ヒロアカ世界に転生した者が千手を背負い過ごしていく。 作:名も無き住人
席についてしばらく、俺は周囲を観察した。
爆豪——と黒板にある名前の金髪は今は席で腕を組んでいる。強さへの確信が全身から滲み出ていた。
デクと呼ばれた緑谷出久は、今は爆豪から視線を外して前を向いている。少し落ち着かなそうにしているが、目に熱がある。
右半分白、左半分赤の生徒——轟焦凍。表情が静かで、自分の中に完結している人間の雰囲気だ。
橙色の丸い顔の女子——麗日お茶子。隣の席の生徒と楽しそうに話している。笑顔が自然だ。
やがて教室に人が増えて話が盛り上がってきた頃、扉が静かに開いているのがわかった。 そこに横たわっていたのは——黄色い寝袋にくるまった、長身の男だった。
教室中が一瞬静かになった。
男は寝袋の中でもそもそと動きながらゼリーを飲んだ。そして低い、よく通る声で言った。
「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け」
「合理的でないものは嫌いだ」
『なんか!!いる!!』
「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
目の奥に光るものがある。この人間は本物だ、と直感的に思った。
「今から体操服に着替えてグラウンドへ来い」
教室がざわっとした。入学式は? という空気が一瞬広がった。
でも俺は動揺しなかった。こういう人間は理由なく動かない。
『個性把握テストぉ!?』
「入学式は?ガイダンスは?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出る時間ないよ」
「雄英は自由な校風が売り文句、そしてそれは先生側もまたしかり」
「お前らも中学の頃からやってるだろ?個性使用禁止の体力テスト」
「限界を知る、それが素地を形成する合理的手段」
「よって、個性ありの体力テストを行う!」
「個性ありか・・・」
「何それ?面白そう!」
「個性思いっきり使えんだ!さすがヒーロー科!」
グラウンドに出ると、相澤先生はこちらに向かって言った。
「面白そう・・か・・・。ヒーローになるための3年間、そんな腹づもりで過ごす気で居るのかい?」
「よし」
「8種目トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し”除籍処分”としよう」
『はあああ!?』
(やはりあるのか除籍処分・・・)
「生徒のいかんは俺達の自由」
「ようこそ、これが」
「”雄英高校ヒーロー科”だ」
「最下位除籍って・・・入学初日ですよ?いや、初日じゃなくても理不尽すぎる!」
「自然災害、大事故」
「そして身勝手な”ヴィラン”達、いつどこからくるかわからない厄災。日本は理不尽にまみれている。」
「そういうピンチを覆していくのが”ヒーロー”」
「放課後マックで雑談したかったならおあいにく、これから3年間雄英は全力で君達に苦難を与え続ける」
「さらに向こうへ。”Plus・Ultra”さ」
「全力で乗り越えてこい」
「じゃあまずデモンストレーションだ。爆豪、個性使って思いっきり、コレ投げてみろ。円から出なきゃいい」
「んじゃ、まあ、よっこら……。──死ねぇっ!」
爆音と共に、ボールが遥か彼方へと飛翔する。相澤の手元にある機械に出された数字は、705.2m。
だが先程の除籍宣言があった為か歓声は少なく、逆に自身に対する危機感を覚えてる者もいるようだ。
(さて…どうやるか)
「まずは個性を使って五十メートルを走れ」
俺は少し後ろの方で、他の生徒たちが走るのを順番に見ていた。
爆豪は爆発を使って加速した。あの爆発の制御は、かなりの精度だ。個性の扱いに完全に慣れ切っている。
緑谷は——個性なしとほぼ同等のタイムだった。超パワー系と本人は言っていたが、タイムに反映されていない。個性の使い方に問題があるのか、何か別の事情があるのかもしれない。
それ以上は考えなかった。他人の個性の事情に首を突っ込む趣味はない。
轟は氷を地面に引いて滑るように走った。制御が高い。
飯田は足から排気を出して加速した。個性と体の使い方が一致している。
そして俺の番が来た。
個性なしで走ったら、「個性ありで」という指示が出た。
ラインに立って、息を吸った。
背後に——意識を向けた。
顕現する。
真数千手が、俺の背後に広がった。黄金色に輝く、無数の腕。放射状に展開されたそれは、一本一本が独立して動く。光が後光のように広がって——グラウンドに影を落とした。
一瞬、周囲の空気が変わった。誰かの息を飲む音がした。
俺は前だけを向いた。
スタートの合図。
背後の腕から推進力を絞り出して、地面を蹴った。五十メートルが——短かった。
ゴール。タイムが出た。
「……個性の制御が高い」
相澤先生が静かに言った。
「ありがとうございます」
「自覚はあるか」
「制御できているとは思っていますが、上限はまだわかっていません」
先生が「そうか」とだけ言って、次の計測に移った。
それから続けていき腹から光を出す者、バイクを作り走る者、腕を増やして計測する者、舌を伸ばす者等色んな個性を見ながら、握力、立ち幅跳び、長座体前屈——それぞれに個性を使って挑む。
俺は各テストで、真数千手をどう組み合わせるかを考えながら動いた。
握力は背後の腕を補助に使って加圧を上げる。
立ち幅跳びは、跳んだ瞬間に背後の腕で地面を押して推進力を足す。
そして第一種目から第八種目まで計測が一通り終わって、全員がグラウンドに集まった。
「じゃあパパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ、口頭で説明すんのは時間の無駄なんで一括開示する」
俺は四位だった、そして 緑谷出久の最下位が表示される。
「あ、あぁ・・・」
「因みに除籍はウソな」
『はぁぁぁ!?』
「あんなのウソに決まってるじゃない・・・ちょっと考えれば分かりますわ」
(いや・・・あの目は本気で除籍する目だった・・・緑谷に何か可能性を見たのか?)
それだけ言って、先生は校舎の方へ歩いていった。
ざわめきの中。
「あの……」
振り向くと、緑谷出久が少し緊張した顔でこちらを見ていた。
「えっと、さっきの個性、すごかった! 背後に千手観音が出てきて——あのっ、個性の名前、聞いてもいいですか……?」
「真数千手」
「真数千手……!」
緑谷はその名前を噛みしめるように呟いた。それから気づいたように顔を上げた。
「あっ、えっと、僕、緑谷出久! よろしくお願いします!」
「千手悠太、よろしく」
「よろしくお願いします……っ!」
緑谷は深く頭を下げた。真面目な人間だ。目に熱がある——でも、どこか自信なさそうだ。熱量があるのに、出して良いかどうか迷っているような。何か隠している雰囲気を持っているような。
不思議な人間だと思った。というか……
「緑谷くん早くその指治しに行った方がいいんじゃない?」
「あっ」
四位なのは書いた五十メートル走しか真面目にやらなかったからです、目立ちたくないからという理由で。流石に舐めプして推薦組と爆豪は超えられませんでした。ただ戦闘でしたら超えています。因みに順位は四位にオリ主が入っているだけでその為一個下に下がっているだけとなります。