ヒロアカ世界に転生した者が千手を背負い過ごしていく。 作:名も無き住人
俺は六時に起きて、台所に立った。
今日は透の分も作る。
昨夜「明日早めに来る」とLINEが来ていたから、六時半には間に合うように出汁を引いておく。
昆布だしに椎茸を加えた。少し甘みが出る。今日は豆腐と長ねぎにしようと思っていた。
窓の外がじわじわと明るくなっていく。
今日も良い天気だ。
俺はだしを取りながら、今日の授業のことを少し考えた。
相澤先生の授業が続くならば——また何か、普通じゃない展開がある気がする。
昨日の「除籍宣告」もそうだったが、相澤先生は常に何かの意図を持って動く。今日も同じだろう。
どう来ようと、受けて立つだけだ。
(楽しみだな)
俺は素直にそう思いながら、豆腐を切った。
六時二十分に透が来た。
「おはよう、悠太」
「おはよ。早いな」
「眠れなくって。昨日より緊張してる」
「昨日もそれを言ってたな」
「昨日より昨日が怖かったし、今日も昨日より怖い」
「毎日更新してるのか」
「……笑わないでよ」
「笑ってない」
「口元が笑ってる」
「気のせいだ。入れ」
透が「気のせいじゃないよ」と言いながら上がってきた。
台所に座って、お椀に盛った吸い物を受け取った透が一口飲んで、
「……おいしい」と言った。
「今日は豆腐にした」
「昨日のより少し優しい味がする」
「椎茸のだしを足した。朝に飲むのに向いてると思って」
「……悠太って、その日の気分で変えてるの?」
「大体そうだな。今日みたいに透が緊張してそうなときは、重くない方がいいと思った」
透が少し黙った。
「……そういうとこ、ずるい」
「何がずるいんだ」
「そういう気遣いを、さらっとするとこが」
「ずるいのか、それは」
「悠太に言わせると全部「普通のこと」になるから、余計にずるい」
俺は答えなかった。
透が続けて吸い物を飲んだ。窓から朝の光が差し込んで、空っぽの手袋とお椀を照らした。
登校して、教室に入ると——緑谷がもう来ていた。
昨日より早い。そして昨日より顔色が良かった。右手には包帯が巻かれている。
俺が席に着くと、緑谷がすぐに気づいてこちらを向いた。
「お、おはよう、千手くん……!」
「おはよ。指は?」
「あ、えっと……リカバリーガールに治してもらって、もうほとんど大丈夫になったよ」
「そうか。良かった」
「うん……! あの、昨日は……色々、ありがとう」
「礼はいらないと言ったが」
「……でも言わずにいられなくて」
緑谷が頭を下げた。
「じゃあ受け取っておく。その分、強くなれ」
「……うん!」
緑谷の声に、確かな力があった。昨日より——前を向いている。
雄英高校のスケジュールはどの学科も基本、日曜日を除いた週6日制……
ヒーロー科以外は平日は6時限目まで、土曜日のみ4時限目までなのに対し、ヒーロー科のみ平日は7時限目まで、土曜日が6時限目までとなっている。
内容は国語などの必修科目から一般教養、専門教育学など多岐に渡り、ヒーロー科には加えて『ヒーロー基礎学』と呼ばれる専用の科目が存在した。
戦闘訓練から救助訓練、更に教養等々のヒーローの素地を形成する科目であり、日本最高峰と言われるだけあって、ヒーロー育成に力を入れている事が分かる。
とはいえ、そこを除けば授業風景は教師がプロヒーローである以外は変わらず……
「んじゃ、次の英文の内間違っているのは?」
正直午前の必修科目の授業内容は普通であった。
そして午後に行われるヒーロー基礎学の時間が訪れ……
「わ~た~し~が~~!!」
『バンッ!』
「普通にドアから来たっ!!」
ヒーローコスチューム姿のオールマイトが教室に入って来た。
『おおぉぉぉぉっ!!』
「オールマイトだっ!」
「凄ぇや、本当に先生やってるんだな!」
「あれ、銀時代シルバーエイジのコスチュームね!」
「画風違い過ぎて、鳥肌が!」
(オールマイト……凄いな、気がついたら肌がビリビリ震えている)
「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作るため様々な訓練を行う科目だ!
