志村家長女のリベンジアカデミア   作:M.T.

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第一話を少し差し替えました。
500日の方から来た方は、お口直しにどうぞ。


第1話 運命の分岐点

 早いもので、ヒロアカ世界に転生してから4年と11ヶ月が経った。

 私と弧太朗も、もうすぐ5歳になります。

 相変わらず、明るくて優しいお母さんと、可愛い弟がいる楽しい三人家族です。

 

 お父さんは、私達が生まれてしばらく経った頃に亡くなっている。

 表向きは事故で死んだって事になってるけど、原作だと、確かオール・フォー・ワンに殺されたんだっけか。

 まあ、瑠奈(わたし)が存在する時点でこの世界は原作とは違う世界線だから、原作と死因が同じかどうかは確かじゃないけど。

 お父さんを亡くして心も体もいっぱいいっぱいだろうに、それを私達に悟られないように毎日笑って今日まで育ててくれたお母さんには、感謝しかない。

 

 

 

「瑠奈、弧太朗、靴履けた?」

「は〜い!」

「じゃあ行こっか!」

 

 夜空に満月が浮かぶある日の事。

 お母さんが、一緒に月を見に行こうと提案したので、私は靴を履いて出かける準備をした。

 その時ふと、玄関に置かれた姿見が目に映る。

 私は、お母さんが結ってくれたツインテールを握りしめながら、自分の姿を見た。

 

 そこには、お母さんによく似た顔立ちの小さい女の子が映っていた。

 華ちゃんの目元がちょっとだけ柔らかくなった感じか。

 さすが漫画・アニメの世界、我ながら既に美人の片鱗がある。

 

 でも私の前髪は、一部だけ綿毛みたいに白くてふわふわしている。

 お母さんの話だと、私は生まれつきこうだったらしい。

 しかし、なんで私だけ髪が白くなってるんだろ。

 “個性”の影響か何かの病気を疑われて一ヶ月健診の時に検査されたけど、“個性”も病気も見つからなくて、結局原因は分からずじまいだった。

 “個性”でも病気でもないとすると、前世を思い出したせいで脳にストレスがかかった……とか?

 

「虫よけ持った?」

「持った!」

 

 んん〜、弧太朗が可愛いからもうなんでもいいや。

 

 

 

「ねえ見てお母さん! 月おっきい!」

「ほんとだ、大きいねぇ」

「きれい……」

「これだけお月様が光ってたら、瑠奈も“個性”出るかもね」

 

 お母さんが、私達を抱えながら、公園の空に浮かぶ満月を見せてくれた。

 弧太朗は、お母さんの腕の中で月に向かって手を伸ばしている。

 か゛わ゛い゛い゛。

 

 ちなみに、何でこんな遅い時間に家族三人で散歩をしているのかというと。

 それは私の“個性”が関係している。

 

 もうすぐ5歳になるというのに、私は未だに“個性”が出ていない。

 弧太朗は3歳の時に“個性”が出たのに、双子で“個性”の発現に2年前後も差があるなんて、特別珍しくはないけどあまり多くはないケースだそうだ。

 ちなみ弧太朗の“個性”は『エアフープ』。

 白く光るフラフープのようなリングを足元から出して飛ぶ“個性”だ。

 

 お医者さん曰く、私には“個性”因子はちゃんとあるけど、まだ活性化していないとの事。

 何かのきっかけで発現するだろうから、色んな事を体験させてあげてください、とお母さんに言っていた。

 お父さんが月光を使う“個性”だったから、もしかしたら私もそうなのかもしれないと考えて、満月の今日、お母さんが散歩に連れ出してくれたのだ。

 しかも今日は、スーパームーンだ。

 直感で何かが起こる気がして、いつもより一回り大きく見える満月に手を伸ばした、その時だった。

 

「わっ」

 

 私の体が、お母さんの腕を離れてふわりと浮き上がった。

 体の表面が青白くオーロラみたいに輝いて、自分の意思とは関係なく、どんどん高く浮き上がっていく。

 10階建てのビルの屋上くらいの高さまで浮き上がっても、まだ止まる気配がない。

 あー、今ちょうど30m超えたな。

 いやー、ついに私にも“個性”が発現しましたよ。

 しかも初っ端からフィーバー状態だよ。

 やっぱりヒロアカ世界すげーな。

 

 …って、呑気に感心してる場合じゃなくない?

