仮面ライダーゼッツ ポスト・アポカリプス   作:八七三

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Counter the assassination.
暗殺に対抗せよ。


Case1 失う

 夢の狭間、漆黒を纏う彷徨い人は佇み、もう一人の己――ゼッツを待ち続けていた。しかしその静寂は突如として破られる。何者かの凶刃が、ゼッツダークネスナイトメアの肉体を無慈悲に貫いた。

 

「お前は何者だ⋯⋯」

「教える必要のないことです。貴方の力は私が貰うので」

 

 幻影のごとき胡蝶の羽ばたきを見届け、ようやく本物のゼッツ――莫がその地へと降り立つ。だが、目の前の光景に莫は激しい困惑を隠せない。

 

「⋯⋯誰だ」

「私達はハンドレッド、この世界を侵略する組織⋯⋯が適切でしょうか?」

 

 ただならぬ気配を察し、莫は鋭く身構えた。

 

「いい表情をしますね。それでは、始めましょうか」

 

 互いの意思が共鳴するようにカプセムが嵌め込まれ、禍々しい黒い霧が両者の全身を包み込んでいく。

 

『変身』

 

 刹那、轟音とともに拳と拳が激突した。炸裂するインパクトの衝撃と、渦巻くダークネスの威力は完全に互角。一歩も引かぬ緊迫した攻防。

 

「俺は、お前を⋯…超える!!」

 

 莫は覚悟を決め、トリガムを押し込む。渾身の必殺技を繰り出すが、一回、二回、三回――放たれる一撃のすべてが、鏡合わせのように相殺されていく。

 

「悪夢は終わ――」

「⋯⋯ラーニング完了」

 

 不気味な声とともに、相手はダークネスカプセムを排出し、 新たなプラズマカプセムを装填。漆黒のゼッツが、狂暴な雷の力を纏う。

 

「負けてたまるか――!」

 

 敵のゼッツダークネスが、戦いの中で更なる進化を遂げている。莫はそれを本能で察知した。

 カタストロムを使ってしまえば、相手はそれに見合った進化をするということを。

 これを切り抜けるには、控えめな戦力で最大の威力を叩き込むしかない。

 肉体を蝕む激痛に耐えながら、莫は希望をかけてトリガムを四回、強く押し込んだ。

 

『インパクト!オーバーバニッシュ!』

『ゼ・ゼ・ゼ・ゼッツ!』

 

 しかし、進化した敵はその渾身の必殺技を、圧倒的な速度をもって軽々と回避。莫が反動で身を硬くしたその一瞬の隙を突かれ、敵の手中に凄まじいエネルギーが凝縮されていく。

 

『ボルテージ1!2!3!フルマックス!』

『プ!ラ!ズ!マ!サ・ン・ダー!!!』

 

 放たれた雷烈の矢が、容赦なく莫のベルトを撃ち抜いた。強制的に変身を解除され、地面へと叩きつけられる莫。朦朧とする意識の中、手を伸ばした先で彼が目にしたのは、無残に粉砕されたベルトの姿だった。

 矢の破壊力によるものか、あるいは限界を超えた必殺技の負荷にベルトが耐えきれなかったのか。今となっては、それを確かめる術はどこにもない。

 莫の意識は、深い闇の底へと落ちていく。

 

「ダメダメちゃんだな」

 

 冷ややかな嘲笑とともに、戦いの一部終始を見届けていたジークが姿を現す。一方で、ゼッツダークネスも変身を解除した。光の中から現れたその正体は、底知れぬ雰囲気を纏った謎の少女。

 敗北した莫に追い打ちをかけるように、虚空から重々しい何者かの声が響き渡る。

 

「ドゥームズクロックが起動する時間だ。もういい、下がれ。」

「了解です」

 

 少女は一言だけ応じると、迷うことなくその場から撤退。残されたジークは、下された指示とあっけない結末に不満げな表情を浮かべ、吐き捨てるようにその場を後にした。

 

「お前は⋯⋯もう、ゼッツにはなれない」

 

 呪縛のような冷たい言葉を残して。それを合図に、夢の世界は音を立てて崩れていく。

 

「起きて⋯⋯!!お願い⋯⋯!!」

 

 意識が戻らぬ莫の身体を、ねむは必死になって揺さぶり続ける。しかし、自身の存在も薄れていくことに気づいた。

 

「ゼッツ、ねむ⋯⋯!!」

 

 次元の裂け目から突如として扉が現れ、駆けつけたノクスがすかさず莫のバリアカプセムを起動した。展開された強固な障壁が周囲を覆い、迫り来る世界の崩壊を辛うじて食い止める。

 

「急げ!!」

 

 ねむは立ち止まる。

 

「行って……私はもう持たないから」

 

 ノクスは意識のない莫を素早く背負い、振り返らずに進む。崩れゆく世界から間一髪で脱出。

 たどり着いた先は、見慣れたはずのゼッツルーム。しかしそこには、その場に似つかわしくない一人の少女が待ち構えていた。

 

「連れてきたか。随分と無理をしたみたいだな」

 

 少女は淡々とリカバリーを取り出し、莫の治療を開始する。瞬く間にエネルギーを吸い上げられたカプセムは色を失い、機能を停止した。

 

「傷は治した。あとは、目覚めるのを待つだけだ」

 

 的確な処置を受けながらも、ノクスは目の前の少女への警戒を解こうとはしない。

 

「お前は何者なんだ⋯⋯」

「そういえば、名乗るのを忘れていた。極秘防衛機関CODE所属、コード・ソムニア。君と同じエージェント」

 

 上座から彼らを見下ろす少女の唇に、何かを隠し持つような、深い意味を孕んだ笑みが浮かんだ。

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