単位数も最も多いぞ!早速だが……今日はコレ、戦闘訓練!!」
力を溜めるポーズから、『BATTLE』と書かれたカードを出すオールマイト。
「戦闘……っ!」
戦闘訓練と言われ、出久の前の爆豪が思わず声を上げるほど昂る様子を見せる。
「そしてソイツに伴って……こちらっ!!」
オールマイトが壁を指差すと、壁が自動的にスライドし……
「入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえたコスチューム!」
『おぉぉぉっ!!』
収納されていたケースを見て更に興奮するA組生徒達。
「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだっ!!」
『はい!!』
グラウンドβの出入り口で待っているオールマイト。
すると、次第にこちらに向かって来る足音が聞こえてきた。
「恰好から入るのも大事な事だぜ、少年少女!!」
オールマイトの言葉を聞きながら、続々と入って来る生徒達。
「自覚するのだ、今日から自分は……ヒーローなんだとっ!!」
そんな彼等は、それぞれ用意されたコスチュームを身に纏っていた。
フルアーマーから私服の様なものまで、コスチュームの形は様々だったが
「良いじゃないか、皆!カッコ良いぜ!!」
オールマイトは満足気に頷き
「さぁ、始めようか!有精卵ども!!」
戦闘訓練の開始を宣言するのであった。
「チームを組んで建物内でヒーロー対ヴィランの模擬戦を行う。ヴィラン側は核を守り、ヒーロー側は核に触れるかヴィランを全員捕縛すれば勝利。制限時間は十五分。チームはくじで決める!」
飯田が意見を言いみんなが落ち着いた頃順番にくじを引いていきそしてくじが回ってきた。
くじを見たら一人だった。
クラスは二十一人。割り切れない。誰かが一人になる。それが俺だった。
「ほう…千手少年が選ばれたか。ならば君には特別ルールで動いてもらう。他の全ての組の試合が終わった後、最後の試合。千手少年一人対、もう一度くじを引き、そして引いた二人組と戦ってもらう!」
「了解です」
クラスがざわっとした。
「一人で二人と……?」
「千手くん、大丈夫なんですか……?」
「あの個性なら……でも、相手二人だぞ」
声があちこちから上がった。
俺は特に動じなかった。一人対二人。逆に言えば、相手が一人より多い方が俺の個性の本領が発揮しやすい。
(むしろ良い条件だな)
素直にそう思った。
コスチュームに着替えた。
俺のコスチュームは機能性重視のシンプルなものだ。動きやすい素材で、背後の腕の顕現を阻害しないよう背面が大きく開いている。デザインはほぼ真っ黒で、それだけだ。
他の組の試合が順番に始まった。
俺はモニターの前で、各試合を観察した。
それぞれの個性の使い方、連携の作り方、判断の速さ全部が参考になる。
そして——緑谷出久と麗日お茶子のペア対爆豪勝己と飯田天哉のペアの試合が始まった。
これが、今日一番の試合になった。
「ヒーローチーム、ウィーーーン!」
「おおっ! ……お? 負けた方が無傷で、勝った方が倒れてら」
気を失ったらしい緑谷と、許容限界を迎えた様子で蹲る麗日。立ち尽くす爆豪と、麗日を介抱する飯田。
どちらが勝者かわからない光景に、誰もが呆然としていた。俺は黙って、モニターに映っている緑谷の姿を見ていた。
折れた腕を、それでも前に向けている。
(……やっぱり面白い人間だ緑谷出久)
全ての試合が終わりいよいよ俺の番になった。千手少年、準備はいいかい?」
「はい」
「対戦相手は——尾白少年と瀬呂少年だ!」
俺はその二人を確認した。自己紹介で聞いた名前だ。
尾白猿夫——個性は「尻尾」。尾骨から伸びる白い尻尾を自在に操ることができる。尻尾の強度と柔軟性が高く、近接戦での制圧力がある。
瀬呂範太——個性は「テープ」。肘からテープ状の粘着物を射出できる。距離を問わず拘束に使える、汎用性の高い個性だ。
(近接と拘束の組み合わせか)
俺は少し考えた。
尾白が前に出て、瀬呂が距離を取りながらテープで縛る——という役割分担が自然な形だ。俺が近づけばテープで絡められ、距離を取れば尾白が追ってくる。
俺の真数千手は、数の多さと制御が強みだ。一対二なら——むしろ腕の数が活きる。
(問題ない)
俺はそう判断して、建物に向かった。
基本的に原作通りなのですが、だったら原作にあまり映ってない戦闘を描写してみたら?と思うかもしれませんが下手に手を出すとまだそこを上手く行える程経験も無ければ文才もないので行いませんでした。ただもし書けるようになったら番外編として出すかもしれません。
もう一つお聞きしたいのですがやはり読み辛いですかね、ちょっと変えてみましたが、申し訳ありませんが自分校閲等含め原稿の正しい書き方等がわからないのに書いてるのでこの様に書いたら?等のご指摘くださるとありがたいです。
(ホントなんで投稿始めたんでしょうね)