「これはどう言うことだ!!」
ジャブローの会議室。政治家は、新聞を片手に会議に参加している将軍達に怒っていた。
「地球連邦軍の初勝利の新聞が戦略的価値もない小基地の奪還?ふざけてるのか!!」
政治家は、テーブルの上に新聞を叩きつけた。
「ふざけてないよ。その新聞の内容を許可したのは私だ」
そう言ったのはゴップだった。
「何を考えてるんですかゴップ閣下!!こんな戦略的価値もない基地を奪還した事を新聞に載せれば市民達は納得しませんしジオンの笑い者ですぞ!初勝利にするのならせめて戦略価値高い別の戦いの勝利を」
「それでどうなるのだい?」
ゴップの質問に政治家は、言葉を詰まらせた。
「確かに戦略的価値は低いし情勢にも大きく影響は、与えられないだろう。だが、大事なのはどんな小さな戦いとはいえ勝ったと言う事実が必要じゃないかね?」
ゴップはテーブルの上にある水が入ったペットボトルの蓋を開けて水を飲むと続けて言った。
「それに今回の作戦はある意味で我が軍の大勝利だ。なにせ、敵のモビルスーツを鹵獲することに成功したしたった1人の兵士で基地を奪還した。知ってるかい?今や彼は、兵士の間では【伝説の連邦兵】として神話を作り始めてることに」
「たった1人で基地を取り戻したのはそいつが運良くモビルスーツを鹵獲してそれを使ったからだ!!本来なら戦争犯罪者として咎めるべき」
その時だった。バンッ!テーブルを叩く音が響いた。それをしたのはレビル将軍だった。
「今は、そんな事を話し合ってる場合じゃないだろ!今、我々がしなければならないことは新型モビルスーツを開発することだ!」
「だから、我々は反対だ!モビルスーツを開発するならせめて戦力を回復させてから」
「それじゃ〜遅すぎませんか〜?」
そう言ったのはミンシュェンだった。
「そもそも、戦闘に関しては、我々《わたしたち》は、素人じゃありませんか。戦闘の方に関しては制服の連中に任せた方がいいのでは〜?」
「その予算とかをなんとかしてるのは政治家である私達だろうが!」
「あ、ちなみに我《わたし》は、モビルスーツの開発に賛成ですよ〜」
ミンシュェンは、右手をヒラヒラと小さく振りながら笑顔で言った。
「彼の言う通りだ。それでは遅い!旧世紀にあった大艦巨砲主義が航空戦力に負けた歴史を今、ここで再現するつもりですか!?」
会議は、荒れに荒れなんとか話がまとまるとさすがのゴップとミンシュェンも疲れた様子で出てきた。
「とりあえず、レビル君が押し通してくれてなんとかV作戦が始まった。ミンシュェン君にも苦労をかけた。反対派を堕とすのに苦労しただろ?」
「本当に大変でしたよ〜。頭が固くてなかなか首を縦に振らなかったんですから〜。口八丁で賛成派に寝返らせるのも苦労しましたよ〜」
「レイブンの仕事が後押しされたのもあるな。ザク1の鹵獲に戦略的価値がないとはいえ小基地を1つ取り戻してきたんだ」
「本当に驚きましたね〜。コンビニに行くついでに生活費も払ってきたみたいな感じで」
ゴップとミンシュェンは、クックックッと笑った。
「とにかく、これからはザクを1機でも多く鹵獲しデータを取る必要が出て来た。レイブンには、これから先はザクの鹵獲に専念してもらうとしよう」
「そういえば、ゴップ閣下。面白い情報が1つありますよ〜」
「?なんだい、その面白い情報は?」
ミンシュェンは、小声でゴップの耳元で報告した。
「レビル派のグレイヴが特殊部隊を編成してザクの鹵獲、運用部隊を編成しています〜。騙し討ちを前提とした戦争犯罪部隊。そこにレイブンも同行させてみてはどうでしょうか〜?」
「レイブンの目的は、あくまでザクの鹵獲とジャブローへの運搬か」
「反対ですか〜?」
この時、ゴップは悪魔のような笑みを浮かべミンシュェンも少しレイブンに同情したようだった。
