〈個性〉を奪い、ストックし、与える能力の転生者:ヴィラン   作:アマテス豆

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第九話 ユニの“個性”?

義蘭さんが帰った少し後、死柄木が、ふと思い出したように聞いてきた。

 

「そう言えばユニ。お前の“個性”、聞いてなかったな」

「え? 俺、言ってなかったっけ?」

 

(言った気が……全然しないな、そういえば)

 

「私も知らないです! 教えてくださいよ、ユニくん!」

 

隣からトガも距離を詰めてきて、続けて催促してくる。

さて、どう話したものか。

…よし、今日は皆んないることだし、ちょっとふざけてみるか。

 

「えっと、実は俺、無個性なんですよ〜。」

 

(ふっふっふ。さあ、みんなはどんな面白い反応をしてくれるかなー、と……)

 

「は?」「え?」「は?」「はえ?」「マジか! 嘘だろ~!」「本当に~!?」

 

…求めていたリアクションと違う。

コンプレスやマグネ、トゥワイスも含めて、全員から一斉に冷たい視線やら、本気の殺気やら、底知れない呆れやらが放たれていた。

 

(めちゃくちゃ怖いんですが!? やっぱりこの世界、無個性に対する風当たりが強すぎるよ……!)

 

「じょ、冗談ですよ書類上では、の話ですよ! そんなにガチで驚かなくてもいいじゃないですか~!」

 

俺は慌てて両手を振って弁解し、本題を切り出す。

 

「俺の“個性”は――個性を奪って、他人に与える力です」

 

(ちゃんと言うと見せかけて! 本家オール・フォー・ワンそっくりの、とんでもないチート能力に聞こえる魔法の言葉を放ってやるぜ!)

 

「は?」「え?」「は?」「はえ?」「マジでか! 嘘だろ!」「本当に~!?」

 

さっきとは比にならないレベルで、バーの空気が凍りついた。

 

突き刺さるような冷たい視線と、部屋中を充満するピリピリとした殺気がさっきの何倍も飛んでくる。

 

(あ、これ次ふざけたらガチでやばい奴だ。笑えない雰囲気になってる。リアルに消し炭にされるかも……)

 

「本当ですって! ほら、言葉で細かく説明して聞くより、実際に目で見てもらった方が早いと思いますよ」

 

(ここはちゃんと、そういう能力だってことを見せないと…殺される〜

 

「マグネさん、少し【個性】をお借りしますね? 『ユニーク・スティール」

 

俺の手元から放たれた赤黒い光に、マグネの体からでた白い光の粒が吸収された。

 

「あっ、ちょっとやめてよ……。……って、なんにこの感じ!」

 

光が収まると、そこにはただの強面な男性が立っていた。

最大の特徴だったふくよかな唇と、オネエらしい独特のガタイが、一瞬にしてマイルドな一般男性のものに書き換わっている。

 

「まず、これが【個性】を奪った状態です」

 

「は? なんでコイツのキャラが変になってるんだ? お前、“個性”を奪うんじゃなかったのかよ」

 

死柄木が、予想通りに完璧な疑問を口にしてくれた。

 

「だから、ちゃんと奪ったじゃないですか? “個性”じゃなくて、【個性】を!」

 

(あれ? みんなピンときてない? 自分の中では、ちょっとイントネーションを変えて発音してみたつもりなんだけどな)

 

「あぁ……だいたい分かった。……弱いな。」

 

荼毘だけは、俺の能力の構造を正確に理解してくれたようだった。

……だが一言多い!

 

というわけで、生意気な奴にはお仕置きを与えまーす!

 

「弱いとか言わないで… そんな荼毘さんには、これだ! 『ユニーク・スティール』…そして『存在付与(ユニーク・ギフト)』!」

 

荼毘から【個性】を奪い、それからとある【個性】を流し込む。

そう、さっきマグネから奪った【個性】だ。

 

「ちょっと、なにするのよぉ! やる気!? アタシにボコボコにやられたいの!?」

「は? 意味わからん。荼毘ってこんなキャラだったか……?」

「あぁ! 火傷痕がなくなってます……! 継ぎ接ぎだらけで格好よかったのにぃ!」

 

死柄木がドン引きし、トガが残念そうに声を上げる。

完成したのは、最大の特徴であった火傷痕が綺麗さっぱり消え失せ、唇が少しぽってりと太くなり、やたらとガタイが良くなった――全力のオネエ荼毘だ。

 

「まあ、こんな感じに、相手の身体的・言動的特徴……つまり【個性】を奪ったり与えたりすることができるんですよ。……っていうか、え? 【個性】を奪ったら、あの酷い火傷痕まで元に戻るの!? 俺も初めて知ったんだけど!? え、嘘!?」

「お前も知らないのかよ! いや、本当は知ってただろ!?」

 

トゥワイスが激しいノリツッコミを入れてくる。

 

「いや、マジの初耳です、これ……」

「……でもやっぱり、しょぼいなユニは」

「くっ……! 認めざるを得ない、俺は弱い!」

 

(なんかすごい新事実を発見した気がするけど、戦闘には全く意味がない! 回復技として使おうにも、相手の人間性を丸ごと奪っちゃうっていう致命的なデメリットがあるし、やっぱり戦闘力としては最弱だよ!)

 

「でもさぁ? そんな一風変わった“個性”だけで、今まで数々の警察やヒーローの手をすり抜けてやらかしてきたんだろ? 逆にスゲーんじゃない?」

 

「コンプレスさん……!」

 

俺は、この瞬間からコンプレスさんを終生慕っていくことを固く決意した。

 

「ねぇユニ? アタシを早く戻してくれないかしらぁ?」

 

「自分も、そろそろ元に戻してほしい。」

 

ネエ荼毘と、普通の男性になってしまったマグネから懇願される。

 

「うん、ごめんごめん、今戻すよ。『ユニーク・スティール』。そして『存在付与(ユニーク・ギフト)』!」

 

まずは荼毘からマグネの【個性】を奪い、マグネ本人へと突き返す。

 

「……戻ったわ。っていうか、さっきのアタシなんなの!? ちょー恥ずかしいんですけど!」 

 

マグネは本来のオネエキャラに戻った反動で、先ほどの「普通の男性」だった自分を思い出して盛大に悶絶していた。

 

「自分も、早く戻してください……」

 

「あ、荼毘くんが、また別の姿に……」

 

マグネの【個性】が抜けた荼毘は、火傷痕のない、息を呑むような「超絶イケメン」の素顔を晒していた。

 

「? その顔……どっかで……」

 

死柄木が記憶の糸を手繰るように、目を細める。

 

「は、はい次! 『存在付与(ユニーク・ギフト)』! ……はい、これで元通り!」

 

俺は慌てて、ストックに避けてあった荼毘本来の【個性】を彼の体に叩き込んだ。

 

(あ、危ねえええええ!! 荼毘の素性が秒でバレるところだった……! もう二度と、荼毘にこの能力を使うのはやめとこう)

 

「……気持ち悪い感覚だったな。ユニ、後で絶対に覚えとけよ?」

 

「……はい、本当にすみませんでした……」

 

その後、この日の集まりが解散した直後、俺はバーの裏手で荼毘からきっちりと、それはそれは恐ろしいお仕置き(物理)を喰らう羽目になったのだった。(全治5日)




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