〈個性〉を奪い、ストックし、与える能力の転生者:ヴィラン   作:アマテス豆

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ユニが初めて能力を使った相手…じいちゃん。
彼は、何者なのか…

ていう、前置きをしてをこう。
今回はユニのじいちゃん回!この物語における重要人物なので…お見逃しなく。

てことで本編へどうぞ!


第十一話 ユニとじいちゃん

バーにまたまた義蘭さんがやって来た。

 

「ユニ。例の『あれ』、用意してやったよ」

 

義蘭さんがカウンター越しに、俺の興味をそそるセリフをニヤリと呟く。

 

その言葉に、俺は思わず調理の手を止めて振り返った。

 

「えっ!? マジですか義蘭さん!! よっしゃぁあああ――!」

 

俺は随分前から彼に頼み込んでいた「あれ」が、ようやく完成したのだと知って飛び上がって喜んだ。

 

「……『あれ』ってなんだ?」

 

当然のように、ソファに座っていたスピナーが頭の上に疑問符を浮かべる。

 

無理もない、ここまで「あれ」としか言っていないのだから。

 

そう、俺が裏社会の仲介人に大金を叩いてまで作ってもらたもの。

 

それは……。

 

「ビザだよ! 飛行機に乗って海外へ行くため! 偽造のやつだけど、これでやっとあの場所に行ける!」

 

「どこに行くんだ?」

 

死柄木くん……よくぞ聞いてくれた! 俺がこの世界で行きたい場所、堂々の第2位! その聖地の名は!

 

「『I・アイランド』だよ! 昔は毎年欠かさず行ってたんだけど、そこの誰かさんのせいでヴィラン扱いになって、去年は行けてなかったんだよね! だから今年こそは絶対に行きたいと思ってたんだよね! おじいちゃんから、プレオープンチケットを譲ってもらう約束をしてるし!」

 

俺は鼻息を荒くして、興奮気味に一気に説明しきった。ちなにトガヒミコに目を向けてたんだけど…まるで何のことか分からないって顔してた。ムカつく…

 

「I・アイランドって、あの世界中の超一流科学者たちが集まっている、あの巨大移動都市の島か……? しかもプレオープンチケットって、お前のおじいちゃん、一体何者なんだ……?」

 

スピナーが引き気味に尋ねてくる。

何者かと言われてもね…

 

「世界で名を馳せてるレベルの超大物投資家だから…I・アイランドの株も大量に持ってるんだよ」

 

……まぁ、そんなじいちゃんの【個性】を、俺は三年前、奪い取って勝手にショックを受けて、ヒーロー目指すのやめちゃにしちゃった訳だけど。今思えば辞めなくても良かったな…今多分そこら辺のヒーローよりは強いし。

まあ、それはそれとしてだ。

 

「てなわけで死柄木さん! 少しの間、有給をもらいます! まぁ、最悪無給でも全然良いんですけどね!」

 

「……知らん。好きにしろ。ウチは個人の自由を尊重する方針だ」

 

よっしゃー! ラスボスから正式に長期休暇の許可をもらったぞ!

 

「ユニ。I・アイランドの警備体制は、あの最高セキュリティーの『タルタロス』並みだと言われている。偽造ビザが精巧とはいえ、ヘマして捕まるなよ」

 

義蘭さんがわざわざ忠告して心配してくれるなんて……全俺が感激。

 

「分かってますって。あそこのセキュリティの警備体制にめちゃくちゃ詳しい『友人』も現地にいるので。……あ、ヴィラン側の人間ではないですけどね。だから大丈夫ですよ!」

 

俺は偽造ビザをカバンに大切にしまい込み、出発の準備を始める。

 

(じいちゃんに最近の近況報告、全くしてないな……。チケットを貰うついでに、実家へ顔を出していくか。じいちゃんには、この世界へ来てからクソお世話になってるしな……)

 

そのまま俺は、じいちゃんが待つ、実家へと向かうのだった。

 

ーーーーーーーーーー

 

とある町の離れに佇む、巨大な豪邸の一室。

 

ピンポーン、ピンポーン。

 

静寂に包まれた屋敷に、小気味よいインターホンの音が鳴り響いた。

 

「ゴホ、ゴホ……。……来たか」

 

ベッドで眠っていた老人が激しく咳き込みながら、最先端の電動ベッドを操作して背もたれを起こす。

 

「来てしまったか……。本当に良いんですか? あなたの孫さん、今や指名手配中のヴィランですよ?」

 

ベッドのすぐ近くに控えていた、執事のヒイロが、あえて砕けた口調で老人に問いかける。

 

「良いんじゃよ。ワシももう寿命が短い……。ワシはただ、あの可愛い孫が愛おしいんじゃ。だからもっと会いたいんじゃよ」

 

おじいちゃんは愛おしそうに目を細め、電動ベッドからゆっくりと足を下ろしながら答えた。

 

「いえ、そんな世間体のことを言っているのではないんです。……本当に、あなたの『全て』を孫さんに差し上げてしまって、後悔はありませんね?」

 

ヒイロは急に声色を変え、冷徹なほどに真剣な眼差しでおじいちゃんに迫る。

 

「あぁ、やる。ワシの全てを、あの者に遺す。……ワシは、ずっと決めておったんじゃよ。あやつがワシに『あの能力』を使ったあの日から、ワシの運命が変わった。そして、気づいてしまったんじゃ。だからこそ、ワシは自分の全てを孫に捧げるのじゃよ」

 

それは、すでに一切の迷いを断ち切った、確固たる覚悟の面持ちだった。

 

「……分かりました。聞かなくとも、言われた通りの準備はすべて済ませてあります。ただ、最後にあなたの本心が聞きたかったんです」

 

おじいちゃんの眼光に宿る本気を感じ取り、ヒイロはホッと胸を撫で下ろすように息を吐いた。

 

「ワシの孫はな、ヒイロ。……この世界を、根底から変える。あやつには、その素質がある。……いや、それこそがあやつの背負う『運命』なのじゃよ」

 

おじいちゃんは確信に満ちた笑みを浮かべ、ゆっくりと部屋の扉へと向かう。

 

そしてその扉の先には、ひさしぶりに実家の敷居を跨ごうとしている孫――ユニが立っていた。




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