ヒロアカ世界に転生した者が千手を背負い過ごしていく。   作:名も無き住人

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職場体験開始から1日経過です。
そして遅くなりましたがUA三万超え達成しました 本当にありがとうございます。


二十四話

 職場体験当日の朝。

 

 俺は六時に起きた。

 いつもより少し遅い、疲れが残っていたのか珍しく目が覚めなかった。

 台所に下りて、味噌汁と白飯を作った。シンプルでいい。今日は動く日だ。余計なことに頭を使わなくていい。

 

 食べながら、今日のことを整理した。

 リューキュウ事務所。プロヒーロー・琉球の事務所だ。

 ねじれから聞いた話では、リューキュウは丁寧で、例え生徒でも話をちゃんと聞いてくれる人だという。俺はその言葉を信じている。ねじれの人を見る目は、悪くない。

 

 俺はご飯を食べ終えて、準備をした。

 

 透が来た。

「おはよう、悠太。今日から職場体験だね」

「ああ」

「緊張してる?」

「してない」

「本当に?」

「本当だ。ただ、何を学べるかは楽しみにしてる」

 

 透が少し笑った。

「悠太は緊張する場所が人と違うよね」

「そうか?」

「うん。戦いの前は緊張しないのに、初めて会う人の前では少し固くなる気がする」

 

 俺は少し考えた。

「……そうかもしれない」

「初対面、苦手?」

「苦手というより——相手がどんな人間かわかるまで、少し時間がかかる」

「それ、緊張じゃないの?」

「緊張ではない。観察だ」

 透がまた笑った。

「悠太らしい言い方だね」

「一緒に行くか?」

「うん。途中まで一緒に。私は別の方向だから、駅で分かれる」

「そうか。気をつけろ」

「悠太も。怪我しないようにね」

「する気はない」

「その台詞が一番心配なんだよ」と透は言った。

 

 集合場所に到着すると、各々が別の地域に行きそれぞれのヒーロー事務所に出向く為全員アタッシュケースを持って駅のホームに集合している。

「おはよう」

「おはよう千手くん」

「ああ、おはよう」

「おっはっよ〜〜」

 駅に集合した際、緑谷や麗日達と朝の挨拶をする。すると何人かが何処に行くのか質問し始めていた、すると緑谷が。

 

 「そういえば千手くんは何処に職場体験に?」

 「俺はリューキュウ事務所だ」

 これには麗日も反応し

 

 「凄い!!ビルボードチャートトップ10に入っとるヒーローやん!!」

 「どうしてそこに?」

 「俺の真数千手とドラゴン……大きな攻撃、可能で巨体を使う……そんな中街中等でどのようにヒーローを行えるか見てみたくてな……」

 

 そんな話をしていると相澤先生がやってきた。

 相澤先生から説明を受け、最後に

「コスチューム持ったな、本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」

「はーい!!」

「伸ばすな「はい」だ芦戸、くれぐれも失礼の無いように!じゃあ行け」

 と言われ、各自、自分達が行くべきヒーロー事務所のある地域の電車に乗る準備を進める。

 

 俺も準備していると飯田がそそくさと向かおうとしている姿が目に入った。それが気になって俺達は飯田に声をかける。

 

「飯田くん…本当にどうしようも無くなったら言ってね、友達だろ?」

「飯田、無理だけはするなよ」

「・・・あぁ」

俺と緑谷がそう言って麗日と透がそれに同意するように首を縦に振ると飯田はそう静かに答えて行ってしまった。俺には、いや恐らく皆その背中はとても悲しいように見えたはずだ。

 

