【DB×HxH】サイヤ転生 〜バーダックの弟だが、飛ばされたHUNTER×HUNTERの世界で修業してフリーザたちをぶっ倒す〜   作:えーあいの下請け

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エピソードオブシャロ3

 くじら島の森、その奥深く。むせ返るような緑の匂いと、湿った土の空気が立ち込める場所。

 最近のオレの日課は、ここで『瞑想』を行い、その後にゴンへ稽古をつけることだ。

 

 じっと座って目を閉じるなんて、血の気の多いサイヤ人にとっては本来、拷問に近い。だが、横で胡座をかくゴンの集中力は、ぶっちゃけ異常だ。

 まだ「念」という概念すら教えていないのに、その精神の研ぎ澄まし方、自然と一体化するような呼吸の深さは目を見張るものがある。

(……こいつ、放っておいても原作よりずっと早く念に目覚めるんじゃねぇか?)

 

 子供の頃の兄貴や、他の下級戦士たちと比べても、こいつの奥底に眠る『得体の知れないポテンシャル』は薄気味悪いほどだ。

 そんな予感を覚えつつ、瞑想をきっかり10分で切り上げる。オレは立ち上がり、軽く肩を回してバキバキとストレッチを行った。

 

「よし、ゴン。組み手だ」

 

「うん! 今日こそ一発入れるぞー!」

 

「へ、10年はえぇ。スーッときてドン、だぞ」

 

 

 オレが構えると同時、ゴンが弾丸のように飛び込んでくる。

 子供とは思えぬ脚力で地面を蹴り飛ばし、迷いのない連続パンチを繰り出してきた。ゴンの小さな拳が空気を裂き、ヒュンッ、ヒュンッと鋭い風切り音を立てる。

 大の大人がまともに食らえば、一撃で骨が砕ける威力だ。

 

 オレはその拳の嵐を、わざと紙一重――鼻先を数ミリ掠める程度の距離で躱し続ける。ゴンの重心がわずかに前に流れた瞬間、スーッと入り込み、その肩を指先でチョンと押した。

 

「わあ⁉」

 

「どうした。隙だらけだぜ。これじゃあ一発は遥か先だな」

 

 ゴンは勢い余って派手に転がった後、頭を軽く抱えて悔しそうに唸った。

 だが、すぐに立ち上がると近くの巨木へ跳躍。それを足場に、猿のように木から木へと縦横無尽に飛び回り始めた。

 

 空中から、目眩ましに折れた木の枝が飛んでくる。オレはそれを空中で掴み、逆回転をかけて投げ返す。

 

 その瞬間、死角である真上からゴンが飛び出してきた。

 

「くらえー!」

 

「よっ」

 

 落下スピードを利用したゴンの重い蹴りを、指一本でトンといなし、そのまま弾かれて木へ戻ろうとするヤツの足首をガシッと掴んだ。

 

「まったく、野生動物じみてやがるな。今のはなかなか鋭かったぜ、ゴン」

 

「あ、離してよー! くそー、あと少しだったのに!」

 

 そんな時だった。藪の向こうから、じっとこちらを覗いている気配に気づく。

 キツネグマのキンだ。

 数メートルはある巨体から、ズシン、ズシンと足音が響く。

 少し前までこの森の主として君臨していたが、オレと一戦交えて完敗してからは、なにかと木の実や魚を持ってくるようになった。

 最近子供が生まれたらしく、ゴンがそのクマを『コン』と名付けてすっかり懐かせている。

 

「キン、別にオレは森の主になるつもりはねぇって言っただろ」

 

 キンは「ギー」だか「ゴー」だか唸っている。正直、単なる獣の鳴き声にしか聞こえず、何を言っているのかさっぱり分からん。

 だが、ゴンは「うんうん、そうだよね」と普通に会話を成立させていた。

 

 ……まあ、いいか。意思疎通ができてるなら。

 オレはキンに向かって、指で「クイ」と合図を送る。

 

