ヒロアカ世界に転生した者が千手を背負い過ごしていく。   作:名も無き住人

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因みにオリ主はステインとは戦いません。理由は瞬殺しちゃって、原作が崩壊しまくるからです。上手く描ければそれでいいんでしょうけど、自分にはできないのでステイン戦は原作通りとなります。


二十六話

三日目

 

 朝

 おはよう、悠太。昨日の夜、LINEしたけど返信遅かったね」

「寝てた」

「珍しい。早かったんだね」

「昨日は疲れた」

「職場体験での疲れがまだ残ってたのかも」

「そうかもしれない」

 透が台所の椅子に座った。

「〇〇さんとこ、どうだ? 初日と二日目?」

「どうだ、とは」

「雰囲気とか、仕事の感じとか」

「まだ一日二日じゃだからわからないけど、思ってたより静かかな?と思ったら意外と賑やかな場所だった。緊張しないで動けそう!」

「透に合いそうだね」

「うん。私もそう感じた。もう少し続けてみないとわからないけど」

「楽しみながらやれ」

「うん」と透は言った。「悠太も、今日も頑張ってね」

「頑張る」

 午前中はパトロールや事務作業等の基本的な事を実戦形式で教えてもらい、それをこなしていく。といった感じで時間が過ぎていった。リューキュウさんもサイドキックの方々も丁寧に教えてくれ、またねじれもさすがに経験が違う為か中々にタメになる事を教えてくれたりした。

 

 午後は昨日の振り返りとしてまた10パーセントからやり、昨日よりも感覚的には掴めていたが、やはり一朝一夕では身につけることはできないな、と感じることしかできなかった。

 

 (……逆に俺はいつ六十パーセントの壁を越えたんだ?)

 

 疑問はやはりそこにつきる。俺はいつ越えた?どんなに思い返してもわからない。

 成長か雄英に入り鍛えてきた中か……それともまた別の要因か少なくとも自然とというわけでなさそうではあるが……考えても仕方ないか。と、思っていると。

 

 「釈迦、パトロールに行くわよ」

とリューキュウさんから声をかけられ俺は「すぐに行きます」と答えた。

 

 パトロールでは倒れて動けなかなったお婆さんや迷子の子供、コンビニ強盗のヴィランの退治等があり、昨日一昨日と比べると少し詰め込まれた内容だった。

——————————

 

 事務所に戻ってから、リューキュウさんが二人を呼んだ。

「今日、良い動きだったよ、二人とも」

「ありがとう!リューキュウ!」とねじれ。

「ありがとうございます」と俺。

「千手くん、お婆さんに声をかけた時——「俺たちがいます」と言ったね」

「はい」

「あれは、自然に出た言葉?」

「……自然に出ました」

「「俺がいます」じゃなくて、「俺たちがいます」だった。ねじれを含めた言葉だった」

 

 俺は少し考えた。

「ねじれが動いていたから、自然にそうなったと思います」

「そういうことだよ」とリューキュウさんは言った。「一人じゃない、ということが伝わると、人は安心する。君は今日それを、言葉にできてた」

 俺はその言葉を受け取った。

 ヒーローとは何か、という問いの、一つの答えを見た気がした。

 

——————————

 ねじれがスマートフォンを見た。

「透ちゃんからLINE来てる」

「そうか」

「読むね」

 ねじれが読み始めた。途中で「あー、透ちゃんらしい」と言った。

 

「何が書いてあった」

「〇〇さんとこでね、透ちゃんが今日初めて一人で対応した場面があったんだって。上手くいかなかったけど、〇〇さんにフォローしてもらって、終わってから「あなたは今日、ちゃんと動こうとしてた」って言ってもらったって」

「そうか」

「なんか……透ちゃんらしいなって。上手くいかなくても、動こうとしたことを見てもらえる場所にいるんだなって思って」

「良い場所だな」

「うん。透ちゃんに合ってる」

 俺はスマートフォンを取り出して、透にLINEを送った。

「今日の話、聞いた。動こうとしたことは本物だ。続けろ」

 すぐに返信が来た。

「……ありがとう。悠太にそう言ってもらえると、本当に頑張れる気がする」

 さらに一行あった。

「なんか今日、ちょっと泣きそうになった。いい意味で」

 俺は少し止まった。

 