 暫くするとねじれが来た。

 水色のロングヘアが朝の光に揺れている。

「悠太!!今日から一緒だね!!」

「ああ。よろしく頼む」

「こっちこそ!!てか悠太今日、リューキュウに会うの楽しみじゃないの?私は悠太と一緒にできるからもう昨日から楽しみで眠れなかったくらい!!」

「眠れたか?」

「三時間くらい……」

「ちゃんと寝ろ」

「わかってるけど眠れなかったんだもん!!」

 透が「大丈夫?」と聞いた。

「大丈夫!!テンション上がってるから!!」

「テンションで動く体か」

「そう!!悠太はテンションで動かないの?」

「動かない。常に同じ状態で動く」

「……それ、羨ましい気もする」

 俺は少し考えた。

「お前みたいに感情で動ける方が、俺は羨ましいと思うことがある」

 ねじれが固まった。

「……悠太が羨ましいって言った」

「たまには言う」

「嬉しい……!!」

 透が「早く行かないと電車に遅れるよ」と言った。

「行こう」

 

 暫く歩き駅で透と別れ、ねじれと二人になった。

 電車に乗りながら、ねじれが「緊張してる?」と聞いた。

 

「してない」

 

「私はしてる!!また悠太にお世話になる感じで、なんか恥ずかしいし」

 

「お世話じゃない。俺が行きたいから行く」

「……でもきっかけは私が話したからじゃん」

「それでいい。きっかけがなければ行けなかった。ねじれのおかげだ」

 ねじれが窓の外を見た。

 

「……悠太って、ちゃんと感謝するよね」

「当然だろ」

「当然じゃない人も多いよ」

「そうか。俺には当然のことだ」

「……好きだな、そういうとこ」

 ねじれが小さく言った。

 俺はその言葉を聞いた。

 返事をしなかった。でも、ちゃんと受け取った。

 

 事務所の外装は唐人屋敷を模した外観の建造物だった。

 (リューキュウさんのヒーローコスチュームもチャイナドレスだし、いろいろと中国をリスペクトしているのだろうな)

 そう思いながら俺はねじれと一緒に事務所の玄関を開けた。

 

 「失礼し……『パァンパァン!!……!?」

玄関の扉を開けると外装とは一風変わったクラッカーを鳴らす音が自分に向けられている事に気づく、音に驚き思わず身構え個性を使おうとまで考えてしまった。

『ようこそ!!リューキュウ事務所へ!!』

「はっ?」

すぐさま体に目を向けるとクラッカーの飛翔物のテープがまとわりつき、目の前には使い終わったクラッカーを持つリューキュウさんやそのサイドキックの人達が見えた。今のこの状況を飲み込もうとしてる中、ねじれが接近して俺の手を持ち。

 

 「サプライズ大!成!功!!」

 

 俺は恐らく全てを察したが後ろにいるリューキュウがこうなった訳を改めて説明してくれた。

「ごめんなさいね、ねじれがどうしても貴方にサプライズをしたいって言うものだから」

 「そ、そうですか……」

ただの職場体験だというのに俺1人の為にわざわざこんな事してくれたのかこの人達は……

 

「ねぇねぇ、どうだった?どうだった?驚いたかな?」

「……驚いたよ」

「ヤッタァー!」

 はぁ、と溜息はつくものの悪くないとも思う自分がいた。

 

「体育祭、見てたよ」

「そうですか」

「良い戦い方だった。特に爆豪くんとの準決勝——あれは見応えがあった」

「負けました」

「負け方も大事だよ」

 

 俺はその言葉を少し考えた。

「……負け方、ですか」

「ああ。どんな負け方をするかで、その人間の器が見える。君の負け方は——最後まで楽しんでいた。それは本物だ」

 俺は何も言わなかった。でも、受け取った。

「まず事務所の説明をするね。それから、私の考えを話したい。良いかな?」

「はい」

 

 事務所の説明を受けながらしばらく歩いているとある一室の前まで連れてこられた。

「ここが貴方の部屋よ」

リューキュウさんは部屋の扉を開けてそう言った。部屋は約5畳程の部屋で、それと見るからに最近掃除した形跡があるのが分かる。

「元々は空き部屋だったんだけど、貴方が来るって分かって皆で掃除して綺麗にしたのよ。ごめんね、こんな部屋しか無くて」

「いえ気にしないでください。わざわざ俺なんかの為にありがたい限りです」

「そう言ってくれるとありがたいわ。……さてこれで事務所の案内は終わりよ」

 

