〈個性〉を奪い、ストックし、与える能力の転生者:ヴィラン   作:アマテス豆

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一度だけ宣伝させて、イナイレ×ヒロアカの二次創作を投稿したので良ければ!
https://syosetu.org/novel/413100/

でも、こちら優先です!

てことで、本編へどうぞ


第十二話 受け継ぐ

「あれ? 今、居ないのかな? ちょっと早すぎた?」

 

俺はとある豪邸の重厚な玄関前に立っていた。

そう、じいちゃんの実家だ。

チャイムを押して少し待つと、ガチャリと静かに玄関のドアが開いた。

 

「よう来たな、孫よ!」

「お久しぶりです、友虹(ゆに)様」

「久しぶり! おじいちゃん!」

「ひいちゃんも久しぶり!」

 

扉の奥から現れたのは、満面の笑みを浮かべたじいちゃんと、その車椅子を静かに押している美しきベテラン執事――ひいちゃんことヒイロだった。

車椅子のじいちゃんに視線を合わせつつ、隣のヒイロにも挨拶を交わす。 ひいちゃんはじいちゃんに子供の頃から支えていると言っていたから、もうかれこれ四十年間も我が家に尽くしてくれている超ベテランの執事さんだ。

ちなみに、本人の持つ“個性”については未だに頑なに教えてくれないので俺は知らない。

 

「ここに来るまでに、警察やヒーローたちに追われんかったか?」

 

じいちゃんは俺が指名手配ヴィランであることを全て知っている。それなのに、警察に通報するどころかこうして裏で手助けをしてくれているのだ。本当に感謝の念しか湧いてこない。

 

「大丈夫、大丈夫! 今回はめちゃくちゃすんなり来られたから!」

 

笑ってそう答える。……いや、本当に良かった。前回来た時は散々だったのだ。よりによってプロヒーローのシシドに目をつけられて追跡され、あの時は人生で一番危なかったかもしれない。

あぁ、思い出しただけであのライオンヒーローの恐ろしさが…近くで大事故がなかった…よし、考えるのはやめよう。

 

今回は何事もなく無事に到着できたのだ、オールオッケーである。

いや~、実家が現在の活動拠点から比較的近い場所にあって本当に助かった。

 

「そうか、それは良かった」

 

じいちゃんも心底安堵したように表情を緩めてくれた。

もし警察に追われたままここになだれ込んでいたら、さすがにじいちゃんの身にも危険が及んでいただろうしな。

 

「で、最近はどうなんじゃ? 色々とワシに聴かせておくれ」

 

じいちゃんの優しい言葉に、俺の口が乗る。

じゃあ、ちょっくら濃厚すぎる近況報告と行きますか!

 

「そうそう、聞いてよじいちゃん! 俺、最近ちょっと裏社会で有名になりつつある『ヴィラン連合』って組織で、バイトとして働くことになったんだよ~! ……それとね……」

 

それから、体感でみっちり一時間ほど。お茶子ちゃんの【個性】をうっかり奪って戻したことや、トガに会うたびデザート感覚で血を吸われていること、新しく入ってきたおっさんヴィランの狂気を抜いて丸くしたことなど、これまでの濃厚すぎる二ヶ月間の出来事を一気に話し倒した。

 

「そうかそうか……。お前さんはお前さんなりに、必死に頑張っておるんじゃな」

 

じいちゃんは一切の否定をせず、ただにっこりと温かい微笑みを浮かべて俺の話を全て聞いてくれた。

 

「あ、そう言えば。父さんと母さんの調子はどう?」

 

ふと頭に浮かんだ、一番気がかりだったことを尋ねてみる。

 

「普通じゃよ。お前さんがヴィランとして追われることになった不可解な経緯をワシからしっかり説明してからはな、二人ともお前さんの帰りを首を長くして待っておるぞ」

「そっか……。よかった。もし俺のせいで寝込んだり病んでたりしたら、本気で責任を感じちゃうところだったから……」

 

胸の支えが取れて、ほっと息を吐く。

この世界の俺の両親は、息子が急にヴィランとして指名手配されたと聞いた時、パニックで暴走しかけった聞いていたから……。

 

無事平穏に過ごしてくれているようで良かった。

 

「そんなに家族のことが心配なら、今すぐにでもお家に帰れば良いのに」

 

ヒイロが横から、至極平然としたトーンで正論を投げかけてくる。 

 

「いや、それはそうなんだけどね……?」

 

俺だって戻れるものなら、今すぐにでも一般人の生活に戻りたいよ!