「透、泣きそうになったって言ってる」

「えっ」とねじれが言った。「大丈夫なの?」

「いい意味で、と書いてある」

「……あ、そっか。良かった。透ちゃん、頑張ってるんだね」

「ああ」

「悠太から送ったの? 今の」

「ああ」

「……悠太、やっぱり優しいじゃん」

「普通のことだ」

「普通じゃないよ」

「そうか」

「そうだよ」

 ねじれがスマートフォンをしまった。

 

 俺もスマートフォンをしまった瞬間に一通のメールがきた、緑谷からだった。しかし妙だったのがメールにはマップが表示され、1つのポイントに位置情報のピンマークが記されていた。

 

 (緑谷がこんなメールを送るとは……何かあったな……)

 

 透からも「緑谷くんから変なメールきた」と言っている為恐らくはA組全員に送ってるとみた。

 (この地図の場所は確か……まさか!ヒーロー殺しか!)

俺はこの時自分の勘の良さを少しだけ恨んだ。何故なら知ってしまった以上無視はできないがここからでは遠すぎて今から向かっては間に合わないからだ。

 (どうか無事でいてくれよ)と願うしかなかった。

——————————

 四日目

 

 あの後ヒーロー殺しは逮捕された、エンデヴァーに捕まったとニュースで報じてはいるが、俺にはわかった。ヒーロー殺しは職場体験者には荷が重すぎる案件……その為何らかの取引があったのだろう、と。あの後緑谷から変なメールをしてごめんなさいと連絡がきて無事を確認しでき俺は職場体験に集中した。

——————————

職場体験最終日

 

 俺は六時に起きた。

 いつもより少し遅い。昨日、ノートに色々と書いていたら夜が更けた。

 

 朝食を食べながら、今週のことを振り返った。

 リューキュウさんとの会話。実際のプロの現場。ねじれとの救助。訓練スペースでの上限確認。

 

 一週間で、色々なものが見えた。

 力の方向を決めるのは、使う人間の目だ。

 その言葉が、まだ胸の中にある。答えは出た、とは言えない。でも、方向は少し見えてきた。

 俺はご飯を食べ終えて、静かに準備をした。

 

「おはよう、悠太。今日で最終日だね」と透からLINEがきた。

「ああ」

「……どんな感じ?」

「終わる、という実感はまだない。ただ、今日で一区切りだとは思ってる」

 

「名残惜しい?」

 俺は少し考えた。

「名残惜しい、という感覚はある。ただ——終わりじゃない、という感覚もある」

「どういう意味?」

「リューキュウさんに教わったことは、今日で終わりじゃない。これから使い続けるものだ。だから終わりじゃない」

 透が少し笑った。

「……悠太らしい受け取り方だね!」

「透は今日で終わりか」

「うん。〇〇さんとこも今日が最終日。昨日、「また来てね」って言ってもらえた」

「それは良かった」

「うん。最初はうまくいかないことも多かったけど……最後の方は、少し動けるようになった気がして」

「動けるようになったのは、動き続けたからだ」

「……悠太にそう言ってもらえると、本当に嬉しい」

「事実だ。褒めてるわけじゃない」

「褒めてなくても嬉しいよ」と透は言った。

 

 事務所で書類を整理しようとするとねじれが来た。

 今日はいつもより静かな顔をしていた。

「おはよう、悠太」

「おはよ。どうした、静かだな」

「……なんか、最終日って思ったら、ちょっと寂しくて」

「そうか」

「毎日悠太と一緒に行けたの、楽しかったから。来週からまた別々になると思うと」

「別々になっても、会える」

「うん。わかってる。でも毎日は会えなくなるじゃん」

「ねじれ」

「なに?」

「今週、一緒にいられて良かった」

 ねじれが少し固まった。

 

「……悠太が、そういうこと言った」

「言った。事実だから」

「……嬉しい。本当に嬉しい」

「そうか……感情に浸ってる所悪いがここの所を教えてくれないか?」

「わかった!!任せて!!でもさっきの言葉、ずっと覚えてる!!」

 

 暫くしたらリューキュウさんが来た。

 いつもと変わらない顔だった。落ち着いた目をしている。

「おはよう。今日が最終日だね」

「よろしくお願いします」とお辞儀して言った。

「今日は特別なことはしない。普段通りに動いて、最後に少し話をしようと思う。いいかな」

「はい」

 

 午前中はパトロールだった。

 