「今日もやるか?」

 

「ギー!」

 

 キンの巨体が、木々を薙ぎ倒さんばかりの勢いで突撃してくる。オレはそれを躱さず、あえて正面から両手で受け止める。

 

「パワーが足りねぇぞ。そんなんじゃオレは押し込めねぇ」

 

「ぎゃーお!」

 

 キンの鋭い丸太のような腕が連続で迫る。

 オレはフリーザとの戦い――あの絶対的な死線での感覚を呼び戻しながら、最小限の動きで攻撃をずらしていく。だが、何かが決定的に違う。

(……キンは巨体のわりに、無駄な力が抜けてる。なのにオレは、無意識に常に全力でぶつかろうとしちまう。スーッといきたいのに、ずっとドンドンドンのままだ。力が暴走しそうになる、なんだこの違和感は)

 

 そんな時だった。

 キンに向かって、草むらから鋭い殺気とともに『謎の影』が飛びかかる。

 その影はあろうことか、抜き放った長刀でキンの太い首を斬り捨てようとしやがった。

 キンに迫る銀色の刃。

 

 その冷たい光が、オレの記憶の底に眠る「絶望」とフラッシュバックする。

 惑星ベジータの最期。上空から見下ろすフリーザたちの冷酷な暴虐。そして、何も守れず、ただ宇宙の塵になるしかなかった無力なオレ。

 

 

(オレは結局何もできなかった――)

 

 

「――違う!」

 

 気がつけば、体が勝手に動いていた。足元の地面をクレーターのように叩き割りながら、スーッと刃の軌道に割り込む。

 

 

 影が振り下ろした刀を、オレは素手の拳でドンッと叩き割る。硬質な金属音が森に響き、折れた刃が宙を舞って土に突き刺さった。

 

「てめぇ……。何しようとしやがった。こいつはオレの大事な稽古相手だぞ」

 

「……人間を傷つけた巨獣は、速やかに処分する決まりだ」

 

 オレの前に静かに着地した男。長い銀髪を揺らし、帽子を目深に被っている。

 

 こいつは確か……カイトだ。

 

 ゴンがハンターを目指す決定打となった、あの男。

 

 愛用の刀を折られたというのに、微塵も動揺した様子がなく、氷のように冷たい目でこちらを見据えている。

 

「キンは人を傷つけてねぇよ。ちょっとオレとじゃれてただけだ。お前はそれも見抜けねぇ盆暗か?」

 

「子連れキツネグマが、人間に大人しく接するのは稀だ。現に今、貴様を殺そうとしていた。何でも自分の思い通りになると思っている勘違い野郎か」

 

 

 ぶち。

 

 

 オレの頭の中で、何かが決定的に切れる音がした。

 

 

 理屈じゃねぇ、こいつのその上から目線が気に食わねぇ。

 

「……そのスカしたツラ、涙でベチャベチャにさせてやるよ」

 

「奇遇だな。オレもそう思っていたところだ」

 

「ゴン、キンとコンを連れて離れてろ。邪魔だ」

 

「で、でも……」

 

「離れろって言ってんだよ!」

 

 オレの凄まじい怒気に押され、ゴンが顔を引きつらせて距離を取る。

 カイトに向き直り、観察する。

 

 純粋な戦闘力(スカウター的数値)で言えば、それほどでもない。1,500、いや2,000届くかどうかとみた。だが……あの異様なまでの静けさが不気味だ。オレたちサイヤ人の、常に周囲を威圧する燃え盛るような「気」のようなものとは、根本的に毛色が違う。静かすぎるのだ。

 

 ひとまず、殴ってから考えるか。

 まっすぐ行って、ドンだ!

 

 オレの突進。

 カイトは最小限の動きでそれを躱そうとするが、オレの桁違いの初速に目を見開く。

 

「なに……ッ⁉」

 

「オラァ!」

 

 決まったか?

