ヒロアカ世界に転生した者が千手を背負い過ごしていく。 作:名も無き住人
次の日……
ズーーーン
数名とんでもなく暗い……
「皆…土産話っひぐ……楽しみに……うぅしてるっ……がら!」
「まっまだ分かんないよ、どんでん返しがあるかもしれないよ……!」
「緑谷、それ口にしたらなくなるパターンだ……」
芦戸が涙を流しながらそう言うと緑谷がフォローするように言うが、瀬呂が緑谷の肩を持ってそう口にする。すると途端に上鳴は血相を変えた表情で緑谷に迫る。
「試験で赤点取ったら林間合宿行けずに補習地獄!そして俺らは実技クリアならず!これでまだ分からんのなら貴様らの偏差値は猿以下だ!!」
緑谷の目に指をさしながら嘆く上鳴に瀬呂が冷静にツッコむ。
「落ち着けよ長ぇ。分かんねぇのは俺もさ、峰田のお陰でクリアはしたけど寝てただけだ」
(確かにあれで合格にはならんだろうな……)すると峰田は瀬呂の話に聞き耳を立てて自慢げそうな顔をしている。
「峰田……調子には乗るなよ」
「何でだよ!いいじゃねぇかよ!今くらい!!」
「ここで調子に乗るとまたやり始めるからな……」
『確かに』
皆同意してくれた、それほどまでに峰田はある一つに関しては信頼が悪い方向に厚い。
すると教室の扉が開き、相澤先生が入って来て全員席に着く。先生も教壇に立ち、早速期末試験の話をする。
「おはよう。今回の期末テストだが……残念ながら赤点が出た。したがって……林間合宿は……全員行きます」
『どんでんがえしだァ!!!』
相澤先生が笑顔でそう発表して4人の表情が変わった。さっきまで空気は何だったのか……。話は続き筆記の方では赤点者は無し。実技ではさっきの四人と瀬呂が赤点らしい。
「確かにクリアすれば合格とは言ってなかったもんな〜」
それを聞いた瀬呂は顔を隠しながら嘆いていた。そして相澤先生の話が続く。
「今回の試験、我々敵ヴィラン側は生徒に勝ち筋を残しつつ、どう課題と向き合うかを見るよう動いた。でなければ課題云々の前に詰む奴ばかりだったろうからな」
「本気で叩き潰すって言ってたんじゃ……」と尾白と疑問を言うと、相澤先生はそれに答える。
「追い込む為さ、そもそも林間合宿は強化合宿だ。赤点取った奴こそここで力をつけて貰わなきゃならん。合理的虚偽って奴さ」
『ゴーリテキキョギィィー!!』
相澤先生が二カッとした顔でそう告げるとさっきの四人はさらにテンションをあげた声でそう叫ぶ。四人はバンザイまでして歓喜する。それとは別に遠くにいる飯田が悔しそうな表情を浮かべ震えていた……真面目だなぁ飯田
「またしてやられた……流石雄英だ!しかし!二度も虚偽を重ねられると、信頼に揺らぎが生じるかと!!」
「まァ確かにな、省みるよ、ただ全部嘘って訳じゃない。赤点は赤点だ。お前らには別途に補習時間を設けてる。ぶっちゃけ学校に残っての補習よりキツイからな」
相澤先生がそう言うと、切島達の上がっていたテンションは無くなり、そして一気に顔が青ざめた。ジェットコースターみたいなテンションしてんのな、君ら。
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放課後
放課後緑谷が話しかけてきた。
「千手くん、林間合宿、楽しみだね!!」
「ああ。訓練の機会が増える」
「そうだよね!!個性をしっかり使えるまたのない……! あと、皆で行くのも!!」
「緑谷は皆との方が楽しみそうだな」
「僕……そう言う経験ないから……」
「……すまない」
「ううん、気にしないで、だから凄い楽しみなんだ」
すると緑谷がノートを取り出した。
「あ、そういえば千手くんに聞きたいことがあって」
「なんだ」
「林間合宿に向けて、個性の訓練で何かやっておこうと思ってるんですけど……千手くんは何か考えてますか?」
「……そうだなぁ、俺は個性の上限の境界付近の扱いを、もう少し安定させたい。大体七十五パーセント増し位を維持できる時間を伸ばす訓練をしようと思ってる」
