〈個性〉を奪い、ストックし、与える能力の転生者:ヴィラン 作:アマテス豆
本当へどうぞ。
試験が終わった後の休み。
一組A組の面々は、林間合宿の準備のためにショッピングモールへ来ていた。
ちなみに、緑谷と麗日がギクシャクしている理由を知る者は、あの場にいた数名のみ。
あの場に居たのが八百屋や飯田、蛙吹など言いふらしそうな人がいなかったのが居なかったのが救いだっただろう。
だからクラスの皆んなはなぜギクシャクしているのか分からない。
ただ、八百万や飯田は、そんな二人の「もどかしい空気」に気を使い、率先して二人きりになるようクラスメイトを誘導していた。余計なお世話である。
そして、案の定、緑谷と麗日が取り残されてしまった。
「あ……えっと……。麗日さん、どこ、行く?」
緑谷は勇気を振り絞り、さりげなくエスコートを提案する。
のだが、麗日の内心は限界だった。
今の彼女にとって、緑谷の直視は心臓に悪すぎるし、外側がバグるからだ。
「…………私は、下着を見に行きます」
「へっ!?」
と離れる口実を作り、ダダダダッ! と、まるでお尋ね者がハンターから逃げるような勢いで、麗日は駆け出した。
数分後、前を見てなかった麗日は、ある人物と正面衝突する。
「うおっ!? ……大丈夫ですか? 人が多いんだから、あんまり走ると危な……わっ」
「……あなたは。〈ユニークバンパイヤ〉」
目の前にいたのは、買い出し中のユニだった。
(やべー!?忘れてた、お茶子ちゃんもこのショッピングモールに来てるんだったわ…てか、なんでこんなピンポイントに出会うんだよ!)
「警察を呼ばないと」
麗日は、冷淡な動作でスマホを取り出す。
「ちょ待って待って! 一応、俺ヴィランだよ!? こんなところで暴れたらどうするの、被害大きいよ?!」
「……それは、そうですね」
麗日は納得したのか、ゆっくりとスマホを下げた。
「まあ、暴れないけどね。……せっかく会ったし、これ返すよ。『特性付与(ユニーク・ギフト)』」
ユニはその隙に、奪っていた【個性】を麗日流し込んだ。
「あれ……私、何しとっ…………」
ポーッ!! と音がしそうな勢いで、麗日の顔が沸騰したように赤く染まる。
外面を返されたことで、これまで「冷淡な仮面」の下に蓄積されていた羞恥心と動揺が一気に噴出したのだ。
今の彼女には、個性を奪われていた間の自分の「合理的すぎる行動」が、人生最大の黒歴史のように感じられていた。
(違う! 違う! あんな冷たいの私じゃない! デクくんが好きとか、そんなことあんな淡々と言うわけないやん! 全部、全部このヴィランの仕業や!)
「あの……大丈夫? どっかおかしくない?」
(あれ、間違えて別の人の個性を返しちゃったか?)
「……私に何したんや!!」
関西弁。間違いなく麗日本人のものだ。
「言わないとダメ?」
「言わんと、このままホンマに警察呼ぶ!」
麗日が強引にユニの腕を掴む。……あ、手が柔らかい。
「わ、分かったから! ただ買い物してただけなんだよ…話すから…」
ユニは観念して白状した。
原作キャラだからと嬉しさなどで気が緩んでいた。
「……君の【個性】……言葉遣いの特徴とか、個々の表情の作り方とか、人それぞれの特徴を奪う…“個性”なんだ。」
「……ちゃう! 心を操る個性やろ!?」
「違うって! 本当に! そんな便利な個性だったら、俺こんなに苦労して逃げ回ってないし!」
「じゃあなんや! 私は……デクくんのこと好きとちゃうのに! ただ尊敬してるだけやのに! あんなこと、あんな言い方で言ってしもうたんや!」
(あれ? ……なんか原作より、お茶子ちゃんの気持ちがダダ漏れになってないか? 俺、なんか余計なことした?)
「あんなこと、っていうのは分からないけど……そこまで必死に否定したがるってことは、それだけ意識してる……つまり、好きってことじゃないかな?」
(ここは恋路を応援しよう。当時、早く付き合っちゃえよって思ってたしな!)
「え……」
プシュー! 今度は炊飯器の炊き立てのような音が聞こえた気がした。
「本当に……本当に……そんなんちゃうし! 全部君のせいや!!」
麗日は顔を真っ赤にしたまま、脱兎のごとく元来た道を走り去っていった。
「……俺のせいにされた。まあ、いいかなんか帰ってくれたし…」
ユニは溜息をつき、周囲を警戒しながら人混みへと消えた。
指名手配犯として、これ以上の長居は命取りだ。
買うべきものは買った。
その後、ユニは複雑な心境のまま、ヴィラン連合の本拠地へと帰還した。
(……なんなん! なんなん! なんでヴィランにまであんなこと言われなあかんの!)
麗日は顔を真っ赤にしたまま、猛スピードで元来た道を走り戻っていた。
だが、彼女の足が止まった。
(あ、デクくん……。と、あのフードの人は誰?)
そこには、見知らぬ男に首を絞められ、苦悶の表情を浮かべる緑谷の姿があった。
「デクくん!? ……その人は、お友達?」
努めて明るく声をかけようとするが、尋常ではない空気に声が震える。
「麗日さん……っ! 来ちゃダメだ! 離れて!!」
緑谷は必死に声を絞り出し、近づこうとする麗日を制止した。
その瞳には、かつてないほどの恐怖と警告が宿っている。
「あ、わりぃわりぃ。連れがいたのか」
フードの男――死柄木弔は、拍子抜けしたような声を出すと、ゆっくりと緑谷の首から手を離した。
「ゴホッ、ゲホッ……!」
「じゃあな、緑谷出久。」
「待て……! 死柄木弔! 『オール・フォー・ワン』の目的は何だ……!!」
酸欠状態でも、緑谷は去り際の背中に問いかける。
「……さあな。それより気をつけておけよ?次にお前に会う時は本当に殺す時だろうからな。」
人混みの中でもはっきりと聞こえる、冷徹な殺意。
死柄木はそのまま、溶けるように雑踏の中へと姿を消した。
「大丈夫!? デクくん!」
麗日は慌てて駆け寄る。
「うん、大丈夫……。というより、麗日さん! 顔……元に戻ってる!!」
緑谷は、死柄木のことよりも、麗日が『いつもの麗日』に戻っていることに驚いた。
そして心底安心しする。
「うん、実はさっき〈ユニークバンパイヤ〉に会ったんよ。それで、なぜか元に戻してくれて……。でも、うちがテンパってしもうて。警察を呼ぶのも、引き止めることもできんかった……」
麗日は自分の不甲斐なさを嘆くように俯いた。
「それは僕も同じだよ……。一歩も動けなかった」
緑谷も悔しげに拳を握りしめる。
「……とにかく、すぐに警察に連絡しよう」
「そうやね」
その後、ショッピングモールは多数のヒーローと警察官によって封鎖され、徹底的な捜索が行われた。
しかし、人混みに消えた二人のヴィラン――死柄木弔とユニの足取りを掴むことはできなかった。
――後日、雄英高校。
クラスの面々は、何よりも「麗日が元に戻ったこと」を、喜び、騒ぎ立てていた。
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リメイク前の三話分が無事終了!
それでは、また次回!
文字数に関してのアンケート
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今のままぐらいが読みやすい。
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もうちょい増やした方が読みやすい。
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二話分の文字数のほうが読みやすい。