 

「ヒイロ、無理を言うでない。ユニの件は冤罪とはいえ、それを世間に公表して立証するための決定的な証拠が、まだこちら側に揃っとらんからのぉ。それにここほどセキュリティーがたかくないのじゃ」

 

じいちゃんがフォローしてくれる。そう、本当にその通りなのだ。なんせトガのやつが俺の姿に変身して完璧な証拠(凶行)を残し歩いているせいで、こちらの弁明が一切通らない状況なのだから。……許すまじ、トガ。

 

「うん。それに……本来思っていたのとは全然違う形になっちゃったけど、俺、この目で間近で見届けたいものがあるんだよね」

 

物語の知識を持っているからこそ、この世界で起こる本筋の歴史を、特等席で直接見届けたい。本当は雄英高校に入学して内側から体験したかったが、この最弱の能力と現在の指名手配という詰み状況のせいで、それはもう不可能なのだから。

 

「お前さんが何を見たいのか、ワシは野暮な詮索はせん。……ただ、自分の身の安全にだけは、くれぐれも気をつけるのじゃよ」

 

じいちゃんはどこか意味深な響きを乗せて、俺の身を本気で心配してくれた。やっぱり、じいちゃんには俺の考えていることが全部お見通しなんだな。

 

「うん、気をつけるよ。あと一年……いや、それくらい経ったら、ちゃんと全部終わらせて帰ってくるつもりだしね」

 

ヒロアカの物語の時系列的に、あと一年もすれば全ての決着がつくだろう。自分の冤罪を完璧に証明するまでは、絶対にヒーローたちに捕まってたまるか。

 

「そうか……。なら、お前さんのやりたいようにやりなさい。息子と義娘にも、ワシから上手く言っておく」

 

じいちゃんは優しく力強く、俺の背中を押してくれた。 

 

「ありがとう、じいちゃん!」

 

「そう言えばユニ。お前さんに、一つプレゼントがあるんじゃよ」

 

じいちゃんが、いたずらっぽく含みを持たせた笑みを浮かべる。

 

「え!? なになに!?」

 

突然のプレゼント発言に、俺のテンポは一気に跳ね上がった。

 

一体なんだろう? まさか、俺専用の特別製ヒーロースーツ……いや、今は指名手配中だからヴィランスーツか? 今まで支給されたペラペラの私服だけでサバイバル生活を強行してきたけれど、うちのじいちゃんは大富豪だ。

裏のルートを使って最高性能のスーツを用意することなんて朝飯前のはず。

 

……その説がめちゃくちゃ濃厚じゃないか!? というか普通に欲しい!

 

俺が期待に胸を膨らませて身を乗り出すと、じいちゃんは厳かに口を開いた。

 

「あぁ、それはな……」

 

――ガタタッ、と。

 

車椅子の上から、おじいちゃんは俺の目を真っ直ぐに見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワシの資産、全てじゃ!」

 

「え? …………え?」

 

俺の思考は完全に停止寸前になった。

脳ミソの処理が追いつかない。

 

こんな、天地がひっくり返るような感覚に陥ったのは、女神様と対面した時以来だ……。

 

「ねえ、ひいちゃん……。じいちゃん、ついに本格的にボケちゃった?」

 

俺は、あまりのとんでもない内容を受け止めきれず、じいちゃんがボケたことにして現実逃避を試み、ヒイロに縋るように聞いた。

 

「そんな症状は無いね」

 

ヒイロは真顔で、一切の迷いなく答えた。

……マジのようだ、あの顔。間違いなくガチだ!