「なるほど……!」と緑谷がノートに書き始めた。「僕は超パワーの安定した使い方を……」
「緑谷」
「はい?」
「俺からも聞きたいことがある、体育祭の後位から動き方が変わった気がする」
緑谷がペンを止めた。
「……どうしてそう思うの?」
「ああ。力の使い方が、前より柔らかくなってる。腕だけじゃなく、全身で使うようになってきてる」
「……気づいてたんだね」
「見てれば気づく」
「……ありがとう。僕、まだ全然うまくいってないけど——少しずつ変わってる、って言ってもらえると、嬉しいです」
「事実だ」
「……千手くんって、いつもそう言うよね。事実だ、って」
「嘘をつく意味がないから」
緑谷が少し笑った。
「僕、そういうとこ良いとこだと思ってる。千手くんの」
「そうか」
「はい。あと——ヒーローを目指すって決めたって、葉隠さんから聞きました」
俺は少し止まった。
「透から聞いたか」
「はい。……本当ですか?」
「本当だ。だか歌い手も諦めない。でも、ヒーローも目指す」
緑谷が少し間を置いた。
「……歌い手……ですか」
「そうだ、俺は元々歌い手志望だった、たが雄英で過ごしていく中でヒーローを目指していきたくなった。」
「なんか……嬉しいな」
「何故だ」
「同じ方向を目指す人間が、また一人増えた気がして」
俺はその言葉を聞いた。
「緑谷」
「なに?」
「お前はいいヒーローになる。前にも言ったが、変わらない」
「……ありがとう」
と緑谷と話しているとクラスの皆の声が耳に入ってきた。
「何はともあれ、全員で行けて良かったね」
補習があるとは言え、一応は全員合宿に行ける事を安堵して尾白がそう言う。
「1週間の強化合宿か!」
「結構な大荷物になるね」
「水着とか持ってねーや、色々買わねぇとなぁ」
「暗視ゴーグル」
「峰田」
「はい」
全くコイツは…… そう思っていると透が見えない手をパンと叩いて注目の合図をする。
「じゃあさ、明日休みだし、テスト明けだし……ってことで、A組皆で買い物行こうよ!」
透がそう提案するとクラスがまた盛り上がりを見せる。
「賛成!!」
「私も行く!!」
「おぉ良い!!何気にそう言うの初じゃね!?」
「おい爆豪、お前も来い!」
「行ってたまるか、かったりィ」
切島が爆豪を誘うが案の定断られてしまう……ホント団体行動の欠如。
それを他所に緑谷が焦凍も来ないかと誘う。
「轟くんも行かない?」
「休日は見舞いだ」
「ノリが悪ぃよ!!空気を読めやKY男共ォ!!」
轟がそう言って断ると峰田が叫ぶ。いや爆豪は知らないが、轟はお見舞いがあるみたいだから許してやりなよ。
「そう言うな峰田、お見舞いなら仕方ないだろう。」
「そうかも知れねぇけどよぉ!」
流石に見舞いとわかっているから何ともいえないのか……やっぱりあれがなかったら割といい奴なんだな……あれが無ければ。
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次の日
ショッピングモールは、休日ということもあって人が多かった。
「悠太!!何買うの?!」とねじれが隣で言った。
「ねじれは来るのか」
「来ていいって言ってたじゃん!!幼馴染なんだから!!」
「来ていいとは言った」
「じゃあいい!!で、何買うの?!」
「林間合宿の準備だ。替えのタオルと、訓練用の手袋が傷んでいる」
「手袋? 個性使う時のやつ?」
「そうだ。体育祭と職場体験で使い込んだ。そろそろ替えを用意する」
「悠太って、そういうとこちゃんとしてるよね」
「当然だろ」
「当然じゃないよ。こういうの後回しにする人、多いから」
俺は少し考えた。
「道具の管理を怠ると、必要な時に使えない。それだけだ」
「……ホントにヒーロー目指すんだね」
「……ああ」
と話しをしているとしばらくして、クラスメイト達が集まり合流した。
「みんな揃った!!行こう!!」と芦戸が言った。
