ヒロアカ世界に転生した者が千手を背負い過ごしていく。   作:名も無き住人

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今回は常闇戦です。また投稿ができない日が出てきます。申し訳ありません。


二十話

二回戦が近づいた。

 

 常闇踏陰。

 

暗闇の個性——ダーク・シャドウ。光に弱く、暗闇で強くなる。

 俺は控室でそれを考えた。

 スタジアムは屋外だ。昼間だから光は十分にある。つまり今日の常闇のダーク・シャドウは、通常出力に近い。

 

 ただ——常闇という人間は、個性以外は申し訳ないが洗練されているとはいえない、近づけば勝機はあるだろうが侮れない相手だ。

 

 そう考えたいると透がまた来た。

「次は常闇くんだね」

「ああ」

 

「常闇くん、すごく強いって聞いたよ、前のUSJでもヴィラン相手に一歩も引かずに戦ったって!」

「そうだろうな」

 

「……怖くないの?」

「怖くはない。ただ、面白い相手だと思う」

 

 透がしばらく黙った。

 

「悠太って、強い相手ほど嬉しそうだよね」

 

「……そうか?」

「うん。声のトーンが少し変わる」

 俺は少し考えた。

 

「……戦闘は好きだ。正直に言うと」

 

「知ってる」と透は言った。「悠太らしいと思う。でも、怪我しないようにね」

 

「する気はない」

 

「する気なくてもするのが怪我だから」

 

「……気をつける」

「よし」

 

——————————

 

  常闇踏陰がステージに上がってきた。

 静かな目をしている。俺と同じタイプ——饒舌じゃない。

「福本」

 

「常闇」

 

「お前の個性は見た。強い」

 

「お前もだ」

 

「一つ聞いていいか」

 

「なんだ」

 

「お前は勝ちに来ているか。それとも、個性の試験をしに来ているか」

 俺は少し考えた。

 

「両方だ」

 常闇が少し目を細めた。

 

「……正直だな」

 

「嘘をつく意味がない」

 

「俺は勝ちに来た。本気でいく」

 

「それでいい」

 常闘が静かに言った。

 

 「試合開始‼︎」

 

  開始の合図。

 常闇が即座にダークシャドウを展開した。

 巨大な影の獣が現れた。昼間だからか然程常闇本人と変わらない大きさだ。だか爪が鋭い。

 

「ダークシャドウ——!」

 ダークシャドウが俺に向かって突進した。

 俺は真数千手を顕現して——迎え撃った。

 

 ドォォン!!

 

 真数千手の腕とダークシャドウがぶつかった。辺りに衝撃が走った。

 ダークシャドウは影だ——物理的な打撃が通るか?

(通る……だが少し効きが悪いか)

 俺は感じた。影だからといって無敵じゃない。ただ、通常の打撃より効果が薄い。

 

「真数千手——壱乃掌!!」

 

 ドォォン!!

 

 壱の掌打がダークシャドウに叩き込まれた。

 ダーク・シャドウが——押し返された。

 

「くっ——!」と常闇が声を出した。

 

「もう一度だ!ダークシャドウ!」

 ダーク・シャドウが向かってくるが先程とは別の方向から再接近した。

 

「横から!!」

 ダーク・シャドウの爪と真数千手の腕がまたぶつかる

 

(速い。だか!俺の方が速い!)

 俺は後方に跳んで距離を取った。

 

 俺は先手を打った。

「真数千手——」

 千手の腕が地面を叩いた。

 

 ドォン!!

 

地面の振動が走った。舞台が崩れた。

 

「っ——! 地面を揺らしてを崩した……!?」

 

「常闇。お前は強い」

 俺は正面から言った。

 

「ダーク・シャドウの速さと力は本物だ。ただ——」

 

「ただ?」

 

「今日の光の量だと、お前の本来の力が出ていない。それが惜しい」

 常闇がしばらく黙った。

 

「……お前は今、俺を憐れんでいるのか」

 

「違う。事実を言っている。暗闇のお前と戦いたかった。それだけだ」

 常闇の目が変わった。

 

「……それは、俺への侮辱か」

 

「褒め言葉のつもりだった」

 

「ならば——」

 常闇が低く言った。

 

「今の俺で、お前に勝つ」

 ダークシャドウが膨張した。昼間にしてはおかしな大きさだ。常闇が意志で力を引き出している。

 

(本気になった)

 

 俺は少し、高揚した。

 

 膨張したダーク・シャドウが突進した。

 今度は速さが段違いだ。

 

 (恐らくは力も増しているはず……)

 

 「真数千手——壱乃掌!!」

 

 ドォォン‼︎

 

 またさっきと同じと思ったが、そうはならなかった。

 

 完全には止まらなかった。ダークシャドウが腕の間を縫って、俺の体に向かって伸びてくる。

 

 爪が俺の左肩を掠めた。

 

 ガキッ——!

 痛みが走った。浅い傷だが、確かに当たった。

 

「当たった……!」と常闇が言った。

 

「ああ。当たった」

 俺は傷を確認した。深くはない。動ける。

 

「常闇。もう一度言う。お前は強い」

 

「……まだ終わっていない」

 

「……そうだな」

 

 「真数千手——日輪ノ環」

 

 大きな螺旋丸の中に、更に小さな螺旋丸を複数内包して放つ必殺技。

 

 ダークシャドウが本人を守ろうとして常闇の前に立った。

 

 ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!!

 

 ダーク・シャドウを日輪ノ環が突き破り、常闇の体を後方に吹き飛ばした。

 常闇がステージの端まで飛んだ。立ち上がろうとした。

 ダークシャドウが——萎んだ。常闘のダメージが大きい。

「……」

 常闇が膝をついた。

 

「……参った」

 静かな声だった。

 

「勝者、千手悠太!!」

 

 ステージを降りると、常闇が近づいてきた。

 

「千手」

 

「なんだ」

 

「暗闇のお前と戦いたかった、と言ったな」

 

「ああ」

 

「……それは、俺への敬意だったか」

 

「そうだ」

 常闇が少し黙った。

 

「……いつか、暗闇の中で戦おう。その時は負けない」

 

「楽しみにしてる」

 常闇がわずかに頷いて、去っていった。

 

 俺はその背中を見送った。

 

(良い奴だ)

 

 素直にそう思った。

 

——————————

 

 準決勝の前に、休憩があった。

 クラスの席に戻ると、透が飛んできた。

 

「悠太! 肩、大丈夫!?」

 

「浅い。問題ない」

 

「でも血が……!」

 

「リカバリーガールの所に行ってくる」

 

「行こう! 私も一緒に行く!」

 の勢いに押されて、リカバリーガールの所に行った。治療してもらいながら、透がずっと心配そうにしていた。

 

「透」

 

「なに?」

 

「心配してくれてありがとう」

 透が一瞬固まった。それから「……ううん、大丈夫! 悠太がいてくれたおかげで私も皆んなもUSJを生き延びたんだから……!」と言った。

 

「あの時の話は関係ない」

 

「関係あるよ! 私、ずっと言えてなかったけど……悠太のこと、改めてすごいと思ってる。強さだけじゃないの、考え方とか……一緒にいて不思議と楽しい感じかするの!」

「それに私が目指すヒーローに近いのかもしれないし!」

 俺は少し驚いた。

 

「俺はヒーローになる気はないが」

「わかってる!……でも……」

 透が言い淀んだ

 

「……そうか」

 

「嫌だった?」

 

「嫌じゃない。ありがとう」

 透が「ううん!どういたしまして!」と言った。

 

 俺はそれを聞いて、少し笑った。




次回はVS爆豪戦となります。
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