【DB×HxH】サイヤ転生 〜バーダックの弟だが、飛ばされたHUNTER×HUNTERの世界で修業してフリーザたちをぶっ倒す〜 作:えーあいの下請け
エピソードオブシャロ2
「……おい、ミト。この床、一体あとどれだけ磨けば満足なんだよ」
オレは四つん這いになり、使い古された雑巾を片手に、オレ的に綺麗な床を睨みつけていた。( 前世でも今世でも掃除なんてしたことなかったオレが、まさか異世界で原始的な手拭きにこれほど時間を費やすことになるとは、誰が想像できただろうか。
「そこ! 角にまだ薄っすらホコリが残ってるわよ。修行修行なんて勇ましいこと言う前に、まずは生活の基本を身につけなさい。そんなんじゃ今日のごはん抜きにするわよ」
エプロンの紐をキリッと締め直しながら、ミトが背後から厳しい声を飛ばしてくる。
「チッ……わーったよ、やればいいんだろ」
「ち、なによ? 文句があるならハッキリ言いなさい」
ギロリ、とミトに睨みつけられる。
その視線の鋭さは、物理的な戦闘力こそゼロだが、オレの魂を直接射抜くような圧倒的な圧がある。 (……ひぇ。この「家庭内での絶対王政」っぷり、ギネのアネキなみにこえぇな……)
そもそも、サイヤ人の男なんてのは、戦い以外はほとんどからきしなのが普通なんだ。兄貴だって家事なんて指一本動かしてなかったし、ラディッツやカカロット(孫悟空)が生まれた時だって、オレと一緒に修行してたし。
戦いから帰ればアネキが用意した山盛りの肉を食らうだけ。オレだってその血を引いている。
そんな正当な(?)主張を喉の奥まで出しかけては飲み込み、オレは再び雑巾を動かした。
サイヤ人のパワーを無意識にでも出せば、古い床板なんて一瞬で砕け、家ごと粉砕しちまう。指先、手首、肩の力を極限まで抜き、スーッと滑らせて、汚れだけをドンと落とす。
しんどい。しかしこれはアリかもしれん。
確か、HUNTER×HUNTERの世界の連中は『瞑想』とかで『念』とやらを覚えるってシーンがあったような?
……まてよ。瞑想ってのは坊主もするし、修行僧とかいう連中も雑巾がけやら掃除をしまくるって前世の知識でどっかにあった気がする。なら、これもあながち間違いじゃねぇ修行の形……って、やっぱり柄じゃねぇわ!
そもそも「気」の制御だって独学だ。今までは感覚だけでなんとなく手からエネルギーを放出してたし、理屈じゃさっぱり分からん。
「よ、よし……これで文句ねぇだろ。終わったぞ」
「はい、合格。じゃあ、さっさと漁に行きなさいよ。あんたが居着いてからというもの、食費がとんでもないことになってるんだから」
「お、おう。わかってらぁ」
ミトの呆れ顔に背を向け、オレは逃げるように家を飛び出した。
ドボォォォンッ!!
垂直に海へ飛び込む。重たい水圧が身体を包み込むのが心地いい。 サイヤ人の肺活量なら、数十分程度の素潜りは余裕だ。深い海の底まで沈み、直感で獲物を探す。 (狙うなら、ミトを黙らせるくらいのデカいヤツだ……)
視界の端を、巨大な影が横切った。このあたりの主のような大魚だ。 スーッと間合いを詰め、ドン。
強化された筋肉が唸りを上げ、無防備な腹部へ正確に拳を叩き込んだ。衝撃波で周囲の水が激しく揺れ、泡が舞う。
よし、1匹目だ。
小一時間後。 オレは海岸の岩場に上がり、仕留めた魚を次々と浜へ放り投げていった。 海から上がると、岩陰でずっと釣りをしていたゴンと目が合った。
「シャロって、やっぱり尻尾があるんだ。……ねえ、もしかして魔獣なの?」
「おい、そこか? 尻尾よりも、生身で数十メートル潜ってこのサイズの獲物を引きずり上げた身体能力とか、もっと突っ込むとこあるだろ」
「あ、そういえば。で、魔獣なの?」
「……違う」
ミトの家? に居候することになって、この真っ直ぐな瞳を持つ少年・ゴンと、温和だが芯の強いギギばあ(ゴンの曾祖母)とは、それなりにうまく過ごせている……と思いたい。
現状、オレの力ではあの宇宙へは帰れない。 あの屈辱的な敗北――フリーザやクウラの圧倒的な力を思い出すたび、拳が震える。 なら、この世界の特異な力「念」を極め、地力を底上げするしかねぇ。だからこそ、ミトに小言を言われようが、雑巾を絞らされようが、今は牙を研ぐ期間だと自分に言い聞かせていた。
「ゴン、魚を少し持ってやる。家まで運ぶぞ」
「ありがとう! ねえシャロ、家に着いたらまた遊んでくれる? 前に約束しただろ」
「あ〜だったな。いいぜ。今度は森で鬼ごっこでもするか。……手加減、難しいんだけどな」
ゴンの無邪気な笑顔の裏に、時折ゾッとするような野生の直感を感じることがある。 (油断してると、サイヤ人の下級戦闘員くらいなら不意を突かれちまうかもな……)
そんなことを考えながら歩いていると、島を拠点に漁にいく荒くれ者たちが数人、道を塞ぐように立ちはだかった。
「おいおい、新入りの兄ちゃんよぉ! てめぇ、最近ミトさんと随分仲がいいじゃねぇか」
「毎日毎日、あの家に出入りして何やってんだよ、あぁ!? 吐けよ、コラ!」
「……あぁ?」
オレは担いでいた巨大な魚を、ドサリと地面に落とした。ただでさえ家事でイライラしてたんだ。ちょうどいい。
「違うよ。シャロは、オレやミトさんと一緒に住んでるんだ。ね、シャロ」
「……ゴン。お前、今その言葉がどれだけ火に油を注ぐか分かってて言ってんのか? 空気読めよ」
「なにッ……一緒に住んでるだとぉ!?」 荒くれ者たちの顔が真っ赤に染まる。
「ぶっ殺してやる!」
「魚と一緒にカマボコにしてやるぜ!」
はぁ……。
スーッと背後に回り込み、トン。 力を最小限に抑え、首筋を軽く突く。 彼らは糸の切れた人形のように、ドサドサと倒れ伏した。
「もしかしたら、オレのほうがよっぽど荒くれ者かもしれんな。……まあ、サイヤ人だから仕方ねぇか」
気絶した連中を放置して、再び魚を担ぎ上げる。
その帰宅途中、ゴンが首を傾げながら、とんでもない角度から質問を投げてきた。
「ねえ、シャロってさ。ミトさんと結婚するの?」
「ブッ……! ……ゴン。お前、どうしてそうなった」
「え、だってミトさん、シャロと話す時すごく楽しそうだよ? あんなに顔を赤くして怒るの、シャロがはじめてだし」
オレは顔を背け、頭を乱暴にかきながら絞り出すように答えた。
「……ミトには感謝してるよ。飯もうまいし、いいやつだとも思ってる。あそこまでの芯が通ったいい女、アネキ、ああ、兄貴の嫁さんな。その人以外には見たことねえが……」
「そっか! よかった! ミトさんに伝えてくるね!」
「おい、待てコラ! やめろ!」
ゴン8歳の、まだ幼い好奇心に振り回されたある日の出来事だった。