俺はねじれと一緒にそのまま合流した。
「ねじれ先輩!来てくれたんだ!!」と透が言った。
「悠太の幼馴染として参加します!!よろしく!!」
「よろしくお願いします!!」と皆が挨拶していた……因みに峰田はお家芸かの如く血涙していた。(ホントいい加減にしろよ……コイツは)
何はともあれ、皆賑やかな雰囲気でモールに入った。
皆其々買いたいものがあると思うと言い時間を決めて一旦解散となった。手袋とタオルを見つけるのは早かった。
必要なものをリストアップして、それだけを見て回った。迷うことはない。すると、ねじれが「もう終わり?」と言った。
「必要なものは揃えた」
「早すぎる!!もう少し見て回ろうよ!!」
「お前が見たいなら付き合う」
「本当に?!」
「ああ」
「やった!!じゃあ色々見よ!!」
ねじれが先に歩き始めた。
俺はその後ろを歩いた。
モールの三階にある雑貨店に入ったあたりだった。
少し、気配が変わった。
俺は足を止めた。
「どうしたの?」とねじれが振り返った。
「少しトイレに行ってくる」
「わかった! ここで待ってる」
「すぐ戻る」
俺は人の流れから外れて、モールの端の通路に向かった。
人が少ない場所だった。
そこに、一人の男がいた。
スラッとしてBARの店員のような服を着ている。そして顔が——黒い霧状になっている。
「何のようだ……黒霧……」
「やはり気付きますか……流石ですね」
「世間話でもしに来たのか……いや半々といったところか」
「素晴らしい!えぇその通りです。私が来たのは二つの理由、死柄木弔を守ること、そしてあなたと話すこと、ですよ千手悠太さん」
(死柄木もいるという事は……流石に今日何か起こすということではなさそうだな)
霧状の顔からは表情が読めない。でも、声のトーンと、体の向きと、立ち方を見た。攻撃の気配はない。今は、本当に話すつもりで来ている。
「喫茶店が近くにある、そこで話をしよう」と黒霧が言うと
「(下手に断ると周りが危険か……)いいだろう」
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喫茶店
二人ともコーヒーを頼みコーヒーが来ると同時に話し始める。
「一つお前に聞きたいことがさっきできた」
「何でしょうか」
「……お前、人間じゃないな」
「……何故そう思うのですか」
「気配だ、以前はそっちの気配を読でいたものの距離があったから気づかなかったが……だがここまで近づけばわかる、お前……何者だ」
「……その問いにはお答えできません。しかし気がついたサービスにお教えしましょう……貴方の感覚は正解です」
正解か……まさか!脳無か!それも普通の脳無じゃない。言語を持ち、会話ができる。それだけの知性がある。
(聞いてみたところではぐらかすか教えてもくれないだろう……)と思っていると。
「此方からもお聞きしたい事があります。」
「……なんだ」
「貴方はあの体育祭で見た千手観音の使い手だ」
「……そうだ」
「そして……最近ヒーローを目指すことを決めたと聞いた」
俺は少し止まった。
「どこで聞いた」
「情報は色々なところから入ります。詳しくは言えませんが」
「そうか(踏み込んでもダメだな)
「貴方は——なぜ、ヒーローを目指すことにしたのですか?」
俺は黒霧を見た。
なぜ、という問いだ。
答えはある。ただ、黒霧に答える必要があるかどうか——少し考えた。
答えながら、観察する。
黒霧が何を知りたいのか。何のためにこの問いを投げてきたのか。それを見る。
「別に答えてもいいが、その前に俺も聞く。なぜその問いを俺に投げてきた」
「君のことが気になったから、とだけ言っておきましょう」
「気になった理由は」
「確か…真数千手という名の個性でしたね、この個性の貴方の使い方だ。ヒーローでも、ヴィランでも、あの力の使い方ができる人間は珍しい」
「俺はヒーローを目指す」
