【DB×HxH】サイヤ転生 〜バーダックの弟だが、飛ばされたHUNTER×HUNTERの世界で修業してフリーザたちをぶっ倒す〜   作:えーあいの下請け

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エピソードオブシャロ4

 

 あの日、カイトが島を去ってから、あっという間に数年の月日が流れた。

 

「パッパ、ドンする! ドーン!」

 

 ミトの足にしがみつきながら、小さなガキがオレに向かって短い腕を力いっぱい振り回している。オレとミトの娘で、エトという。

 

 オレが多分『エシャロット』だからなのと、ミトの名前をなんとなく合わせてつけたんだが……。 (まさか、戦いと血の匂いしか知らなかったこのオレが、別の宇宙で親父になるとはな……)

 

 こんなことになるなんて、一体誰が予想できたかよ。

  サイヤ人として血生臭い宇宙を生きてきたオレにとって、この『くじら島』での穏やかすぎる日々は、想像もしていなかったほど心地よいものだった。

 戦士としての闘争本能が消えたわけじゃないが、誰かを守るために力を蓄えるという感覚は、前世の記憶と今のオレがうまく混ざり合った結果なのかもしれない。

 

 エトはサイヤ人の血を濃く引いているだけあって、まだほんの子供のくせにとんでもないパワーを秘めてやがる。ゴンと一緒に森で駆け回っているせいか、闘い方も妙に野性的で「スーッといってドン」の勘所をすでに体現しつつある。

 

 この前なんて、ちょっと機嫌が悪くて足踏みしただけで、家の分厚い床板が盛大にひび割れ、遊びで振った木の枝で庭の巨岩を真っ二つにカチ割った。間違いなく、オレの血だ。 (ちなみに、満月を見て大猿になるとこの島ごとぶっ壊しかねないから、危険防止のためにオレの尻尾と一緒にエトの尻尾も定期的に切っておく必要がある。サイヤ人の尻尾は放っておくとしぶとく生えてきやがるからな)

 

 だが、そんな順風満帆に見えるオレは今、家の中でひどく肩身が狭い思いをしている。 理由は単純にして深刻。稼ぎが少ねぇからだ。 オレもエトも、サイヤ人特有のバカみたいな食欲で毎日山ほどメシを食う。巨大な猪の丸焼きや、森の主クラスの化け物魚を何匹獲ってきても、数日で骨すら残らない。おかげで、家の蓄えはもう底をつきかけていた。

 

 そんな時だった。ゴンが「ハンターになって稼いでくる!」と、目をキラキラさせて言い出したのは。 島の沼の主を釣り上げるという無茶な条件を見事に達成したゴンに、ミトは猛反対しつつも、最後には涙をこらえて折れたのだ。

 

「ゴン。忘れ物はない?」

 

 ため息交じりにそう言いながら、ミトは背中に親父(ジン)の釣り竿を背負ったゴンを見つめる。その瞳には、どうせ止めても無駄だと分かっているような、諦めと寂しさが入り混じっていた。

 

「うん、ミトさん。オレ、立派なハンターになるね」

 

「そう、もう止められないものね。エトもゴンを応援しなさい」

 

 ミトに促され、エトがゴンに向かって小さな拳を突き出した。

 

「ゴンにー、がんば~。ハンターなんて、ズバっといってドンだよ!」

 

「うん、エト。お兄ちゃん頑張るよ」

 

 無邪気に笑い合う二人から、ミトはゆっくりと首を回し、オレへと鋭い、殺気すら帯びた視線を移した。

 

「シャロ。いいわね、しっかりゴンを守りなさいよ。あの子に怪我でもさせたら、絶対に承知しないからね。……ついでに、あんたもハンターライセンスとって、まともなお金を家に入れなさい。このままじゃ一家で野垂れ死にだわ」

 

「ちっ、わかってるよ。お前はいつもグチグチと……」

 

「お・ま・え? 自分の妻の名前も言えないわけ?」

 

「……ミト」

 

 いてっ! 耳引っ張ってんじゃねぇ! 弾丸を素肌で弾き返す宇宙最強の戦闘民族サイヤ人といえど、この家の中で怒ったミトには絶対に敵わない。どんなに気を練ろうが、念の『絶』を極めて逃げようが、このヒエラルキーだけは覆せねぇんだ。フリーザのビームより、ミトの静かに冷え切った視線の方がよっぽど心臓に悪いってどういう理屈だよ。

 

「パッパ、マッマ、いつも仲良しだな~」

 

「エト、ちょっとあっちにいこうね。ギギばあもあっちで呼んでるから」

 

 ゴン、空気読んで逃げんな! 助けろ!

