8000年と月の香り   作:文才の無い本の虫

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彩葉の子育てって結構限界ギリだよねーって話


『いろは』の受難

 

 

 

 

 

――なし崩しに赤ちゃんの世話をする事になった彩葉。

――そんな彼女の・・・三連休初日の朝のお話。

 

「あうー?」

 

「狩人さん、本っ当にすみません・・・」

 

赤ちゃんを抱えながら目の前の特徴的な帽子(マスク無しの『狩人の帽子』)を被った古風な紳士に頭を下げる。

その紳士は軽く頷きながら言う。

 

「良いとも。貴公が気にすることではない。従業員の福利厚生は社長の役目だ。存分に甘受し給え」

 

「でも、わざわざこんな朝っぱらに来てもらって」

 

「これから三連休だろう?私以外の社員や従業員には暇を出していてね。出勤日なのに暇をしていたのだよ。そこに貴公の電話を受け取った訳だ」

 

普通は与太話として笑い飛ばす所をこの人はベビー用品をサンタクロースの様に背負って運んで来てくれたのだ。

知ってたけど太っ腹過ぎない?

 

「貴公、働いているとはいえまだ子供なのだ。一人で抱え込むのは程々にしておき給え。報連相は仕事人としての基本でもある。自身の不調や必要な事はしっかり言うべきだ。さもないと前の様に会社の前で倒れる羽目になってしまうぞ」

 

「・・・・・・ハイ、ハンセイシテマス」

 

「よろしい。まあ、パニックになってたとはいえちゃんと電話を掛けてきたのは小さいが確かな成長だ。誇り給えよ、酒寄彩葉」

 

ぽんぽん、と頭を撫でられる。

ここ数年で慣れてしまった手袋に包まれた温かい感覚。

少し、お父さんを思い出して・・・その優しい手つきが私は嫌いではなかった。

 

「これ以上の手助けは貴公が気に病むだろう。何かあれば連絡し給え。ではな。さらばーい」

 

「あっ、はい。ありがとうございました!」

 

ひらひらと手を振りながら社長は帰っていった。

・・・めっちゃ似合ってないのに毎回「さらばーい」っていうのヤチヨ好き過ぎでしょ。

まあ、好きだからヤチヨのスポンサーをしてるんだろうけど。

なんで古物商なのにヤチヨのスポンサーをしてるのか理由を聞いたら「一目惚れだ。話してみると更に惚れた。惚れた女性からおねだりをされたからスポンサーになった」とか言ってたっけ。

世界では5本指とかに数えられるレベルの大富豪を誑し込むとかヤチヨが魔性の女過ぎる。

まあ私もヤチヨの推し活に生活費と貯蓄に回す分を除いた給料の大半を注ぎ込んでるから人の事を言えないんだけども。

 

「ふえ」

 

「あっ」

 

「ふええええええん!!」

 

――一段落とは言え、彩葉の受難はまだ始まったばかりなのでした。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「・・・ふむ、これで一先ずは大丈夫だろう」

 

『ありがとうね、狩人』

 

「この程度端金だ。酒寄彩葉のお陰でな」

 

『あー・・・ヤッチョも流石に彩葉が此処までチートキャラだとは思わなかったんだよね』

 

スマコンをARモードで起動し、自身が切り盛りする『守月グループ』の業績を表示する。

うーん右上に向かって真っ直ぐ伸びてますね。

いつの間にか俺の銀行口座の桁も増えまくってるし。

 

「『守月グループ』の業績は右肩上がり。さらにはその影響で経済が活性化し、更に業績が上がってく・・・可笑しいな。ここ数年で返ってくるまで20年を想定していた投資分が全部返ってきたんだが?」

 

『あははは彩葉ヤバすぎ』

 

「引きつってるぞ」

 

『狩人もね』

 

『「ははははは」』

 

『「・・・」』

 

今考えると『俺の手足になれるステータスが高い人間』って『上位者と同等かそれ以上の処理能力を持つ人間』って事だよな。

・・・酒寄彩葉って人間にカテゴライズして良いのだろうか。

 

「何か普通に酒寄彩葉だけで大抵の問題はどうにかなったんじゃないか?」

 