 事務所の説明が終わった後、さっきまでと打って変わり真剣な表情でリューキュウさんが話しかけた。

「一つ、聞いていいかな。千手くん」

「なんですか」

「君は、ヒーローになるつもりはない、と聞いた。将来の目標は歌い手だと」

「はい」

「それでも今、ここに来た。なぜ?」

 俺は正直に答えた。

「学べることがあると思いました。それと——ねじれが声をかけてくれたから」

 リューキュウさんがわずかに笑った。

「正直だね」

「嘘をつく意味がないので」

「そういう人間が好きだよ、私は」

 

 リューキュウさんが椅子に深く座った。

「君に一つ、話をしてもいいかな。ヒーローとは何か、という話を」

「ぜひ」

「押しつけにはならないよう気をつける。君の将来には直接関係ない話かもしれない。でも、力を持つ人間として、聞いておく価値はあると思う」

「聞かせてください」

 

 リューキュウさんが話し始めた。

「ヒーローというのは、よく「人を守る仕事」と言われる。それは正しい。でも——それだけじゃないと私は思ってる」

 

「どういうことですか」

 

「人を守るには、まず人を見なければならない。目の前にいる人間が何を恐れていて、何を必要としているか。それがわからなければ、守ることはできない」

 俺は聞いていた。

 

「強い個性を持つ人間は、時々それを忘れる。力があれば守れる、と思いがちだ。でも、力は道具に過ぎない。使う人間の目が、力の方向を決める」

「……目、ですか」

「そう。何を見ているか。誰を見ているか。それがヒーローの本質だと私は思ってる」

 

 俺は少し考えた。

「俺はヒーローになる気はありませんが——その話は、ヒーロー以外にも当てはまりますか」

「当てはまると思うよ。力を持つ人間すべてに」

「力というのは、個性だけじゃなく」

「そう。影響力でも、技術でも、言葉でも——誰かに何かを与えられる力を持つ人間は、みんな同じ問いを持つべきだと思う。自分の力で、何を見るか」

 俺はしばらく黙った。

 歌い手。声。聴く人間。

 俺の将来の目標と、今聞いた言葉が、静かに繋がった。

「……わかりました。受け取ります」

「うん」とリューキュウは言った。「それで十分よ」

 

 その後は職場体験のガイダンスを行い、プロのヒーロー達がどういった活動を行っているか、プロヒーローが活動する前の過程はどうするか、外での活動が無い書類を纏める仕事はどうやるのか等を教えてもらった後、午後から、事務所のルーティンに入った。

 パトロール。書類整理。連絡対応。地味な仕事が多い。

 俺は黙って動いた。

 ねじれは元気に動いていた。先輩にあたるサイドキックやスタッフの方とも話しながら、テキパキと仕事をこなしていた。ねじれの社交性は、こういう場所でも力を発揮する。

 

 パトロールの途中、リューキュウさんが隣に来た。

「千手くん、質問していい?」

「はい、構いません」

「君の個性——真数千手だったね。あれを使うとき、何を考えてる?」

「状況を見て、必要な出力を決めています。どの技を使うか、どの角度で当てるか」

「瞬時に計算できる?」

「戦いの中では、考えてというより体が動く感じです。でも根底には計算がある」

「なるほど」とリューキュウさんは言った。「それは訓練で身についたの?」

「訓練というより、戦いの中で身についた部分が大きいです。ただ——まだ上限が見えていないことが気になっています」

「上限が見えない?」

「個性の本当の最大出力を、まだ試したことがありません。オールマイトにも、段階的に確認するよう言われました」

 

 リューキュウさんが少し考える顔をした。

「……それは大事なことだね。力の上限を知らないまま戦場に出るのは、燃料計のない車で遠出するようなものね」

「そうですね」

「ここでの体験中に、もし安全な環境で試してみたいなら、相談してちょうだい。そういう場所と状況を用意するのも此方の役割だから」

 俺はその言葉を受け取った。

「……ありがとうございます。検討します」

その日は何事もなくパトロールを終え、初日は終わりを迎えた。




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