 

 

 

     * * *

 

 

 港には、島を出るオレたちを見送るため、島民たちが大勢集まっていた。 ゴンがみんなに笑顔で大きく手を振っている。

 

「シャロー、あんまり無理すんなよー!」

 

「ミトさんを泣かせたら、島ぐるみで海に沈めるからなー!」

 

 島民たちの容赦ない冷やかしに、オレは軽く手を挙げて応える。 かつて惑星ベジータから戦場へ向かう時とは、まるで違う雰囲気だ。どちらがいいとか、そういう話じゃねぇ。

 

 ただ、ここも温かい。だからこそ、守る価値がある。

 

「へっ、ハンターなんてサクッと合格して、たんまり稼いで帰ってきてやるよ!」

 

「シャロとエトは大食いだから、たくさんお金がいるよね……」

 

 苦笑いするゴンの横で、オレは停泊している巨大な木造船を見上げた。

 金属の冷たい宇宙船とは違う、潮の香りが染み付いた船だ。

 こうして、オレとゴンのハンターになるための旅が始まった。

 ミトには黙っていたが、これはゴンの親父・ジンに会うための旅でもある。

 そしてオレにとっては、いつか故郷の宇宙へ帰るための手がかりを見つけるための第一歩だった。

 

 

「よし、行くか!」

 

 

 まずは、この船での試験からだ。 オレとゴンは、新たな世界への期待と少しの緊張を胸に、力強くタラップを駆け上がった。

 

 

     * * *

 

 

 

「……シャロ、起きて。船長が、名前とハンターになりたい理由を教えてくれだって」

 

「……あ? なんだよ、急に」

 

「なんでも、この船に乗った時点でもうハンター試験が始まってるんだって」

 

 船室の隅で昼寝をキメていたオレは、頭を乱暴にかきながらのそりと起きあがる。見渡すと、船長の前に立つ男二人とゴンだけしか試験を受けそうなヤツは見当たらない。

 

 その二人の男は、心なしかピリピリと不快な気を撒き散らしていやがる。こいつら記憶にあるぞ、リオリオとクリピカだ……多分。

 

「待たせたな。オレはシャロ。ハンターになりたい理由は『金』だ。それ以外にねぇ」

 

「ふん、貴様も品性がないな。そこのレオリオと一緒だ」

 

「おい、てめぇ! さっきから四度目だぞ。クルタ族とかいう、うす汚ねぇ血をここで絶やしてやるぜ!」

 

「――取り消せ、レオリオ」

 

「『レオリオさん』だ!」

 

 レオリオ? あ、思い出した。じゃあ、あっちはクラピカか。

 理屈っぽそうな顔をしてるくせに、沸点の低さはサイヤ人並みだな、あいつ。

 レオリオっぽいサイヤ人は割と居たから懐かしいな。

 と、船長が焦った声を上げる中、飛び出していった二人を追って、ゴンとオレもゆっくりと甲板へ向かった。

 

 甲板に出ると、外は空も海も真っ暗な、凄まじい嵐だった。 荒れ狂う波が船体を激しく揺らし、塩辛い雨粒が弾丸のように顔に打ち付けてくる。

 

「ほう、心地いい風じゃねぇか」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないからね、シャロ!」

 

 うねる甲板の上で、クラピカが木刀二本を鎖でつないだ武器を、曲芸師のように滑らかに操っている。 対するレオリオは、ナイフを構えてピタリと動かない。

 

 ふむ、実際に近くで見ると面白いな。

 

 レオリオはガタイがいいからもっと荒々しい構えかと思っていたが、むしろクラピカの方が、内側に燃え盛るような荒々しい気を放っている。

 

 細身の体から立ち昇る、氷のように冷たく鋭い殺気。

 まあ、オレもフリーザやクウラへの復讐みたいなもんを腹の底で煮えたぎらせてるからな。あいつの奥底にあるドス黒く冷たい感情は、分からんでもない。

 

 

