レイブンは、村の家でゴップからの通信を受けていた。
『すまないレイブン。君に頼みたい仕事ができた』
「俺に頼みたい仕事?」
『そうだ。今やっている作戦をキャリアンに任せて君はその任務を引き受けてほしい』
レイブンは、葉巻を咥え火をつけた。
「内容は?」
『アフリカ地方地球連邦支配領域のアドゥタールタウン。そこの刑務所で暴動が発生した』
「刑務所?」
『警察組織は、連邦軍と連携をとりなんとか治安維持に努めていたが刑務所の方までは手が回らなかったようだ。現在は、刑務所を包囲し膠着状態が続いている』
「待てゴップ。俺は軍人だぞ。なぜ、俺が警察の真似事をしなきゃならないんだ?」
『その刑務所での暴動がジオンからの支援の可能性がある』
「なに?」
『囚人達は、刑務員達を人質にして籠城をしている。モビルスーツや戦車などは流石にないが武装が刑務所で奪ったものではなかった』
「それでなんで俺なんだ?刑務所の制圧なら軍だけでも十分だろ?」
『レイブン。君は、刑務所に潜入して囚人達を無力化制圧をしてほしい。つまり、囚人達を生け取りにしてほしい』
「生け取りって完全武装してる連中をか?」
『囚人に装備を渡したとなると必ず内通者がいる。最悪、リーダーだけ捕獲して他は処分してもいい。内通者が誰なのか吐かせるんだ。頼んだぞレイブン』
そして通信が終わった。
レイブンは、ゆっくりと深呼吸をすると家の中にあった椅子を蹴り飛ばした。
「どうしましたレイブン?」
家の中から大きな音が聞こえ何かあったのか確認に来たキャリアンが訊ねた。
「大丈夫だ。虫がいたから踏み潰そうとしただけだ」
そう言って吸い終わった葉巻を捨てて踏み潰した。
「キャリアン、ゴップからの指令が出た。少しの間、ここを離れる」
レイブンがそう伝えるとキャリアンは、察したのか敬礼をし。
「了解致しましたレイブン。それではレイブンクロウ隊は私が隊長代理として指揮をさせていただきます」
レイブンは、そう言うと村にあったワッパに乗りエンジンをかけるとそのままアドゥタールタウンに向かった。
アドゥタールタウンに到着したのは翌日の明朝だった。町外れの土地にワッパを置き現場へ向かった。アドゥタールタウンは、ある意味で地獄だった。
「戦争はんたーい!!」
「アドゥタールタウンを戦場に巻き込まなー!!」
「戦争はんたーい!!」
「連邦軍は出て行け!!」
「俺達を戦争に巻き込むな!!」
「なんだ?こんなデモが起きてるなんて聞いてないぞ」
アドゥタールタウンの市民達が連邦軍を相手にデモを起こしていた。戦争反対のプラカードや連邦軍は出て行けと書かれた横断幕を掲げ市民達は、連邦軍に石や砂、ゴミを投げつけていた。
面倒なところに送り込まれたと思いレイブンは、軽く舌打ちをすると。
「オラ、来いよ!!」
「やめて、離して!!」
連邦兵が高校生くらいの女の子を路地裏に引っ張り込んでいた。嫌な予感がしたレイブンは、こっそりと覗いてみると。
「へへっ、反戦運動のテロリストがこんな上玉の女がいたなんてな」
「ち、違います!!私はデモと関係ありません!!」
「近くにいただろうが!!なら、お前もテロリストだ!!」
そう言って、連邦兵は、ズボンを脱いだ。
「見逃してほしければ奉仕しろよテロリスト」
女の子は、連邦兵のアレを見て恐怖で顔を引き攣り怯えていた。
「・・・・・何をやっている?」
呆れたレイブンは、ため息を吐いて路地裏に入り声をかけた。
「あん?誰だお前?」
連邦兵はレイブンに気づくと威嚇するように睨みつけた。
「もう一度聞く。そこで何をしている?」
レイブンは、連邦兵強く睨みつけ覇気がこもった声音で訊ねた。それに怯んだのか連邦兵は、少し後退し。
「あんた誰だよ。俺と同じ連邦軍みたいだ・・・け・・・ど」
連邦兵の階級は、兵長。対してレイブンの階級は少尉。階級は、レイブンの方が圧倒的に上だ。階級章を見て連邦兵は、焦った顔をしてズボンを履き直し姿勢を正して敬礼をした。
「し、失礼いたしました!!し、少尉殿でございましたか!!」
「俺のことはどうでもいい。その子に何をしようとした?」