 いつも通りのルートを歩いた。商店街、公園、住宅街。

 特に事件はなかった。

 ただ——今日は、街の景色が少し違って見えた。

 

 一週間で、この街に少し馴染んだ気がした。

 リューキュウが隣を歩きながら言った。

「今回の職場体験、どうだった?」

「充実した日々でした」

「何が一番印象的に残った?」

 俺は少し考えた。

「力の方向を決めるのは使う人間の目だ、という話が、一番残っています」

「それは初日に話したことね」

「はい。今週ずっと、その言葉を持って動きました。街を歩くときも、現場でも、訓練でも」

「変化はあった?」

 

「……少し。意識しなくても、相手を見て動けている場面が増えた気がします」

「それは本物の変化よ」とリューキュウさんは言った。「意識してできることは、まだ技術。意識しなくてもできることが、本当の力になるの」

「ねじれにも、昨日同じようなことを言いました」

「そうなんだね」

「体に染み込んでいることが、一番強い、と」

「ええ。貴方は言葉にするのが上手くなってきているわね」

「透とねじれのおかげだと思います」

 リューキュウさんが少し間を置いた。

「……ねじれ以外にも大事な人がいるのね」

「はい」

「それも、力よ」

 俺はその言葉を受け取った。

 

 午後は書類整理と、簡単な連絡対応だった。

 ねじれは先輩スタッフと話しながら、仕事をこなしていた。

 俺は書類を整理しながら、今日リューキュウさんに話すことを考えていた。

 一つ、聞きたいことがあった。

 訓練のこと、ではない。

 もっと先のことだ。

 

 夕方、リューキュウさんが俺を呼んだ。

「最後に話をしようと思ってね。座って頂戴」

「これまでの君を見ていて、一つ思ったことがあるの」

「なんですか」

「君は、ヒーローに向いていると思う」

 

 俺は少し止まった。

「……俺はヒーローになるつもりはない、と最初に言いました」

「知ってる。でも向いている、という話をしたかった。向いているかどうかと、なるかどうかは別の話だから」

「……どういう意味ですか」

「今週君が動いた場面を見ていた。コンビニ強盗犯、倒れてたお婆さん、迷子の子供達。どれもこれも、君は考える前に体が動いていた。そして動きながら、相手を見ていた。それはヒーローの動き方だよ」

 

 俺は黙って聞いた。

「君が将来歌い手になるとしても——その力は、誰かを守るために使える。形がヒーローじゃなくても、本質がそこにある人間は、いつでもヒーローに近い場所にいると私は思う」

「……」

「押しつけじゃないのよ。ただ、伝えておきたかった」

 

 俺はしばらく黙って歩いた。

 リューキュウさんの言葉が、頭の中で転がっていた。

 向いている、という言葉じゃない。

 考える前に体が動いていた、という部分が、引っかかっていた。

 

 向いている、とリューキュウさんは言った。

 それは——俺自身も、薄々感じていたことかもしれない。

 

 体育祭で爆豪と戦ったとき、楽しかった。常闘踏陰と向かい合ったとき、高揚した。足場の現場で、考える前に走っていた。老婆が倒れた時、迷わず動いた。

 それは、戦いが好きだから、という理由だけじゃない。

 誰かのために動くことが——楽しかった。

 

(それが、ヒーローの動き方だとしたら)

 

 俺は考えを止めた。

 将来の目標は歌い手だ。それは変わらない。前世から、音楽が好きだった。声で誰かに届けたいと思っている。それは本物だ。

 だが——ヒーローになることと、歌い手になることは、どちらかを選ばなければならないのか。

 リューキュウさんの言葉を思い出した。

 

 形がヒーローじゃなくても、本質がそこにある人間は、いつでもヒーローに近い場所にいる。

 

(本質が、そこにある)

 

 俺は静かに、一つのことを考えた。

 ヒーローを目指しながら、歌い手も目指す。

 両方を、やる。

 それは欲張りかもしれない。でも——どちらも本物だ。どちらも諦める理由がない。

(やれる)

 俺はそう思った。根拠はなかった。でも、できると思った。

 

「少なくとも言えることは——今週で終わりじゃない。ここで学んだことを、これから使い続けてほしい。それだけだよ」

「はい」としっかり答え話は一旦終わった。




キリが少し悪いですがここで切ります、長くなりそうなので。申し訳ありません。
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