かな?』
「そうか・・・」
『と言うかこの会話も1821回目だよ?ヤッチョの懐が広くて良かったね?普通なら愛想尽かされちゃうよ』
「む・・・」
『はい、返答に詰まるのも1527回目だよ』
「いや怖いんだが」
『・・・』
「無表情で詰め寄るのやめて?」
――ヤチヨは齢8000歳の(自称)AIライバーである。
――魔都ヤーナムに少し染まっている野蛮人の思考など八割程度しか理解出来ない。
ヤチヨは重い(※体重とかでは無い)。
だが、それも良い・・・いや本人には言えんが。
――とか狩人が考えていることもお見通しであった。
――ヤチヨは伊達に狩人と何千年も連れ添っていないのです。
『はぁ・・・しょうが無いにゃあ。普通ならモザイク検閲からの垢BANだからね?ヤッチョが大大だーい好きな狩人だけの特別対応だよ?』
「ヤチヨかわいい」
感謝感激雨アラモードである。
・・・おっと?本音と建前が逆になってしまった。
『・・・褒めても何も出ないよ?』
「顔真っ赤だぞ」
『―――!!』
「ははは」
ぽかぽかと胸を叩かれる。
ヤチヨの顔はりんごみたいである。
『もう・・・』
◇◇◇
『狩人!!ずっと一緒だよ!!』
『ああ。▓▓▓、約束する。ずっと一緒だ』
それは遠い約束の記憶。
昔々、そのまた昔のこと。
喋るウミウシと異邦の狩人が世界を旅していた頃のお話。
私の大切な大切な記憶。
「ふふふ」
そんな事に思いを馳せながら、私は膝の上の彼の頭を撫でる。
私がこうして彼に触れる事が出来るのは
だから現実で触れ合えない分、私は彼と触れ合いたい。
それを理解ってくれているから、彼はこうしてなすがままになってくれているのだ。
「よしよし、いい子いい子」
あれ、寝ちゃったのかな?
何時もなら恥ずかしがる表情が見れるのだけど。
「おやおや・・・」
そう思って覗き込むと彼は気持ち良さそうに寝息を立てていた。
「・・・・・や、ちよ・・・・・ぐぅ」
「ぶふっ・・・・・いとかわゆし」
寝言で私の名前を呼ぶのはこれで通算245002回目。
ずっと二人で歩いて来た。
いや、違う。
私の我儘に彼を付き合わせてしまったのだ。
8000年も。
「ごめん。ごめんね、狩人―――
私は彼の頭を抱きしめる。
私の弱音が聴こえないように、
そうしていると彼から仄かに香る独特な匂いが私を包んでくれている様な気がした。
月の香りとしか形容出来ないそれ。
小さなウミウシだった私を守り続けてくれた大切な香り。
「――欲しく、なっちゃったの」
「ヤチヨは欲張りさんだから」
「私は貴方の全部が欲しい」
彩葉に会いたいけど、彼も欲しい、なんて。
なんて強欲。
「――なんて、ヤッチョのキャラじゃないよね」
狩人:超危険人物。実は現実世界では投資家。
ヤッチョ:重かわいい。実は常に分身(もしくは本体)が狩人の近くに居る。
過去編とかぐやいろ編どっちが先が良い?
-
過去編
-
かぐやいろ編