「いえ、こ、これはその彼女はデモ活動をしている連中近くにいたので怪しく感じ職務質問を」
「職務質問をするのになぜズボンを脱いだ?」
レイブンは、そう言って連邦兵に近づきナイフを逆手に持ち連邦兵の首に押し当てた。
「俺には、誇り高き連邦軍人が民間人をレイプしようとしていたように見えたのだが?」
「い、いえ、そんなことは」
連邦兵は、ガタガタと体を震わせレイブンに怯えていた。
「俺はベルゼルガ少尉だ。上の命令で今、この町にある刑務所に用があって来た」
「そ、そうでありますか!」
「だいたい、この仕事は警察の仕事だろ。なんで、お前が警察の真似事をしている。やりたいなら連邦軍を辞めて警察に再就職をしろ。それが嫌ならさっさと配置に戻れ」
連邦兵は、敬礼をして慌ててその場を立ち去った。
「大丈夫じゃないな。すまなかったなお嬢ちゃん」
レイブンがそう言って軽く頭を下げた。
「いえ、助けていただきありがとうございます」
「見ての通りデモ活動の最中だ。外は危ないから家で大人しくしていろ」
そう言うとレイブンもその場を離れ刑務所に向かった。
刑務所に到着するとかなりの厳戒態勢だった。しかし、連邦軍と警察の連携がうまくいってないのか司令部のテントからケンカのような怒声が聞こえた。
「あの、あなたは?」
ひとりの連邦兵がレイブンに声をかけた。
「上の命令で刑務所の制圧に来たレイブンだ。話は通っているか?」
「確認します!」
兵士は、上司に確認を取るとすぐにレイブンのもとに戻り。
「はい、通っています!ご案内いたします少尉!」
兵士は敬礼をして司令部のテントに案内された。テントの中では警察側の司令官と連邦軍の部隊長が言い争っていた。
囚人達を皆殺しにして制圧するべきと言う連邦軍と交渉し無力化を目指す警察。
(これは、膠着しても仕方ないな)
彼らを見てレイブンは、呆れると。
「隊長!!伝説の連邦兵、レイブンが到着されました!!」
連邦兵が大声でそう言った。
伝説の連邦兵と呼ばれてレイブンは、少し小恥ずかしそうに右頬を掻くと司令部の連中は、レイブンを睨みつけた。
「レイブンだ。ゴップの命令で作戦行動中の部隊を離れてここに来た。それで今はどんな状況だ?」
レイブンが訊ねると司令部の連中は、嫌そうな顔をしながら答えた。刑務所は、三階建てでかなり広く正面入口は、機関銃や土嚢で防御を固めているようだ。
人質である刑務官達は牢屋に入れられ立場が逆転しているようだ。囚人達の要求は、自分達を解放することだった。当然、そんな要求を呑むことはできず交渉で時間を稼いではいるが限界が来そうだった。
「なら、俺が潜入し刑務所を制圧すればいいか」
レイブンが一言そう言うと司令官は『それができたら苦労してねーんだよ!!』と、つっこんだ。壁に囲まれてら上、高圧電流が流れている鉄線を使っているので脱獄不可能だった刑務所だが囚人達に乗っ取られたことで難攻不落の要塞と化してしまったのだ。
2回ほど潜入部隊を送ろうとしたが全て失敗に終わっているためレイブンの潜入作戦は失敗すると司令部は、考えていた。
「このルートでも潜入できないのか?」
そう言ってレイブンは、ルートを指さし教えると突然、外が騒がしくなった。何事かと思いレイブン達は、外に出ると囚人が刑務官を1人屋上から突き落としたのだ。
『聞こえるか!!』
拡声器を持ったリーダーらしき男が言った。
『俺達の要求を呑めないのなら30分おきに人質の刑務官を1人ずつ殺す!さっさと俺達を解放しろ!!』
「クッ、卑怯な囚人共め!!」
警察の指揮官がそう言うと。
「別に卑怯じゃねーだろ?」
と、レイブンが言った。
それを聞いて警察の指揮官がレイブンの胸ぐらを掴むがレイブンすぐさま小手返しをして指揮官を投げた。
「かはっ!」
突然のことに全員が目を丸くすると。
「俺なら潜入し人質を全員救出し制圧もできる。囚人達の生死を問わなければそんなに時間はかからない。どうする?このまま他の人質も見殺しにするか?それとも俺に賭けるか?」
レイブンがそう脅すとレイブンの潜入作戦が許可されたのだった。