8000年と月の香り   作:文才の無い本の虫

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大丈夫かなこれ・・・


ヤチヨと狩人

 

 

 

 

 

「名前?」

 

――それは、彼女がヤチヨと名乗る様になってから少しの事だ。

 

「うん。ヤッチョはずっと考えてたのです!狩人(かりゅうど)は『名前は忘れた。もし思い出せたとしても今の私(上位者)にはもう意味の無いもの(符号)だ』ってカッコつけながら言ってたじゃん?」

 

「・・・ああ。それがどうかしたか?」

 

てか俺の黒歴史抉って楽しいか??

え、楽しいですかそうですか・・・そんな満面の笑顔をされると止められないんだよなぁ。

 

ほんとは私以外が閲覧出来るデータベースに載せるのも嫌なんだけどやっぱり将来戸籍とか無いと不便だなぁって思ってね〜」

 

「ふむ。道理だな」

 

「だから〜私から狩人に名前をプレゼント!!」

 

――懐かしい、とても懐かしい大切な記憶。

――彼女は知らないだろう、上位者に名前を与える意味を。

――けれど、そんな事は関係無く、俺は純粋に嬉しかったのだ。

 

「どぅるるるるる〜じゃじゃん!!」

 

ヤチヨは周囲にエフェクト(どうやって出してるのだろうか)を撒き散らしながらスケッチブックを取り出す。

そこにはやけに達筆な字でこう書かれていた。

 

――守月狩人という名前(彼女からの贈り物)が。

 

「狩人の名前はね、守月狩人(もりつき かりひと)だよ!!かりゅうどじゃなくてカリヒトって読むべし!!」

 

「そのままだな」

 

「なぬー(怒)」

 

ぽかぽか、と胸板を叩かれる。

そんな彼女の仕草を微笑ましく思いながら俺は照れ隠しにカッコつけながら言った。

 

「だが、君からの贈り物だ。ありがたく貰っておこう」

 

「あーまたカッコつけちゃって!!」

 

「偶には良いだろ別に!!」

 

けらけらと楽しそうにヤチヨが笑う。

()()()だとは言え、笑えている。

 

――その時の俺はそれがどうしようもなく、嬉しかったのだ。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「〜♪」

 

「ツクヨミでの仕事は良いのか?」

 

「ん〜・・・分身体ヤッチョその621からその1000とFUSHに丸投げしてきたから大丈夫!!」

 

「はぁ・・・全く。ちゃんと休息は取れよ。お前は記憶の整理が必要なんだからな」

 

しょうが無いな、という表情で彼は私の頭を撫で続けてくれる。

このまま彼の温もりを感じながら寝てしまっても良いし、彼と楽しくお話しても良い。

だから私はこの夢のような一時が大好きだ。

 

「それにしても便利だね〜『狩人の夢』って」

 

「そうか?」

 

「うん。何処からでも来れて、条件付きだけど色んな場所に行けるし」

 

そして彼と私しか来れないから、とても都合が良い。

彼曰く昔は色んな人が居た『狩人の夢』があったらしいのだけれど、この『狩人の夢』は正しく『彼の(世界)』だから其処とは少し違うのだとか。

私は此処を『秘密基地』とか呼んでいたりする。

 

「まぁ、現代では余り使えないがな」

 

「監視カメラとかも多くなったしね」

 

「魔女裁判はもうこりごりだ」

 

「狩人ったら律儀に連行されちゃってたもんね」

 

「唯の交易商としてマネーロンダリングしていただけなのだが・・・」

 

「やっぱそれがいけなかったんじゃないかな?」

 

あの時はかなり焦った。

私は唯の喋るウミウシだったから狩人を助ける事なんて出来なかったし、私が喋ると誤解を生みかねなかったから。

 

『(ど、どどどどうしよう?!狩人が火あぶりになっちゃう?!)』

『まあ、落ち着き給え。そうそう簡単に火あぶりになぞならん』

『(でも)』

『安心しろ』

『(え?)』

『この程度の鉄格子なんて紙も同然だ。ヤーナムでもないのに町中でキャンプファイヤーは御免被る!!』

『(あ、『千景』!!)』

『よし、ずらかるぞヤチヨ!!』

 

そうして始まったフランスでの逃避行は大変だったけど、今ではいい思い出だ。

逃避行の最中は狩人を独占できたからむしろプラスだったかも。

 

言ってくれればヤチヨが全部お世話してあげるのに。

 

「どうした?」

 

「ん〜思いっ切りぎゅってして」

 

唐突にそう言うと私を優しくでも不安にならない程度に強く抱き締めてくれる狩人が大好きだ。

 

寝てる時も起きてる時もずっと側に居て欲しい。

私以外の人と会わないで欲しい。

 

狩人は何時も私の我儘を叶えてくれる。

今だって、昔だってそう。

あの逃避行だって狩人が持ってた金貨でツクヨミの元手にする為に将来価値の上がるものを買い込んでたら起きちゃった様なものだし。

 

「狩人」

 

「なんだ?」

 

「ん、呼んだだけだよ」

 

「・・・そうか」

 

――ああ、此処で彼に言えたなら良かったのに。

 

怖い行かないでって、不安だからずっと側に居てって。

でも、ヤチヨは弱くなっちゃったから。

無いとわかっていても『もし』を考えちゃう。

だから彼が認識可能な範囲にいないと不安になってしまう。

 

「・・・ヤチヨ、今日の予定はあるか?」

 

「えっと、無いけど。どうしたの?」

 

「じゃあ、今日はこのまま此処(『狩人の夢』)でゆっくりしようか」

 

「え?いいの?今日はお仕事があった筈じゃ」

 

「良い。俺が居なくても回るようにしてある。お前の方が大事だ」

 

狩人は私の事を横抱き似するように膝の上に乗せて、私の頭を優しく撫で始めた。

 

「不安なんだろ?」

 

「・・・うん」

 

つい、口角が上がってしまう。

 

「だから偶にはこういう日があっても良いだろ?」

 

そう優しく言う狩人に一も二もなく抱き着く。

月の香りが私を包む。

 

「・・・狩人、責任とって」

 

「それ何回目だ?」

 

「712回目」

 

「じゃあ答えは聞かなくてもわかってるだろ?」

 

「狩人の口から聞きたいの。変わるかもしれないし」

 

「変わらねえよ?!」

 

じーっと彼の顔を見る。

彼は少し恥ずかしそうに、でもちゃんと私の事をまっすぐ見つめ直して言ってくれるの。

 

「責任ぐらいいくらでも取る」

 

「えへへ・・・狩人、大好きだよ!!」

 

 

 

 

 




ヤッチョ:嫉妬深く、独占欲が強い。幾ら治るとは言え狩人が傷付くのは嫌。でも狩人が自分の為に傷付いてたりすると気分が高揚しちゃう(重症)。
狩人:本名守月狩人(もりつき かりひと)。そのままだなとか言いながらヤチヨがくれたものなのでかなり気に入っている。資産家で古物商。

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