 現にヤツの腕に拳は直撃しているが……

 

「恐ろしいまでの速さと威力だな。だが……貴様の『念』は分かりやすすぎる。どこに来るのか、丸わかりだ」

 

「念、だと? オレのは違ぇ……気合いだ!」

 

「なに? うごっ⁉ ここからさらにパワーが上がると言うのか……!」

 

 オレはカイトの細い腕を強引に掴み、そのまま問答無用で地面に叩きつけようと力を込める。

 

「どうした、そんなもんか?」

 

「……チッ、とんでもなく危険なヤツだ。『気狂いピエロ』(クレイジースロット)!」

 

『ハハハ、変なヤツがいるじゃねーか! ピンチだな? ハッハー、ドゥルルー!』

 

 カイトの手に突如現れた、ピエロの顔が付いた異様な武器。アレは確か念能力。

 ……待て、今のオレにはアレがはっきりと「見える」。ピエロから、とんでもなく濃密で不気味なエネルギーが膨れ上がっていくのが分かる。

 

「そのふざけたピエロが隠し球か。いいぜ、遊ぼうじゃねぇか。はあぁぁぁ!」

 

「……なんてオーラだ。いや、オーラではないなにか! 放置すればこの島にとって災厄になる……ここで貴様を処分する!」

 

 カイトが武器を構え、オレが気を限界まで練り上げたその瞬間――。

 

「シャロ! やめて! 動物たちがみんな怖がってるよ!」

 

 ゴンが両手を広げて、二人の間に割って入ってきた。

 その必死の叫びと、周囲の木々から鳥たちが怯えて逃げ出す羽音に、オレの熱くなった頭が少しだけ冷える。

 

 カイトはゴンの顔をまじまじと見つめ、「ジンさん……?」と呆然と呟き、なぜかオレに武器を叩きつけた。正直痛かったが顔には出さなかった。

 後からカイトに聞いた話だが、ヤツの能力は発動すると必ず使わないと消えないらしい。

 なんでそんな能力にしたんだよ。

 

 それから、ゴンの仲裁によって戦闘は強制終了となり、オレたちは焚き火を囲んでカイトの話を聞くことになった。

 展開は原作通りなのかジンの弟子としてのエピソードだったが、オレにとっては予想外の、そして最大の収穫があった。

 

「オレはカイト。貴様には『念』の基礎を覚えてもらう。今のままでは、単なる暴力装置に過ぎない」

 

「貴様じゃねぇ、シャロだ。ならカイト、お前にはオレの戦いの『技術』を学んでもらうぜ」

 

「オレは一ヶ月しか滞在できない。いいか、ゴンには念のことはまだ絶対秘密だぞ」

 

 カイトはオレの耳元に顔を寄せ、声を潜めた。

 

「お前は特別だが、あの子にはまだ早すぎる。せめて、しっかりと体が出来上がってからだ。分かったな?」

 

「分かってるよ。オレもそこまでバカじゃねぇ。……カイトこそ自分の心配してろ。お前、将来しれっと死にそうな顔してるぜ」

 

「……シャロは、何があっても死ななそうなゴキブリみたいな顔だな。あとオレの顔の話はもうするな」

 

 その日の夜から、ゴンが寝静まったのを見計らい、誰もいない森の奥深くでオレたちの奇妙な情報交換が始まった。

 

「お前のオーラ……いや、『気』とか言ったか。それは異常だ。まるで常に全身の爆発を制御せずに、四方八方に垂れ流している状態だ」

 

 パチパチとはぜる焚き火を挟んで、カイトが呆れたように言う。

 

「力任せに放出しているだけだから、次の動きの『起こり』が丸わかりなんだ。しかも燃費が致命的に悪い。よく今まで気が枯渇しなかったな」

 

「うるせぇ。オレたちの戦いは、相手よりデカい気をぶつけ合って押し潰すのが基本だったんだよ」

 

「なるほど。だが、ここでは違う。生命エネルギーはただ外に放つだけでなく、体に留める『(テン)』、気配を完全に殺しきる『(ゼツ)』といった、極めて繊細な制御が必要不可欠だ」