レイブンは、兵舎の個室で葉巻を吸っていた。やっときた休暇をレイブンは、楽しんでいるとノックの音が聞こえた。嫌な予感をしながらもレイブンは、ドアを開けると。
「やっほーレイブン」
相手は、ミンシュェンだった。
「何の用だ?ミンシュェン」
「何って遊びに来たんだよ〜」
そう言ってミンシュェンが中に入った。
「あ、これ土産ね〜」
そう言って渡されたのは、炭酸ジュースだった。
「いや〜、政治家も楽じゃないね〜。前線は、あれだけモビルスーツの脅威があるのに未だに反対派がいるみたいだよ〜」
そう言ってミンシュェンは、床にドカッと座り炭酸ジュースを飲んだ。
「会議で決まったのか?新型モビルスーツの開発計画が」
「そりゃ〜もちろん。反対派を何人か堕としたのとレビル将軍が意見を押し通してくれたおかげでね」
「それで、今度は俺をどうしたいんだ?」
レイブンもベッドの上に座り炭酸ジュースを飲んだ。
「さすがはレイブン。話が早い。レイブン、ちょっと休日を返上してくれないかな?」
「だと思ったよちくしょう」
予想通りの事でレイブンは、ため息を吐いた。
「しばらくは、レイブンには、モビルスーツの鹵獲を続けて欲しいだってさ〜。それと今回の作戦は、グレイブの所の部隊と合同でやってほしいみたい」
「グレイブ?懲罰部隊を指揮してるあのグレイブか?」
レイブンが訊ねるとミンシュェンは、首を縦に振った。
「大丈夫なのか?グレイブは、レビル派の将兵だけどあんまりいい噂は聞かねーぞ?」
「ゴップ閣下もレイブンの貸し出しを許可したからね〜」
「あの野郎。それでどんな作戦なんだ?」
そう言ってレイブンは、炭酸ジュースを飲み干した。
レイブンは、ヘリに乗って目的地に向かっていた。時刻は、夜中の2時。ヘリの中はグレイブの部隊【セモベンテ隊】の隊長であるフェデリコ・ツァリアーノ中佐とその隊員達がサプレッサー付きのアサルトライフルを持って待機していた。
「おい」
フェデリコ・ツァリアーノ中佐に話しかけられ顔をそっちに向けた。
「アンタが最近、噂になってるレイブンか?」
「さぁな」
レイブンは、そう言って葉巻を咥えジッポで火をつけた。
「調子に乗るなよ鳥野郎」
そう言ったのは、好戦的な隊員だった。
「伝説の兵士だがなんだか知らねーが俺達のザクの奪取の邪魔をすんじゃねーぞ。ジオンなんざ俺達の手にかかりゃ1発だからな」
「そうか」
特に相手もせずレイブンは、葉巻を楽しみそれを見た隊員は、チッと舌打ちをした。
「しかし、伝説の兵士の力を借りるのは心強い。せいぜい期待させてもらうぞ」
フェデリコ・ツァリアーノ中佐は、口ではそう言ってるが目は、「邪魔をしたら背後から撃つ」と言っていた。
そうしてると降下ポイントに到着した。セモベンテ隊とレイブンは、素早く降下し暗視ゴーグルをつけると進軍を開始した。降下した場所は、暗い山の中。向かう先は、北米第20補給基地。そこにあるザク7機を鹵獲するのが今回の任務だった。
レイブン達は、慎重に進んでいると。
「止まれ」
フェデリコ・ツァリアーノ中佐が小声でそう言った。レイブンは伏せて匍匐前進でフェデリコ・ツァリアーノ中佐の隣に向かい双眼鏡で偵察をするとそこには、ジオンの歩兵のパトロール隊がいた。
「どうする中佐?やり合うか?」
そう訊ねるとフェデリコ・ツァリアーノ中佐は、ハンドサインを出し仲間を呼んだ。
「左右に展開し一斉射をする。バレるなよ」
レイブン達は左右に展開し伏せ撃ちで歩兵のパトロール隊に銃口を向けると一斉に撃った。ジオンの歩兵のパトロール隊は、全滅し周囲に敵がいないことを確認するとさらに進軍しレイブン達は、北米第20補給基地の近くまで来た。
「あった。情報通りザクが7機ある」
双眼鏡で偵察をしているレイブンが報告した。