 どこまで浮き上がるんだこれ。

 そろそろ止まらないとやばくないか?

 って、今止まったら落っこちてコンクリートのシミになるじゃん。

 なんとかゆっくり地上まで降りられないものか。

 てかどうやってゆっくり降りるんだ?

 

 とりあえず、ゆっくり地上に降りるイメージをしてみる。

 すると浮き上がっていたのが止まり、今度は浮く時よりゆっくり下に降り始める。

 あー良かった、そのまま宇宙空間まで飛んでったり、急に落っこちたりしなくて。

 6mくらいの高さまで自力で降りてくると、お母さんが私をキャッチしてくれた。

 

「瑠奈〜、良かったぁ〜!!」

「……ごめんなさい。止まり方わからなくて」

 

 お母さんは、私を抱えたまま地上に降りると、半泣きで私を抱きしめた。

 本当にあのままどっかに飛んでいっちゃうんじゃないかと心配していたらしい。

 私を抱きしめるお母さんの後ろでは、弧太朗がポカンとしていた。

 

 

 

 次の日、私は病院で正式に“個性”の発現が確認された。

 その後、半年ほどかけて自分の“個性”がどんなものかを検証した。

 

 私の“個性”は、お母さんや弧太朗と同じ浮遊系の“個性”だ。

 でもお母さんとは違って、月光を浴びてエネルギーを溜める必要がある。

 お父さんが月の力を借りる“個性”だったらしいから、多分私にもその性質が受け継がれたんだと思う。

 日中と新月の時は、月光をほとんど浴びれないからほぼ“無個性”状態だけど、満月に近づくほど飛ぶ力が強くなって、満月の時はフルパワーが出せる。

 

 原理としては、月光の光エネルギーを使って体表面に特殊な反発力を発生させる、というものらしい。

 名付けるなら、『ムーンフォース』ってところか。

 

 自力で降りられる事がわかったので、どれくらい高く飛べるか試してみたら、満月の時は高層ビル20階分くらいの高さまで飛べて、一般道の自動車くらいの速度で飛べる事がわかった。

 それだけの高さまで急上昇したら、気圧の影響を受けて耳が痛くなったりするはずだけど、体調に何の変化もないって事は多分、気圧の影響を軽減する効果もあるんだと思う。

 

 自分の力でやれる事を改めて確認して、ヒーローになる道はすっぱり切り捨てた。

 雄英ヒーロー科? Plus Ultra? 興味ないね、HAHAHA☆

 そもそも私の最終目標は弟家族を幸せにする事であって、それを達成するのに、本当にヒーローになるのが最適解なのかっていう疑問もある。

 あんまり危ない事したら、弧太朗のヒーロー嫌いが悪化しそうな気もするし。

 それに、原作で某梅干しさんが弔くんにした事を考えれば、あんまり目立つ事したら最悪殺されるかも知らんし。

 まぁ、ヒーロー免許持ってれば色々便利だから、免許だけ取って本業に専念する、ってんならありなのかもしれないけど。

 

 なんて考えつつ、私はやらなきゃいけない事を頭の中で整理した。

 オールマイトが『ワン・フォー・オール』を継承するのが、デクくんが継承する40年前、今から2年後の事だ。

 弧太朗が里子に出されるのは、それより前だったはず。

 時期は確か原作では冬だったから、タイムリミットは最長であと1年と1ヶ月程度しかない。

 それまでに、私に何ができるのか考えておかないと。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 それから1年と1ヶ月が経った。

 小学校入学を間近に控えた、ある冬の日。

 その日は肌寒く、粉雪がちらちらと降っていた。

 私の1年間の努力も虚しく、とうとう()()()が来てしまった。

 

 私達が施設でお母さんのお迎えを待っていると、お母さんが知らない男の人と女の人を連れてきた。

 私達の新しいお父さんとお母さんだという。

 

「突然のお別れになっちゃって、本当にごめんね。お母さんはこれから、すごく悪い奴と戦わなくちゃいけないんだ」

「やだ!! 行っちゃやだよ、お母さん!!」

 