 

 カイトが見本として自分のオーラをピタリと消す。

 さっきまでそこにいたはずの存在感が完全に消え、背景の森と同化した。目の前にいるのに、目を閉じれば何も感じない。

(……なるほど。キンと組み手した時の違和感はこれか。オレは無意識に、気を『外へ外へ』と垂れ流していたんだ。だから力を抜いてスーッといけない)

 

 気を爆発させるのは得意だが、静かに留めるなんて考えたこともなかった。

 この世界の技術を取り入れれば、無駄に消費していたオレの『気?』のコントロールはさらに次元が上がる。

 

「よし、カイト。その『テン』ってやつ、教えろ」

 

「その代わり、貴様のその理不尽なまでの身体操作と、瞬時に爆発的なパワーを引き上げるコツをオレに教えろ。……一ヶ月だ。どこまで互いに盗めるかだな」

 

 だが、その情報のすり合わせは、初日から難航を極めた。

 

「だから違うんだよ! 気をお腹の底からグワッと集めて、ここで一気にドン! だ。で、こっちは完全に力を抜いてシーン、だろ? なんでこんな簡単なことがわからねぇんだ!」

 

「擬音ばかりで分かるか! お前の説明は主観的すぎるんだ。感覚だけで動いているから言語化できていない。お前は少し座学も必要だな、筋肉バカ」

 

「あぁ? なんだと、頭でっかちが。てめぇの『オーラを精孔からミリ単位で均等に出すイメージで』とかいう理屈っぽすぎる説明も、聞いてるだけで眠くなるんだよ!」

 

「ミリ単位の操作が、実戦では命を分けるんだ、この野生児が!」

 

 互いに額を突き合わせての口喧嘩。深夜の森で、オレとカイトは数日間、終わりの見えない激しい衝突を繰り返した。

 だが、そのぶつかり合いが徐々に互いの「視点」を理解するキッカケになっていく。

 

 カイトはオレの言う「ドン!」という爆発的な出力の感覚を、念の『練(レン)』を極限まで高めた、瞬間的なオーラのブーストとして論理的に再構築して自身のものにしていった。

 

 オレはオレで、カイトの言う小難しい理屈を、「要は気を外に逃がさず圧縮する」「料理にラップをかける理論」というシンプルな身体感覚(シーン、とする感覚)に落とし込んでいった。

 

 言葉も育ちも、生きる世界すらも違う二人。

 だが、強さを求める根っこの部分だけは、不思議と共鳴していた。

 

 一ヶ月後。

 カイトが調査を終えてくじら島を去る時、ヤツの放つオーラの密度と瞬発力は、出会った当初より数段上になっていた。

 

 当然、オレもだ。

 ドラゴンボール世界でただ威圧するように『放出』していただけのエネルギーを、より緻密な『気』として体内に循環させ、制御できるようになった。

 サイヤ人的には戦闘力のコントロールってヤツだ。

 

 念の基礎『四大行』を覚えたことで、エネルギーの無駄遣いもある程度抑えられ、戦いの引き出しが爆発的に増えた実感があった。

 

 ――そして。毎晩ゴンに黙って森で修行しすぎた結果。

 

「あんたね……ふざけないでよ! 毎日毎日『修行だ』『精神統一だ』と言い訳して、夜な夜な遊び歩いて!」

 

「み、ミト。怒るなよ、本当に森で修行してて……」

 

「ゴンの方がよっぽど家事も手伝うし、真面目に漁にも行くわよ! 戦闘民族だが種族だが知らないけどね。あんたは穀潰しのヒモよ!」

 

 手近にあったフライパンを振り回すミトにオレはしこたま絞られ、その情けない姿をギギばあとゴンに腹を抱えて笑われるハメになった。

 

 カイトに教わった気配を消す『絶』は、ミトの凄まじい怒りのレーダーから逃げるのには、全くもって役に立たなかった。

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