『否定出来ない・・・』

 

「酒寄彩葉、貴公は何を持ち合わせないのだ・・・いやマジで」

 

『えっと・・・友達・・・は居るし。お金は稼ごうと思えば幾らでも稼げるし。磨かなくても光る最高峰レベルのルックスにカリスマもあって人たらしで運命力も十分。人間としての性能はブッチギリで最強だしなぁ・・・持ち合わせてないのは家庭環境ぐらい?でもお父さんが死んじゃったのが原因なだけでそこまでは家庭環境もかなり良かったみたいだね』

 

「うーむ。もしかして酒寄彩葉の父親をどうにかしていれば全て丸くハッピーエンドになったのでは?」

 

『・・・あり?私達ってガバガバチャート走ってた?』

 

俺は制限を少し緩めて世界を()()

無数の分岐、無数の運命。

その中から見知った人物(酒寄彩葉)の眩いほどに大きな運命の奔流を起点に目当ての人物の運命を遡って探していく。

見つけた・・・が、これは。

 

「いや、成程な。今見たが()()()()()()()()()()()()()()()()()。変えようが無いから考えて無駄なことだったみたいだな」

 

『あちゃー。もう遅いとらたぬだったかぁ』

 

「仕方無いか。どうやら過去のお前の言った通りだ」

 

『『ハッピーエンドまで彩葉を連れてく、一緒に!』だね』

 

「ああ」

 

何千年も前に星空の下で何度も聞いたら彼女の言葉。

輝かしくも短く、儚い物語。

 

――俺はそんな彼女達の姿に憧れた。

 

だから、『いろは』と『かぐや』を導き。

そして『ヤチヨ』を連れて行こう。

ハッピーエンドのその先へ。

俺なら出来るはずだ。

いや、やってみせる。

 

「ヤチヨ――覚悟は良いか?俺は出来てる」

 

『ぶふっ!!此処でジョジョ?!いやまあ・・・うん。そうだね。出来てるよ覚悟ぐらい。ずっとずっと前からね』

 

「ふ。そうだな。いざ、征こうか。俺のお姫様」

 

『うん!ちゃんとエスコートしてね?私の王子様』

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

『あ、全部終わったらちゃんと結婚してね』

 

「それは勿論構わない、というか歓迎だが・・・準備もあるし手続きとかは全部終わったらな??頼むから知らんうちに役所に届け出たりするなよ??」

 

『うん♪』

 

 

 




狩人:実は大富豪。実は彩葉を『いろは』と知らず優秀だからと秘書としてスカウトした。上手く行きそうな案件を適当に投げておくと案件が大成功するので『守月グループ』の業績が右肩上がり。将来を誓い合った婚約者が居るらしいと社内で噂されている(一体何処の自称AIライバーが流した噂だろうか)。
ヤッチョ:狩人をヒモにしたかったのに最初の方は自分が養われてて悶々としていた(数千年前の話)。外堀を埋め終わって内堀も埋め終わっているので天守閣を造ってる位の勢い。
彩葉:人間レベル99の超人女子高生。実は狩人のせいで仕事とかの“普通”の基準がバグり散らかしてる。実はもう既に引っ越しが可能な程度には貯蓄がある。『約束されし超人(笑)(ウルトラスーパーウーマン)』。
『かぐや』:ばぶーきゃきゃっ。2日後位には狩人の後ろをカルガモのヒナの様について回る様になるかも。

『守月グループ』:古物商で大富豪の守月狩人が立ち上げた総合商社を中核とするグループ。元手は狩人が出しているので実質守月財閥である。『仮想空間ツクヨミ』と『月見ヤチヨ』のスポンサーでも知られている。「スプーンから宇宙船まで揃いそう」だとか。最近業績が右肩上がり。

※狩人は上位者の視座で『自分の手足になれるステータスが高い人間』の条件で探していたら偶然上京したばかりの人間レベル99の女子高生を見つけた。当時は内心で「(あれ?この女子高生の処理能力上位者の俺より高くね?)」とかドン引きしていた模様。
※狩人はヤチヨと過ごすにあたって上位者としての能力の大部分に制限を掛けている。
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