 私達とお別れしようとするお母さんに、弧太朗が泣きながらしがみつく。

 私達はこの日、お母さんに里子に出されて、これからは全くの赤の他人として生きていく事になる。

 私達とお母さんは、既に戸籍上は他人同士になっている。

 

「瑠奈、弧太朗。大好き。お母さんは、ずっとお空から二人のこと見守ってるからね」

 

 そう言ってお母さんは、私達の頭を撫でて抱きしめた。

 お母さんが行ってしまう時間になっても、弧太朗はお母さんにしがみついて離れなかった。

 すると里親が弧太朗の肩を掴んでお母さんから引き剥がし、その間にお母さんが私達を置いて去っていく。

 

「行かないでええ!! お母さああん!!」

 

 弧太朗は、里親の制止を振り切って、泣きながらお母さんを追いかけた。

 だけど走り出した頃にはすでに遅く、お母さんの背中はどんどん小さくなっていく。

 弧太朗がお母さんを追いかける途中で転んで、立ち上がる頃には、お母さんはもう見えなくなっていた。

 

「お母さああああん!!」

 

 弧太朗が、今はもう見えないお母さんの背中に向かって叫ぶ。

 目を逸らしたくなるほど、悲痛な光景。

 私は前世も含めれば精神的にはもう大人だから受け入れられたけど、弧太朗は違う。

 子供にとっては、親が世界の全てだ。

 絶対的に信頼していたものを突然失う絶望は、私には計り知れない程大きいものだろう。

 だったら、私がやるべき事はひとつ。

 

「弧太朗、一緒に行こう」

 

 私はしゃがみ込んで弧太朗に声をかけた。

 

 原作の弧太朗は、この事がきっかけで心に深い傷を負い、死柄木弔が生まれる原因を作ってしまう。

 それは、この子が母親に捨てられた時、手を差し伸べてくれた人が誰もいなかったからだと思う。

 でもこの世界の弧太朗は違う。

 家族(わたし)がいる。

 

 お母さんの代わりに、私が弧太朗の側にいる。

 それが、私が弧太朗を幸せにする為にできる事。

 

「お姉ちゃんは、ずっと弧太朗の側にいるよ」

 

 私がそう言うと、弧太朗は私の手を取って歩き出す。

 私と弧太朗は、里親に手を引かれて、新しい家へと向かった。

 こうして私は、弧太朗の運命を変える為の行動に移り始めた。

 

 

 

 

 




人物紹介パート再び。

志村瑠奈(6)

本作の主人公。
カレンが死後転生した姿。
ブラコンを拗らせた6歳児。
母親似の美人さん。
弟を破滅の未来から救うべく、弟と一緒に生きると誓う。

“個性”:『ムーンフォース』

月光のエネルギーを利用して飛行できる“個性”。
原理は、月光の光エネルギーを吸収し、『ムーンフォース』という特殊な力を体表面に発生させて飛行するというもの。
『ムーンフォース』には、極端な気温差や気圧差から肉体を保護する効果もある。
月の満ち欠けによって力が増減し、満月の時はフルパワーを発揮できるが、日中と新月の時はほとんど“個性”を使えない。


志村菜奈(??)

主人公の母親。
『ワン・フォー・オール』7代目継承者にして、後のオールマイトの師匠。
オール・フォー・ワンとの戦いで致命傷を負った6代目継承者・揺蕩井煙から『ワン・フォー・オール』を継承した後、瑠奈と弧太朗の戸籍を別人のものに書き換え里子に出した。

本来の“個性”:『浮遊』

空中に浮遊できる。

受け継いだ“個性”:『ワン・フォー・オール』

力をストックし、別の人間に譲渡する“個性”。


志村弧太朗(6)

主人公の双子の弟。
かわいい(瑠奈アイ)。
姉からの愛情を受け、少しずつ原作とは違う運命を辿り始める。

“個性”:『エアフープ』

足元からリングを生み出し、リングを使って飛ぶ事ができる“個性”。


志村環太朗(??)

主人公の父親。
妻と子供達を守る為にガエンのチームに所属していたが、オール・フォー・ワンに敗れ命を落としている。

“個性”:『ムーンリング』

月光のエネルギーを使ってリングを生み出す“個性”。
月の満ち欠けによって力が増減する。
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