 

それなら、もう一つの可能性に賭けるしかない。

 

「じゃあさ、今なんて言ってた? 俺の耳には『資産をすべて譲る』って聞こえたんだけど」

 

これならどうだ! 聞き間違いという可能性が、まだコンマ一パーセントくらいはあるはず!

 

「あぁ。そう、仰ってるよ」

 

うん。ヒイロがそこまで断言するなら、絶対に間違いねぇ……!

 

「う~~ん……え~~!!?」

 

え? 何、本当に? 聞き間違いの可能性すら絶たれた。本当に? ガチなの……!?

 

「俺、今や全国に顔が知れ渡ってる指名手配ヴィランだよ!? 犯罪者だよ!? 資産とかまともに継げるわけないじゃん! じいちゃん、本当にボケたんじゃないの!?」

 

俺は逃亡犯として至極真っ当な正論を、必死になって大声でぶつけた。

 

「ワシはボケとらん。大マジで言っておるんじゃよ、ユニ」

 

おじいちゃんは濁りのない、透き通った真っ直ぐな目線で俺を射抜いてくる。じいちゃん……。

 

「……ボケてないのは分かったよ。だけどさ……それはそれで大問題じゃない?」

「良いから継げ!」

 

いや、そんな投げやりな……!

 

「なんでだよ! 継がせるならさ、父さんとか叔父さんじゃダメなの? もう一度言うけど、俺はヴィランだよ? なんで俺なのさ?」

「ふっ。それを、ワシに聞くんじゃな?」

 

おじいちゃんは、不敵で、かつ全てを見透かしたような完璧なキメ顔で言ってきた。

 

「……っ、それを言われたら、もう何も断れないじゃん。卑怯だよ、じいちゃん」

 

さっきまでの威勢が一瞬で消え去る。

……そう、言い忘れていたが、おじいちゃんの“個性”は『予知夢』。

今までに関わってきた人間の未来を、ランダムで夢として見ることができる能力だ。

本編に出てくるサー・ナイトアイの『予知』を、一部強化して一部劣化させたような性質を持っている。

 

じいちゃんはこの“個性”を使って、株の世界で『未来の儲かるルート』を実質的に予知し、莫大な富を築き上げてきた。

まさに「未来が見えるんだったらこれやるよね」を地で行く、“個性”の体現者なのだ。俺自身もヒロアカの原作ストーリーを知っているから大体の未来は分かるのだが、おじいちゃんは、『俺が介入したことで変わってしまった、これからの未来』を世界で唯一知っている、最も重要な人物なのだ。

 

「断るでない。これは今後、お前にとって必ず必要となるものじゃ。お前の『やりたい事』を成し遂げるためにはな」

 

あって困ることなんて無いけれど、俺のやりたい事って……。本筋(ヒロアカの物語)を特等席で体験することだよ? まあ、おじいちゃんのことだ、俺が未来で本当にやりたいと思うことを予知したのかもしれない。

 

「ワシの決定を断る理由などお前にはない。好きなように使え。そのようにもう裏で手配は済ませておる」

 

そう言って、おじいちゃんがパン、パン、パンと三回手を叩いた。

 

すると、それを見計らったようにヒイロが、ずっしりと重そうなスーツケースを運んできた。

 

「これを」

 

パチン、とヒイロがスーツケースを開けると、そこには一つの通帳と、三つの特別なカードが収められていた。

 

「……ひいちゃんもグルだったのね……」

 

もういいや、諦めよう……。抵抗するだけ無駄だ。

 

「……分かったよ! 継げばいいんだろ、継げば!」

 

俺は半ば投げやりに、そのスーツケースを受け取った。

 

「良かったのじゃ。これでワシも、心残りなく残りの人生を謳歌できるわい」

 

おじいちゃんは、憑き物が落ちたような心底安堵した顔で笑う。

 

「――ただし! 一つだけ条件がある!」

 

うん、やっぱり、こんな莫大な資産をただ無条件で引き継ぐのは、俺のプライドが許さない。

 

「なんじゃ?」

「受け取る代わりにさ、じいちゃんが今まで頑なに教えてくれない、俺の『未来』について、教えてよ」




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