 その時だった。 船員――カツオ? ってヤツが、嵐の突風で折れたマストと一緒に、荒れ狂う海へと吹き飛ばされた。

 

 

 クラピカとレオリオがカツオに接近するより早く、オレは反射的に動いていた。

 オレの頭の中で瞬時に計算が走る。風速、波のうねり、落下の速度、そしてゴンの身体能力。

 横にいたゴンの襟首をガシッと掴むと、空を舞うカツオの方へ向かって、思い切りぶん投げたのだ。

 

「おらよっと!」

 

「うわあああ!?」

 

 突然大砲の弾のように投げられて少し慌てたゴンだったが、オレの目論見通り、空中で見事に体勢を立て直し、カツオの背中を蹴り上げて船の方へ押し戻した。

 弾き飛ばされたカツオを、レオリオとクラピカが甲板でガシッとキャッチして引き倒す。 よし、ドンピシャだ。さて、回収に行くか。

 

 オレはドンッと甲板を蹴り出して宙へ跳び、水面に落ちる寸前だったゴンの足首を掴むと、そのまま強引に船体の壁に爪を立ててしがみついた。硬い樫の木が、豆腐のように指の間にめり込む。

 

「ひ、ひどいよ、シャロ! びっくりした!」

 

「お前、オレが投げなくてもどっちみち自分から無鉄砲に助けに飛んでいっただろ。手間が省けていいじゃないか」

 

「まあ、うん。そうだけど……」

 

 いくらサイヤ人でも、この嵐の中で目立つように空を浮遊するわけにもいかねぇしな。念の『絶』の応用で、今はただの『ちょっと身体能力が規格外な奴』で通すつもりだ。

 

「おい、お前ら! さっさとロープよこせ!」

 

 オレとゴンが甲板に引き上げられると、レオリオとクラピカが血相を変えて突っ込んできた。 オレに対して「子供を投げるなんて正気か!」「いくら計算があっても狂人の所業だ!」と色々とごちゃごちゃ喚きやがるから、ピーピーうるせぇとばかりに二人の頭にドンッと軽くチョップを落としてやった。鈍い音が響く。

 

「いってぇな、おっさん! 自分の息子を投げるくそ野郎のくせに何しやがる! 頭蓋骨が割れたかと思ったぜ!」

 

「レオリオに同意する。助かったからよかったものの、あなたの思考回路はイカれていると言わざるを得ない」

 

「ゴンはそんなにヤワじゃねぇよ。それにオレはゴンの親父じゃねぇ」

 

「そうだよ。えーと、シャロは親父の従妹の夫だから……なんだろう?」

 

「まあ、今は一緒にメシ食って暮らしている家族だ。それにしても、お前らさっきまで殺し合いみたいなケンカしてなかったか?」

 

 オレの呆れたような言葉にハッとして黙り込んだ後、二人はふいに毒気を抜かれたように笑い出し、互いの無礼を謝りだした。命の危機を前にして、つまらねぇ意地が吹っ飛んだらしい。 ゴンもそれを見て嬉しそうに笑っている。

 

 だが、レオリオだけはまだ頭をさすりながら、オレを睨んで「死ねカス、非常識野郎」とか言ってやがる。

 さっきのクラピカの言葉から察するに、こいつの目的もどうやら『金』らしい。オレは「同じ金を求める仲じゃないか」と、強引にレオリオの肩に腕を回して組んだ。

 こいつのこういう俗物的なところは、嫌いじゃない。

 

「ふざけんな! ガキを大砲の弾みたいに投げてまで金を稼ぎたいヤツと一緒にすんなよ!」

 

 うん? こいつ本当に金目的か?

 

「レオリオ、レオリオ。違う違う。シャロがお金をほしいわけは、むしろ大食いすぎる子供の――」

 

「ゴン、黙ってろ。それとも今度は本当に海に放り投げられたいか?」

 

「ご、ごめーん!」

 

 オレたちのそのドタバタしたやりとりを見て、一部始終を見ていた船長が、なぜか愉快そうに豪快な笑い声を上げた。

 

 結果的に、その「狂ったほどの度胸と仲間を助ける判断力」を船長に妙に気に入られたオレたちは、新たな審査会場である近くの港まで、直通のルートで送ってもらえることになった。

 

 いよいよ、本格的なハンター試験の始まりだ。

 

 

 

 

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