ヒロアカ世界に転生した者が千手を背負い過ごしていく。 作:名も無き住人
建物に入り数分が経過した。
薄暗い廊下。廃墟を模した構造で、壁が剥き出しになっている。
俺は入ってすぐに動きを止めた。
耳を澄ませた。
足音。二人分。片方が速い——尾白だ。もう片方が遅い——瀬呂が距離を取っているのがわかる。
(もう動いてるか)
俺は背後に意識を向けた。
真数千手が——静かに顕現し始めた。
最初は小さく。十本、二十本、五十本——と数を増やしながら、廊下に黄金の光が満ちていった。
腕の根元には、それぞれの掌の中心に光のエネルギーが宿っている。真数千手の「正の力」が各腕に行き渡っている証拠だ。
そして——真数千手の中心、本体の胸部にあたる場所に、光がじわじわと凝集し始めていた。
俺は呼吸を整えた。焦る必要はない。相手が来るなら迎えればいい。 最初に動いたのは、尾白だった。
廊下の角から、白い尻尾が鞭のように飛んできた。
ビュンっ——!
速い。予想より速い。が、俺に対処できない速さではない。
俺は背後の腕の一本を横に払って軌道を変えた。
ドゴォ——
腕と尻尾が衝突して、硬い音がした。
「っ——弾いた!?しかもどんでもなく硬い!」
尾白が驚いた声を出した。彼自身は角の陰にいて、尻尾だけ伸ばしている。
(しかも何時手を出したのかすらわからない速さ……)
「探りを入れてきたか。本気で来い」
「……言うね。行くよ」
尾白が角から飛び出した。
白い体毛と、長い尻尾。動き方が素早く、体幹が安定している。近接戦の動き方だ。
俺は一歩も動かなかった。 尾白が踏み込んできた瞬間——
ピュッ——! ピュッ——!
側面から、テープが飛んできた。
瀬呂が距離を取りながら、尾白との挟み撃ちを仕掛けてきた。
一本が左腕に巻き付こうとした。もう一本が右足首を狙った。
「連携が速いな」
俺は素直に言いながら——背後の腕を数本使ってテープを壁に固定した。張力を殺す。
「え——固定した?!」と瀬呂の声がした。
「腕が多い分、テープの対処は楽だ」
「なら——もっと数で!!」
瀬呂が連続してテープを射出し始めた。
シュンっ——シュルっ——シュルルっ——
廊下の壁、床、天井——あらゆる方向にテープが伸びてくる。同時に尾白が近距離で尻尾を連続して振ってくる。
シュっ——シュルっ——シュバっ——!
二方向からの同時攻撃。
俺はその全てを背後の腕で受け止めながら——少し笑った。
(こういう状況か——悪くない)
複数の脅威。複数の対処。千の腕が、それぞれ別の仕事をする。
単純な力で解決はできるが場所がそうさせないな、ならば、ここで取るべき選択は力ではなく精密な制御方だ。
真数千手——壱乃掌!!
たった一本の掌打が尻尾を押し込み、尾白の体ごと吹き飛ばした。
ドゴォン——!!
尾白の体が廊下の壁に叩きつけられた。壁にひびが入った。壁材が崩れ落ちた。
「っ——が……!!」
尾白が目を見開いた。
「こっここは……な!?……壁が……!? たったひとつの掌打で……!?」
「これでも手加減はしてる。大丈夫か?」
「て、手加減……!? これで……!?」
「本気を出すとが建物が崩れる、それにこれは訓練、だから抑えた」
尾白が言葉を失っていた。
瀬呂が距離を取りながら、今度は大量のテープを廊下全体に張り始めた。地形を変えたのを見て、正面からぶつかるのを諦め、拘束に特化した。判断が速い。
だとすれば——答えは一つだ。
動かずに——全てを薙ぎ払えばいい。
俺は真数千手の本体に意識を集中した。
胸部に凝集していた光のエネルギーが——螺旋を描き始め光の渦が作られていく。
一本の腕が、掌の中心に螺旋のエネルギーを宿す。
真数——日輪ノ環
そう言い放つと尾白と瀬呂がいる階だけでなく建物全体に光が差し込む
そして瀬呂が張り巡らせていたテープが——全て跡形もなく消し飛んだ。
壁が抉れた。天井が崩れ始めた。床に亀裂が走り崩れ始める。
「——っ!!!!」
瀬呂が気づいた時は既に壁際に吹き飛ばされていた。
「えっ……何が……今の……建物が……建物が崩れてる……!?」
「悪い。少し出しすぎた」
「少し……!? これが少し……!?」
「本来は屋外で使う技だ。建物内には向かない」
瀬呂が口をぱくぱくさせていた。
尾白も壁際から動けずに固まっていた。俺は真数千手を収めながら、二人に近づいた。
尾白が「……あの、捕縛テープ、巻いてくれ」と静かに言った。
「怪我はないか?」
真数千手を収めながら、二人に近づいた。
「……ない。壱ノ掌で壁に叩きつけられたとき衝撃はあったけど、ちゃんと受け身は取れた」
「そうか。良かった」
「というか……受け身取らせてくれたろ、わかるよいくら俺でも」
「……まぁな」
「でも……あれで手加減って……本気出したらどうなるんだ」
「頂上化仏という技がある、その技は全腕で殴りかかる。地形が変わる、では済まない。だから今日は出せない」
「……全腕……」
「二十人全員を相手にしても成立する技だ。だが、今日の条件では過剰だ」
尾白が静かに「……なるほどな」と言った。
瀬呂も「……俺は参ったよ」と両手を上げた。
俺は二人にそれぞれ捕縛テープを巻いた、そしてオールマイトの終了の声が聞こえた。
建物の外に出て、モニタールームに戻るとクラス全員が静かだった。
「……建物が……」
「ほぼ崩れてる……」
「あの光と爆発の音が……」
声があちこちから漏れていた。
その後オールマイトからというよりは八百万からの講評を終え、俺は制圧力は評価されたが、やはりというべきか建物を壊しすぎだと、これはオールマイトからも指摘があり、改善すべきと感じだが
(やはり屋内戦闘と手加減は難しいな……)
如何でしょうか?描写に関してはこればっかりは経験が物をいうと思っており良いのかわるいのかは私にはわかりません。その為何かありましたらぜひともご指摘ください。