「知っていますよ。だからこそ、聞きたかった。なぜ、ヒーローなのか」
俺はしばらく黙った。
黒霧の立ち方を見た。体重のかけ方。霧の動き方。この男は——俺の答えを、本当に聞きたがっている。試しているわけじゃない。純粋に、問うている。
「正直に言う」
「聞かせてほしい」
「誰かのために動くことが、楽しかった。銀行強盗等のヴィラン退治、老婆が倒れた時、迷子の手を引く時——考える前に体が動いた。それが楽しかった。その感覚が本物だと思ったから、ヒーローを目指すことにした」
「楽しかった、ですか」
「ああ。楽しくないものを続けることはできない。楽しいから動く。誰かのために動くことが楽しい。だからヒーローを目指す。それだけだ」
黒霧が少し沈黙した。
「……もう一つ聞いていいでしょうか?」
「聞け」
「貴方は、ヒーローが何のために存在すると思う?」
「人を守るためだろ。それ以上でも、それ以下でもない」
「では守れなかった時は?」
「守れなかった時は、次に守れるようになる。失敗は消えない。でも、次に活かせる」
「……」
「満足か」
「えぇひとまずは……といった所ですが」
「そうか」
(ふむ)「黒霧」
「何でしょうか」
「俺には、お前が何者かは関係ない」
「そうでしょうね」
「ただ、今日、お前は俺に問いを投げた。俺は正直に答えた。それだけだ、そうだろう」
「……えぇその通りです、ありがとうございます、千手くん」
「どういたしまして」
黒霧がコーヒーを飲んだ後少し体の向きを変えた。
「今日のことは……できれば、誰にも話さないでほしいのですが」
「それは約束できない、ヒーロー科の生徒だぞ」
「……そうですか」
「ただ……今日お前と話した質問のことを、誰かに話す気は今のところない。それは言える」
「……ありがとうございます」と言うとワープが広がり黒霧は暗闇の渦に消えて行った。
俺もコーヒーを飲み、そして思考する(脳無だった。しかも、普通の脳無じゃない)
今日の会話を整理していたら、スマホが鳴った。ねじれからだった。
「遅い!!!!!いつまでトイレにいるの!!!!」
(本当の事は言えまい……)
「すまない、偶然旧友に会ってな、話が弾んでしまっていた。すぐに戻るよ」と俺は会計をしてねじれの元に戻った。
「遅い!!!」
「すまない」と謝る
「もう!心配したんだよ!」
どうやら相当心配させてしまったようだ……
「まったくもう!……うん?」
「どうした?ねじれ」
「あれって……緑谷くんと麗日さんだよね?でもなんか……おかしくない?」
「なに」
そう思いながらねじれが指さす方を見ると噴水の近くには確かに緑谷と麗日の姿が見えた。
確かに何処か様子がおかしかった。
「麗日のやつ……何か……焦っている?」
麗日は携帯片手に人を呼んでおり、緑谷は遠目からでも分かる程の苦しそうな顔をしながら首を押さえているのが見えた。その時ある思考が生まれる。(……まさか)
もしかしたらと思って俺は二人の前に走り出した。
「すみません!誰かヒーロー呼んで下さい!」
「緑谷!麗日!」
「千手くん!それに波動先輩まで」
「何があった」
すると緑谷が涙を堪えながら苦しそうな様子で答えた。
「死柄木……弔がいた……」
「何!?」(やはりか……)
死柄木は緑谷に接触していたのか。
「来ているとは思っていたが……」
「来ているってどう言う事?」
(……しまった)俺とした事がやってしまった。話すしかないか……
「俺にもヴィランとの接触があった、黒霧というやつがな」
と言うと三人とも驚いた表情を見せる、特にねじれに至ってはフリーズしている。
しばらくして麗日の通報によりショッピングモールは一時的に閉鎖、区内のヒーローと警察が緊急捜査にあたったが結局見つからず、緑谷と俺は警察署に連れられ事情聴取を受けに行った。
如何でしょうか?死柄木がいるということは黒霧も近くにいるだろうという事で黒霧さんに登場していただきました。