「よし、予定通り基地に潜入しザクを奪う。レイブン、分かっていると思うが」
「分かってる。6機は、そのままセモベンテ隊が使うだろ?分かってる」
「それならいいまずは、基地の前にある見張り塔を制圧し「俺が1人で行く」はぁ?」
レイブンの発言にセモベンテ隊は、目を丸くした。
「潜入は、俺の専門だ。俺1人で問題ない」
レイブンは、それだけを言うと見張り塔に向かった。姿勢を低くし物陰に隠れながら小走りで動き見張り塔に登りナイフを抜くとレイブンは、ナイフでなどを掻っ切った。突然の事に見張りも喉を押さえながら絶命しライトを左右に振り合図を送った。
「・・・・なるほど」
レイブンの手際を見たフェデリコ・ツァリアーノ中佐は、感心したが仲間達は、軽く舌打ちをしレイブンに続いた。施設の物陰に隠れながらレイブン達は、ザクに向かっていた。すると。
「!!誰だ!!」
ジオン兵に潜入が見つかった。遅れていた仲間は、アサルトライフルを向けて反撃をしようとしたがそれよりも前にレイブンが敵を撃ち抜いた。
「止まるな走れ!!」
警報が鳴り響いた。レイブンも全力で走り出しザクに向かうが武装したジオン兵が出て来てアサルトライフルで攻撃して来た。レイブンも反撃し走りながらアサルトライフルを撃ちまくった。走りながら撃ってるせいで狙ったところには当たらなかったがそれでも敵の肩や腹に命中させることはできた。
更に追い打ちをかけるようにフェデリコ・ツァリアーノ中佐のアサルトライフルが命中した。
「お前も急げ!」
レイブンとフェデリコ・ツァリアーノ中佐は、並んで走りようやくザクの下に辿り着いた。
「ザクの動かし方は分かるな!?」
「当たり前だ!」
レイブンは、コックピット緊急開閉ボタンを押してザクのコックピットを開けるとそのまま中に乗りザクを起動させた。
「俺が乗ってるザクはF型か。地上戦仕様じゃないから機動力が弱いがなんとかなるだろ」
そう言ってレイブンは、ザクバズーカを拾った。
「レイブン!バズーカでいいのか?」
「あぁ、どうせジャブローに持って帰る機体だ。少しでも新しいデータを持って帰らないと」
「分かった。俺達は、この基地を破壊してこの場を離脱。予定通り騙し討ち部隊として動く」
「了解した」
「レイブン」
レイブンもその場を離脱しようとしたがフェデリコ・ツァリアーノ中佐に呼び止められた。
「協力と部下を守ってくれた事に感謝する。伝説の連邦兵の実力も見せてもらった。次、会った時はビールでも奢らせてくれ」
「なら、死ぬなよ中佐」
そう言ってブースターを吹かしてその場を離脱した。基地からかなり離れた場所でゴップに通信した。
「成功したみたいだなレイブン」
「まだ、何も言ってないぞ」
「君からの報告は、成功報告だと思ってるからね」
レイブンは、呆れた顔をした。
「俺は神じゃない。失敗だってするさ」
「じゃー、失敗したのかい?」
レイブンは、ため息を吐いた。
「成功だ。とりあえずF型とザクバズーカを盗んで来た。さっさとミデアを送って来てくれ」
「了解した。君のために特別なミデアを送ってやろう」
そう言ってしばらく待つとレイブンの前にミデアが来た。黒いミデアだった。
「黒いミデア?」
ミデアは、レイブンの前に着地し早速、ザクの回収を始めると機長がレイブンの前に来た。機長は、褐色肌の女性だった。
「お初にお目にかかりますベルゼルガ少尉。本日より【新生 レイブンクロウ隊】に所属となりました。コロナ・ラインバーグ少尉です。コードネームは、【キャリアン】です」
そう言って彼女は敬礼をした。
「ハァ?」
突然のことにレイブンは、目を丸くすると。
「詳しい説明は、後ほど。急げ!ザクをさっさと載せろ!」
そう言ってザクは、無事ミデアに回収されるとレイブンもミデアに乗り戦場から離脱したのだった。